第三十二番 核心に触れる
フェニックスが子供っぽく感じられる……かもしれません!!
「しつこいなぁ。君たちも。そんなに私のことが気になるのかい?」
部下を引き連れず、フェニックスは土師達の前に立っていた。周りには何もなく、草も花も木も家も何もない、場所にはフェニックスと土師、凛音、友里亜、ミッシェルの存在しかない。
花江はゆっくりと前に出て、フェニックスと向かい合った。
「貴方が噂に聞くフェニックスさんですね。私は『金牛宮』の花江といいます」
ミッシェルはあえて旧姓を使った。初めて見る顔にフェニックスは一瞬だけ驚いた。しかしミッシェルが『金牛宮』とあかしたことにより、すぐに理解に至った。
「全員が全員、子供というわけではないみたいだな。花江さんだっけ? お姉さんは明らかに私よりも年上そうだし」
フェニックスは少し興味を持ったようだ。これは余裕があるからであり、時間稼ぎにすらならなかった。しかし、このやり取りに解決の糸口を見つけるかのようにミッシェルは話を繋いだ。
「そうね。私はあなたよりも人生を生きていることになるわね。あなたは、何故、『蛇遣い座』の力に固執しているのかしら」
ミッシェルは疑問をダイレクトにぶつけてみた。今まではユメノを取り戻すこととフェニックスの野望を打ち砕くことだけに焦点を当てて行動していた雨音たちだが、ミッシェルはあえて核となる部分に触れることを試みた。
フェニックスは答えない。質問は確かに届いているはず。答えない代わりに、左手の薬指をさすっている。そこに指輪が付いているわけでもないのに。
「まさか、意味もなく行動しているわけではないはずですよね?」
ミッシェルは煽るように畳みかける。大人の力を見せつけられている気分だった。
「この世界の神になる。それが私の運命だからだ」
ようやく口を開いたフェニックスは少し動揺していた。明らかに焦っている。心の支えを失って不安ではあるがそれでも虚勢を張ることしかできない子供のように見えなくもない。
「運命ですか。子供のようなことをおっしゃるんですね。確かに運命的な出会いなどいい言葉のようにも聞こえますけれど……」
「運命は絶対だ。天より与えられし命令だ。私たち人間がどのように思おうが覆すことも抗うことも出来ないのだ」
ミッシェルの言葉を待たずに返してきたいらだちを感じる。この男から初めてみる怒りという感情。
「ほら。矛盾しているじゃない。神により与えられた命令がこの世界の神になることなんて。そんな運命を神様は許すのかしらね?」
こちらも一歩も引かない。臆さずぐいぐいとフェニックスの核心に近づいていく。その姿に土師と凛音、友里亜が息をのむ。正直この状況で誰も口を挟むことが出来ないでいた。
「うるさい! 黙れ! お前に何が分かる? 生まれた時から特別な存在だったお前たちに何が分かるんだ? お前たちの存在でどれだけの人が迷惑をしているのか知らないだろう!」
フェニックスは自分の感情をコントロールできなくなっていた。冷静になろうとすればするほどミッシェルの言葉が深く突き刺さってくる。こんな時に限って幹部たちは別行動をしているし、部下たちは下準備のためにこの場にはいない。唯一ともいえる心の支えである『蛇遣い座』の化身も自分の傍にはいない。
フェニックスがイライラを抑え込もうとして頭を抱えた時に、とても大きな風がミッシェルたちに向かって襲い掛かってきた。足に力を入れておかないと吹き飛ばされて染む勢いの風は十秒ほど続き、ようやく収まった時には一人の少女がフェニックスの目の前に立っていた。まだ、目がしょぼしょぼする中、友里亜が声を上げる。
「ユメノさん!」
その声に風を操っていた少女がユメノであることが分かった。まだ少し混乱しているフェニックスはユメノに手を握られていた。
「おまたせしました。フェニックスさん。もう大丈夫です。私がいます。『黄道十二宮』の化身達が何と言おうとも私はあなたの味方です。あなたが私を見つけてくださったその時から。私はずっと……」
その続きをフェニックスは言わせなかった。意図して言わせなかったのではない。フェニックスは子供のようにユメノのことを抱きしめていたから。
「お前だけはずっと傍に居てくれ。オフィウクス」
二人の様子にどのように声をかければよいのか分からなかった。
ユメノのイメージがだいぶ変わってしまいましたね。なんだか二人の間に何かが芽生えているかのような。しかし、その何かとはいったい何なのか。また、ユメノはどのような未来を進んでいくのか……




