第三十一番 最善の選択
なんとか終わりに向かっています。
クリスティアから悪意を感じない。一度、直接対峙したことがある枚方には十分に感じることが出来た。また、雨音にとっても自分となんだか似ているものを感じ取った。
「話だけはとりあえず、聴く。もし、これが作戦のうちだったら俺はお前を絶対に倒す」
枚方はありったけの威嚇を見せた。この場にいる全員が枚方の威嚇を肌に感じていた。クリスティアに一度もあったことがない、初めて会う四条にとっても息をのむ勢いだ。
クリスティアは承知し、口を開いた。
男は今は亡き父親から一つの使命を受けた。それは生まれた時から決められていた運命のように。それ以外の選択肢が与えられない悲しき運命を彼は背負っていた。十二星座を導く十三番目の星座を手中にし、世界の神になること。それは父親の野望であった。彼はその野望を一つの指輪と共に託されていた。自身の背負う使命に押しつぶされないように心の支えになった、母親の形見。アレクサンドライトがあしらわれた指輪だ。彼は命の次にそれをとても大切にしていたそうだ。
クリスティアが右も左もわからないこの地に足を踏み入れた時に二番目に声をかけてきてくれたのが彼だった。そして、最初に声をかけてくれた人こそ、クリスティアとユメノの師匠である。師匠はフェニックスの野望に気が付き、クリスティアに忠告を何度もしてきた。クリスティアも彼の野望には気が付いていたが、彼を放っておくことが出来なかった。彼は人生を本当の意味で生きていない。彼を救い出してあげたい。そう思い、彼の一番近くでその機会を伺っていた。
いつだったかすでに忘れてしまったが、蛇遣い座の化身がフェニックスの命の次に大切なものを奪っていった。そして、その数日後、任務により別行動をしていたクリスティアの前に蛇遣い座の化身が現れた。彼女は私の本当の目的に気が付いていたそうだ。というか、力によって知った、というのが正しいが。そして、彼女と少し話をし、指輪はクリスティアが預かることになった。
その数カ月後、彼女は無くなった。クリスティアはその場にはいなかったため、フェニックスが説明してくれた。そして、彼はようやく、指輪が盗まれていたことに気が付いた。
「その話が本当でしたら指輪は今もなおあなたが持っていることになりますが、どうですか?」
雨音は冷静に問いかける。その問いにクリスティアは静かに首を縦に振る。そして、胸ポケットからアレクサンドライトが濃緑色に輝く指輪を取り出した。それはまさしく、本物であった。
全員が確認し終わると、大切そうにしまい込んだ。決して、肌身から離さないように。
「今はオフィウクス……いえ、ユメノはフェニックスを完全に信じ込んでしまってる。だけど、私。彼女をのことも助けたい。彼女の基礎能力は鍛えることが出来るけど、彼女を正気に戻すのは私には出来ない。だから……」
言いたいことは分かる。彼女の思いは伝わっている。だからこそ、これが最善の選択だと信じられる。
「クリスティアさん。分かっています。ユメノを鍛えてくださり、ありがとうございました。後は、私たちに、任せてください」
クリスティアの瞳に涙が浮かんだ。
なかなか投稿が出来ない中、立ち寄って読んでくれている方がいらっしゃったら心より感謝いたします。
なんとしてもこの物語を完結させたいものです。




