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夢からの守り人  作者: kanisaku
20/22

夢みる世界

何時もの人里。人間は畑を耕し、大自然と空の元で、幸せな日々を送っている。

  ?「はいは~い。皆さん!」

突然里人達の脳内に流れる元気な声。本当に突然の声に、全員がピタリと動きを止める。

  ?「皆さんに~、少しだけお願いがありま~っす!」

その声は慧音や妹紅の脳内にも響いていた。

  慧音「なんだ…この声…」

  妹紅「…女の子?」

  ?「この幻想郷に~、とっても怖い人がいるんです~!」

演じているような白々しい声は続けて言う。

  ?「だから…私に協力してほしいの!いいよね!?」

その言葉とともに、人里の中心の空から、光の球体がゆっくりと降りてくる。人々はその光を唖然とみていたが、一層強くなってきた光に目を瞑った。

その光と声を唯一知らない少女が一人。大きな屋敷の中で縁記を書いていた…。



外の世界で何時ものように祖父の畑仕事の手伝いをする九月。首にかけたタオルで汗を拭い、水筒に入っている冷たい水で太陽から奪われた体中の水分を取り戻す。

  九月「ふぅ…」

祖父とのこの生活もだいぶ慣れてきた。都心で狭く暮らしていたが、今では汗水流して働くことを楽しんでいる。

自分が耕してきた畑を眺めていると、阿求の言葉が脳裏をよぎる。

         阿求「九月さん…助けて…」

  九月「阿求…?阿求!」

聞き違いじゃない。自分にしか聞こえてないが、阿求が幻想郷から助けを求めている。すぐに家に戻ると縁側に寝そべって深呼吸をする。休憩した途端にどっと疲れが溢れる。その疲労の波に感覚を任せ、静かに眠りとともに幻想入りしていくのだった。



その頃、幻想郷では一つの異変が起きていた。人里の人間が一様に「稗田家を潰せ!」「殺せ!」と、血眼になって阿求を探し回っているのだ。使用人でさえ同じように包丁を持ち、阿求がどこに隠れているのかを探している。

  阿求「どうして…こんな事に…」

友人である小鈴と一緒に作った、畳の下にある空間に阿求は隠れていた。開けられても大丈夫なように、その中にも壁の仕切りを張ってカモフラージュしているが、上から聞こえてくるドタドタという数人の足音に怯えるしかなかった。

その時、入口である畳が数人の手によって外される音が聞こえてきた。

  小鈴「居たぞ!」

  阿求「そんな、小鈴まで?!」

簡単に見つかってしまった。仕切りがあるのもばれていた。彼女と一緒に作った隠れ場所だ、バレてしまって当然なのだが、彼女まで自分を狙っていることに涙が出てきた。

そのまま腕を掴まれ、抵抗も虚しく外に引きずり出される。縄でキツく腕を縛られ。人里の中心に連れて行かれた。

  小鈴「稗田家の血筋は根絶やしに…!」

阿求を睨みつける小鈴は地面に打ち付けてある丸太に阿求を縛りつける。

阿求は里の全ての人間に囲まれてしまっていた。辺りを見回しても、全員自分に殺気を向けて立っている。

よく通う団子屋の女将や野菜を届けてくれる青年、身の回りの手伝いをしてくれていた使いの女中まで、言い知れぬ不安と、突然すぎる絶体絶命の状況に涙がジワリと視界をゆがませる。

  慧音「…全員そろったな」

人々をかき分けて慧音が姿を現す。

  阿求「慧音さん!?どうしてこんな事を!」

  慧音「黙れ!幻想郷の諸悪の根源め!」

仁王立ちの慧音は阿求の言葉に聞く耳を持とうとしなかった。

幻想郷の諸悪の根源、その意味が何なのか彼女には理解できない。

  慧音「誰か、コイツの首をねたいとい奴はいるか?」

慧音がそう言うと、群衆は一斉に自分がすると騒ぎ出す。耳を塞ぎたくなるほどの騒音だが、手を縛られている阿求にはただ耐えるしかなかった。

  小鈴「私がやるわ!」

他の人を押しのけるように小鈴が手を上げる。慧音と目が合い。慧音も小鈴を指名する。

村人から桑を渡された小鈴は、重い桑をゆっくりと振り上げた。その目は阿求に対する殺意とその阿求を殺せるという喜びで満ちているようだった。

  小鈴「死ね…!」

力を込めた小鈴は桑を全力で振り下す。阿求は目を瞑った。

  小鈴「っ!?」

  阿求「…?」

何時までたっても刺されないトドメに、阿求はゆっくりと目を開ける。

自分はまだ死んでいない。自分の足元にはさっきまで確かに自分を狙っていた桑が落ちている。その桑を握っていた筈の小鈴は、右手の甲を押さえて痛がっている。

そして一瞬だけ視界の隅に映った、飛行する物体に視線をやり追いかける。その先には…。

  阿求「く、九月さん!」

民家の屋根に上り、飛ばした小刀を鞘に納める九月の姿があった。

  九月「阿求ー!今行くぞぉ!」

  慧音「アイツも阿求と同じだ!殺せ!」

  小鈴「アイツ…!よくも邪魔を!」

峰打ちだったのか、小鈴の手に切り傷は無かった。人々は桑や鎌を持って九月がいる屋根に上ろうといろんな方向から梯子をかける。

しかし九月はそんな群衆を無視し、阿求の元まで一っ跳びで移動する。小刀を取り出して阿求を縛る縄を斬る。

  九月「逃げよう阿求、説明は後だ」

  阿求「はい…」

  里人達「うおおぉぉ!」

四方八方から襲いかかる人々。九月は刀に手を掛け阿求に叫ぶ。

  九月「伏せて!」

阿求が頭を抱えてしゃがんだ瞬間、四方に向かって回転するように刃を振り回す。武器である農具を斬り、鎌を弾き飛ばす。人々が怯んだ隙に阿求を抱きかかえ、跳んで屋根に着地する。そのまま脱兎のごとく屋根から屋根へを繰り返して人里から避難した。

後ろから人たちの声が聞こえる。阿求を狙って弓を飛ばす者もいたが、距離が離れすぎているのか一発も当たることはなかった。



それから逃げ事1時間。森の中を進みつづけた九月は木の根元に阿求を置き、追手が居ないことを確かめて一息着いた。いくら幻想郷に来て身体能力が上がっているとはいえ、人間である九月が1時間も移動し続けるというのはかなり無理があった。

  九月「はぁ…はぁ…。こ、ここまで来れば…追ってこれない筈だ…」

阿求の横に力尽きたように座り込むと、深呼吸をして身体を休める。

  阿求「どうしてあんな事になってしまったのでしょう…」

  九月「阿求にも分からないのか?」

  阿求「えぇ。あまりにも突然のことで…。何か嫌な予感がして、畳の下に作った隙間に隠れたんですがすぐに見つかっちゃって。九月さんが来てくれなかったら、殺されてました…。本当にありがとうございます」

  九月「確かにあの時は危なかった。外で働いてたら阿求が、助けてって言ってるのが聞こえたんだ。だから来てみたら、あの状況で…」

  阿求「そうでしたか…。そういえば、慧音さんたちが何か言ってましたね。『幻想郷の諸悪の根源』って。それが何かに関係があるんじゃないでしょうか」

  九月「うーん…。一人捕まえて何か情報を聞き出してみるとか?」

  阿求「そうしてみましょう」

  九月「じゃあ、早速行ってくる。阿求はここで待っててくれ」

立ち上がった九月はすぐさま走って人里まで戻って行った。

九月が走って行ってから数分後、阿求は九月を心配していた。思えば、人里には慧音がいる。見つかれば襲われ、九月であろうと負けてしまうかもしれない。それどころか妹紅だっている。二人の実力者を相手に九月一人で勝てる保証が無かった。阿求は逃げてきた方向などの記憶を手繰り、自分が何処にいるのかを考える。そして、ある場所の位置と自分の位置を把握するとその場所に向かって走った。

  阿求(九月さん、待っててください…!)



それからしばらくして、人里付近まで戻ってきた九月は川の水を飲んで水分補給を済ましていた。すぐに木陰に隠れると、離れた場所に見える物置小屋から武器になりそうな農具を担いだ里人3人が出てきた。きっと阿求を探しに行くつもりだろう。

最後の一人が小屋のカギを閉め、全員がそれを見届けていたその隙をついた。少しずつ距離を縮めていっていた九月は一気に駆け出し、峰打ちで全員の首筋を殴る。3人のうち一人からカギを奪い、内二人は他の離れた場所に置き。残った一人を小屋の中に引きずり込む。

紐で手足を縛り、汲んできた川の水を顔に叩きつけるようにかける。

  里人「げふ?!がはっ!がはっ!…え?お、お前!逃げた筈じゃ…!」

  九月「話を聞きたい。何故、お前達は阿求や俺を殺そうとするんだ」

  里人「けっ…悪人なんかにそんな事教えっかよ!殺すなりなんなりしやがれ!」

  九月「…そうか」

九月は刀に手を伸ばす。ゆっくりゆっくりと刀を引き抜く。相手に見せつけるように、威圧するように…。

  九月「なら…!」

鞘から抜ききった瞬間に、里人の首目掛けて刀を振るう。恐怖した里人が目を瞑る。

  九月「…なんてな。いくら相手がこっちを殺しに来てるっていっても。アナタは人間だ。話してくれないだけで殺しなんてしないよ。ただ、本当に理由が聞きたいだけだ。俺と阿求が何をした?」

  里人「何をしたって…あんたは何体も妖怪を殺してるだろ…」

  九月「それは、阿求を守るためだろ。阿求が書いてる縁記を取り返しに、二度と書けないように阿求を殺しに来てる妖怪達から…」

  里人「その縁記に名前や弱点が書かれた妖怪が一体どれだけいると思っているんだ。妖怪だって人間と同じように過ごしてる奴もいる。そんな奴らの弱点を知って何をしようとしてるんだ。強力な妖怪だって、生きるために誰かを餌にしていただけだ。なのになんでお前なんかに殺されなきゃならない」

  九月「それは…」

  里人「俺達人間だって、人里で過ごしている以上、妖怪は怖い。でも、妖怪を下に扱うために縁記を掻き続けるアイツを俺達は許さない。許しちゃいけねぇ、あの声にそう教わったんだ」

  九月「あの声…?」

  里人「聞こえてなかったのか?今朝、俺は聞いたんだ。他の奴らも聞いてる。『阿求、そしてお前は妖怪を根絶させる為に縁記を書いている』と、そして『幻想郷の全ての妖怪の名前と弱点が書かれた瞬間、幻想郷の全ての妖怪は消え去り、幻想郷の生態系が崩壊する』ってな…」

  九月「なんだよそれ…。俺はそんな事知らないぞ…」

その時、入り口から炎の塊が扉を焼き焦がしながら突撃してきた。

  九月「!?」

  妹紅「出てこい九月!お前の野望もここまでだ!大人しく出てくれば苦しまずに焼いてやる!」

  慧音「人質は気にするな。奴を倒す為なら、多少の犠牲は必要だ」

二人は柄にもないことをいって九月を威嚇する。

  九月「く、アンタも逃げろ!」

小刀で紐を斬り、里人を入口に押し出す。しかし、突き出していた片手を掴まれ、そのまま引っ張られる。

  九月「うぉ!?」

  人里「慧音さん!捕まえたぞ!今の内だ!」

  慧音「でかしたぞ!妹紅、絶対に逃がすな!」

  妹紅「分かってる!」

慧音、妹紅、そして大勢の里人達に取り囲まれ、刀を奪われ、手足を縛られ、口を紐で縛って喋れないようにされ、人里まで連行される。

  九月「うぐぅ!ぅがああう!」

  慧音「うるさいぞ。悪党め…お前なんか、二度と歴史に現れないように抹消してやる…阿求共々な」

  妹紅「どうする?居場所を吐かせる?」

  慧音「コイツの事だ、どんなに火であぶっても、傷口に塩を塗られても阿求の事は言わないだろう。いっそ殺せ」

  妹紅「分かった」

  慧音「私は阿求探索に向かう。里の事は任せたぞ」

十字架に見立てた丸太に張り付けにされた九月は、人々が睨みつける中でただ阿求の事だけを心配していた。

  里人1「このバケモンめ!」

  里人2「殺せ!殺せ!」

  里人3「妹紅、早くやっちまってくれ!」

次々と飛び交う罵声。今まで九月が見てきた人情溢れる優しい人たちとはまるで別人のように思えてくる。

妹紅も冷たい目で睨みつけてくる。片手をポケットに突っ込み、もう片方の手のひらにメラメラと燃える炎を作って顔の前に近づけてくる。

  九月「熱っ」

  妹紅「当たり前だ。ただ…普通には死なせないよ。阿求はどうせすぐに見つかる。そうしたら阿求の目の前でアンタを殺す。そして阿求も」

  九月「ふざけるな…!どうしても殺したいなら、今ここで殺せばいいだろ!」

  妹紅「悪人の言葉に耳を貸すほど私は優しくないわ。アンタの絶叫を阿求に聞かせてあげるのよ」

  九月「く…」



数十人という数で阿求がいると慧音が推測した場所を探し回る。その時、慧音は近くに博麗神社があることを思い出した。

  慧音「…行ってみる価値はあるか、かくまっているかもしれないからな」

神社に続く石段を登っていく慧音は、登りきる手前で霊夢と対峙した。箒を持って鳥居の真下に立っていた彼女と目が合う。

  霊夢「あら?どうしたの?こんな所まで…」

  慧音「なんだ、掃除中か…。ここに阿求が来なかったか?アイツが居ないと困るんだ…」

  霊夢「へぇ。一体何をするの?」

  慧音「祭りさ、ちょっと阿求に派手な恰好をさせようとしてたら逃げ出してな。こんな遠くまでは来てないと思うが、中を確認させてもらっていいか?」

  霊夢「いいけど…まずはアナタの後ろについてる『ソレ』を外してからにしなさい」

懐から素早く取り出したお札を慧音に向かって投げつける。驚いて反応が送れた慧音の顔の横を通り過ぎた

お札は、空中で何かに張り付いたようにピタリと止まる。

  ?「んぐぅ!?ああぁぁー!」

キツネの顔が映った人魂のような白い物体が姿を現し、シュワシュワと蒸発するように消滅する。それと同時に慧音は頭を押さえながらその場に座り込んでしまう。

  霊夢「動物霊…いや動物妖怪ね。でもアナタが憑かれるなんて…本体はよほど強力みたいね」

神社の本堂に隠れていた阿求は心配そうに霊夢に近づき、ぐったりしている慧音を見下ろす。

  阿求「もう…大丈夫なんですか?」

  霊夢「慧音の方は、ね…。他の人も憑りつかれてるみたいだから祓ってくるわ。それにしても、最初はビックリしたわよ。ずっと人里に籠ってる阿求が血相変えて走ってくるんだから、よくそんな体力あったわね…」

  阿求「九月さんと体力づくりしてますから…」

  霊夢「九月…あぁ、アナタの守り人って人ね。新聞読んだわ。アイツはどうしたの?」

  阿求「それが…人里に情報を聞きに行くと言って…。でも、人里に妹紅さんがいるので心配なんです。助けてください!」

  霊夢「わかってるわ。九月って人が生きてたらちゃんと助けてあげるから、アナタは中に隠れてなさい。襲われそうになったらお賽銭入れなさいよ?」

  阿求「は、はい…」(何故お賽銭…?もしかしてお金が欲しいだけじゃ…)

そう言って霊夢はすぐさま飛んで行ってしまった。見送った阿求は霊夢に言われた通り、博麗神社へと上り込む。

  霊夢「…あの憑き物、動物霊よね…、にしては力が大きすぎるわ。何か他のでっかいことが絡んでるのかも」

顎に指を当て、うーんと悩む霊夢はお祓い棒を取り出して人里に一直線に向かう。




  妹紅「…」

  九月「…」

二人は睨みあったままだった。周りには人々が九月を早く殺せといわんばかりの視線を向けている。

  九月「…?」

一瞬だけ九月の目に映る。妹紅の後ろに現れたキツネの顔をした何かが…。

  妹紅「何見てるの?」

  九月「妹紅。お前、何かに取りつかれてるんじゃ」

  妹紅「そんな訳ないでしょ。そんな事言って何か企んでるんだろうけど私は聞かないわよ」

  里人1「妹紅!そんな奴、阿求を待たずとも殺しちまおうぜ!見てるだけでおぞましい!」

  里人2「そうだそうだ!やっちまえ!」

誰かがヤジを飛ばすと、それにつられて他の者達も磔にされて動けない九月に石を投げつける。

  九月(せめて…この小刀でも飛ばせたら…。そして阿求は大丈夫かな。捕まってないといいけど)

  妹紅「…そうだな。周りの皆もこういってるんだし、何か仕出かされても困るだけだ。慧音には悪いけど、私一人で処理させてもらうよ」

手のひら、そして背中から翼のような炎を創り、ゆっくりと九月に近づく。

  九月「せめて、最後は阿求と会いたかった…」

  妹紅「そうか。それは残念だったな」

冷たくあしらった妹紅は、炎を纏った右手を振り上げる。

  霊夢「間に合った!観念しなさい動物霊ども!」

空から降り注ぐ大量のお札。完全な不意打ちは妹紅に直撃した。動揺し始める人々を後に、淡々と九月の拘束を解いていく霊夢は阿求の言葉を九月に伝える。

  九月「そうか…阿求、俺の事心配してくれたのか…」

  霊夢「えぇ、なんとか間に合ったみたいで良かったわ。本当ならお礼の一つでもしてもらいたい所なんだけど…今回のは色々と大変そうだからボランティアで手伝ってあげるわ」

  九月「助かるぜ。それで…さっき動物霊がどうとかって言ってたけど」

  霊夢「コイツらの背中に動物の幽霊がついてるわ。ふつうの人間から憑りつかれるのは分かるけど…妹紅とか慧音まで操られるなんて…きっと裏に大きな奴がいる。貴方じゃこいつ等の相手はできないから先にその元凶を叩きなさい。コレをあげる」

霊夢がホイと投げ渡してきたのは手のひらサイズの陰陽玉。どうやらこれが元凶となる妖怪を探り、案内してくれるようだ。霊夢に礼を言って屋根に飛び乗り、陰陽玉を追いかけて元凶の元へと駆けつける。

  霊夢「さて…久々の運動ね。これだけいるけど、一匹残らず退治させてもらうわよ!」

霊夢は札を構え、人々の群の中に突っ込んでいく。




霊夢が去った後の博麗神社。九月と、彼を助けに出た霊夢の二人を心配そうに待ち続ける阿求だったが、彼女の元にも動物霊が憑いた人間が向かっていた。

  里人「いたぞ!阿求だ!」

  阿求「ひっ!?見つかった…!」

鎌を持った里人は鬼の形相で阿求に迫る。慌てて室内に隠れようとした阿求だったが、霊夢からの言葉を思い出す。

       「危なくなったら、お賽銭入れるのよ」

  阿求(このままじゃ見つかっちゃう…霊夢さんの言うことを信じるしか…)

慌てながらも財布を取り出し、乱雑に中身を握る。一瞬だけ見えたのは大金。外の世界でいえば、500円玉を6つほど掴んでいる状態だ。金額の多さに少し惜しみながらもパッパとお賽銭箱にお金を入れる。鎌を構えた男はもう鳥居前の階段を上がりきろうとしている。

  男「阿求…殺してや、げふぅぁ!?」

男が鳥居をくぐろうとしたその時、内側から衝撃波のような波が男を突き飛ばし、階段をゴロゴロと転がっていった。

  阿求「…死んじゃわないかなぁ、あの人」

やりすぎじゃないかと冷や汗をかきながらも自らの安全を確保できてホッとする。




人里を離れ、名前も無い山の木々を通り抜ける九月。そろそろついてもいい頃なのだが…。

  九月「一体いつになったら犯人の所に着くんだ…そろそろ体力が…」

息を荒くしながらモタモタ走っていると、陰陽玉は小さな洞窟の前で停止し、穴の周りをウロウロとしている。どうやらこの中に犯人がいるようだ。

  九月「…!」

人一人がギリギリ通れるくらいの高さの洞窟に向かって小刀を投げ飛ばす。奥に居るとすれば確実に当たる筈だ。

  ?「きゃっ!?」

女の子の悲鳴が洞窟内で反響する。しかし、そそくさと出てきたのは一匹のキツネだった。慌てて尻尾を掴み、なんとか捕獲する。

  キツネ「ちょ、ちょっと!離してよ!」

  九月「お前が…人里の人たちを操ってた犯人…?」

  キツネ「…だったら、なによ」

  九月「いや、もっとデカい化物が来るかと思ってたんだけどなぁ」

  キツネ「うるさいわね…逃げないから、離しないよ」

悠長に人語を話すキツネを地面に置き、事情を聴く。

  九月「なんでこんなことをしたんだ?危うく俺や阿求が死ぬところだったじゃないか」

  キツネ「悪の根源なんて、死んで当然よっ」

  九月「それは操られてた人から何回も言われた。けど、どうして俺や阿求が」

  キツネ「だって、前に会った妖怪が言ってたもん!人里にいるアンタと娘を殺さないと、幻想郷が大変なことになるって!それに、この本にだって」

キツネは尻尾のどこにそんなスペースがあったのか、禍々しい一冊の分厚い本を渡してきた。

  九月「なんだよコレ…。全部デタラメじゃないか」


『幻想郷にて、人里に住みし一人の侍と、縁記綴る少女。後に世を掌握し、すべてを終わりへと向かわせる存在…』


読み上げていったが、他にも九月や阿求がやったという悪行について事細かく書かれているが、すべて根も葉もないでっち上げだった。怒りを覚えその本を地面に叩きつける。

  九月「こんなこと、一体誰が…!俺のこと、そして…阿求のことも…!」  

  霊夢「確かに、アナタや阿求がそんなことしてるなんて考えられないわね」

気がつくと霊夢が追いついていた。どうやら人たちに憑いていた霊は全て払われたようだ。

  霊夢「それで、コイツが主犯?随分小さいわね」

  キツネ「むぅ…」

  九月「信じてくれ。俺や阿求はここに書かれてるようなこと絶対にしない」

  霊夢「知ってるわ。魔理沙が前にアナタに会った時。命がけで阿求の為に戦ってたって…。まっ、今はこの子の後始末について考えましょ」

  キツネ「後始末って…もしかして…殺されちゃうの…?」

怯えながらも質問するキツネに、霊夢は無言でお祓い棒を取り出す。

  霊夢「!!」

  キツネ「ヒッ!」

頭を押さえながら地面に伏せ、自分の最期を恐れるキツネだったが、霊夢はその横にあった本にお祓い棒をぶつけ、妖力を消滅させていく。

  霊夢「アナタはただの妖怪。この本の力のせいで妖力を高められたのね。利用されてたのよ」

やれやれと一息ついた霊夢は本を回収し、空に飛んだ。

  霊夢「九月、アナタが居なかったらもっと危険な事になってたと思うわ。それには感謝してる。何時でも神社に来なさい。あの子も連れてね」

小さく微笑んだ霊夢は一足先に帰っていった。キツネも今回の事に反省し、大人しく暮らすと約束してくれた。




  阿求「それでですね。その人が思いっきり弾き飛ばされて、階段をゴロゴロゴロって…」

  九月「痛そ~…」

阿求を神社に迎えに行き、彼女の体験を聞きながら帰路を辿る。神社では阿求の入れたお賽銭の額を見て霊夢が目を輝かせていたという。

  九月「でも…ほんと、阿求に何もなくてよかった。何かあったらと気が気じゃなかったよ」

  阿求「ふふ、心配してくれたんですね。ありがとうございます」

  九月「これからはもっと阿求の傍に居る。そして、阿求を守ってくよ。約束する」

  阿求「ありがとうございます。これからも、よろしくお願いしますね」

一つの異変を解決した二人の影が夕日に照らされ伸びている。その影はしっかりと互いの手を取り合っていた…。

黄泉から現れた魚影が阿求を狙う。九月は魂を賭けて三途への救出を決行する…!


次回、夢からの守り人『黄泉からの恋』




前回から長く間を空けてしまい、申し訳ございませんでした。これからは、もう少しでも早く投稿できるように昇進いたします。

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