いつか空が飛べたら
偽九月を倒した翌日の昼、昼寝ついでに阿求の元へ向かった九月は、不思議な光景を目の当たりにした。
里の人1「凄い!本当に飛べる!」
里の人2「俺にも貸してくれよ!」
九月「なんなんだこれ…」
阿求に連れられて里の大通りに出てみると、人々が宙にフワフワと浮いている。まるで無重力空間にいるような飛んでいる人々は、どんどん高度を上げていく。
里の人2「お、おい!そんなに飛んだら戻ってこれなくなるぞ」
その言葉を聞いて恐ろしくなった人々は、羽を離して地面に倒れこむように落下する。
里の人1「あ、危ねぇな…この羽、危険だぜ。あんまり長い間触らないようにしよう」
阿求「あのように、突然人里に降り注いだ、この黄色い羽を掴んだ人は飛べるようになるんです」
阿求が落ちてきた黄色の羽を掴んで数秒後、フワッと阿求の体が地面から離れた。
九月「本当だ…すごい」
高く飛びすぎると地面に降りられなくなるので、10cm程浮くと阿求は羽を離した。
阿求「この羽は、いろんな所に落ちていますが、地面に落ちれば数分もせずに消滅してしまうんです。歴代の稗田家の書物にもこの羽の事は書いてありませんし、珍しいので持ち帰りたいのですが、掴むと浮いてしまいますし、困ってるんです」
九月「…斬ってみよう」
小刀を取り出し、地面に落ちた羽に刃を押しつける。しかし羽は斬れず、触れたことによって少し体が浮く感覚がして、慌てて小刀を離す。
九月「うわっ。本当に浮いた…」
?「阿求さ~~~ん!」
驚いている九月は、真後ろから女性の声が聞こえて振り向く。と、同時に危険を感じて身を屈めた。その自分の頭上擦れ擦れの所を、翼を生やした少女が通過していき、近くの地面で着地する。
赤い下駄に四角と三角を足したような形をした帽子、短いスカートの横には椛の葉の形をした扇を付けた少女、阿求の事を呼んでいたが、知り合いだろうか。本当に阿求は顔が広い。
阿求「文さん。どうしたんですか?」
文「今の言葉聞きましたよ…。貴方の家系にもわからない、正体不明の羽…興味深いです!そして、横の男性は誰でしょうか…」
九月「俺は初代守り人の水木九月だ。九月って呼んでくれ…そんで、あとちょっとで俺とぶつかりそうだった君は」
文「妖怪の山出身。天狗の射命丸文ですっ。幻想郷では文々。新聞を作っています。あ、貴方もどうぞ」
小さな手提げ鞄から、外の世界でも見慣れた灰色の紙に黒字の新聞紙を渡された。
九月「どうも…かなりの達筆だ…。」
文「それはどうも~。そして」
何かを企んでいる文の目は、九月に向けられていた。
文「早速!取材です!」
九月「え?え?」
文「貴方さっき初代守り人って言いましたよね?それがどういったものなのか詳しく、貴方の事と一緒に教えてくださいませんか?今度の新聞の題材にしようと思っています」
阿求「良かったじゃないですか九月さん。一気に有名人になれるかもしれませんよ?」
九月「有名人って言われてもな~なんかパッとしないな」
文「見出しは『稗田を守る人間登場!外来人は侍だった!』で決まりですね」
九月「侍だなんて、俺はただの人間。侍なんかじゃないよ」
文「あやや?じゃあ腰に刺さっている刀は玩具かなにかですか?服装だってまんま侍ですよ」
九月「これは外の世界から来たらこの服になってるんだよ、俺は、外の世界で寝てる時だけこの幻想郷に入れて…」
それから1時間ほど、食い入るようにしてくる質問攻めに答えられるだけ答え、やっと解放された。
文「いや~今回の羽の事と言い貴方の事と言い、中々面白い記事ができそうですよー」
九月「はは、それは良かった…」
九月(喋りすぎた…喉乾いたし、喉が痛い…)
文「貴方の活躍はかなり面白いものでした。きっとこの羽が妖怪の仕業でしたら、貴方が解決してくれることでしょう」
九月「この羽のせいで阿求が危険な目に合うってんなら、俺はすぐに助けに行くよ」
阿求「まぁ…九月さんったら」
赤くなった顔を両手で隠す阿求。
九月「え?!俺なんか変な事言った?」
文「あやや…とんだ夫婦漫才ですね~、ラブラブってことも書いときましょう」
九月「いや、書かなくていいから!」
文「もう遅いですよ~。ではこれで、私は早速新聞作りに取り掛かりますので、それでは~」
羽を広げて飛び去って行った文、辺りには未だに黄色い羽が所々降り注ぎ、人が浮いたり落ちたりをしている。
阿求「本当に、これからも守ってくれるんですよね…?」
九月「ん、まぁな…。それが使命だし。阿求の事は…」
阿求「? 私のことはなんですか?」
九月「その…えっと…」
阿求「…正直に、言ってください」
九月「だ、大す」
九月が言葉を言いかけた時、女性の悲鳴が辺りを包んだ。
九月・阿求「!?」
一人の女性が、いや、その場に居た数人が空を見上げて怯えている。
九月「どうしたんですか!?」
女性「あ、あぁ…。男の人が、羽につかまって」
九月「落ちたんですか!?」
女性「違うの!消えたの!」
阿求「き、消えた…?」
里の人1「あぁ、確かに消えた!アイツ、何かに掴まれていったように、フッと消えやがったんだ!」
阿求「これは…新しい妖怪が生まれたのかもしれません」
九月「新しい妖怪?」
阿求「妖怪は昔から存在しますが、稀に、新しく誕生することもあるのです。しかし…誕生するのはは殆ど宗教などで崇められていた神や、恐れられていた妖怪などです。特に妖怪は、確実な信仰を得て誕生しているのでかなり凶悪、かつ強力な妖怪となります」
九月「神様とかも生まれるのか」
阿求「神の最大の栄養となるのは信仰心。どんな凶悪な神でも、自身にされる信仰の力が無ければいずれ消滅しますが…。妖怪はそうもなりません。彼らは信仰から生まれ、人や動物を食べて生きながらえます。その過程に信仰の力は含まれません。対処するには、他の妖怪と同様に退治するしか…」
九月「なるほど…」
阿求「今落ちている羽、そして消えた男性が、全て同じ妖怪の仕業とするなら、今回はかなり厄介な相手になるでしょう」
九月「でも…阿求が襲われるっていうなら俺は戦う。大丈夫、絶対に殺させない」
阿求「…はい、頼りにしてます」
笑顔で返す阿求に、自分も笑顔になる。
その晩、未だに羽はヒラヒラと落ちていく。阿求が眠る部屋の前の縁側で、座って妖怪を待つ九月は、ボーっと月を眺めていた。
九月「この羽は、一体なんなんだ…」
文「九月さ~ん」
羽を広げた文が空から降りてきて、自分の横に座る。
文「妖怪はもうでましたか?」
九月「いや、まだ来てないよ。来ない日もあるけど、何時来るかわからないし…。用心するに越したことはないからね」
文「頑張り屋さんなんですね~。そういう人は嫌いじゃないですよ」
九月「それはどうも」
そこで会話が途絶えた。そして、月明かりに照らされながら何かが空に飛んでいるのを発見する。
文「あれは…人ですね…。羽を掴んでるみたいです」
九月「そんな、あれだけ高かったらもう戻れないぞ?!」
文「そのようです。残念ならが、もう助ける手段は…私が飛んで助けるしかないんですよね」
九月「たのむ、あの人を助けてくれ!」
文「そう言われると思ってました。では行ってきましょう。その代り、明日にでも美味しい物ごちそうしてくださいね~」
文は折り畳んでいた翼を広げ一気に男性の元まで飛んでいく。かなりの速度があるようで、残された自分の服と髪を一瞬だけ強風が襲った。
九月「なんて速いんだ…。天狗って凄いな…」
男性の元に行った文は、男性を抱きかかえていた。
文「あやや~、完全に酔っちゃってますね~。どうりで浮いてることに気付いてないわけです…?!」
何かを感じて、視線を男性から前方の何もない空間に向けた瞬間の出来事だった。
突然体が後ろに突き飛ばされ、バランスの取れないまま地面に落下していく。
九月「文!?」
急いで走り、男性と文を跳んでキャッチする。
文「うぅ…、九月さん。ありがとうございます」
口元からツゥと血を流している文は、腹部を押さえていた。地面に着地して、男性を地面に降ろす。
文をお姫様抱っこしている状態で屋敷まで戻り、縁側に寝かせる。
九月「何かあったんだ…」
文「妖怪です。あの一瞬で大体わかりましたよ。この人里の空…。昼間からずっと妖怪が飛び回ってたんです…」
九月「そんな…でも妖怪の姿が」
文「隠してるんですよ。そして、今も降ってるこの羽は…。その妖怪の羽。特殊な力を持ち、掴んだ者を空に浮かせることができますが、妖怪の目的は、その羽で飛んできた人間を食うこと…。あの男性も食われかけていたようです」
九月「見えない妖怪…。しかも相手は空を飛んでるのか…」
縁側から降りて庭を渡り、塀に登って小刀に手をかけ、ジッと空中を見つめる。
九月「よく見ろ俺、何かわかる筈だ…」
幻想郷に居る間、自分の身体能力は外の世界に居る時よりも断然に上がっている。聴力や視力だって上がっている筈だ。
そんな時、空中の一部がグニャリと歪む。まるで何かが通過した時のようなうねりだ。そこ目掛けて小刀を投げ飛ばす。
グルグルと回転しながら風を斬って進む小刀は、獲物を追いかけて空中を曲がる。そして、ついに獲物を捕えたようで空中で何かに刺さる。
九月「見えた…。あれが、妖怪」
ゆっくりと姿を現していくその姿は、巨大な鳥だった。全身から黄色い羽が点々と地面に降り注ぎ、赤い眼で獲物を狙っている。翼を広げた全長は、5mをゆうに超えている。
九月「なんてデカさだよ…。勝ち目なんてあるのか」
巨大な翼を広げながら、月明かりに照らされる人里を旋回する妖怪。
九月「とにかく、俺が行くしかない!」
落ちてきた黄色い羽を纏めて3つ掴み、宙に浮く。3つも掴んでいる分。一枚で浮くよりも速い3倍の速度で妖怪が飛ぶ高さと同じ高さに浮上する。
それを狙っていたように突然飛ぶ方向を変えて妖怪は自分に突撃してきた。何もない空中で受け身が取れるわけもなく、嘴での強烈な攻撃は自分を大きく後ろに吹き飛ばす。
その威力につい、掴んでいた羽を離してしまい一気に地面に落下する。
九月「…!っ負けるかよ!」
目の前で、自分よりゆっくり落ちていく1枚の羽を掴む。最初こそ勢いは衰えなかったが、地面にぶつかる1m手前で羽が浮かび、自分をまた上空まで連れ戻す。
九月「何とか持ったはいいけど…。このままじゃアイツにやられっぱなしだ」
今の自分はボクサーの前に吊るされたサンドバッグ同然だ。飛び回る巨大な鳥の妖怪を前に、策の一つも無く飛んで行っているのだから。
でも、やるしかない。このままじゃまた里の人が襲われてしまうかわからないし、危険な妖怪を里の中で野放しにするわけにもいかない。
刀を握り、他の羽も掴んで一気に妖怪の飛ぶ空に戻る。
九月「来いやぁ!俺が相手だ!」
妖怪に向かって叫んぶが、すぐにさっきと同じ突撃で吹き飛ばされてしまう。痛みで辺りを確認できず、羽を掴むことができない。どんどん地面との距離は近くなり、諦めて目を閉じる。
九月(あぁ、俺は…こんなにアッサリと終わるのか)
せめて、最後に阿求ともう一度会いたかった。そう思っているのもつかの間、誰かが自分を抱えて地面にやさしく降り立つ。
文だ。まだ傷は治ってない筈なのに、自分を助けるために飛んできてくれた。自分を降ろすと腹部を押さえながら言う。
文「何やってるんですか…。2回落とされただけで諦めないでください…」
九月「文、すまないな…でも、どうしても勝つ方法が思いつかないんだよ」
文「今、まともに空を飛べるのは私だけですが、まともに戦えるのは九月さんだけです…。なので、二人の力を合わせましょう」
九月「合わせるたって…合体でもするのか?それとも俺を抱えて文が飛ぶとか…?」
文「貴方を抱えて飛び回れる自信はありませんよ…。それに貴方が刀振り回して私に当たったら痛いじゃないですか」
九月「まぁ…ね」
痛みはマシになってきたのだろうか、腹を押さえていた手を離し、深呼吸する。
文「天狗信仰ですよ」
九月「天狗信仰?」
文「昔の話ですが…」
とある修行中の僧がいた。長い長い度の途中で疲れ果てて、目的地までたどり着けないと思っていた時、自分がいる土地が天狗の住処だと思い出したのです。そこで、その僧は天狗信仰をしました。一時的にですが天狗を崇め、その天狗の力を借りて目的地まで連れて行ってもらおうという考えでしょう。
結果は成功でした。今まで一歩も歩けないような疲労状態にも関わらず、突然体が軽くなりって一気にその目的地まで走り抜けることができたという話…。天狗が憑依して、その人の体に力を与えていたということですね。
文「だから…、貴方も私を崇めてください。これでも天狗ですので力を与えることはできます」
九月「なるほど…。わかった、やってみる」
文「私を神様だと思って、『力を貸してください』『貴方の力が必要です』『貴方様は偉大だ』などなど…」
九月「最後のはいらなくないか?」
文「神様を崇めるってことは媚び諂うってことです、それくらいしなきゃ力なんて与えられませんよ」
九月「そうなのか…じゃあ、やってみるぞ」
目を瞑り、跪いて一心に心の中で言い続ける。
九月(天狗様、文様、力をお貸し下さい。貴方様の力が必要なのです…。お願いします、お願いします…)
祈り始めて数分。突然文の体が光を放つ。その光が文の前に集まり、フワフワ移動して自分の中に入る。
九月「っ!」
急な眩暈からくるバランス感覚の崩壊。仰向けに倒れてグルグル回る視界に慣れるためにジッとする。
文「どうですか…九月さん」
九月「これ…凄ぇ」
両手で地面を軽く叩くと、フワッと体が起き上がって立つことができた。本来ならできないことが、突然できてしまった。
九月「体が軽い」
文「飛んでみてください」
文に言われてジャンプしてみる。今までの跳躍力は3mくらいだったが、今は5mは跳んでいる。
文「跳ぶじゃなくて飛ぶですよ~。フライですよフライ」
九月「飛ぶったって…どうするんだよ」
文「翼と、自分が飛ぶイメージを強く念じてみてください」
九月「…!」
それに従いイメージを浮かべて背中に少し力を入れる。すると、黒い、2枚の翼が背中から出現して、一気に上空まで自分を運んでくれる。
九月「これなら…いける!」
刀を抜き、自分を発見して飛んでくる鳥の妖怪。翼を得た自分なら、あの巨体よりも素早く動ける。そう確信して、向かってくる妖怪に自分も突撃する。今の自分は、さっきの自分より全然速く動ける。
九月「ぅおらあ!」
迫りくる妖怪をギリギリで避け、通過すると同時に刀を突き刺し、妖怪が飛ぶ力を利用して切り裂く。
その一閃は強力で、妖怪は甲高い声を上げて苦しむ。間髪入れずにUターンして背中に刺さっている小刀を抜き取り、もう一度刀で斬りつける。返り血を浴びながら、蹴るように妖怪から離れて距離を取る。
九月「どうだぁ!お前なんて、空を飛べればどうってことないんだぜ!」
自信に追い風が吹くようだった。勝利を確信できる。
しかし、その確信をあざ笑うように、妖怪に変化が訪れる。
その変化は突然だった。頭部が真っ二つになり、双頭の妖怪になった。
九月「…!」
さらにその双頭の片方は徐々に体から離れていき、分裂する。その分小さくなった妖怪だが、それが妖怪の飛行速度を上昇させていく。
九月「速いうえに、二体一!」
迫る二匹の妖怪。一匹は真正面から、もう一匹は後ろに回り込んで攻撃をしかける。
一匹の攻撃を刀で防ぎ、せまるもう一匹に小刀を取り出して反撃をしかけるがもう一匹はそうもいかず、強靭な足のカギ爪で肩を切られてしまう。
九月「うぐぅ!」
文「九月さん…、いくら速くなっても2対1じゃ分が悪すぎます…。?」
地上で九月の戦いを見守る文のもとに、一人の人物が近寄る。
阿求「九月さん…危険です…」
文「阿求さん。まだ起きていたんですか?」
阿求「妖怪のものだと思われる声が聞こえたので、九月さんが戦っているのかと出てきてみたんですが…」
文「私の力で飛べるようにはしたのですが…相手がなかなか強力みたいで…。せめて一匹だけなら上手く戦えるとは思うんですが」
阿求「そうですか…。わかりました」
そういって阿求は降り注ぐ羽のうち一枚を掴み、宙に浮く。
文「ちょ、ちょっと阿求さん!危ないですよ!食べられますよ!?」
そらに空高く昇っていく阿求。自分が囮になるつもりだろう。それに九月も気付く。
九月「阿求!だめだ戻れ!」
しかし、阿求の決意は固かった。そしてそんな阿求に一匹が襲いかかる。
九月「っおおおおおお!!」
自分に執拗に攻撃をしかける一匹の片目を刀で突き刺し、阿求に向かう一匹に小刀を全力で投げ飛ばす。
その時、阿求に向かった妖怪は、突然片目から血を吹き出しながら苦しむ。
九月「?! そうか、コイツらは二匹で一匹。ダメージも共通しているから、その分アイツも苦しむのか。だったら!」
すぐさま刀を引き抜き、左翼を刀で斬りつけて切断する。
苦しむ二匹の妖怪は、同じ部位から血を流す。
そして、阿求に向かっていった妖怪の脳天に、小刀が突き刺さる。
文「一匹が死ねば、もう一匹も死ぬ…なるほど。これであの妖怪も…」
文の言うとおり、二匹の妖怪は力なく地面に落ち。音もなく消滅していった。そして、羽もそれに合わせて消滅する。
阿求「きゃああ!」
羽が消えたことで、浮いていた阿求が落ちていく。
九月「阿求!」
急いで飛んでいき。阿求を抱きかかえる。さすが天狗の力と言えるだろうか。速度は阿求が落ちるよりも全然速く、すぐに阿求の元までつくことができた。
阿求「九月さん…」
九月「本当に無茶するよ阿求も…」
文「今夜も妖怪退治は終わりですか…。かなり大変でしたね~。今回の一件で、また記事が書けそうです。見出しは『阿求の守り人、人里の危機を救う』でしょうか」
その頃、ゆっくりと降下する阿求は、安堵の表情で九月と話をしている。
阿求「空を自由に飛んでいた九月さん。カッコよかったですよ」
九月「そんなことないさ…。阿求だって飛んでたじゃないか」
阿求「あれは、妖怪の力ですよ」
九月「俺のも、文の力だよ」
阿求「…いつか空が飛べたら、今度は一緒に飛びましょうね?」
九月「ああ、約束だ」
地上に降りた阿求と九月は、文に礼を言って屋敷に戻る。文も、妖怪の山に戻って行った。
羽が降らなくなった人里に、朝日が昇る。
人里に訪れた怪しい二人の男。彼らは、九月の姿を見て不敵に笑う。妖怪が、屋敷が、阿求が、全てが作られたシナリオ。その時九月は…。
次回、夢からの守り人『妖怪戯曲』
次も暇つぶし程度にみてください。




