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『魔女の置き土産』--魔女と呼ばれた聖女の遺産を、弟子の俺がすべて破壊する物語  作者: キョウ


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第5話 踏み出す影


夕陽がゆっくりと沈みかけ、赤く染まった空の下で三人の影が街へと長く伸びていた。


森を抜けた風はひんやりとしている。

戦いの余熱だけが、まだ体の奥にわずかに残っていた。


アナはしばらく黙ったまま歩いていたが、やがて意を決したように口を開く。


「……私も、知りたいです」


ユキは歩みを止めない。


「何を」


「魔女の置き土産のこと」


一拍置いて、


「セラ様のことも」


その名が落ちた瞬間、ユキの足がほんのわずかに止まった。だが振り返ることはない。


「軽い気持ちで首突っ込むもんじゃねぇ」


低い声。

拒絶とも警告ともつかない響き。


アナは唇を噛み、それでも視線を逸らさなかった。


「軽くないです」


小さく息を吸う。


「今日、見ました。あれが“壊す”ってことなんだって」


掌にはまだ剣の感触が残っている。


「でも、それが誰かの願いだったなら……ちゃんと知りたい」


声は震えていない。


森を抜ける風が三人の間を通り過ぎた。


(ユキ、似てるね)


シグレが小さく笑う。


「うるさい」


短い否定。


だが強くはない。


アナはもう一歩踏み出す。


「次も、連れてってください」


沈黙。


街の喧騒が近づき、門が視界に入る。


夕陽が最後の光を投げる中、ユキは前を向いたまま言った。


「……勝手にしろ」


投げやりにも聞こえる。


だが、拒絶はしていない。


アナの耳がぴんと立つ。


「はい!」


弾む声。


(ふふ。素直じゃない)


ユキは何も返さない。


ただ、ほんの少しだけ歩く速度を落とした。


並んではいない。


まだ、背中を追っているだけだ。

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