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第239話

「実に残念だ。お前はリバーシの中でも特に優秀な奴だったからな。だが私を裏切り、そんな未熟な小娘を選ぶような奴などもう必要無い。お前も、その覚悟でコハクを選んだのだろう?」


 レギュラオンは全てを見透かしているかのようだった。


 リバーシでありながらコハク側に付くという事は、その気が無くともレギュラオンへの裏切りに繋がる事をカムリィほどの人間が理解していない訳が無い。当然こうなる事は承知の上で新旗楼への加入を決めたのだ。


「最初は単純にコハク会長が何を企んでいるのか知りたくて、そのまま好奇心を抑えられず深入りしようと思ったのがキッカケでした。でも、新旗楼の事を知った時です。界庭羅船に勝つ事を本気で目標にして、熱く真剣に語っている彼女の目と言葉に俺は惹かれました。そして思ったんです。この人の助けになりたいって」


 自然な流れでカムリィは新旗楼への加入動機を口にした。


 確かに興味を持った最初こそ好奇心や面白そうといった、どこか浮ついた気持ちでいたカムリィであったが、コハクの熱を感じた後はそんな気持ちは投げ捨てた。


 乗り掛かった船でも好奇心を満たしたいからでも無い。純粋に、そして本気でコハクに協力してあげたい気持ちが強く湧いたのだ。


 ある種感動的な事を言ったカムリィであったが、コハクは感動とは真逆のような事を内心で展開していた。


「 (今、『惹かれました』って言った……!? ああ、いやいや落ち着くのよコハク。別に変な意味じゃないでしょ絶対にそういう意味で言ったんじゃない分かってる分かってる分かってるわよ) 」


 コハクは超絶早口で自分に言い聞かせて無理やり冷静さを保つ。


「 (い、今のカムリィさんの発言、大丈夫かなぁ。結構コハク会長に刺さりそうな言葉選びだったけど……) 」


 この中で唯一コハクがカムリィに想いを寄せている事を知っているユエルは、コハクが内心舞い上がっているのではないかと少し心配になった。こうして見るとユエルもなかなかに鋭い。


「リバーシを捨てる覚悟でコハク会長を選んだかどうかを訊きましたね。正直愚問ってやつですよ、それ。コハク会長に付いていく事を決めたあの日から覚悟ならしてましたよ。先ほどレギュラオン総帥が仰った通りです。俺にとっては尽くす相手があなたからコハク会長になっただけ……何も変わりません」


 そう言ったカムリィの表情は晴れ晴れとしていて、クビに対して一切のショックを受けていないように見える。


「ふん。随分と頼もしい右腕だな、コハク。まさかカムリィまでも味方にするとは。本当にお前は環境と人にだけは恵まれた奴だ」


 棘のある言い方だが彼女のこの物言いにコハクは慣れている。故にムッとする事もなく平常心で言葉を返す事ができた。


「何を今更。そんなの改めて思うような事でも無いでしょ? あなたなら」


「……とにかくだ。新旗楼のメンバー構成は理解した。確かに一般人とは言え、その中でも逸材を集めたようだな。お前らが今界庭羅船に勝てるかどうかはさておき、その素質を高い水準で秘めた者の集まりである事は認めざるを得ない。そこでだ。お前らが界庭羅船に勝つ事を本気で考え、どれだけ死の危険が迫ろうとも決して逃げないと私を見て誓えるのであれば、前向きに考えてやる」


 その言葉に鴻仙を除いた他全員の心臓がドクンと高鳴った。WPUに入れてやるとは言わなかったが少なくとも考えてはくれるようだ。最初の突っぱね具合を経験するとそれだけでも大きな前進のように感じられる。


「ほ、本当に!? 誰か今の発言録音してたかしら!? 後になって言った言ってないにならないようにしないと……!」


 相当嬉しいのかコハクは自分が転生協会会長兼新旗楼リーダーである事を忘れ、興奮している。


「落ち着け。見苦しいぞ。それに私の話はまだ終わっていない。今私が口にした誓いに加えて、お前らには1つ条件を呑んでもらう。――私は後ろの5人は認めても、コハクの参戦だけは認めん。これを許せるのであれば他の5人の事は検討してやろう」

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