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第237話

 この時手錠双璧の2人が自分たちの価値を理解していない事に気付いたレギュラオンは呆れたように言い放った。


「お前ら、自分たちがどれほど貴重な來冥者か分かっていないようだな」


「どういう意味だ」


 ムイは半ば期待の眼差しでレギュラオンを見る。彼らが最も欲しているのは自分たちの存在理由だ。言い換えれば己の価値を見出したい気持ちで溢れており、そんな2人に対して貴重な來冥者などと言えば、必然胸が高鳴るだろう。


「本来開花適応は個々に起こる現象だ。しかしお前らは完全なる同一タイミングで覚醒を果たし、來冥力の共鳴と開花適応が同時に起きた。その結果、確かに1人では何もできないかも知れないが、2人居ればその連携力も相まって他を圧倒する力を手に入れた。これは天文学的な確率だ。こんな報告は世界中を見ても聞いた事が無い。お前らが世界初のケースになっている可能性は十分に高いんだ」


 さすがリバーシ加入試験主催者なだけはある。試験内で起きた印象的な事象や事件は記憶に刻まれているようだ。


「世界初の……ケース……」


 レギュラオンから説明を受け、ムイは呆然としている。1つの世界でしか生きていないが故に手錠双璧の力がいかに珍しいものなのかを正しく認識していなかったのだ。この反応は当然と言える。


「ムイ。私たち凄かったんだね」


「ああ……。ま、司とユエルには負けちまったがな」


「あんなのはノーカン。あの2人が強すぎなだけ」


「 (最強の2人組になれる素質を持った男女ペア――通称『手錠双璧』……チッ……! どうしてコハクの周りにはこうも可能性を秘めた者ばかりが集まっている!? 昔からお前はそうだ。分不相応なくせに運だけは良く、気付いたら自分の思い通りになっている事が多い。今回もたまたま巡り会えた仲間を引き連れ、得意気な顔でWPUに入ろうとしている……。……ふざけるな。いつまで子ども気分のままでいるんだ。コハク、お前の集めた連中がどんな存在であったとしても、私は絶対に……) 」


 ムイとロアの雑談に近い話には全く耳を傾けずに1人考えるレギュラオン。


 司とは違う意味で手錠双璧という存在が光り輝く原石に見えたのだ。確かにリバーシの試験では不合格になった2人だが、単純な対界庭羅船を考えると彼らを手放すのは非常に惜しい。


 当時もその感情が無かった訳では無いが、まだ司に出会っていない頃であり、一般人にそこまでの期待を寄せていなかったのだ。そんな都合良く逸材が現れるはずが無いと。


 だが今は違う。天賀谷司という少年に出会い、彼を認め、そしてそんな彼と同レベルの素質を秘めている事実が明らかになった。潜在的な來冥力だけで言えば、界庭羅船に対抗可能な來冥者である事はほぼ確定事項である。


 そしてその事実はレギュラオンの中で更なる葛藤へと繋がり、新旗楼を認めたくない彼女の心を大きく揺さぶる事に成功していた。


「レギュラオン総帥」


「……!」


「随分と深く考え込んでいるようだが、2人の加入動機は聞かなくても良いのかね? 我々の時間は限られている。まずは判断材料を集める事を終わらせようじゃないか」


 先ほどまで粛々と進行していたレギュラオンが急に黙り、何かを考え始める姿を見せたのだ。その事に気付いた鴻仙は出過ぎた発言と思いつつも彼女に進行を促した。


「黙れ。お前に言われなくても分かっている。……ムイとロアだったか。お前ら2人の新旗楼加入動機は何だ?」


 レギュラオンの質問を聞いたムイとロアは雑談を止めてからお互いの顔を見合う。そして同じタイミングで小さく頷くと、これまた同じく同時に前を向いた。


「俺が代表して答える。ロアも気持ちや動機は同じだからな」


「ん。任せた」


 こんな時でもやはりロアはロアだ。自分から積極的に話そうとはしない。


「具体的な背景は話せば長くなるし言う方も聞く方も良い気持ちにはならないだろうから省かせてもらうが、俺らは自分たちの存在価値を証明したい。これだけだ。確かに今あんたは言った。俺らは世界で見ても稀な開花適応者であるってな」


「 (自世界のトップに向かって『あんた』。うん。実にムイらしい) 」

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