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第236話

「 (こいつ……急に雰囲気が変わったな。) なるほどな。司に憧れ、影響を受け、少しでも理想に近付きたいという訳か」


 レギュラオンはユエルの変化に内心驚きつつも、その感情を表情や言葉には出さずに言葉を返した。


 ユエルは自分の回答にどんな感想や意見が返って来るのかドキドキしながら待つが、そんな時間は訪れる事なくレギュラオンは淡々と進めた。


「次、司。自己紹介は省け」


 彼の事をよく知っているレギュラオンは今更自己紹介は不要と考え、加入動機のみを答えさせようとした。


「はい。僕はリバーシ加入試験の時からずっと考えていました。蒼の件が終わったらそれで良いのかって。WPUと関わり、界庭羅船の1人と戦い、裏の世界に介入してしまいましたからね。何度も考えた時、いつも頭を過るのはあなたから頂いた言葉でした」


「私か? 何か言ったか?」


 司は今でも心に残っているレギュラオンの言葉を、自分の中の迷いを消してくれた言葉を彼女に伝えた。


『もしも本気であいつらと肩を並べたいのであれば……次に会った時に成長した自分を見せたいのであれば……そして何より、妹を殺害した犯人を1秒でも早く見つけたいのであれば……異世界の友人との別れくらいで悲しんでいる余裕など、お前には無い』


 それはシュレフォルンたちと別れ涙していた司に向かってレギュラオンが投げ掛けた言葉であった。この言葉を胸に彼は甘い自分を捨てようと誓ったのだ。


「ああ、そんな事も言ったな」


「この言葉を脳内で再生させる度に強く思うんです。どんなに辛くても死ぬ気で頑張れるのは、無意識の内にそれを目標にしていたからなんだって。やっぱり僕は彼らと対等な存在になりたい、そして一緒に界庭羅船と戦いたいんです。でもリバーシを辞めた僕にはもうチャンスが無いと思っていました。……新旗楼の話を聞くまでは」


「そういう事か。成長した自分と界庭羅船と戦う意思を、次あいつらに会った時に見せられる証明として新旗楼は絶好の居場所だった訳だ」


 レギュラオンの言葉に司は頷く事で肯定の意を示した。


「世界に足を踏み入れた以上、僕は最後まで戦い抜きたいんです。それが新旗楼に入りたいと思った理由です」


「そうか。……とにかくお前の動機は分かった。次」


 レギュラオンは彼女から見て司の左隣に立っている男性へと視線を変えた。


 その人物、ムイは答える前に隣に立つロアの方へと1回顔を向ける。するとこんな時でも考えは同じなのかロアの方も全く同じタイミングでムイの方へと顔を向けた事で、2人は意図せず目を合わせる事に成功した。


 そしてお互い考えている事は同じだと確信したムイが代表して伝える事に。


「レギュラオン総帥。俺とこいつは2人で1人なんだ。だから自己紹介と加入動機の答えは一緒にやらせてくれないか?」


「答えてくれるなら何だって良い。お前らのやりたいようにやれ」


 意外にも柔軟に対応してくれたレギュラオンは、ムイのタメ口を特に咎めもせずに彼の要求をすんなりと受け入れた。


 ムイとロアはレギュラオンが認めてくれた事を確認後、自己紹介を始めた。


「ありがとな。俺の名前はムイ。協会ではこいつとタッグを組んでダブルラスボス役で活動してる。俺らの事を手錠双璧って呼ぶ奴も多い。何つーか二つ名みたいなもんだ」


「あ、ども。彼の相方兼恋人のロアです。一応ムイのお守りもしてます」


「最後のは冗談だと思ってくれて構わない」


「え。ホントなのに」


 これはふざけているのか素が出ているだけなのか。いずれにせよ、いつも通りの2人の空気感を出しているおかげで緊張感が少しだけ和らいだ気がした。


 そんな中レギュラオンは2人の事を見つめ、ブツブツと何か言い始めた。


「2人で1人……ムイとロア……手錠双璧……手錠……。……! まさかお前ら、史上初の2人同時に開花適応した、元リバーシ試験受験者か?」


「……! 何だ。知ってたのか」


「意外。私たちの事なんて眼中に無いかと」


 どうせ路傍の石として見られていると思っていた2人は、レギュラオンに認知されている事実に驚く。

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