第234話
「ええ! 今すぐみんなを集めるわ! ちょっと待ってて!」
コハクの表情と声は今の彼女の感情がそのまま表れているかのようであった。
ウキウキ気分で自分のデスクに向かったコハクは、ノアで協会全体に連絡を送る。以下の対象人物はすぐ会長室に来るようにと。
「 (悪く思うなよ、コハク。私は新旗楼は認めても、お前だけは界庭羅船に介入させん。お前含め、他の新旗楼メンバーがそれでも良いと言うのであれば少しは前向きに検討してやる) 」
「ふんふんふーん」
レギュラオンが心の中でそんな事を考えているとは露知らずコハクは相当ご機嫌な気分になったのか、呑気に鼻歌なんか歌っている。
そして協会への全体連絡を送信してから十数分後、司、ユエル、カムリィ、ムイ、ロアの5人が会長室へとやって来たのだった。
「――というところまで今話が進んでいる状態よ」
コハクは再びレギュラオンと鴻仙と向き合う形でソファに座り、会長室に来た5人に背を向けながら状況を簡単に説明する。司たちはコハクが座っているソファの後ろに立ち、レギュラオンと鴻仙の2人と対面していた。
司とカムリィは慣れているのか特に緊張していない様子だったが他の3人は違う。さすがのムイとロアも大物2人を前に若干の戸惑いを隠し切れていない。ユエルに至っては説明するまでも無いかも知れないが、ガチガチに緊張していた。
これではコハクがした説明の半分も頭に入っていないのではないか。そんな不安が過る中、カムリィが1番最初に反応を示す。
「なるほど。事情は把握しました。……それでレギュラオン総帥。俺らをここに集めてどうするつもりです?」
「ふん。説明は終わったようだな。それにしても……この5人とコハクを含めた計6人が新旗楼のメンバーか」
レギュラオンはカムリィの質問には答えず、端から順番に1人1人品定めするかのように見ていく。必然意図的に目を逸らさない限りは全員が彼女と目を合わせる事になってしまった。
「 (俺の質問は綺麗なまでのスルーかよ。飽くまでも自分のペースで話を進めたいって感じかぁ? ったく、相変わらずだな、この人は……) 」
「 (これが本物のレギュラオン総帥と鴻仙総監か。こうして実際に間近で会うと、何と言うかプレッシャーが半端無いな。さすが五大機関のトップ兼WPUなだけはある) 」
「 (私たちの場違い感凄い。正直早く帰りたい) 」
「 (うぅ……緊張でコハク会長の話、全然頭に入らなかった……。こ、これ現実だよね? 何でこんな事に……) 」
司以外の招集された4人が心の中で各々自由に感想を漏らしていた時である。レギュラオンから目を逸らさないでいる司が話を進めた。
「レギュラオン総帥。最初にハッキリさせておきますが、コハク会長が話した事は全て事実です。そしてこの中には僕の過去を知っている者も居ます」
「司。お前なら知っているだろう? 界庭羅船がどれほどの脅威なのか。そして世界には界庭羅船以外にも厄介な存在が居る事を。その上でこいつらを関わらせる気か?」
具体的な名前は出さなかったがレギュラオンはゲーテの事を言っているのだろう。
界庭羅船と火花を散らす以上、彼らと関わりを持つ者とも戦う事になるのだ。どんな勢力の人間が、どんな目的で近付いてくるのか全く読めない世界に飛び込む覚悟が果たして本当にあるのかどうか。
この部分は潜在來冥力と同じくらい重要視される点だ。
「はい。知っているからこそ僕は彼らに過去の話をしたんです。世界を知ってもらう為、そして覚悟を決めてもらう為に。新旗楼が挑もうとしている世界がどんなものか、正しく認識する必要がありますから」
「ふん。しばらく会わん内に随分と口達者になったな」
「褒め言葉として受け取っておきます」
リバーシ候補生時代の司とは当然彼らを統べる王として何度かコミュニケーションを取った事があるレギュラオンだが、基本的にリバーシの事務的なやり取りばかりを行っていたせいか、まだ13歳だった頃の司の印象からなかなか上書きできずにいた。
そのせいか改めてこうして司と話していると、当時の彼とは別人なまでに成長している事に気付く。落ち着いて言葉を並べ、平常心で対話可能な姿を彼は見せているのだ。その変わりように変化や成長を感じてしまうのも頷ける。




