第223話
「そこは状況次第だよ。それよりも……動機の話やエマを殺害する事の正当性の話は一応終わった訳だし、そろそろ聞かせてくれない? あなたがどうやってエマを殺害しようとしているのか。その計画内容を」
「ふふふ。ようやくその部分に触れる事ができて僕も嬉しいですよ。ですが、話す為にはまず『彼女』をこの場に呼んだ方が良さそうだ」
「……」
ゲーテの口振りから推測するに、今回の彼の計画には既に協力者が居るように見える。
その人物はゲーテの発言を登場許可が出たと捉え、姿を現した。
「えっと……初め、まして……」
「あなたは……」
2人の前に歩いてやって来たのは、WPUの1人にして、ゲーテとは最も関わり深い人物――何と驚く事にテトラだった。あの頃と何も変わらない姿で確かにそこに居たのだ。
数年前の時もクオリネとは接触していない彼女は、今初めて界庭羅船トップ3の1人の前に立っている。そのせいか、ほぼ同年齢の少女同士とは言えテトラの顔と声は緊張が隠せていないようだ。
「紹介しますよ、クオリネさん。こちらの方はテトラさん。WPUの1人です」
「へぇ。あなた結構人脈あるんだね。まさかWPUの仲間が居たなんて」
「……っ!」
その発言にテトラは先ほどまでの緊張した様子から一変、キッとクオリネを睨むと強い口調に変わった。
「違う! こんな奴の仲間になった覚えなんて無い! 冗談でもそんな気持ちの悪い事言わないで!」
「……? 急に怒ってどうしたの? ……まぁ良いや。そっちにも色々事情があるみたいだし、今は追及しないでおく。それより一応言っておくけれど、あなたの存在は来た時から気付いてたよ。でもいざとなったら始末すれば良いだけの話だし、エマは気付いて無さそうだったから取り敢えずスルーしといた」
「気付いていたのですか。さすがクオリネさんですねぇ」
「……」
クオリネの言葉にテトラは無言状態を貫く。
何故彼女が嫌々ながらもゲーテの近くに居るのか。その理由は結局明かされないまま話は進んでいく。
「さて。何から話し始めましょうか……そうですねぇ……」
ゲーテはお得意の不敵な笑みを浮かべる。今回のゲーテの企みにおいて必要不可欠な人物がまさにテトラであった。ゲーテはその事を中心に説明を始める。
「今はとにかく先ほどのクオリネさんの質問に答えましょうか。僕はどうやってエマさんを殺そうとしているのか。何を計画しているのか。その全てに――」
司がユエルたちに過去の話をした日から数日が経過したその日の朝、彼は珍しく寝坊をしてしまい、急いで部屋を出て協会へと向かっていた。
寝坊と言ってもプチ寝坊であり、朝食に時間を割かなければ間に合うレベルのものではあった。慌てて走った結果転んで怪我をしたり事故に遭ったりする事態を避けたかったが故にその行動を選択した訳だが、彼は少し後悔していた。
「 (ああ、お腹空いた。ちょっと寝坊したとは言えやっぱり朝ご飯抜いたのはまずかったかな?) 」
自分にとって因縁深い相手、ゲーテがまた良からぬ事を企んでいて、更にテトラが無理やり付き合わされているなど露知らない司は呑気にもそんな事を考えながら歩く。
朝食はしっかりと摂った上で小走りで向かうのが正解だったのかも知れない。
今更後悔しても遅いのだがどうしてもどちらの選択が正しかったのだろうかと考えてしまうのだ。
そんな中、彼に近付く2つの影が。その内の1人は抜き足差し足忍び足で近付くと、司の後ろから彼の両肩に手をポンッと置いて大きな声を出す。




