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第213話

 復讐と言うべきか。それとも両親の遺志を継いでと言うべきか。


 この時のエマはゲーテの護衛任務よりも、シャックスを潰す事で頭がいっぱいだった。


「では改めて。普段の契約時には依頼人と担当者だけで行うんだけど、エマは今回が初めてだからね。最初だけ私が進行する形を取らせてもらうよ。……この度界庭羅船に護衛依頼をしてくれたのは、私たちにとっては常連さんともなるシャックスの2代目ボス。名前はゲーテさん。そしてゲーテさんの護衛担当となるのがエマ」


 慣れているのかクオリネは特に詰まる事なく話を進めていく。


「護衛期間は明日から2週間。この間、ゲーテさんに危害を加えようとする者、そして彼を逮捕しようとする者が現れた場合、エマはその人たちからゲーテさんを守る事。なおその際の手段は問わないものとする」


 クオリネは守る事ができたら何でも良いかのような言い方をしたが、界庭羅船のやり方は決まっている。


 邪魔者は來冥力で徹底的に痛め付ける事。もしもアルカナ・ヘヴンのような來冥力が使用できない世界であれば、どこでも良いから來冥力使用可能な世界へ連れて行き、同様の手段を取る事。


 基本的にはこれしかない。


 リバーシ加入試験の時もゲーテに危機が迫ったからこそレイクネスは現れ、司たちを排除しようとした。他の異世界へ転移させなかったのは、セレーナが來冥力を使える世界だからである。


「ゲーテさんは近々アルカナ・ヘヴンに用があるみたいでね。アルカナ・ヘヴンって來冥力が使えない世界だし、犯罪者からしてみたら丸裸のような状態なの。それで彼も護衛を必要としていて、シャックスとして見た場合は3回目となる依頼をしてきたって訳。常連さんなんだし、しっかりと彼の事を守ってね」


 ここまで黙ってクオリネの説明を聞いていたエマだったが、ある部分に引っ掛かりを覚えたようでゲーテの方を見ながら詳細を聞こうとした。


「ええ。それは良いんだけど……用って何よ。アルカナ・ヘヴンって例のレギュラオンとかいう奴が統治する世界でしょ? あたしの認識が間違って無ければ今1番行くべきじゃない世界だと思うんだけど」


 これまでの話から完全にゲーテはレギュラオンに目を付けられ、彼女に追われている身となっている事は既知の事実となっている。


 それなのにわざわざ敵の本拠地に突っ込んで行くかのような行動をゲーテは取ろうとしているのだ。傍から見たら自殺行為のようなものである。


 本当に大丈夫なのかと心配そうな目をするエマとは対照的に、ゲーテはニコニコ顔を維持し続けていた。そしてその顔のままエマの質問に答える。


「ふふふ。仰る通りです、エマさん。確かに今の僕の状況を考えたら、あの世界に自ら足を運ぶのは実質出頭になってしまいます」


「だったら……」


「話は最後まで聞くものですよ。ご存知の通り、僕は元々身分を偽ってエンペル・ギアの職員として活動していました。エンペル・ギア……即ちレギュラオンの傘下だった訳ですね。なので僕は知っているのですよ。そろそろ世界展示会の時期だとね」


 聞き馴染みの無いワードが出た事でエマは「は?」という表情を作り固まった。


 一応彼女は過去に転生協会へと侵入し、人工異世界について調査していたようだがさすがにその過程で世界展示会を知る事はできなかったみたいだ。


 数多の世界を渡り歩く界庭羅船であっても、各世界固有の行事や出来事を全て把握している訳では無さそうである。存在する世界の数を考えれば全把握など非現実的であり、当然と言えば当然の話なのだが。


「世界……展示会? って何?」


「それを説明する為には……そうですね、まず転生協会はご存じですか?」


「ええ。活動内容含めて知ってるわ」


 エマは転生協会に行った事がある経験がここで活きるとは思わず、過去の自分を心の中で褒め称えた。


 今回のように特定の異世界の知識が必要になったり役立つ時は往々にしてある。護衛任務をスムーズに進めたり、依頼人との円滑な会話をする為には各世界に関する勉強もまた必要不可欠なのだ。


「それなら話が早い。世界展示会と言うのは五大機関の各トップが協会を訪れ、協会が提供する人工異世界のクオリティがどれほどのものなのかを評価する行事です。年に1回行われ、その日だけはアルカナ・ヘヴンの主要人物が協会に集結します」

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