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第206話

「司くん。WPUが情報の一部を意図的に隠しているのは分かった。でもそれなら。なおさら話して大丈夫か問題が浮上するんだけど」


「大丈夫だよ。結局この方法を取っている目的は関係者の炙り出しなんだから。ここの人たちは全員無関係の人たちでしょ? その部分がハッキリしているんだったら別に問題無いよ。それに今WPUがどこまで情報を公開しているか、そしてその理由までも伝えた訳だから、後は僕たちが他言無用を貫けば良いだけの話」


 彼の話をそのまま受け取るのであれば、結局その情報がネズミ式に増える事はよろしくないという事だ。結論ダメである事に変わりはない。


「おいおい大丈夫かよ。さっきは冗談めかして言ったが、もしバレたら終わりだぞ」


 司の発言を聞いたムイは不安になったようだが、ユエルに至っては逆に腹を括ったようだ。先ほどまでの怯えた様子は消え去り、力強く言う。


「そこはもう割り切りましょう。私たちが不用心に他の方に話さなければ良いだけの話です。新旗楼の今後の事を考えると司くんの過去を知っておく必要はありましたし、私はもう覚悟を決めました」


「へいへい、わーったよ。お前は司の味方だもんな。ったく、気を付けるとするか」


「ん。それに秘密を共有するのって何か良い。仲間って感じ」


 これまでムイくらいしかそのような存在が居なかったのが影響し、ロアは少しだけ嬉しそうだ。こうして見ると意外にもムイの反応が一番まともだったのかも知れない。


「それにこれは新旗楼の事をレギュラオン総帥に認めさせる時の切り札になるかも知れないよ。新旗楼のメンバーはもうここまで知ってますよっていうね」


「抜け目無いな、本当に。最初からそれが狙いだったんじゃないだろうな」


「ふふ。想像に任せるよ」


 その表現は基本的に正解の時くらいにしか使われない。ムイは司の顔と言葉で全てを察し、いつの間にか背水の陣を敷かれていた事に苦笑するのであった。


 そもそも危険度でいったら人工異世界でユエルを勝手に開花適応させたコハクの方がよほど危ないのだ。


 それほどコハクが本気である証なのだが、正直まだ足りない。


 司は少しでも新旗楼というチームが簡単に切り捨てられないような状況作りの手助けも兼ねて、自分の過去を語ったのだ。


「さて。これで残るはリバーシ加入試験の事を伝えても良かったのかってところですね」


 ユエルを見ながら状況をまとめた司。


 司の話はWPUや界庭羅船だけでなくリバーシ加入試験の内容にも触れたものであったが、正直この内容に関しては他2つと比べても圧倒的に話すのを禁じる内容になっていたはずだ。


 リバーシ加入試験は毎回試験内容がガラッと変わる事に加えてチャンスは人生で1度きりしかない。となれば傾向といった概念も無いので試験内容を知る事は問題無さそうに見えるが、内通者に関してはそんな事を言ってはいられない。


 1度試験を受けた事があるムイとロアは別として、問題はユエルだ。彼女はリバーシ加入試験を1度も受けた事がなく、そんな彼女が内通者という存在を知ってしまったのは、もし今後試験を受けるつもりであるならば大きなヒントになる事だろう。


 だが逆に言えばリバーシ加入試験を受けるつもりが無いのであれば一切役に立たない知識であるのだ。


 ユエルは司よりも先に試験周りの情報の取り扱いについて話した。


「あ。ここまで聞けば私でも分かりますよ。私が他の人の前で言わなければ良いだけの話ですよね! 大丈夫です! 絶対に言いませんから! それに私、リバーシは自分の能力や性格的に合ってなさそうなので受けるつもりもありませんでしたし……」


「ありがとうございます。以前先輩との会話でそう言っていたのを思い出したので、僕もその認識で話しました。と言うか過去のリバーシ加入試験の内容を知った一般人が世の中に居るのがまずいと言うのであれば、ムイやロアみたいな不合格者、そして僕やコハク会長みたいなリバーシでなくなった人間の存在を否定しているようなものですからね。僕がリバーシ加入試験の話をする上で1番気にしなければいけなかった部分は、先輩が今後受ける予定があるのかどうか……この1点だけだったって訳です」


 今日聞いた話はここだけの秘密という事にでもしておけば、その辺は無問題となる。司もユエルも同じ認識でリバーシ周りの件は着地した。

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