第202話
「ママ……。……あのね! きゅる、司おにいちゃんの事応援してるよ! むずかしー事はよく分かんないけど、リバーシって大変なんだよね? だから応援する!」
「ありがとう、キュルキオネ。凄く励みになるよ」
「にへへー」
司の言葉にキュルキオネは明るく無邪気な笑みを見せた。その顔を見ているだけで悩みや疲れが吹き飛びそうだ。
叶う事ならずっと会話していたかった。だがそうも言っていられない。いよいよと言うべきか、その時が来てしまったのである。
「……そろそろ行かなきゃ」
「えー? もうー? きゅる、もっと司おにいちゃんとお話したーい!」
「うん。私もそうしたい。でもだーめ。世界は私たちを待ってくれないんだから。どんなに辛くても行かなきゃ。……ね?」
「……うん。分かった」
キュルキオネはテトラと司の顔を交互に見つめ、頷いた。
「それじゃあね。司くん。私たちの事、忘れないでね!」
「忘れる訳無いよ。シュレの事も、氷雨さんの事も、シアさんの事も、キュルキオネの事も、そしてテトラの事も……絶対に忘れないから!」
「うん! ……さようなら……司くん。またいつか会おうね!」
「さようならー!」
「……さようなら……テトラ、キュルキオネ……」
それが3人の間で交わされた別れの挨拶となった。
テトラとキュルキオネは姿を執務室内から消した。司が知らないどこかの異世界へと転移したのだろう。
「……」
こうして司は全員と別れ、レギュラオンの執務室に1人取り残されてしまった。広い部屋にただ1人残された事によって訪れた静寂は、彼に孤独感を与える事に。
「帰ろう。レギュラオン総帥は長居するなって言ってたし……」
足を動かしていた方がまだ気が紛れると思って司は歩き出す。
部屋のロックを解錠し、外に出た司はそのまま扉を閉めた。
レギュラオンも言っていたが、この部屋はオートロックであり、司は外に出るだけで自動的に施錠される仕組みだ。故に鍵の心配をする必要は特に無いのである。
1人でエンペル・ギアの外まで歩いた司はふと立ち止まり、空を見上げる。雲1つない青空が広がり、清々しいまでの晴天だ。
「 (今頃テトラたちはどんな空を見てるんだろう……) 」
1人になった事で自分は彼らと別れたのだという実感が湧き、司は時間差で強烈な寂しさを覚えた。
だがそんな時である。司の正面から歩いてきた1人の女性が今となっては聞き馴染みのある声で彼に話し掛けた。
「ふん、別れの挨拶は済んだか?」
「……!? れ、レギュラオン総帥!?」
何と会談に行ったはずのレギュラオンが当たり前のようにそこに居たのだ。色々な感情が全て驚きで上書きされたような気分である。
「五大機関の会談に行ったはずでは?」
「何の話だ? そんな予定、今日のスケジュールには無いが?」
「ええ……」
「そんな事よりだ。話を戻すが、あいつらとの別れは済んだか?」
レギュラオンの質問に司は再び彼らとの別れを思い出し、感傷に浸った。
「はい……」
「そうか」
一体何の為に彼女は司に話し掛けたのか甚だ疑問である。まさかただ慰める為だけにという訳でもないだろう。




