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第201話

 まだ中身が子どもであるキュルキオネは当然異性として好きかどうかという意味で訊いている訳では無い。だが司もテトラも相手を目の前にしているとどうしても意識してしまい、即答する事ができなかった。


「どうしたのー?」


「……! えっと、す、好きだよ! ……友達として!」


「ぼ、僕も好きだよ! ……友達として!」


 2人は慌てながら同じような回答をキュルキオネに告げる。その答えはキュルキオネを満足させうるものだったようで、パァッと太陽のような笑顔になった。


「うん! きゅるも2人の事好きー! 特に2人が笑顔の時!」


「「……」」


 それだけでキュルキオネが何を言いたいのか2人は理解した。そして少しの静寂が訪れる。キュルキオネもこれ以上は何も言わないと決めたのか、後は2人に任せると言わんばかりに沈黙を決め込んだ。


 そんな中、静寂を先に破ったのはテトラの方だった。


「あの! ……。ありがとうって、司くんに伝えたくて……」


「え?」


「地下での事だよ。ゲーテに襲われそうになった時、私の前に立ってくれた。私がこれ以上傷付けられないように開花適応してまでレイクネスと張り合ってくれた。私が殺されそうになった時は身を挺して守ってくれた……」


「……」


「私、凄く嬉しかったな。だって司くんからしてみれば、初めて界庭羅船という存在と対峙した訳でしょ? そんな相手にも立ち向かってくれて……」


 テトラは司の事を褒めているが、司はどうもバツが悪そうだ。その理由は単純明快で、地下に行く前にテトラとした無茶をしないという約束を結果破るかのような行動だったと考えているからだ。


「でも僕は、約束を破っちゃったんだ。無茶しないってテトラと約束したのに……」


「……うん、そうだね! 指切りまでしたのに破るなんて司くんは悪い男の子だ!」


「うっ……」


 テトラは落ち込んでいる司の近くまで歩み寄り、そして彼の額に痛くもかゆくもない優しすぎるデコピンを1発食らわせた。


「えいっ」


「……! な、何?」


「約束を破ったお仕置きです! しっかりと反省するように!」


「テトラ……」


 司がテトラの顔を見ると彼女の顔からは暗さが消えていた。ここにきてようやく笑顔で別れる覚悟ができたようだ。


「あー! ママ今すっごく良い笑顔してるー! きゅるの好きな顔だー!」


「ふふ。そう? きゅるちゃんのおかげかも!」


 いつも通りを取り戻したテトラは笑顔をキュルキオネに向け、キュルキオネはそんなテトラの表情を見て喜ぶ。


 そんな微笑ましい光景が広がる中、司もようやく覚悟ができたのか、シュレフォルンの時と同じように頑張って笑みを浮かべた。


「テトラ!」


「何?」


「僕、みんなと出会えて本当に良かった! 初めてできた異世界人の友達が、テトラたちで良かったよ! (泣くな……耐えろ天賀谷司……!) 」


 世界は広いようで狭い、かと思いきややはり広いものだ。


 普通に過ごしていれば決して交わる事の無かった異世界人同士が、こうして巡り会い友達にまでなれた事は奇跡としか言いようがない。


 この出会いに感謝した司は、感極まって大きな声で気持ちを彼女に伝えた。そしてテトラも司の気持ちに応える。


「うん! 私も! 司くんに出会えて良かったよ! しばらくはさよならになっちゃうけど、この繋がりは……一生消えない……から……っ……!」


 微笑んでいたテトラだったが、我慢していたのだろう。堪え切れなくなった彼女の目には涙が浮かんでいた。ただそれでも表情は笑顔のままであり、悲しむ顔を見せる事は無かった。

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