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第200話

「えー! すごっ! 何これ!」


 シアがカメラくんと呼んだそれは空中にそのまま浮遊し、レンズを司たちに向けた状態をキープしていた。


「良いね~。そういう反応期待してたよ私は。生き物みたいで可愛いでしょ? これ」


「確かに可愛いね。へぇ~、こういうカメラが世界にはあるんだ……うわ、空中を歩き始めた!」


 カメラくんはウロウロと空中歩行をしたりポーズを取ったりと自由な動きを披露し、その滑らかな動きは人間のようであった。


「ふふふ。ほら撮るよ、つーくん! 私に寄った寄った!」


「う、うん……って、ちょっと近過ぎない?」


「もしかして照れてるの~? もう、可愛いんだから! つーくんは」


 シアと司は互いの肩と肩が触れ合うくらい体を近付け、そして顔をほんの少しだけ相手の方へと傾ける。


 2人は片腕を折り曲げながら前に出してからピースを作り満面の笑みを浮かべた。


「じゃあいくよー! はいチーズ!」


 パシャリと音が鳴り、光が発生する。


 その後シアはカメラくんを普通のカメラ形態に戻し、写真を確認した。


「上手く撮れたかなーっと……お! 良い感じじゃーん! はい、どうぞ!」


 どうやら彼女が購入した異世界カメラは、その場で写真をプリントする事も可能なようだ。彼女はカメラから出てきた2枚の写真の内、1枚を司に渡す。


「寂しくなったらそれ見て私の事を思い出してね! 私もつーくんとの思い出としてこの写真を大切にするからさ!」


「ありがとう。シアさん」


 司は写真を見ながらそう言った。その写真の中では笑顔の男女が仲良さそうにピースしている姿がしっかりと収められており、見ているだけで目頭が熱くなりそうである。


 そしてそれはシアも同じだったようだ。


「……お別れ……したくないなぁ。……でも、しなきゃいけない、よね。ちょっと名残惜しいけど、バイバーイ、つーくん! 次会った時はもっと思い出作れると良いね!」


 シアは涙を見せる事なくその場から転移した。しんみりした感じを見せたくなかったが故に、彼女は最後まで自分らしさを貫き通す事に専念したのだ。


「バイバイ、シアさん」


 もう目の前には居ないシアに向かって、司は寂しそうにその言葉を送った。


 既に3人が司に別れを告げ、異世界へと転移した。これで残るはテトラとキュルキオネだけとなっていた。


「司くん……」


「あ……テトラ……」


「……」


 他の3人が笑顔でお別れをしたというのにテトラの表情は未だ晴れない。切ない表情のまま立ち止まり、司も振り返ってテトラの顔を見た瞬間に同じ気持ちになった。


 試験期間中は誰よりもお互いの側に居て行動を共にした。必然的にその分他のメンバーよりも別れるのが辛いのだろう。


 一緒に調査し、一緒にカジノで戦略を巡らせ、一緒に食事をし、一緒に共通の敵に立ち向かい、一緒にキュルキオネと出会い、そして一緒にレイクネスと戦った。


 司が隣を見ればテトラが居て、テトラが隣を見れば司が居た。それが当たり前の日々を短い間ではあるが互いに過ごしたのだ。


 ここで別れるのは心に穴が空いてしまうようなものだった。


「ママ……司おにいちゃん……」


 そんな2人の気持ちにいち早く気付いたキュルキオネは、テトラの手を優しく握り、微笑みかけた。


「……! きゅるちゃん……?」


「ママは司おにいちゃんの事好き?」


「え?」


「司おにいちゃんも。司おにいちゃんはママの事好き?」


「え?」


 突然の質問に2人は思わず返答に詰まった。

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