第199話
キュルキオネにそう言われ最初こそ驚いた表情をしていた彼らだったが、すぐに彼女の言う通りだと思ったのだろう。
悲しげな表情は次第に微笑みへと変わる。お互い記憶に残る最後の相手の表情が悲しげなものなど、確かに不適切であり、それに気付いたのだ。
「ええ、そうですね」
「きゅるちゃん良い事言う~!」
「別れの時こそ笑顔で見送らなきゃな!」
彼らは考えと気持ちを改めると、1人1人司に別れの挨拶をしていく事にした。まずはシュレフォルンが司の前に立ち、ニッと笑顔を彼に向ける。
「何だ、司? もしかして泣いてんのか?」
「な、泣いてなんかない! 泣いてなんか……」
正直に言うと泣く一歩手前だった。少しでも気を緩めてしまえば涙腺が崩壊しそうである。
「ならそんな顔すんな。リバーシは自分の感情を偽る力に長けてんだろ?」
「シュレ……。……うん、そうだよね!」
「はは、良い顔だ。……じゃあな、司。成長したお前に会える日を楽しみにしてる。だからそん時まで、お互い頑張ろうぜ!」
シュレフォルンは軽く握り拳を作ると腕を自分の顎付近までの高さまで上げた。その動作を見た司は同じく握り拳を作り、そしてコツンと互いの拳を突き合わせてグータッチをした。
「約束だ!」
そのグータッチがシュレフォルンとの別れの挨拶になったようで、彼は満足気な笑顔のまま姿を消した。
次は氷雨が司に言葉を送りたかったのか、時間を空けずに彼の名を呼んだ。
「司くん」
「……! 氷雨さん……」
「あなたの吸収力と勇敢さには目を見張るものがあります。本当はもっと、あなたに色々な事を教えたかったですよ。私の出身世界の事とか、來冥力の暴走とか……」
「思わず質問したくなるテーマだね。僕も熱く語る氷雨さんを最後に見たかったな」
「ふふ。でしたらそれは次のお楽しみに取っておいてください。その時は私も今以上に知識を増やしてとことん語ってあげますから。寝落ちしたらその度に起こしますからね。覚悟しておいてください」
冗談っぽく言った氷雨の表情はとても柔らかい。気を許している相手にしか見せない表情であった。
「寝落ちしないよ、きっと。だって氷雨さんの授業だったらずっと聞いていられるから」
「嬉しい事言ってくれますね。……それでは……そろそろ時間なのでこれで失礼します。またいつかお会いしましょう」
「うん。さようなら……氷雨さん」
最後に2人は握手をし、それが済むと彼女はシュレフォルンと同じく世界地図を使ってこの部屋から別世界へと転移をした。
その光景を見たシアは次は自分の番だとでも言いたげに司の目の前まで移動した。いつの間にかその手には手のひらサイズのカメラが。
「ねーねーつーくん! 最後にさ! 私とツーショット撮ろうよ!」
「シアさんと? うん、良いよ! 撮ろっか」
「やったーっ! それじゃあ出でよ、カメラくん!」
司が快諾した事でシアはテンション高めに持っていたカメラを真上に放り投げた。突然の奇行に司は驚き、視線が宙のカメラに吸い寄せられる。
「何してるの!?」
「まぁまぁ見てなさいって。これ前に訪れた異世界にあったカメラでね。可愛いから衝動的に買っちゃった!」
「……?」
一体何が起こるのだろうかと成り行きを見守っていた矢先だった。突然カメラに短い手足が生えたのだ。腕と脚は細く、手足の先は球体の、まさに思わずカメラくんと呼びたくなるようなフォルムだ。




