第196話
「取り敢えず扉を閉めてもらえるか? 声が外に漏れたらどうする」
「は、はい! 失礼しました!」
慌てて扉を閉めた司はゆっくりレギュラオンのデスク前まで歩く。
シュレフォルンたちはレギュラオンのデスク近くに立ち、司の方を向いている状態だ。
「あ、あの……」
「ああ、こいつらか? ふん、こいつらがどうしてもと言うのでな。異例ではあるがこの世界の人間では無いという事もあって特別に許可を出した」
「司はもう俺たちの仲間だし友達だ。しかも今回の件では俺たち以上に戦ってくれたじゃないか。そんな盟友のリバーシ任命式だぜ? 一緒にお祝いくらいさせてくれよ」
「シュレ……ありがとう。凄く嬉しいよ!」
司は思わず涙が出そうになった。異世界の友達にこうして人生の門出をお祝いしてもらうなど、嬉しいなんて言葉では言い表せないくらいの大きな喜びであったのだ。
「立派になりましたね、司くん。試験前とは別人ですよ」
そう言って氷雨は微笑む。彼女の言葉はお世辞などではなく本心からのものであった。
「そうかな? まぁでも自分に自信はついたと思うよ」
WPUと一緒に任務を遂行し、開花適応を果たし、共闘し、レイクネスと1対1で戦った。確かに最終的には彼女に負け、実力差を痛感する結果に終わったが、その経験は司の心身に大きな影響を与え彼を成長させた。
試験前と今とでは、顔つきも雰囲気も本当に別人のように見えたのだ。
「ふふ。今のつーくんだったらWPUに入れても問題無さそうだよねっ! ねぇねぇWPUに興味無い? きっと合ってると思うんだけどな~」
「え、つーくんって僕の事?」
「WPUの仲間の事をシアさんは基本的に愛称で呼ぶんですよ。あなたの父親である仁さんの事も最初は『じんじん』と呼んでいたくらいですから。まぁリーダーとして示しがつかないから、普通に呼んでくれと言われてからは空気を読んでさん付けしているみたいですがね。……私の事も普通に呼んで欲しいものです」
「 (じんじん……) 」
「つーくんはもう私の中ではWPUの仲間同然だからね! それで、どう? どう? 興味無いかな? WPU!」
司に近付き、前のめりで勧誘活動を始めたシア。そんなシアに対して司は困ったように笑いながらも答えを返す。
「あー、考えておくよ……」
無難オブ無難な回答であったが、シアはそんな回答でもテンション高めに喜んだ。
「おっ!? つまり全く興味無い訳じゃないんだね! やったー! 期待して待ってるからね!」
「もう、シアちゃんは。ごめんね、司くん。えっと、地下での司くんの雄姿を話してから、シアちゃんずっとこんな感じで」
テトラが補足説明を入れた事で司はそういう事かと納得した。確かにレイクネスとの戦いで司が見せた動きや來冥力は、開花適応レベル1の者とは思えぬほどに高次元なものであったのだ。
その事実を知ればWPUに勧誘したくなるのも頷ける。
「そりゃあテトちゃんに熱く語られたらつーくんを見る目も変わるって! ねー? きゅるちゃん!」
「うん! ママ、すごーく楽しそうに話してた! きゅる、悪い人にやられちゃって気を失ってたからよく分かんないけど、司おにいちゃんが凄かったっていうのは伝わってきたよ! きゅるも見たかったな~」
「え? わ、私そんなに熱くなってたかな?」
「自覚無いのか? 司の事を話すあの時のテトラときたら、人に授業してる時の氷雨みたいな感じだったぜ」
「あの、私を引き合いに出さないでください」
こちらはしっかりと自覚があるのか、氷雨は頬を朱色に染めて恥ずかしそうだ。
「うーん、その例えは一発で分かっちゃうね。そっかぁ、氷雨さんそっくりだったかぁ」
「……。何でしょう、このモヤモヤ感は」




