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第187話

「ぜぇ、ぜぇ……今回はオレの負けのようだな。そこは認めてやらぁ。だがな、次会った時はこうはいかねぇぞ。テメェだけは! ぜってぇにぶっ壊す! テトラに司……テメェらもだ。散々オレの神経を逆撫でさせやがって……!」


「ふん。そんな絵に描いたような捨て台詞を吐く暇があったら、さっさとあのクズを連れてどこかの異世界へ転移したらどうだ? それとも界庭羅船初の黒星を付ける気か? 全世界の犯罪者にとってはまさに希望……これまで常勝不敗を築き上げてきたその輝かしい歴史に、敗北の2文字を初めて刻む覚悟がお前にはあるのか?」


 その言葉にレイクネスの動きが止まる。感情だけで言えば今すぐレギュラオンたちを叩きのめしたいだろう。例え來冥力がつきようとも、例え勝てなくても、最後のその一瞬まで戦い抜きたいと本心では思っているはずだ。


 だが界庭羅船という名前に傷を付ける行為だけは何があっても避けなければならない。体中が焼かれるような悔しさに支配されても、それだけは忌避すべき結末なのだ。


 脳筋単細胞の戦闘狂のように見えるレイクネスにも界庭羅船という組織の1人である自覚はあり、守らねばならない名誉が存在している。


 故にレイクネスはレギュラオンの言う通りに動かざるを得ない。今の彼女にとって最も重要なのはレギュラオンたちに勝つ事ではなく、ゲーテを守る事なのだ。


 ゲーテは拷問のような事をされはしたが、結論死なせる事なく、更に逮捕されなければ何だって構わないのである。


 依頼人もその事は承知の上で彼らに自分の身を委ねている。


「こ、こんの……ぐぐぐ……クソ、クソ、クソ……クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 盛大に大声を上げたレイクネスは世界地図を使ってゲーテと共に姿を消した。そしてそれは界庭羅船は勝利したがレイクネス本人は敗北した事を意味していた。


 レギュラオンからすれば、やろうと思えば彼女を完全に倒し、そして後ろ盾を失ったゲーテを逮捕する事もできたに違いない。そうしなかったのには恐らく理由があり、テトラはレギュラオンが意図的に彼女たちを逃がしたのだと気付いた。


「ねぇレギュラオンさん。えっと、もしかしてわざと逃がしたの?」


「ああ。ここに到着するまでの間にシャックスの奴らと一悶着あってな。お前の質問の答えはこの場に到着する遅れた原因にも繋がるのだが、まぁその話は後にしよう」


「そっ……か。裏で色々動いてたんだね。それにしてもさすがレギュラオンさんだね。本当に強いよ。今ここで逃がしたのがもったいないくらい」


 一体彼女が裏で何をしていたのか。そしてシャックスと何があったのか。知りたい欲に駆られたテトラであったが、今は取り敢えず気にしない事にした。


 ゲーテやレイクネスを取り逃がしてしまったが、とにかくこの試験会場から、そしてこの世界から危機は去った。今はその事に安堵すべきだろう。


「ふん。『強い』……か」


 レギュラオンは何故かその部分に反応し、そして少し考えた後に話し始めた。


「先ほどのお前の質問の答えだが、実はシャックス絡み以外にも理由はある。この状況でもしもクオリネが加勢するとまずいと思ったんだ。界庭羅船のメンバー同士が共闘する時には、2つ条件がある。その1、共闘するメンバー同士が同じ世界に居る事。その2、依頼人の護衛を担当していたメンバーが完全敗北してしまい、世界地図による転移を行う余裕も無いほどに瀕死状態に追い込まれている事。前者に関してはクオリネやフローラがまだこの世界に居る場合は条件を満たしている可能性がある。故に私は後者の条件を満たさせぬよう、転移の道を選ぶよう煽ったのだ。あの女からしてみればその条件を満たす為だけに私に挑み、結果敗北し、そして他のメンバーの力で勝利を掴み取るなど屈辱以外の何物でもないだろうからな。その道を辿るよりだったら、素直に敗北を認め『自分の力だけで護衛対象を守る』方がまだマシなはずだ」


 レイクネスの思考や性格を完全に把握していたからこその言動だったのだろう。


 だが必ずしもその行動を取るとは限らず、推測の域を脱してはいない。そんな状況下で強い言葉を投げられるのだから相当な心臓の持ち主だと言える。


「でも……元々は戦うつもり……だったんでしょ?」


「それはキュルキオネが開花適応レベル4の戦力として使える事前提の話だ。界庭羅船が共闘する時の1つ目の条件は、言い換えれば加勢する為だけにその世界に他メンバーが訪れる事は無いという事だからな。今この世界に居る可能性があるクオリネ、フローラであれば、私とキュルキオネが共闘すれば勝てるかも知れないと踏んでいた。だからこそレイクネスを誘き出すような行動を取れとお前に指示も出した。私は遅れこそしたが、戦いに参加するつもりはあったのでな。……だが実際はどうだ?」

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