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第185話

「ふん」


 確かな手応えを感じたレギュラオンだが、特に喜ぶ様子は見せない。無感情に、ただ淡々と仕事をこなしただけのような感じだ。


「 (つ、強い……! これがWPUナンバーワンの……) 」


「 (レギュラオンさんの戦い初めて見たけど、こんなに強かったんだ……さっすがぁ) 」


 司とテトラはそれぞれ心の中でそんな感想を呟く。


 別に疑っていた訳では無かったが、レギュラオンがまさかここまでの強さを有しているとは思わなかったのだ。


 単純なパワーだけではない。敢えてキレさせる事で無駄に來冥力を消費させ、自分は敵の動きを見極めながら回避に徹し、ここぞというタイミングで最大級の一撃を解き放つ戦い方は美しさすらある運び方だった。


 勝負所を見極める力と一発で仕留められるほどの來冥力、その双方を高次元なレベルで併せ持ったレギュラオンが勝つのは必然事項だったのかも知れない。


「ち、ちく……しょう……!」


 レイクネスにはまだ來冥力が残っているのか、閻魔大王を思い起こさせるその形態は解除されてはいない。だがこれまで数え切れないほどの戦いを経験し、かつ戦闘狂である彼女には分かっていた。


 もしもレギュラオンが來冥力を完全解放して形態変化に至ったその時は、今の残っている來冥力では確実に負けると。


 勝負する前から勝敗が見えてしまっている現実に、レイクネスははらわたが煮えくり返るほどの悔しさを覚えた。ギリギリと唇を噛み、血を滲ませる。


 一方、生きた心地がしない中で彼女たちの戦いを見ていたゲーテは、震えた声で無謀にも戦いに挑んだレイクネスを糾弾した。


「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ! 何なんだよこの展開はッ! 界庭羅船が味方に居る限り僕の安全は担保されるはずだろうが!? 軽率にも勝負を挑みやがって……聞いてんのかレイクネス―――ッ! こんの出来損ないが! 僕が逮捕されたらお前、どう責任を取るつもりなんだ、ああ!? うう……嘘だ……冗談は止めてくれ。嫌だ嫌だ嫌だ! 逮捕されたくない……! こんな所で、人生を終わらせたくない……!」


「チッ……」


 大声で泣き喚くゲーテに心底イラッときたのか、レギュラオンは舌打ちした後にゆっくりと振り返り、鋭い眼光を彼に向ける。その顔つきだけで言えばもはやどちらが犯罪者なのか分からなかった。


「いい加減黙れ。このクズが。自分がこれまで何をしてきたのか、まだ分かっていないようだな」


 ドスが効いた声でゲーテに圧を掛け、1歩、また1歩と彼に近付くレギュラオン。


「……! ひ、ひぃぃぃぃ!」


 情けない声を上げながらゲーテは座った状態のまま腕を動かす事で後ろに下がる。


「私も一応女なのでな。お前がテトラにした仕打ちを考えると殺意が芽生える」


「く、来るな……来るなぁぁぁぁぁぁ! ……ああっ!」


 やがてゲーテは背中に柱が当たった事でこれ以上後ろに下がれない事を悟る。レギュラオンはすぐ目の前に立っており、彼を見下ろしていた。


「……。耳と歯と左手だな。一旦はそれで勘弁してやる」


「え」


 そう言ったレギュラオンは一丁締めの時のようにしてゲーテの両耳をパァンと叩き、その衝撃で彼の両方の鼓膜を破壊する。


「ああああああ! あああああああああ!」


「次」


 感情を感じさせない冷徹な声でレギュラオンは早くも次の制裁へと移る。うずくまっているゲーテの両肩に手を置いてから自身に引き寄せ、それと同時に渾身の膝蹴りを彼の口から鼻付近に食らわせた。血が噴き出し、前歯が2本粉砕される。


「あっ、あっ、ぁぁ……っ……!」


 本気で痛い時にしか出ないような声を上げたゲーテは必死に息を吸い込み、経験した事のない激痛に耐えていた。


「最後だ」


 レギュラオンは片膝立ちをするとゲーテの左手を掴んでから地面に押さえつけ、空いている方の手で拳を作ってからそれを勢いよく振り下ろした。


 鳴ってはいけない音が発生し、ゲーテの左手が完全に壊された事を物語っていた。

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