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第184話

「ここまで随分と來冥力を使ったみたいだな。なら私は形態変化無しで戦ってやろう。他の界庭羅船が駆けつけた時にも対応できるよう、お前如きに全力を使う訳にもいかないのでな。かかって来い……界庭羅船最弱のチンピラ」


 煽りか本心かは不明だがレギュラオンは本当に形態変化無しで戦闘を行うようだ。來冥者にとって形態変化をしないで戦うと言うのは、來冥力の解放量を極限まで抑えて戦う事を意味する。


 確かにWPUのテトラや開花適応した司を相手に使ったレイクネスの來冥力は決して少なくない。レギュラオンの言う通り他の界庭羅船が加勢して来た時を考えると、この戦いで來冥力を多く消費するのは得策ではないだろう。


 だがそれにしたって相手は界庭羅船の1人だ。形態変化無しで戦うなど彼女たちからしてみればナメられてる行動以外の何物でもないだろう。


「ん、だ、と……この野郎……ッ!」


 案の定と言うべきか、彼女の言葉はレイクネスを完全にブチギレさせた。


 先ほどまで苦しそうにしていた顔は一瞬にして殺意に染まる。狂ったような声を上げながらレギュラオンに飛び掛かったレイクネスは、両手に携えた金砕棒で猛攻を連続で仕掛けた。


 その全てをレギュラオンは難なく躱し、回避に特化した動きを披露した。相殺する事も可能だが、その際に発動した攻撃や互いの攻撃が命中した際の被ダメージ軽減にも來冥力は消費される。レギュラオンの狙いが來冥力を極力使わずに戦闘を行う事なのであれば、回避は適した行動と言える訳だ。


 動き回るレギュラオンを追いかけながらレイクネスは幾度となく金砕棒による破壊を繰り返し、その度に柱や床を粉砕していく。


 この時点で來冥力の消費量には決定的な違いが出ていた。最小限かつ洗練された無駄の無い動きで回避のみを行っているレギュラオンと、頭に血が上っているが故に破壊行動を派手な動きかつノンストップで継続しているレイクネス。


 後者の方が明らかに來冥力を無駄に消費していた。


 來冥力はただがむしゃらに使えば良いという訳では無い。状況に合わせた使い方が大事なのだ。仕掛けるタイミングの見極めもまた來冥者同士の戦いでは重要な力である。


「はぁあああ!」


 ここで勝機を見出したレギュラオンは今解放している來冥力内で出せる最高速度で縦横無尽に動き、今現在空中に居るレイクネスを翻弄する。


 その結果完全に彼女を見失ったレイクネスは、落下しながらキョロキョロと辺りを見回して行方を捜す。


「……! て、テメェ……んな所に……!」


「……」


 レギュラオンはレイクネスが着地する地点の付近に居た。


 左脚を折り曲げた状態で前に出し、右脚は後ろへと引き、腰を少しだけ落とし、右腕を引いた状態でレイクネスに狙いを定めている。彼女の右腕にはこの一撃に全てを懸ける気概で來冥力が集約されていた。


 目は完全に獲る者のそれであり、その目に射抜かれたレイクネスは思わず鳥肌が立ってしまった。


 やがてレイクネスが後少しで地面に足を着ける、そんな時だった。


「はぁあああああああああ!」


 全身の力、そして規格外の來冥力を右腕に乗せたその一撃は発勁という技としてレイクネスに放たれたのだ。


 人の部位同士が衝突した時とは思えぬほどの莫大な音が響き渡った。


「――ッ!」


 レギュラオンの手の平がレイクネスの胸部に直撃したその瞬間、尋常ではない衝撃とレギュラオンの來冥力が体を突き抜け、レイクネスは大量の出血と共に後方へと吹き飛ばされてしまった。


 綺麗に体をくの字に曲げて爆速で吹き飛んでいくレイクネスはやがて柱に激突する。そしてその反動によって前のめりの体勢で地面に倒れ込んでしまった。

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