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第三十四話 バスジャック






将吾はバスに揺られながら、ガラの悪そうな男女二人組を見ていた。どっかで見覚えが……そんな事をずっと考えていたのだ。すると

「……あまり見ない方がいいよ。気づかないふりをして……」

と、天音が小声で言う。将吾が驚いて天音を見ると

「……ラサールさんが追ってるヤツらでしょ?……ん?……え…ひょっとして気づいてなかったの?」

天音が将吾の様子に気づき目を見開いた。将吾は苦笑いで誤魔化す。そうか……見覚えがあるはずだ。八尾さんの家に向かう車内で、斎藤さんが写真付きの資料を見せてくれたっけ……。と言うか、ラサールさんが追ってる凶悪犯が目の前にいる。すぐに斎藤さん達に連絡しなければ……。そんな事を考えながら、将吾がポケットからスマホを出した時だった。

「全員、両手を上に上げろ!すぐにスマホを出して渡せ!早くしろ!」

岩田が懐から拳銃のような物を取り出して叫んだ。檜山も拳銃のような物を持ち、バスの運転手に突きつけた。挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)乗客は皆、キョトンとしている。その瞬間

パァン!

大きな乾いた破裂音が鳴り響く。悲鳴と共に全員の体が一瞬すくみ、みんなゆっくりと両手を上げる。岩田がバスの天井に、拳銃を一発発射したのだ。

「オラァ!早くしろ!」

岩田が言いながら、一人一人を回ってスマホを回収していく。天井への一発はビビらせる為。一人一人を回っている間に、SNSに書き込んだり通報したりするのを防ぐ為だ。主婦仲間であろう中年女性二人組が、慌ててスマホを渡す。続けて会社員風の男性もスマホを渡した。岩田は懐から出したビニール袋にスマホを放り込んでいく。次はシルバーシートに座っている高齢女性の隣に来た。

「ババア!早くスマホ出せ!」

岩田がお婆さんに銃を突きつけながら叫ぶと

「……も、持ってません……」

お婆さんが蚊の鳴くような声で言う。

「嘘をつくんじゃねぇ!早く出せ!」

岩田が再度、銃を突きつける。目を見開き、極度の興奮状態だ。勢いで撃ちかねない。バスの中は非常に危険な状態になっていた。お婆さんは両手を上げて震えている。すると

「……やめてください。持ってないって言ってるじゃないですか?」

と、佐久間恋乃葉が立ち上がる。岩田が佐久間を睨みつけ、銃を片手で構えながら近づいてくる。その瞬間、天音がひーちゃんと凪を抱えこんだ。将吾も身構える。いつでも建御雷神の力を宿し、布都御魂を抜ける状態だ。だが正直、将吾は迷っていた。ひーちゃんの力を使えば、岩田と檜山の動きを止めて、天音と将吾で片付けられる。だが、タイミングが重要だ。一歩間違えれば、佐久間に銃弾が当たる可能性がある。それに将吾も天音も、生身で戦うスタイルの神主だ。銃弾が当たればタダでは済まない。双葉の風神雷神やタツの八岐大蛇なら銃弾も平気だろうし、クッキーなら時間軸を変更して瞬殺だ。銃に対して、将吾と天音の力は相性が悪いのだ。それに、岩田と檜山が神主だと言う事はわかっている。二人がどんな能力なのか?それがわからないと、思わぬ反撃をくらってしまうかもしれない。チャンスは一回。ミスれば誰かが大怪我をするか、死を招いてしまうのだ。天音に抱えこまれているひーちゃんが将吾を見る。将吾もひーちゃんと目が合った。だがひーちゃんは軽く首を横に振る。どう言う事だ?力が使えないって事か?それとも何かしらの理由で行動出来ないのか?するとひーちゃんは、隣で同じように天音に抱えこまれている凪をチラリと見た。そうか……凪は黄泉国の事も神主の事も何も知らない。いくら後で記憶の操作が出来るとはいえ、凪の前で力を使うのは気が引けるのだろう。とにかくひーちゃんの協力なしでは、無傷での制圧は難しい。さて、どうしたものか……。将吾はタイミングを見計らいながら、しばらく様子を見る事にした。岩田が銃を構えながら、佐久間の前まで来る。

「あぁ?もういっぺん言ってみろ?」

岩田が目をギラつかせながら言う。だが、佐久間は毅然とした態度で

「……お婆さんはスマホを持ってないって言ってます。本当に持っていないんだと思い……」

と言いかけた瞬間、岩田が佐久間を殴りつけた。佐久間はバスのシートに倒れこむ。

「うるせぇ!黙ってろボケェ!テメェも早くスマホを出せ!」

岩田が叫びながら再度、佐久間に銃を突きつける。佐久間は殴られた右頬を押さえながら、黙ってスマホを渡した。

「テメェらもだ!早く!」

岩田が続けざまに天音と将吾に銃を突きつける。天音と将吾もスマホを渡した。

「ガキ共は?持ってんなら出せ!」

岩田が叫ぶと、凪がリュックからキッズ用のケータイを出し、ひーちゃんは持ってないと、か細い声で伝えた。小学三年生でスマホを持っているのか……まぁ、色々な家庭があるのでなんとも言えない所だ。岩田は一通りの回収を終えると、銃で周囲を威嚇しながら運転席の方へ移動していく。天音がすぐに佐久間に声を掛けた。佐久間は唇の端から血を流しているが、大した傷ではなさそうだ。天音が将吾を見るが、将吾は軽く首を横に振る。今は反撃は難しい。とにかく様子を見るしかなさそうだ。するとひーちゃんがバスの窓を見て

「……あ、あれ?」

と呟く。将吾がその声に気づいて窓を見ると、バスの窓からはいつもの景色ではなく、セピア色の景色が広がっていたのである。バスはセピア色の街並みを走っているのだ。

「……これは……」

将吾が呟く。まるで異世界に迷い込んだようだ。だがよく見ると、片側二車線の国道を走っていて、周りには他の車も沢山走っている。これは……まさか……結界?結界の中を走っているのか?推測だが、天照の天岩戸隠れのように、大きな結界の中をバスが走っているような感じで、現実世界なのだが隔離された空間……そんな感じだ。そうなると、バスは普通の人には見えていない可能性が高い。これは岩田か檜山のどちらかの能力なのか?これでは益々、外部と連絡が取れないだろう。他の乗客も外の様子に気づきざわめき立つ。すかさず岩田が

「うるせぇ!黙ってろ!お前ら後ろに行け!」

と、前の方に座っていた中年女性二人と、シルバーシートに座っていたお婆さんを、バスの後方に行くように指示した。人質を一箇所に集めた方が、監視しやすいからだろう。中年女性二人とお婆さんがバスの後方へ歩いてきた。すると佐久間が小声で

「……皆さん、頭を低くしてしっかりと何かに掴まっていてください」

と言う。中年女性二人とお婆さん、会社員風の男性が顔を見合わせた。天音と将吾も顔を見合わせる。何かする気なのだろうか?

「……いいですね?私が合図したら頭を低くして、しっかりと掴まってくださいね?」

佐久間が再度みんなに伝えると

「何コソコソ話してやがる!」

岩田が佐久間の様子に気づいて叫んだ。その瞬間

「みんな掴まって!」

と佐久間が叫ぶと、バキバキバキバキと凄まじい音と衝撃が響いた。そしてなんと、バスが真ん中から前方と後方とで真っ二つになったのだ。バスの前方部分は岩田と檜山とバスの運転手を乗せて、床の部分を地面に擦りながら火花を散らして走っていく。後方部分は人質四人と佐久間と将吾達を乗せて、同じように床を地面に擦り付けながら減速していった。

「クソがぁ!」

岩田が叫びながら銃を構える。パァンパァンと乾いた音が二発鳴り響いた。だが将吾達の目の前には、いつの間にかピンク色の壁が現れ、二発の銃弾を防いでくれたのだ。その壁をよく見ると、桜の花びらで出来ている。無数の桜の花びらが積み重なって、ピンク色の桜の花の壁になっているのだ。そしてその桜の花びらを出したのは……佐久間恋乃葉だったのだ。将吾と天音とひーちゃんは驚きを隠せない。彼女は神主だったのか?バスの前方部分と後方部分はどんどん離れていく。バスを真っ二つにしたのも、佐久間恋乃葉がやったのか?

「みんな!飛び降りて!」

佐久間がバスの後方部分に乗る人々に叫んだ。だがバスは減速しているとは言え、床を地面に擦り付けて火花を散らして進んでいる。将吾や天音はなんとかなるとして、普通の人達や高齢女性にはかなり酷な要求だ。

「俺がお婆さんを抱えて降ります!天音さんはひーちゃんと凪を頼んます!」

将吾がお婆さんを抱えあげた。天音が頷くと、ひーちゃんと凪を両脇に抱えこんだ。それを見た佐久間が

「チェリー!援護して!」

と叫ぶ。するとバスの後方から、木の枝のようなものがいくつもニョキニョキと伸びてきたのだ。将吾が佐久間を見ると佐久間が頷く。これに乗れと言う事か……。将吾がお婆さんを抱えたまま、太い木の枝の上に飛び降りた。木の枝は将吾とお婆さんを乗せて、バスから離れていく。安全な場所まで離れると、将吾は木の枝からお婆さんを抱えて地面に飛び降りた。天音や他の人質も、次々と木の枝に飛び乗ってバスから離れていく。地面に着地した将吾が見ると、木の枝の正体は大きな桜の木だったのだ。バスの後方にしがみつくように張り付いていて、そこから枝や根っこを伸ばしていたのである。そしてバスから全員が降りると、桜の木もバスから離れ地面に降り立つ。木の幹が体のようになっていて、海外のゴーストのジャック・オー・ランタンのような顔がついている。挿絵(By みてみん)

「チェリー、ありがと」

佐久間が言いながら桜の木を撫でた。なるほど。このチェリーと言う大きな桜の木が佐久間の守神のようだ。バスを真っ二つにしたのもチェリーがやったのか?バスの前方部分は少し先で止まっている。そこから岩田と檜山が飛び降りて地面に降り立つのが見えた。

「急いで逃げよう!」

佐久間が人質四人と将吾達に言う。このセピア色の街中を逃げるつもりのようだ。周囲は店や住宅が立ち並び、人も普通に歩いている。だが、将吾達の事は見えていないようだ。やはりこのセピア色の街は、結界か何かの中のようだ。どこかに出口があるのだろうか?とにかく安全な場所まで避難して、なんとかクッキー達と連絡を取らなければ……。気掛かりなのはバスの運転手だ。岩田達と一緒にいる。何もされなければイイが……。佐久間が先頭に立ち、岩田達のいる方とは反対方向に走りだした。建物に隠れながら、距離を取るつもりのようだ。お婆さんは将吾が抱えて走っている。ひーちゃんと凪は、天音が手を繋いで走っていた。チェリーは佐久間が手をかざすと、無数の桜の花びらとなり姿を消した。建物で岩田達の動向は確認できない。こちらを追いかけてきてるのだろうか?天音がそう思って振り向いた瞬間、背後の建物の影から岩田と檜山が飛びだしてきた。

「待てコラァ!コイツをブチ殺すぞ!」

岩田が叫ぶ。岩田はバスの運転手を羽交締めにして、銃を頭に突きつけていた。逃げていた全員が立ち止まる。マズいな……人質を取られてしまった。圧倒的にこちらが不利だ。相手は銃を持っているし、何より神主だ。しかもどんな能力なのか、いまだにわからない。そんな事を考えながら、将吾が天音とひーちゃんを見る。天音は軽く首を横に振った。ここから岩田まで数十メートル。距離がありすぎる。ひーちゃんの力で動きを押さえ込めれば……。ひーちゃんはやはりチラリと凪をみた。まだどうしていいか、悩んでいるみたいだ。すると佐久間が前に出て、岩田と向き合った。

「……テメェ、神主か?」

岩田が佐久間の動向に警戒しながら、バスの運転手の頭に銃口をくっつけた。佐久間は無言のまま身構える。すると何処からともなく、サァっと風が吹き抜けた。その風と共に桜の花びらが舞い始める。そして無数の花びらが岩田の背後でつむじ風のように舞うと、そこにチェリーが現れたのだ。岩田が背後の異変に気づいて振り向いた瞬間、チェリーの木の枝がムチのようにしなり岩田と檜山に襲いかかる。間一髪で岩田と檜山が避けると、二人はチェリーに銃を向けた。だがチェリーの返しの木の枝が、岩田と檜山の銃を弾き飛ばした。銃は地面を転がっていく。

「くっ……テメェ!」

岩田が叫ぶと、二人は飛んで下がりチェリーから距離を取る。チェリーがバスの運転手の身柄を確保すると

「ナイス、チェリー!これで形勢逆転」

佐久間がチェリーに親指を立てた。見事だな……。将吾は感心していた。佐久間に注意を引きつけ、背後からのチェリーの素早い攻撃。一瞬で形勢逆転に持ち込んだ。だが……気になるのは……。将吾は岩田を見る。

「やってくれるじゃねぇか……だが、ここまでだ……」

岩田が低い声で呟きながら、両手を左右に大きく開いた。すると岩田の両腕が剣のように鋭く尖って伸びたのだ。そして素早く飛び出すと、佐久間目掛けて右手を剣のように振り下ろす。佐久間が間一髪で避けると、佐久間の着ている革ジャンの端っこがスパッと切れた。まさに鋭い刃物のような切れ味だ。

「オレは体の一部を刃物にする事が出来る……ズタズタに切り刻んでやるから覚悟しろよ……」

岩田が低い体制で構えながら言う。すると隣の檜山メイの姿が大きな蛇の姿に変わった。檜山は自分の姿を蛇に変える事が出来る能力か?それを見た天音が

「……将吾君、みんなを連れて安全な場所に避難して。アタシは佐久間さんと一緒にコイツらを叩きのめす」

と小声で言う。将吾が驚いて天音を見ると、天音は軽く頷いた。

「……いや、俺がやる。天音さんがみんなを連れて避難した方が……」

と、言い返す将吾に

「将吾君がみんなを連れていく方がイイ。不測の事態にも将吾君なら対応できるし、みんなを守れる力がある……」

と、天音が諭した。

「……天音ちゃん」

心配そうに呟くひーちゃんと凪に

「大丈夫!アタシには武心流空手がある。カラテカ、舐めんなよぉ!」

天音がワザとおどけて見せた。凪やみんなを将吾君が連れていけば、存分に天之手力男の力を使える。佐久間さんの力は未知数だが、将吾君ならきっとみんなを安全な場所まで連れていって応援を呼んでくれるはず。この二人を倒せなかったとしても、それまで耐え抜けばいい。天音は大きく息を吐き出すと、武心流空手の構えをとった。

「……わかった。二人共、気をつけて……」

将吾が渋々引き下がると、人質四人とバスの運転手、ひーちゃんと凪を連れて走りだした。将吾は将吾で考えていた。ひーちゃんは小学四年生の割に、しっかりしている。みんなを安全な場所に避難させたら、みんなをひーちゃんに任せて天音の所へ戻る事だって出来る。それにひーちゃんと凪以外は全員大人だ。それなりに対応出来るはずだ。将吾達はセピア色の街中を走り抜けていく。すると野球のグラウンドのような開けた場所に出た。先頭を走る将吾が立ち止まる。将吾の目線の先には、見た事がある人物が立っていたのだ。

「……よぉ、イケメンにいちゃん。久しぶりだなぁ……」

そこには酒木荊羅が立っていたのだ。

「……!……酒木荊羅!なんでこんな所に?」

将吾が抱えていたお婆さんを地面に降ろし身構えた。

「須佐野ぉ、アイツが建御雷神だ」

酒木が隣にいる見知らぬ男性に言う。隣の男性も赤い瞳にスーツ姿だ。須佐野……酒木がそう呼んでいた。だとすると、以前タツ君を襲った須佐之男命の神主、須佐野猛雄か?

「コイツか?……大山を倒したヤツは?」

須佐野が薄ら笑いを浮かべる。嫌な笑いだ。その二人の後ろから、かなり大柄の男性が現れた。オールバックの髪に髭を生やした中年男性だ。ガッチリとした体格でスーツ姿に赤い瞳だ。挿絵(By みてみん)

「イイな?二人共。あくまでターゲットである器候補の身柄を確保するのが最優先だ……」

大柄の男性が酒木と須佐野に言う。

「……わかってますよ、国吉さん……」

須佐野が溜息をつきながら言う。国吉……初めて聞く名だ。

「国吉大吾(くによしだいご)、大国主神(おおくにぬしのかみ)の神主だ……」

不意に将吾達の背後から声が聞こえた。将吾が振り向くと、ラサール・タビコフが立っていたのだ。

「……!……ラサールさん?なぜ、ここに?」

将吾が叫ぶと

「……思金神の力を借りてな、岩田達を追っていたら、お前達と同じバスに乗った事がわかってな。すぐに追跡して、バスの所在を確かめたのだ。そしたら、バスが巨大な結界に閉じ込められてる事がわかってな……すぐに救出部隊としてオレが派遣された、と言う訳だ……だがまさか、魔月妃側の神主がいるとは……」

ラサールが歩きながら言う。

「クッキー達は?」

ひーちゃんが尋ねると

「……お前が蛭子か?……久喜達は『巨大な蜘蛛が暴れている』と言う通報を受けてそちらの現場に急行した。おそらくは……」

ラサールがひーちゃんを見ながら言う。

「……カモフラージュ……?キイロノイズミの戦力を分散させる為……?」

将吾が呟くと、ラサールが頷いた。

「こっちは岩田達の身柄確保だけだと思っていたからな……。オレだけで充分だと思って来たんだが……」

ラサールが言いながら将吾を追い越し、酒木達と対峙した。

「……こちらが本命だったか……武藤将吾、皆を連れてここから逃げろ。ここはオレがなんとかする……」

ラサールが低い声で言うと

「……!……む、無理だって!相手は三人もいるんすよ?」

と、将吾が叫ぶ。酒木の強さは身をもって知っているし、須佐野はタツに瀕死の重傷を負わせた。それより何より、あの大柄の国吉大吾と言う男……ただならぬ雰囲気を持っている。酒木達と同等か、それ以上の力がある気がする。

「……すでに応援の要請はしてある。すぐに久喜達も駆けつけるはずだ。それに、国吉が器候補がどうのと言っていた。ひょっとするとヤツらの目的は『禊』かもしれん。この中に禊を起こす為の器の候補者がいる可能性が高い。ならば、絶対に器の候補者をヤツらに渡してはならん。わかったら、早く行け!」

ラサールが身構えながら言う。

「……み、禊?……禊ってなんだよ?それに器って……?」

将吾が尋ねると

「……この世と黄泉国、全てを破壊する儀式の事だ。そして魔月妃達による『黄泉変えり』を行うつもりなのだろう……一度全てを消し去り、自分達だけで都合の良いように世界を作り変える……それが魔月妃の目的だろう……そして禊は巨大な力がいる……その力を溜め込む為の器が必要なのだ……」

と、ラサールが言う。なんと言う事だ……。全てを消し去る?この世界全てを?黄泉国まで全部……。将吾がハッとして人質四人とひーちゃんと凪を見る。この中に鍵となる人物がいて、酒木達はその人を狙っているのか……?と言うか、バスの運転手がいない。いつの間にか逸れたのか?

「……おいおい、計画がバレたぞ?どーする?」

酒木がニヤけながら言うと

「いずれは分かる事だろ?どうでもイイんじゃないか?それより早く殺し合おう……」

須佐野も薄ら笑いを浮かべ、両手に剣を握った。須佐野の体の周りには八本の剣が宙に浮かんでいる。

「我々の任務はターゲットの確保及び邪魔する者の排除だ。それ以外は考えるな……」

国吉が表情を変えずに言う。国吉、酒木、須佐野が同時に身構えた。その瞬間

「行けぇ!武藤将吾!」

ラサールが吠えると、ラサールの体が筋肉で膨れ上がった。くそっ……ラサールさんが心配だが、今はみんなを避難させるのが最優先だ!

「ラサールさん、すぐ戻ります!みんなはこっちへ!」

将吾はみんなを誘導すると走りだした。








 



[登場人物紹介]

挿絵(By みてみん)

名前:土屋珠江(つちやたまえ)

別名:珠ちゃん 土屋さん

年齢:33歳

守神:櫛八玉神(くしやたまのかみ)

能力:透視

   物質を狭い範囲で透視できる

   透視できる時間は数秒間

備考:生まれながらの神主ではない

   神主になった経緯は不明 

   いつしか思金神の世話係をするようになる

   運動神経は抜群

   学生時代は柔道をやっていた

   普段はパートとしてレストランの厨房で働いている

   

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