第二十八話 格の違い
大和田夏海は高校一年生だった。都内の高校に通っていて、母親と都営団地に二人で住んでいた。父親は夏海が小学生の時に他界していた。父親は関東水神會系の水野組の構成員だったが、突っ込んできた車に跳ねられ死亡したのだ。組にとって邪魔になったから消されたんじゃないか?と誰かが言っていた。母親は風俗で働いていて、いつも夜はいなかった。夏海は一人っ子だったが、寂しくはなかった。毎朝、テーブルに置いてある千円で飲み物だけ買って昼ご飯は我慢した。そして学校から帰ってくると掃除と洗濯をして、千円の残りを使って買い物に行き、自分と母親の晩御飯の支度をした。晩御飯の支度といっても簡単な物しか出来なくて、毎日何かの炒め物か丼物が多かった。勉強なんか当然やる時間がなく、成績は酷いものだった。そんな生活だったので、学校に友達も少なくいつも一人だった。髪を染め、学校に行かない日も多くなった。それと言うのも、ある日学校のトイレに入っていると、突然ドアを激しく叩かれたのである。驚いて外の様子を伺うと、クスクスと笑いを堪える声が遠ざかっていった。靴が無くなったり、教科書に落書きされる事もあった。周りの程度の低い幼稚なイジメにウンザリしたのである。学校に行かない日は公園や図書館で時間を潰した。そんなある日、母親が彼氏を連れてきた。若い男で歳は二十代。母親とは10歳ぐらい離れていた。それから母親が男と一緒に夜も家にいる日が多くなった。隣の部屋からは毎晩のように母親の喘ぎ声が聞こえてきた。夏海は耳を塞いで寝るようにした。ある日、夏海が夜中にトイレに起きると、母親の彼氏が一人で台所で酒を飲んでいた。話しかけられたが、どうでも良くて無視をした。彼氏は「生意気なヤツだ」と夏海に罵声を浴びせてきた。それからしばらくして夏海が学校から帰ると、母親の彼氏が一人で家にいて酒を飲んでいた。会話をしたくなかったので、着替えて外に出ようとしたら、腹が減ったからメシを作れと言われた。無視して外に出ようとしたら突然殴られた。近くにあった雑誌を投げつけて応戦したが更に殴られた。床に倒れた夏海を母親の彼氏が馬乗りになって殴り続ける。顔が血塗れの夏海が必死に抵抗を続けていると、母親の彼氏は殴るのを止め自分のズボンのベルトを外した。ズボンとパンツを脱ごうとしている母親の彼氏を見て、夏海が這いつくばりながら玄関に逃げようとする。だが、母親の彼氏が夏海に覆い被さってきた。部屋には夏海の泣き叫ぶ声が響いていた。
「疾風怒刀!」
風神の持つ細身の剣が夏海に迫る。
「……アンタにアタシの何がわかる?……わかる訳がない……知ったふうに言いやがって!出でよ、蛟ぃ!」
夏海が叫ぶと、その手には蛇の様な形をした剣が握られていた。そしてその剣で風神の細身の剣を払いのけた。風神と双葉は夏海から少し離れた所に着地する。
「……ねぇ、アンタにわかる?どんなに泣き叫んでも、誰も助けてくれない絶望感が?嫌いな男に無理矢理、犯される屈辱と嫌悪感が?アンタにわかんの?誰かに自分の全てを雑に壊される気持ちがさ?どうなんだよ?答えろよ!」
夏海が絶叫する。母親の彼氏から乱暴をされたその日の夜に、夏海は学校近くの雑居ビルから飛び降りたのだ。何の未練もなかった。もうどうでもよかった。それより何より、一秒でもこの世にいたくなかった。あの男に触られた感触がまだ残っている。吐き気が止まらなかった。だが、気づくと夏海は赤星一樹と歌野伊奈理に助けられていた。『何で死なせてくれなかったの?』と発狂する夏海を、伊奈理が必死に諭した。夏海は小さい頃、近くの稲荷神社によく遊びに行っていた。まだ父親と母親と暮らしていた頃だ。伊奈理はその当時の夏海を覚えていたのだ。両親と一緒にフルネームを言いながら一生懸命お参りする小さな夏海の姿を……。夏海は伊奈理が宇迦之御魂神で、小さい頃によく行った稲荷神社に祀られている神様だと知るとなんとか落ち着いた。数日後、母親の彼氏のバラバラ遺体が発見された。それからは夏海は伊奈理の言う事を聞くようになった。そしてその後、赤星から禊の話しを聞いた。このクソみたいな世界をぶち壊せるならと、夏海は喜んで加わったのだ。
「……こんな世界、丸ごと全部ぶっ潰してやる……」
夏海が呟く。すると
「……誰かに酷く傷つけられたのね……?とっても辛かったんでしょ……?でも、魔月妃って人と一緒にいたら……」
「うるせえぇぇぇ!」
双葉の言葉を遮り、夏海が叫んだ。すると夜刀が再び雄叫びを上げて、のたうち回るように暴れだしたのだった。
クッキーはアリーナの通路に跪いた。押さえた脇腹から血が溢れ出す。傷が深い……かなりヤベェな。クッキーを刺したアキ君は笑顔のまま立っていた。
「久ぅぅ喜ぃぃぃぃ!ザマァみろだなぁ?」
そのアキ君の後ろから井幡が現れたのだ。
「……テメェ……井幡ぁ……なんでこんな所に……?」
クッキーが掠れた声で言う。井幡がニヤけながらパチンと指を鳴らすと、アキ君は高熱でバターが溶けるように瞬時に溶けて消えたのだ。
「知り合いの芸能事務所の社長に、ちょっと頼まれてなぁ。まぁそんな事より、オレの能力はどうだ?赤星から貰った守神。埴安神とか言ったかな?土の神様だそうだ。土で出来た本物そっくりなダミーを作り出せる。見た事がある人間なら誰でもなぁ。お前の仲間は金山が一通り調べて写真を見せてくれたんでな……」
井幡が再度指を鳴らすと、今度は井幡にそっくりな土人形が地面から何人も現れたのだ。まるで井幡が何人も立っているかのようだ。全く見分けがつかない。そして井幡達は全員、クッキーから少し離れて距離を取る。
「……テメェの時間軸変更は厄介だからな。だが、距離を取り何体にも別れれば封じる事が出来る……」
本物の井幡が言いながら、ダミーの井幡達と交互に立ち位置を変える。これで本物が何処にいるかわからなくなった。クッキーは脇腹を押さえながら立ち上がった。血が床に滴り落ちる。なるほど……距離を取れば時間軸を変えても井幡に近づくまで数秒かかる。それにこの傷だ。いつもより素早く動けない。攻撃出来ても全員は攻撃出来ない。連続で時間を変えても足りないはずだ。攻撃したのが本物ならイイが、偽物だったら……。だが、あまり考えてる時間もない。出血が酷くてフラフラしてきた。早いとこ井幡を倒さないと、マジで死んじまう。
「……やってやるよ、井幡ぁ……」
クッキーが呟くように言うと
「あぁ?聞こえねぇなぁ?いつもの威勢はどしたぁ?」
井幡が片耳に手を当てて挑発する。その瞬間、クッキーが時間軸を変えた。真っ直ぐ飛び出すと、耳に手を当ててる井幡をガントレットで殴りつけた。これが本物のはず!だが、井幡の体はバターの様にグニャリとひん曲がった。くそ!すぐに周りの井幡を片っ端から殴るがどれも違った。時間軸が元に戻る。
「残念、ハズレだぁ!」
本物の井幡がダミーの後ろから現れ、ドスでクッキーの左肩を突き刺した。
「ぐあぁぁ!」
思わずクッキーが苦痛の声を上げ床に跪く。井幡は素早くクッキーからドスを引き抜くと、またダミー達と一緒に距離を取った。
「わっかんねぇヤロウだな!テメェは終わってんだよ!詰んでんのが、わかんねぇのかぁ!テメェはここで死ぬんだよ!」
井幡が勝ち誇ったように言う。
「オレは五島やテメェとは違う!頭を使ってここまでやってきた!テメェらとは格が違うんだよ!」
井幡が叫びながらダミー達と立ち位置を交互に変えた。クッキーはヨロヨロと再度立ち上がる。左肩からも夥しい血が流れ出ていた。
「……ほぉ、そうかよ……だがな、どうやらオレの勝ちのようだ……」
と、クッキーが言うと、井幡の動きが止まる。
「……テメェ、ホントにテンパったのか?どう見てもテメェの負けだろ?勝てる要素が見当たらねぇぞ?」
井幡が冷静に言う。オレの勝ちは間違いねぇ……さっきの要領でやれば、確実に次で仕留められる。久喜の野朗は意識が朦朧としてるようだ。遂にハッタリかますほどまで弱ってきたか?それだけ追い詰められてるって訳だ。
「……もう一度言う……残念だがオレの勝ちだ……」
クッキーが咳込みながら言う。今にも倒れそうだ。死に損ないが……オレが負けるだと?この状況を見る限り、そんな事は起こらねぇ。井幡は努めて冷静に考える。俺の埴安神のダミーは壊れればまた作り直せる。数が減る事はねぇ。この数で本物のオレを当てるのは奇跡に近い。不可能だ。ダミーは簡単な動きは付けれるが、喋ったりは出来ない。動きを付けて揺動すれば、本物がわかる訳がない。さっきはダミーに動きを付けたら、まんまと乗ってきた。このまま、数を維持して距離を取れば勝ちは確実だ。そう、絶対に負ける事はねぇ。絶対だ。やはりハッタリだな。確実に勝ちを意識した井幡がニヤリと笑う。
「……久喜ぃ、ハッタリはやめろ。見苦しいぞ」
勝ち誇る井幡にクッキーが
「……時間切れだ井幡。自分の敗因に気付けなかったお前の負けだ」
と、言いながら時間軸を変えた。クッキーは血塗れのまま、真っ直ぐ井幡の群れに向かう。そして迷う事なく、一人の井幡をガントレットで殴りつけた。
「……ぐあぁぁ!……な、なぜだ?なぜ、わかった?」
ガントレットで殴られ、吹っ飛びながら本物の井幡が叫んだ。
「……テメェのその香水だよ。さっき、ドスで左肩を刺された時に、テメェからした匂いだ。前から女にモテたくて、香水には気を使ってたよなぁ。それを思いだしてな……。そっくりなダミーにも匂いまでは付けれなかった訳だ……」
クッキーが言いながらガントレットを構え直す。出力最大でガントレットが火花を散らし唸りを上げた。井幡のダミーは次々と消えていく。そしてダミーは全て消えて、井幡一人となった。
「……井幡ぁ……悪りぃが、テメェとは格が違うんでな……」
クッキーが言いながら、井幡に渾身のガントレットを叩き込んだ。
「なるほどな……」
斎藤が神谷からの緊急通信を切る。土方は金山と対峙していた。
「……金山、貴方いつから神主に?二年前は悪霊に取り憑かれただけの、普通の人だったはず……」
土方が金山に尋ねると
「二年前、俺は罪を問われず釈放された。まぁ、全て悪霊の仕業だからなぁ。俺は元々関係ねぇ。だがその時に、オレが悪霊の力を引き出したとして魔月妃さんの目に止まったんだよ。そして数ヶ月前、ふとした事でオレはチンピラとケンカになり、その時に刺されちまった。自分で言うのも何だが呆気なかったぜ。二、三回刺されたら痛みで動けなくなっちまってよ。そのままあの世行き。そしたら赤星さんが助けてくれたって訳よ」
と、金山が得意げに答えた。金山の体の周りには、大小の石が空中に浮かんでいる。二年前、土方と愛麻羅を襲った時と同じだが、あの時は地面に石が沢山落ちていた。だがアリーナの床には石など一つもない。この石達はどこから来たのか……?これが金山毘古神の力なのか?土方が考えながら電磁刀の兼定を構える。斎藤も無線機をしまい、土方の隣で電磁刀国重を構えた。
「ひょぉぉ。警官のクセに物騒なモン持ってんなぁ。おっかねぇネーちゃん達だ」
金山がふざけた言い方で言う。電磁刀は一見、普通の刀のような見た目なのだ。だが模造刀で刃は当然ない。鍔の所にスイッチがあり、それを押すと刀身に強電流が流れるのだ。
「……だがなぁ。オレをあんまナメんなよ!」
金山が叫ぶと同時に大小の石達が、土方と斎藤に向かって飛んできた。土方と斎藤が電磁刀で叩き落としていくが、なにせ数が多い。すると金山が両手に石を握り、飛びかかってきた。左手に持つ石で殴りかかってくる。斎藤が国重で弾くと、金山が斎藤の足を引っ掛かけた。体制を崩す斎藤に、右手の石で殴ろうとする。いち早く気づいた土方が、金山に体当たりをして体制を崩させ、斎藤が素早く斬り込んだ。だが金山は横っ飛びでかわすと、素早く下がって距離を取る。
「……意外と素早いな」
斎藤が思わず口にすると、金山は必死に呼吸を整えていた。
「……このまま攻めれば大丈夫です」
土方は兼定を構え直す。
「……さすがにニ対一じゃ無理があるか……」
金山は呟くと、更に後ろへ下がった。エントランスゲートの横にある、グッズショップの中の床から何かを引きずりだした。それは雨宮のチーフマネージャーの大黒蓮だった。ガムテープで両手を後ろ手に縛られて、口にもガムテープが貼ってあった。頭から血を流していて、意識も朦朧としているようだ。
「天岩戸隠れに入る前にコイツがフラフラと歩いていたから、何かの役に立つかと思って取っ捕まえておいたんだ。コイツ、雨宮優寿寧のマネージャーだろ?殴りつけて拘束している最中に天岩戸隠れが発動しやがって、何故かコイツまで付いて来ちまった。そしたらアンタらと出会したから、慌ててここに隠したんだよ。まぁ、役に立ちそうでよかったぜ……」
金山は言いながら大黒を無理矢理立ち上がらせ、羽交締めにして小さなナイフを大黒に突きつけた。拘束してる最中……つまり、大黒の体に金山が触れていた為、一緒に別次元に飛ばされたのだろう……。
「へへぇ……動くなよ。コイツの喉を掻っ切るぞ」
金山が大黒を人質にとる。それを見た土方がメガネを外して懐のポケットにしまった。そして静かに電磁刀兼定を中段に構える。斎藤は横に移動しながら国重を八相に構えた。いわゆる上段右構えだ。刀を振り上げ刀身を垂直に立てて、刀を握る両手が顔の右横にくるよう持ってくる。
「……あぁ?聞いてんのか?動くなって!その物騒な刀を地面に置け!コイツをぶっ殺すぞ!」
周囲を見ながら金山が凄んだ。ナイフは大黒の喉仏にピッタリくっつけてある。力を入れて数センチずらすだけで、大黒の喉は切り裂かれてしまうだろう。金山と大黒の周囲にはまたも大小の石が宙に浮かんでいる。まるで金山を防御するように空中を漂っていた。斎藤はチラリと土方を見る。土方は真っ直ぐ金山を見ていた。土方は一瞬の隙を付いて飛び込むつもりだ。先日、土方と剣道の話しをした時に、土方の得意技は意外にも『突き』だと話していたのだ。そう。中段構えからの飛び込みながら相手の喉を貫く突き。真剣での斬り合いでも、最も実用的で実戦的と言われるのが突きだ。だが、それには金山の注意を逸らさなくてはならない。一瞬。一瞬でいい。その瞬間、斎藤の腰に付けてある無線機から大きな声が響いた。
「誰か助けろ……井幡を倒したが……瀕死だ……アリーナの西側通路だ……」
クッキーの声だった。井幡がやられた?その瞬間、金山のナイフが僅かに大黒の喉から離れた。土方はその瞬間を見逃さなかった。音もなく飛び込むと、金山の右肩を貫いたのだ。
「ぐうぅ!」
金山は土方の突きで突き飛ばされるように後ろに下がった。その瞬間、斎藤が空中の石を叩き落としながら大黒と金山の間に割って入った。
「くそっ!」
金山がナイフを振り回すが、土方は冷静にナイフを叩き落とした。そして土方の渾身の振り下ろしが金山の左肩を直撃すると、凄まじい電流が走った。
「うがあぁぁぁぁ!」
金山は絶叫を上げると、静かに前のめりに倒れたのだった。
瑞波の剣撃を近藤が必死にかわしていた。右脇腹を斬られた藤堂は、壁にもたれ掛かって座りこんでいる。右手で脇腹を押さえているが、夥しい血が溢れだしていた。青白い顔で宙を見つめている。
「藤堂さん!大丈夫ですか?しっかりしてください!」
近藤が叫ぶが藤堂からの返事はない。近藤は瑞波の体当たりからの横切りをスレスレの所でかわすと、後ろへ飛んで距離を取った。
「ふうぅぅぅぅぅ……」
大きく息を吐き出し呼吸を整える近藤に対し、瑞波は全く息が乱れていない。冷静に妖刀村雨で霞の構えをとる。すると近藤が左手で胸の内ポケットを探り多持箱を取り出した。そして左手で多持箱を開けると、近藤の左腕にもガントレットが装着されたのだ。
「うっし!藤堂さん、今助けますからね!」
両腕にガントレットを装着した近藤が、ガキンと自分の両拳を合わせる。その瞬間、瑞波が斬り込んできた。近藤は右腕でガードすると、左腕で殴りつける。瑞波はしなやかにかわすと、今度は突きを放った。近藤は左腕で弾いて突きを逸らすと、右腕で殴りつけた。瑞波は後転しながらかわすと、距離を取る。
「……どちらかの腕でガードして、反対の腕で攻撃する……。両腕に装着する事によって、攻防一体になるわけか……意外とやっかいだな……」
瑞波が呟くように言う。そして
「……なら、ギアを上げていくか……」
……おいおい。まだ本気じゃなかったのかよ……。近藤はチラリと藤堂を見る。藤堂はグッタリとしている。早く手当てをしないと……。だがその時、地響きのような音と共にアリーナが揺れたのだ。ズゥンズゥンと遠くで音がする。すると瑞波の周りを、一匹のハエのような小さな虫が飛び回り始めた。
「……『蟲の知らせ』か……」
瑞波は呟くと、その小さな虫を素早く片手で捕まえた。すると掴んだその手から声が響き始める。
「瑞波、赤口がおらんから夏海が暴走しておる。このままじゃあアリーナが破壊され、被害がこちらにも及びかねん。サポートを頼む」
それは大山積次郎の声だった。蟲の知らせは言霊を小さな虫の様な形にして飛ばすのだ。そしてそれを握り潰すと、音声が流れる仕組みだ。魔月妃達の緊急連絡の手段のようだ。瑞波は無言で妖刀村雨を鞘にしまう。そして
「勝負は預ける……」
と言うと、クルリと反転して走りだした。
「待て!」
近藤がすぐに追いかけようとすると、瑞波は立ち止まり近藤の方に向き直る。思わず近藤も立ち止まった。
「引き際を間違えるな。手負いの仲間がいるだろ?あの者の命を救えるのは、お前だけなんだぞ?」
瑞波が真っ直ぐ近藤を見ながら言う。コイツ……藤堂さんの事を気にかけているのか?
「……お前、なんで魔月妃と一緒にいるんだ?黒い蟷螂は八人も殺害した。魔月妃やお前達には殺人の容疑がかけられている。病院では多数の魂が滅却となった。黄泉国も本腰入れてお前達を追っている。いくら非合法で神主になったからって……」
近藤が静かに尋ねると、瑞波は一瞬だけ遠くを見た。そしてまたクルリと反転すると
「……世の中は、お前の目線で見えるものだけではない」
と言い、再度走りだしたのだった。
[登場人物紹介]
名前:井幡拓也
別名:井幡 井幡さん
年齢:41歳
守神:埴安神
能力:土で出来たそっくりなコピーを作りだせる
簡単な動きはつけれるが、喋れない
備考:関東水神會 幹部
クッキーや五島のような武闘派とは対立関係
風俗店の経営など金儲けが主体のヤクザ
五島と共に赤星によって、生きながらの神主となる
見返りとして魔月妃に多額の出資をした
名前:金山鉱次
別名:金山
年齢:享年36歳
守神:金山毘古神
能力:石などの鉱石を操る事が出来る
備考:半グレのチンピラ
二年前、悪霊に取り憑かれ一ノ瀬愛麻羅の右目を切る
その後、除霊され釈放される
数ヶ月前、些細な事で喧嘩になり刺されて死亡
二年前の事件の時から魔月妃にマークされていた
死亡時に赤星と歌野により神主化
井幡の監視役




