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第二十五話 脅迫






「脅迫状?」

土方が驚いた声を出す。ここは雨宮のライブ会場の控え室。リハーサルが終わり普段着に着替えた雨宮と合流して、控え室で話しをしていたのだ。チーフマネージャーの大黒と、サブマネージャーの米津はスタッフとの打ち合わせで席を外している。つまり控え室にはクッキー達と雨宮だけなのだ。雨宮だけになると、まずは簡単に全員が自己紹介をした後、土方の熱いファンの語らいが始まりそうになるのを遮り、斎藤が黄泉国や神主、神人の説明をした。やはり雨宮は将吾達と同じ生まれながらの神主だったようで、淤加美や奈美ちゃんの事も見えていた。挿絵(By みてみん)

「小さい時から歌ったり踊ったりすると現れるんです。パパやママには見えないみたいだし、私の密かなお友達だったんです」

淤加美が雨宮の守神が天宇受賣命だと伝え、天宇受賣命は芸能を司る神様だと説明すると、雨宮が少し恥ずかしそうに答えた。雨宮の人気の秘密は、実力もさながら天宇受賣命の力もあるのかもしれない。さっきのリハーサルのステージは言葉では言い表せない迫力があった。天宇受賣命の力がどのように働いているかは分からないが、人を惹きつける魅力を最大に引き出せるのかもしれない。続けて斎藤がキイロノイズミや魔月妃の事なども説明すると、雨宮は興味津々で聞いている。一通り説明を終えると今度は雨宮が、見せたい物がある、と言って一枚のスマホの写真を見せてくれた。そこには一つのダンボールに目一杯詰め込まれた郵便物のような物が写っていた。これ全部が、アンチの人達から送られてきた郵便物だと言う。誹謗中傷から卑猥な内容まで、中身は色々らしい。今ではネットの書き込みが主流だろうから、これはほんの一部だろう。

「こんなのは日常茶飯事なんですけど……。最近になって、これが届いたんです……」

雨宮が一枚の紙切れを見せる。そこにはA4用紙に、パソコンのワープロ機能などで綺麗に打たれた文字で『次のライブであなたの命を頂く』と大きく印刷されていたのだ。

「さすがにこれは……とマネージャー達が警察に相談しようとしていた所だったんです……最近、身の回りでおかしな事が起こるので気をつけていました。そしたら、あの影人間に襲われるし……」

雨宮が俯きながら言うと

「……許せない……誰がこんな事を……」

土方がワナワナと怒りに震えている。推しのこんな裏の部分を見るのは、決して気持ちが良いものではない。

「……おかしな事とは?」

斎藤が冷静に聞くと

「……自宅の玄関前に鳥の死骸があったり、衣装の一部が切られていたり、靴がなくなったりとか、細かい事が色々と……」

雨宮が答える。

「……あの影人間はアンタを狙ってた。アンチの中に神主がいて、アンタを襲った可能性が高い。その脅迫状や一連の嫌がらせとの関連はわからんが、何か心当たりはねぇか?」

クッキーが雨宮に聞くと、雨宮は首を振った。

「どんな人気者でも、必ずアンチはいるもんねぇ……」

淤加美が呟くように言う。突出した才能があるが故に、妬みや嫉妬も反動で大きくなるのだろう。メディアなどの露出が多くなれば、目にする機会も多くなり、揚げ足を取りやすいのかも知れない。だが、この紙切れは明らかに殺害予告と捉えられる。イタズラでは済まされない域だ。

「細かい嫌がらせに関しては、身の回りで起きている事を考えると、関係者か近しい者が犯人の可能性が高いな……殺害予告との関連を調べてみよう……これ、預かっても良いですか?」

斎藤が紙切れを指して雨宮に聞く。雨宮が頷くと斎藤は上着の内ポケットから白い手袋を取り出し手に着けると、紙切れをビニール袋に入れた。

「……今日、非番になりましたよね?いつも持ち歩いているんですか?」

土方が少し引き気味に聞くと

「……ついクセでな……鑑識課に知り合いがいるから調べてもらおう」

斎藤が真顔で答えた。さすがは元警視庁捜査一課のエリート。仕事がプライベートを占領してる……。斎藤はかつて警視庁の捜査一課三係にいた。巨大百足の一件で、八尾によってキイロノイズミに引き抜かれた形だ。しばらくは、かつての同僚や部下になんの説明も出来ない状態だったのだ。その人達にしてみれば、斎藤が突然仕事を外れ、音信不通になったのだ。そりゃあ、心配もするだろう……。だが、魔月妃を正式に追う事が決まり、魔月妃側の神主の情報集めの為に古巣に顔を出す事が出来たらしい。キイロノイズミの事は多くは話せないが、話せる範囲の説明は出来たようだ。皆、いまだに斎藤の事を信頼して頼りにしてくれているという。斎藤が、かつてどれだけの人望があったかが伺える。するとドアをノックする音が聞こえ、大黒と米津が控え室へ入ってきた。雨宮がクッキー達に、身の回りで起きてる事を伝えたと大黒に説明すると

「……優寿寧ぐらいの有名人になるとよくある事なんですが、万が一の事があってはマズいので、どうかよろしくお願いします……」

と大黒が頭を下げた。すると斎藤が

「わかりました。警察の方で調べてみます。それと彼ら達に雨宮さんの身辺警護をお願いしたいのですが……?」

とクッキー達を見ながら言うと、大黒が少し戸惑いながら

「……えぇ?……皆さんが……ですか……?」

と言う。それを見た斎藤が

「高いお金を払ってボディガード雇うより、よっぽどお役に立ちますよ」

と、ニヤリと笑いながら言うと雨宮が

「私もこの方達なら安心できるから……お願い……」

と頼みこんだ。大黒は戸惑いながらも

「……い、イイの?……わかりました……本人たっての希望なので……どうか、よろしくお願いします……」

と再度、頭を下げた。



大黒達がまたもスタッフから呼び出され控え室から退出すると、奈美ちゃんが少し心配そうに

「……なんか……芸能人の身辺警護なんて……素人の私達に大丈夫ですかね……?」

と、みんなを見ながら言う。すると斎藤が

「いや、神主が相手の可能性が高いのなら、警察やその辺のボディガードより君達の方が適任だよ。それは間違いない。君達には出来ない警察としての捜査は我々がする。君達は雨宮さんの警護を頼む」

と、腰に両手を当てながら言うと

「皆さん!頼みましたよ!」

と、土方が拳を突き出しながら言う。八尾から給料を貰った手前、断る事は出来なさそうだ。すると淤加美が

「……えぇっと……アタシは閻魔省の仕事があるんだけどねぇ……」

と苦笑いで言うと、クッキーがすかさず

「お前、ホントに仕事してんのか?お前が仕事をしてるトコを見た事ねぇぞ?……それに奈美、心配すんな。お前だって本気出せばスゲェ力があるじゃねぇか?」

と言う。クッキーを殴ろうとしている淤加美を宥めながら将吾が

「……伊邪那美の力……大きく力を失っているとはいえ、タツ君を助けたあの力は確かに頼りになります……」

と言うと

「そ、そんな……将吾君やクッキーさんに比べたら、私なんか……」

と、奈美ちゃんが謙遜する。するとクッキーが

「……奈美。前から思ってたんだが、お前ひょっとしてその力を何かに使っちまったんじゃねぇのか?お前のその…………」

と言いはじめた。奈美ちゃんは黙ったまま静かにクッキーを見つめる。クッキーは何かを感じとり、思わず話すのを止めた。そんな二人の様子を見て淤加美が

「…………奈美ちゃん……やっぱり……」

と、呟く。だが、話しを遮ぎるように大黒達が戻ってきてしまった。気を取り直すように斎藤が

「……では、クッキーと将吾君で、今日から交代で警護に付いてほしい。タツ君には後で連絡しておく。天音さんは病院の仕事があるから、こちらの手伝いは中々難しいだろう。空いてる時に無理なくお願いするとして、双葉さんにも空いてる時間に協力してもらおう。そうなると、淤加美や奈美さんの協力が必須になるのだが……?」

と言うと、淤加美がやれやれと肩をすくめながら

「……わかった。小雪達にも協力してもらうから……それよりさぁ、一美ちゃんもクッキーって呼ぶんだねぇ……」

と、ニヤつきながら言う。

「か……一美ちゃん……」

斎藤が顔を顰めると

「……俺のクッキーネタは、いつまで続くんだ?」

と、クッキーも顔を顰める。淤加美に詰め寄る二人を尻目に将吾が

「奈美さん、対象が女性なんで男性が付いて行けない場所などは、フォローをお願いします……」

と言うと

「……もちろん」

奈美ちゃんは軽く微笑んで頷いた。すると雨宮が立ち上がり

「……すいません。皆さん、よろしくお願いします……」

と、言いながら頭を下げる。そこで斎藤が

「我々は雨宮さんの周りで起きてる事について調べてみる。みんなも、くれぐれも気をつけてくれ……」

とその場を締めたのだった。




雨宮のライブ会場近くの路上に、一台の黒塗りの高級外車が停まっている。その後部座席には関東水神會の井幡が座っていた。すると、車の窓がコンコンと鳴る。運転席の井幡の部下がサイドミラーで確認すると、ドアのロックを解除した。

すぐに車の後部座席のドアが開き、小太りの男が一人乗り込んできた。ジーンズにTシャツでジャケットを羽織っていて、三十代ぐらいで長髪を後ろで縛っている。そう。二年前に愛麻羅の右目を斬りつけ失明させ、土方と藤堂に取り押さえられたあの男だ。挿絵(By みてみん)

「……どうだった?金山かなやま

井幡がタバコに火をつけながら、乗り込んできた男に聞く。

「……マネージャーらしきヤツと得体の知れないヤツらが数人、張りついてる……」

金山と呼ばれた男がスマホの写真を見せながら言うと、写真を見た井幡が目を見開いた。

「……!……久喜の野郎、なんで雨宮優寿寧と一緒にいやがる?」

怪訝な顔をする金山に

「ウチの五島をヤッたヤツだ。お前らで言う、時量師神って言うヤツだ……」

と井幡が説明すると

「……へぇ……コイツが……?」

金山がマジマジと写真を見ながら呟いた。

「……魔月妃さんには色々とお世話になったんでねぇ……お返しに何かお役に立ちたいんですがね……」

金山はニヤつきながら井幡に言う。

「久喜の野郎、俺らの動きに勘づいたのか……?」

井幡が考え込むと

「それはねぇんじゃねぇっすか?おそらく別件っすよ。雨宮ほどの人気者なら、嫌がらせやら脅迫やら有り得る話しだし……」

金山がポンポンと井幡の肩を叩く。チッ……こんのクソガキ……イキリ倒しやがって……。井幡はイラつきを押さえながらタバコの火を消した。魔月妃に久喜を倒したいからと応援を要請したが、来たのはこのクソ生意気な野郎一人だけだ。以前、こっちの世界で悪い霊体に取り憑かれひと暴れしたらしく、その時の能力を買われて神主になったらしいが……。まったく、ナメられたもんだぜ……。こちらの動向を探らせるつもりなんだろうが、協力する気は更々ないって事か?こうなったら久喜も雨宮優寿寧も、まとめてぶっ潰してやる……。あの芸能事務所の社長からは、脅すだけでイイと言われてるが構うこたぁねぇ……。井幡は運転席の部下に

「……おい、血の気の多いヤツを何人か用意しろ……」

と言うと、部下が頷いてスマホでSNSに何やら書き込みを始めた。

「……まさか真正面から行く気っすか?」

金山が呆れたような顔をすると

「バカ言うな。久喜の力はハンパじゃねぇ。中国マフィアを簡単に潰した五島ですら勝てなかったんだぞ?正面からいって勝てる訳がねぇ。あくまで揺動要員だ……」

と井幡が言う。すると金山が少し考えた後

「……このままの戦力じゃあ、勝ち目ねぇっすよねぇ……困ってんなら魔月妃さんに話し通しましょか?」

とニヤけながら言う。井幡が黙ったままタバコを取り出すと、金山が続けて

「……そのかわり、アンタんとこの店の一番人気の娘。アンタのオンナでしょ?メチャメチャ、イイ女っすよね?一回、ヤラセてくれませんかね?そしたら……」

と言った。グシャリと何かが潰れる音がすると、井幡が怒りに震えてタバコの箱を握り潰していた。大きく息を吐き出す井幡に

「……どうします?」

と、金山が問いかける。窓の外を見ながら井幡は

「……わかった」

と溜息混じりに答えたのだった。





「……そうか……わかった……」

瑞波奈緒恵は、そう言うとスマホを切った。ここは都内にある高層ビル、神無月ファイナンスのビルだ。その四十五階にある会議室、テーブルには魔月妃が座っていて瑞波の隣には赤口焔が立っていた。

「……つまり、時量師神を倒す為に援軍をよこせ、と言う事か?」

魔月妃が窓の外を見ながら静かに問いかける。

「……えぇ……そのようです」

瑞波が答えた。瑞波の電話の相手は金山だったようだ。金山は二年前の事件の後、悪霊は取り祓われ罪は問われず釈放されたが、今年に入りチンピラ同士の喧嘩の最中に腹部をナイフで刺され死亡したのだ。事件の後に魔月妃が目を付けていた為、赤星が付いていて嫌がる伊奈理を説得して神主化したのだ。魔月妃は顎に手を当て考えている。すると赤口が

「……考え方によれば、イイ機会かもしれませんよ?淤加美達が、我々の目的が禊による黄泉変えりだと知れば、必ず阻止しようとするはず……その前に少しでも、淤加美側の戦力を削っておくのも一つの手です」

と言う。しばらくの間の後、魔月妃が

「リスクはあるがスポンサーである井幡への建前上、無視する訳にもいかないな……。いよいよもって、覚悟を決めるか……。これより禊の為に、本腰を入れて淤加美達との全面対決へと移行する。禊を成す為には、いずれは通らねばならぬ道だ。赤口、夏海を連れて向かってくれ。戦力を潰せればそれで良し。危険だと判断すれば、無理せず戻ってきてくれて構わない。天照も出て来るかもしれない。くれぐれも気をつけろ」

と赤口に言った。赤口が軽く頭を下げると

「ワシも行くぞ!」

と赤口達の背後から声がした。赤口と瑞波が振り返ると、大山積次郎が仁王立ちで立っていた。そして魔月妃の答えを待たずに部屋から出て行ってしまった。

「瑞波、大山の爺さんの子守りを頼む……」

魔月妃が表情を変えずに言うと、瑞波も軽く頭を下げた。



 

雨宮優寿寧、ツアーファイナル。いよいよ、今日はその初日だ。約三万人が収容出来るアリーナで、今日と明日の日程で行われる。もうすでに会場周辺には、雨宮グッズを手にした人達が大勢集まってきていた。まだライブまで三時間もあるのに凄いな……。挿絵(By みてみん)

クッキー達はアリーナのエントランスに集まっていた。雨宮は最終リハを終え、衣装合わせとメイクに入っている。今は淤加美の部下の三人娘の一人、冷奈が付いてくれてるようだ。他のスタッフ達は照明や音響の調整など、忙しくあちこち飛び回っていた。この数日間、クッキーと将吾とタツが交代で雨宮優寿寧の警護に付いた。警護と言っても、何処に行くにもただ付いて行くだけの事だ。特にやる事がある訳ではないので、ただ近くで様子を見ているだけ。クッキーは早くも飽きているようだ。控え室の中などは淤加美か奈美ちゃん、小雪達が交代でそっと入り込み、付いてくれていた。自宅に戻った際は、キイロノイズミの現職警察官組が車で周辺を張り込んだ。斎藤や土方だけじゃなく近藤や藤堂も加わり、今日明日は天音も有休を取ってくれて、双葉とアキ君も駆けつけてくれる予定だ。キイロノイズミのメンバーが初めて全員で顔を並べる事になる。いつも誰かしらが抜けていたからだ。フリージャーナリストの菅野真道も意気込んでいた。将吾が雨宮に直接頼み込んで、菅野が密着取材する許可をもらえたのだ。

「人気絶頂の雨宮優寿寧の周辺に忍び寄る魔の手、こりゃあ食いつきイイぞ!」

菅野が久々の大きなネタにはしゃいでいると

「変に書いたり悪いように書いたら……わかってますよね?」

土方が笑顔で両手の指をポキポキ鳴らしながら釘を刺した。キレた土方はクッキーでも止められないだろう……これほど恐ろしいものはない。黄泉国保安局にも応援を要請したが、影人間が神主の仕業だと断定出来ず、あまり多くの人員は裂く事は出来ないとの事だった。だが、いざと言う時の為に天照大神の神人、天野氷美子が使う天岩戸隠れの使用許可が出た。アリーナそのものを、別次元の世界の無人のアリーナと丸ごと入れ替える事が出来るのだ。神主達は無人の方のアリーナに拘束される為、何かあっても約三万人の観客の身の安全を守る事が出来る。だが、天岩戸隠れは天野氷美子しか発動出来ない。天野自身がアリーナに出向く訳ではないらしいし、どうやってその時がきたら天岩戸隠れを発動するのだろう?

「天野氷美子は五神通ごじんつうの内、天耳通てんにつう天眼通てんげんつうが使えるの。五神通とは五大神通力ごだいじんつうりきの事。天耳通は簡単に言えばとんでもない地獄耳で、天眼通は言うなれば千里眼の事。遠く離れた場所の景色が見えて、音もハッキリ聞こえるらしい……。だから今日明日のこのアリーナは、天野がどこかで監視中って事。悪口言わないほうがイイよぉ……」

淤加美が意地悪な笑みを浮かべて説明してくれる。五大神通力と言う事は、神通力が五種類あると言う事か……。

「後の三つの神通力って何があるの?」

タツが尋ねると

宿命通しゅくみょうつうは過去や未来を認識する能力。神足通じんそくつうは自由に移動したり、空間を移動するなどの能力で、クッキーの力がコレに近いかも。そして他心通たしんつう。他者の心を読み取る能力。魔月妃の能力の一つと言われてる……」

と、淤加美が答えた。

「……つまり、宿命通は予知能力で神足通が瞬間移動。他心通がサトリって事か……」

将吾が宙を見ながら言うと

「……ん〜……かなりザックリしすぎだけど、まぁ間違ってはないかなぁ……」

と、淤加美が苦笑いする。それより何より恐ろしいのは魔月妃の能力だ。心が読めると言う事は考えている事も丸わかり、って事だろう。そんなの、どうあがいても勝てる訳がない。恐ろしすぎる。

「……常に読み取れる訳ではないみたいよ。ここぞと言う時の瞬間、瞬間で読み取るんだって……って神谷が言ってた……」

皆んなの顔が強張ったの見て、淤加美が慌てて付け加えた。

「でも、クッキーさんの能力『時間軸の変更』なら、魔月妃に対抗出来るかもしれない……。『心を読むより早く動く』なんて事が出来たら、まさに神足通ですね……」

と、アキ君が言うと

「クッキーの力って神通力だったの?見た目通り神様じゃん?」

天音が驚きながらも茶化す。すると双葉と将吾と奈美ちゃんが、クッキーに黙って手を合わせ始めた。

「……やめろ。オレを拝むな……」

クッキーがボソッと突っ込む。すると、遅れてキイロノイズミの正規メンバーが到着した。斎藤と土方、近藤に藤堂。全員、勢揃いだ。

「遅れてすまない。全員、揃っているな?今日の配置を説明する」

斎藤が言いながらアリーナの地図を広げた。と、同時に淤加美が

「……?……ちょっと待って!」

と言う。どうやら雨宮に付いている冷奈から何か連絡があったようだ。斎藤が

「淤加美と奈美ちゃんなら、誰にも気づかれないから色々と都合がいい。すぐに向かってくれ。もしもの事を考えて、クッキーも一緒に行ってくれ。何かあれば、すぐに連絡を」

と言うと同時に、クッキーと淤加美と奈美ちゃんが控え室に走り出した。




一台の黒い大型のワンボックス車が路上に停まった。横のスライドドアが開き、大和田夏海と瑞波奈緒恵と赤口焔が降りてきた。

「……適当に回ってろ。戻る時は連絡する」

井幡が助手席から降りながら、運転している井幡の部下に言うと

「……戻るか……果たして生きて帰れるかな?」

大山積次郎が笑いながら皮肉を言う。

「……チッ」

井幡が聞こえないように、小さな舌打ちをする。車からは最後に金山が降りてきた。

「……では、先程の手筈通りに……」

井幡が全員に言うと、六人は黙ったまま目の前に聳え立つ大きなアリーナに向かい歩き始めた。








[登場人物紹介]

挿絵(By みてみん)

名前:天津甕星あまつみかぼし

別名:赤星一樹あかほしかずき

年齢:不詳

守神:なし

能力:自分の呪力を他人に分け与える

備考:神人  星の神

   反魂の儀を使い死者に呪力を与え神主にしていた

   呪力を与えた後は伊奈理から呪力を貰っている

   生きている人間やその他の生物にも呪力を与えられる

   その場合、反魂の儀より与えられる呪力が少なくなる

   魔月妃の命により歌野の監視役をしている

   心内が読めない謎めいている人物

 挿絵(By みてみん)

名前:宇迦之御魂神うかのみたまのかみ

別名:歌野伊奈理うたのいなり

年齢:不詳

守神:なし

能力:何かを失う事で何かを得る

   得る物は失った物の大きさに比例する

備考:神人  五穀豊穣や食物を司る神様 お稲荷さん

   自分の顔を傷付ける事で、強大な呪力を得ている

   その呪力を赤星に与えている

   顔の無数の傷を隠す為、キツネの面をつけている

   大和田夏海とは、その昔に縁があるようだ

   嫌々ながらも、なぜか魔月妃の言いなりになっている

   

   

 




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