第二十四話 雨宮優寿寧
『アメミヤユズネェェェ!』
黒い物体が叫びながら、両手を振り上げ雨宮に飛びかかってきた。その瞬間、クッキーが時間軸を変えた。雨宮の顔の目の前で黒い物体の両手が止まっている。雨宮は腰を抜かして座り込んでしまった。クッキーが雨宮を掴んで素早く階段を駆け上がる。半階分上がった所で、時間軸が元に戻った。黒い物体の両手は空振りをすると、体が壁に激突する寸前で止まった。そしてゆっくりとクッキー達の方を向く。黒い物体はムクムクと大きくなり、完全に大人の人間の形のシルエットになった。真っ黒な影人間みたいだ。そして右手を前に突き出すと、手から剣のような物が伸びてきて構えた。
『邪魔をするな……貴様も神主か?』
黒い影人間が言う。よくテレビとかで身分を隠したい人が、音声を加工しているような声だ。
「……って事ぁ、テメェも神主だな?」
クッキーが黒い影人間を見ながら言う。だが、生身の人間ではないだろう。きっと双葉の風神雷神や、タツの八岐大蛇のように本体とは別で、本体である人間はどこか別の場所にいるのだろう。クッキーは懐から小さな木箱を取り出した。およそ3センチ四方の正方形の箱だ。
「コイツは多持箱って言ってな。大きな物や重い物、数が多い物を持ち運ぶのに便利なんだと……」
クッキーが雨宮に言うが、当然雨宮は訳がわからずだ。クッキーは箱の蓋を開けると、右手の人差し指と親指を突っ込み何かを指でつまみ出した。すると、瞬く間にクッキーの右腕にガントレットが装着されたのだ。呪力研究所の一ノ瀬愛麻羅からガントレットを渡された時に、一緒に貰ったのが多持箱だ。多持箱も愛麻羅の開発した物らしい。呪力によって質量を変えずに時空そのものを圧縮して、物質を箱の中にしまいこむ事が出来るという。なのでガントレットのような大きくて重い物でも、多持箱に入れてしまえばポケットに入れて持ち運べるらしい。
「コイツが神主なら、話しは早い」
クッキーが身構えたと同時に、黒い影人間が剣のような物で斬りこんできた。クッキーはガントレットで防御する。鈍い音が響き渡るが、しっかりと防いだ。ガントレットは強固な盾としても使えるようだ。
「構わず行け!」
クッキーが雨宮に叫ぶ。雨宮は頷くと躊躇しながらも、階段を駆け上がっていった。
『逃すか!』
影人間がすかさず雨宮を追いかけようとする。やはり……。目的はわからんが、コイツの狙いは雨宮優寿寧だ。クッキーも階段を駆け上がった。クッキーは雨宮を守るように、影人間の攻撃をガントレットで防御しながら、二人で階段を登っていく。二階から半分ぐらいまで登った所で、影人間は狂ったように連続で斬りこんできた。最初の何発かは防御するが、一発がクッキーの体に当たりそうになった瞬間、時間軸を変えた。ガントレットで剣のような物を払いのけると、強烈な打ち下ろしを影人間に叩き込む。時間軸が元に戻ると、影人間は一階まで吹っ飛んでいき地面に叩きつけられた。
「通常運転でも、かなりの威力だな。とにかく今の内だ!」
クッキーがガントレットを見ながら言うと、雨宮と階段を駆け上がった。佐保莉ちゃんの病室は407号室。たぶん、四階にあるはず。クッキー達は三階の半分まで上がってきた。あと少し。だが四階の非常口の扉には、影人間が待っていたのだ。吹き抜けを風のように音もなく駆け上がり、先回りしたのだ。
「ウソだろ?」
クッキーが呟く。影人間が剣のような物を両手で持って振りかぶり、雨宮に斬りかかった。だがクッキーがカウンターで、影人間のガラ空きの腹にガントレットを叩き込む。影人間はくの字になって、壁に叩きつけられた。すかさずクッキーが追撃に飛び込む。バチバチと電流が迸るガントレットが影人間に当たる直前に、影人間は消えていなくなった。
「では……行きましょう。頑張ろうね」
看護師が佐保莉ちゃんに声を掛ける。稼動式のベッドに寝ている佐保莉ちゃんは頷いた。両親に見守られながら、今から病室から手術室へ移動する所なのだ。看護師がベッドを移動させ始めたその時
「佐保莉ちゃん……」
マスクを外し、帽子を取った雨宮優寿寧がベッドに近づいて声を掛けた。一瞬、病室が明るくなったような気がした……。気のせいか……?
「……え?……えぇ!」
「……うそ?」
看護師達が雨宮を見て驚きの声を上げる。佐保莉ちゃんの母親も両手で口を押さえた。超有名人である雨宮優寿寧が目の前に立っているのだ。無理もない。
「……ホン……モノ……です……か?」
佐保莉ちゃんの母親が思わず聞いてしまう。佐保莉ちゃんも片手で口を押さえて目を見開き固まっていた。
「今日、手術だとお手紙に書いてあったんで、来ちゃいました」
言いながら雨宮が右手を差し出す。佐保莉ちゃんも右手を出して握手すると、涙が溢れだしてきた。ボロボロ泣き始めた佐保莉ちゃんの頭を、母親が同じく涙を流しながら
「よかったね!よかったねぇ!佐保莉……大好きな優寿寧ちゃんに会えたねぇ」
と撫でている。
「今まで、たくさんのお手紙ありがとう。全部、読んでるよ。大変な手術だと思うけど、頑張ってね。そしていつか必ず、ライブを観に来てね。アタシもそれまで頑張って待ってるから……」
雨宮はそう言うと、微笑みながら佐保莉ちゃんの右手を両手で優しく握った。佐保莉ちゃんは泣きながら頷く。その様子を少し離れた所で、クッキーと天音が見守っていた。黒い影人間が消えてから、すぐに天音に連絡したのだ。天音が四階のナースセンターに話しをつけてくれてたので、天音と合流して面会させてもらったのだ。
「まぁ、何はともあれ良かったね。……でもさ、その影人間って……」
天音がクッキーに言うと
「あぁ……どう言う訳か、雨宮優寿寧を狙ってた……。魔月妃ってヤツ側の神主かはわからんがな……」
クッキーが答える。すると背後からタツと将吾と双葉が合流してきたのだった。その後、病院関係者の計らいで従業員用の通路を使い、雨宮を一階の裏口まで連れていった。そこでタクシーを呼び雨宮を乗せる。
「……すみません、色々とお世話になってしまって……」
タクシーに乗り込んだ雨宮が、軽く頭を下げる。するとクッキーが自分の財布からお金を出して、窓からタクシーの運転手に渡した。
「青坂のテレビ局まで……釣りはいらないんで……」
クッキーがタクシーの運転手に言うと
「……あぁ!ごめんなさい!大丈夫ですよ。楽屋に戻れば財布はあるし……」
雨宮が慌てて言いながら断ると
「……今日のギャラ代わりって言っちゃあなんだが、貰ってくれ。人気者には、足りねぇかもしれねぇがな……わざわざ来てくれて、ありがとな。帰りの足代にしてくれ」
と、クッキーが構わず運転手に渡した。申し訳なさそうな顔をする雨宮に、天音が
「……こちらこそ、佐保莉ちゃんに会いに来てくれてありがとう。きっとこれで手術も無事に成功するはず。今日貴方が来てくれた事は、佐保莉ちゃんにとってかけがえのない大きな奇跡だから……。『奇跡は起こる』って示してくれた事は、大きな自信に繋がる……これぐらいの事はさせて下さい」
と笑顔で言う。
「……お金出したの、クッキーさんだけどね……」
苦笑いで呟くように言うタツに、天音の強めの肘打ちが入る。タクシーのドアは閉まり、窓が開いた。すると雨宮が思い出したように
「……あ、あと、あの黒い影……。それと、あの不思議な力の事……」
と話し始めると、途端に全員が固まる。やはり忘れる訳ないよな……なんて説明しよう……。全員がそう思った時、雨宮が
「……今度、ゆっくり聞かせてください。じゃあ、また……」
と、言って再度頭を下げた。そして帽子とメガネとマスクを外した。その瞬間、溢れ出るようにオーラのような神々しい煌びやかな輝きを放ったのだ。光輝き眩しく見える。これが芸能人のオーラなのか?さっき病室が一瞬明るくなったのは、このせいなのか?クッキー以外の全員が圧倒されてそう思っている中、クッキーが呟く。
「……お前……ひょっとして神主か?」
みんなが驚いてクッキーを見る。確かに神主はその力故に、時として凄まじいオーラや禍々しいオーラを出す事もある。
窓が閉まりながら走り出すタクシーの後部座席には、クッキーの声が聞こえたであろう雨宮が、微かに笑みを浮かべているのが見えた。
「雨宮優寿寧に会うってホントですか!」
陰陽神社の居住家屋の居間で、土方がクッキーに詰め寄っていた。
「……お、おぉ。アイツのマネージャーから病院に連絡があって、天音がマネージャーと話しをしたらしい。お礼も兼ねて一度、ちゃんと話しがしたいってな……」
土方が顔をくっつくぐらいに圧をかけると、さすがのクッキーも後退りする。
「佳乃は雨宮優寿寧の大ファンらしくてな……」
斎藤が苦笑いをしながら言うと
「いつ?場所は?私も行きます!」
興奮が冷めない土方がクッキーを追い詰めていく。
「明後日らしいよ。どういう訳か、お迎えを出してくれるんだって。だから場所はわからないみたい……」
アキ君が答えると、途端に土方が肩を落とした。
「……あぁ…………仕事だ……」
小さな声で呟く土方に
「……有休取りな。アタシが代わりに出るから……」
斎藤が溜息まじりに答える。
「か、神様ぁぁ……」
土方が泣きながら斎藤に抱きついた。
「神様はこっちだろ……」
斎藤が苦笑いで淤加美を差す。淤加美も苦笑いだ。すると近藤が
「斎藤さんは元々公休ですよね?斎藤さんも行ってください。土方が居ない分はなんとかするんで……」
と言う。斎藤が怪訝な顔をすると
「……コイツが暴走しないように」
と言って土方を親指で指差した。ニヤニヤが止まらない土方を見て
「……それはわかったが……大丈夫なのか?」
と、斎藤が近藤に聞くと
「一日ぐらいなら、藤堂さんとなんとか頑張りますよ」
と、近藤が笑ったのだった。
明後日、改めて陰陽神社の境内の階段下にクッキー達は集まっていた。クッキー、将吾、土方、斎藤と淤加美と奈美ちゃんの六人で行くようだ。天音は仕事で行けなくて、双葉も実家の手伝いがあるらしい。アキ君も今日は手が離せないみたいだし、タツは八尾にお手伝いを頼まれて出かけるそうだ。天音とタツと双葉は先日、雨宮優寿寧に会っているからさほど残念そうではなかったが、アキ君はかなり悔しがっていた。実は少し前にクッキー達にもキイロノイズミとして給料が払われたのだ。八尾いわく、警察官ではないので税金から支払われた訳ではなく、八尾の雇った従業員として八尾の経営する会社が支払ったそうだ。八尾は複数の会社で役員や顧問を努めているのだ
「人間、綺麗事を並べても、結局お金がないと何も出来ないでしょ?キイロノイズミとして色々とご尽力されているんだから、これぐらいの事はさせてちょうだい」
八尾はみんなに封筒を手渡しながら微笑んだ。八尾こそどう言う経緯で黄泉国対策組織委員会、通称キイロノイズミの室長を努める事になったのか?など謎が多い。日本の政治の根底に、大昔から深く関わっている八尾だからこそ出来る事なのだろう。淤加美の話しでは、千年以上は生きているらしい。表舞台に出たり出なかったりを繰り返し、名を変え見た目を変え、さも普通に生きてる人のように振る舞っていると言う。八百比丘尼……信じがたいが霊体や神人ではなく、人間なのである。しばらくすると、迎えの黒い大型のワンボックスカーが到着した。運転席から降りてきたのは、雨宮のマネージャーだと言う男性で、渡された名刺を見ると大黒蓮と言う名前で年齢は三十代ぐらい。背が高く小綺麗なスーツ姿で、髪はサラサラ。真面目そうで、仕事が出来そうだ。
「……えっ……と……久喜さんですか?」
大黒がクッキーに恐る恐る聞く。
「あぁ……。後ろはメールで言ってた連れだ」
クッキーが親指でみんなを指すと、大黒が一人一人に名刺を渡していく。一通り挨拶を終えると助手席にクッキーが乗り込み、後部座席に残りの全員が乗りこんだ。淤加美と奈美ちゃんもシレッと乗り込む。声や音を出さなければ、バレないだろう。大黒が運転席に乗り込み、車を走らせる。行き先は都内の某高級ホテルだと言う。雨宮はそこで待っているそうだ。
「すみません、御足労願っちゃって……。雨宮がどうしても、と聞かないもので……」
大黒が運転しながら申し訳なさそうに言うと
「全然、大丈夫です!」
土方が掛かり気味に答える。昨日は興奮のあまり、寝れなかったそうだ。
「雨宮から話しは聞いてます。色々とお世話になってしまったみたいで……」
と大黒が言うと、土方がすかさず
「いえいえ!」
と返す。やはり暴走防止に斎藤が来て良かったのかもしれない。土方はニコニコしてはいるが、目がギンギンだ。
「……後ろの方々は、お友達なんですか?」
そんな土方に少し怯えたような表情の大黒がクッキーに聞く。
「……まぁ、そんなとこだ。ぜひ、雨宮優寿寧に会いたいって言うもんでな……」
クッキーは少し戸惑いながら説明する。将吾やキイロノイズミの人達の事を友達と説明してイイものか、迷ったようだ。
「私と土方は警察官なんです。警察庁の特務課に所属しています。今日は非番なんで警察手帳は持ちあわせてないですが……久喜さん達は警察のサポートをしてくれているんです。友人でもあり、職場の仲間みたいなものなんですよ……ちなみに雨宮さんが会いに来てくれた女の子、佐保莉ちゃんの手術は無事に成功しましたよ」
斎藤が補足するように答えてくれた。正式には警察庁特務三課黄泉国対策組織委員会。警察と名がつくが名義だけで、どちらかと言うと国の直轄組織だ。
「……そうですか……それは良かったです。と言うか、警察の方なんですか?なら、丁度よかったです。今ちょっと色々あって、警察に相談に行こうかと思ってた所なんですよ……」
と、大黒が驚きながら言う。警察に相談?何かあったのだろうか?すると大黒のスマホが鳴った。
「ちょっと、すいません……もしもし……」
大黒がハンズフリーで電話に出ると、車内のスピーカーに女性の声で
「あ、もしもし米津です。ステージ装置の関係で、リハの時間が前倒しになっちゃって……。今、会場に向かってるんですけど、どうします?」
と、言ってきた。どうやらホテルで待ち合わせのはずが、予定が変わりそうだ。
「……わかった。じゃあ、このまま会場の方に向かうから、ヨロシク」
大黒がそう言って電話を切った。
「……すいません。リハの時間が早まったみたいで、ライブ会場の方でお話しを……」
大黒がみんなに言う。ライブ会場の近くにホテルを取っているので、距離的にはあまり変わらないそうだ。それにしても、テレビの収録にライブに本当に忙しそうだ。大黒の話しでは今年にソロデビューをして、全国ツアーで北から南を回ってきたのだ。今度の二日間に渡って行われる、都内のアリーナ公演がツアーファイナルなのだそうだ。土方もチケットを申し込んだみたいだが、抽選で外れてしまったらしい。
「ひょっとして、リハを見れたりするんですか?」
土方の目の輝きが止まらない。
「本当はダメなんですけどね……今回は特別に……」
大黒が苦笑いで答える。今回、雨宮の方から話しが聞きたいと言いだしたらしく、かなり強引にスケジュールをこじ開けたようだ。影人間の事やクッキーの力の話しが聞きたいのだろう。雨宮はイイとして、マネージャーの大黒や他のスタッフにはあまり知られたくない話しなので、さてどうしたものか……。マネージャーの大黒が雨宮の言いなりになっているのは、また抜けだされたりするのを恐れての事だろう。雨宮の仕事は一回のミスで何億という損害が出る可能性もある。また抜け出されてもし仕事に穴が空けば、その影響の広がりは計り知れないのだ。そうこうしてる内に、車はライブ会場に到着した。従業員専用ゲートの方に周り、従業員用の入口に車を停めた。そこには三十代ぐらいの女性が一人立っていた。肩までぐらいの髪でメガネをかけている。背は低く少しふくよかな人だ。
「リハ、もう始めてます。話しは終わってからでイイですか?」
と、聞く。
「リハを先に済ませて楽屋で話そう。車停めてくるから、皆さんを会場まで案内してあげて……」
大黒が女性に言うと、女性が頷きクッキー達の方を見る。
「あ、私サブマネの米津です……」
女性が言いながら名刺をくれた。サブマネージャー、米津志乃絵と書いてある。どうやら大黒が雨宮のチーフマネージャーで、この女性がサブマネージャーのようだ。米津が先に立って歩きだす。大黒は駐車場に車を停めに行ったようだ。クッキー達は女性の後に続く。通路をしばらく歩くと、遠くから音楽が聞こえてきた。歩いていくと、音はどんどん大きくなる。そして先頭の米津が大きな扉を開けると、座席が沢山並んでいる観覧席に出た。ステージからは爆音が鳴り響き、雨宮が歌っている所だった。圧巻だった。
とてもリハーサルとは思えないクオリティだ。圧倒的な声量で、その辺の歌が上手い人とは迫力が違う。ダンスもキレがあり、ステージでの見せ方も上手い。音響が良い事もあり、全員が圧倒されてしまった。そういうのに鈍いクッキーですら
「……すげぇな……」
と、言って見入っている。すると今までバレないように大人しくしていた淤加美が
「あ、あれ……」
と言ってステージを指差す。ステージで歌い続ける雨宮の背後には、着物を着た綺麗な女性の姿が浮かび上がっていた。その着物を着た女性から放たれる煌びやかなオーラが、観ている者達を包みこんでいく。
「……やはりな……。アイツも神主だったんだ……」
クッキーが呟くと
「……天宇受賣命。芸能を司る神様だよ……」
淤加美が腕組みをして言う。みんなは圧倒的な天宇受賣命のステージに見入っていた。
都内の住宅街の中にある小さなガード下。そこに一台の黒い高級外車が停まっている。車の後部座席には、二人の男性が並んで座っていた。一人は関東水神會の井幡で、もう一人は綺麗なブランド物のシャツに同じくブランド物のジャケットを羽織っている四十代ぐらいの男だ。髭を生やしていて、絵に描いたような金持ち経営者に見える。その男が懐から封筒を取り出し、井幡に渡した。
「……では、頼みましたよ」
社長風の男が井幡に言うと
「……脅すだけでイイのか?」
井幡がタバコの灰を灰皿に落としながら言う。
「今や国民的スターですからね……。やり過ぎると、世間を敵に回しちまうんですよ……。なぁに、ちょっと刃物をチラつかせて脅すだけでイイんです。ビビって仕事に支障が出れば、付け入る隙はあるんで……そうすれば、ウチの事務所の娘達の出番が増えて、雨宮優寿寧の仕事を横取りしていけるんですよ。この世界は弱肉強食。バカな奴や隙を見せた奴が、喰われて消えていくんです。もちろん報酬はちゃんと支払いますし、ウチの事務所の使いモンにならなさそうな娘を、お預けしますんでお店で使ってやってください」
社長風の男が井幡に笑いながら言ったのだった。
[登場人物紹介]
名前:瑞波奈緒恵
別名:瑞波 奈緒恵
年齢:享年29歳
守神:罔象女神
能力:罔象女神の力を宿し妖刀村雨を使った多彩な剣術
備考:自宅にて遺書が見つかるが、消息は不明とされる
家族はいなく施設育ち
家賃が支払われない為、大家が通報した
育ちや生前の職業など不明な点が多い




