表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
238/265

戦国武将診断と八頭身パォの午後

休日の午後。

吉峰家のリビングには、昭和歌謡が穏やかに流れていた。

琴美はノートPCの前で、昭和のパソコンユーザーのような前傾姿勢のまま画面をスクロールしている。眉間には深いしわ。だが次の瞬間、そのしわがぱっと解けた。

「うわっ、これ面白そう!」

思わず声が弾む。

画面にはこう書かれていた。

戦国武将診断──あなたはどの大名タイプ?

琴美の目は、一瞬でそのタイトルに奪われた。

背後でゲームをしていたアレンが呆れたように顔だけ向ける。

「姉ちゃん、そういうの毎回当たらないじゃん」

「失礼ねアレン! こういうのを見ることで文化の本質が理解できるのよ!」

新聞をめくっていたジョージ父が、眼鏡越しに笑った。

「……戦国武将で文化の本質……?」

キッチンからさくら母がひょいと顔を出す。

「琴美、また変な企画しようとしてるのね。ごはん前にテンション上げすぎないでよ~」

しかし琴美はそれどころではなかった。

スマホを素早く操作し、誰かにメッセージを送る。

――もちろん、真平である。


文化部・戦国武将診断大会 開幕

放課後の文化部部室。

扉を開けるなり、琴美はA4の紙束を机に叩きつけた。

「見て見て! 戦国武将診断!!」

沙羅は紙束を見て、眉をひそめた。

「……紙? なんで印刷してんのよ」

「スマホより紙のほうが戦国の重み出るでしょ!」

「いや、そういう問題じゃないでしょ……」

真平は深いため息をつき、シャオはぱぁっと笑顔を広げた。

「パォ! 武将になるの!? カッコイイです!」

美優は両手を胸の前で組み、うっとりとつぶやく。

「わたし、政宗がいいなぁ……三日月の兜かわいいですし~」

萌香がすかさず突っ込む。

「美優っち、それ完全に見た目だけで選んでるやつ」

勇馬は真剣な顔で紙を覗き込み、メガネを押し上げた。

「……この診断、統計的根拠があるんですか?」

琴美は大げさにため息をついた。

「勇馬はね、そういう理屈で損するタイプ! 男はノリと勢いなの!!」

沙羅の小声が刺さる。

「……あんた昭和男児か」

笑いが広がる中、診断大会が始まった。


第一問:あなたがリーダーなら、どう動く?

「はい第一問! あなたがリーダーなら何を優先する?」

琴美は即答する。

「もちろん革命よ! 信長タイプね!」

真平は控えめに手を挙げる。

「……周りの意見、かな。家康寄り?」

沙羅は腕を組んで冷静に言った。

「効率と勝率。謙信か秀吉ね」

シャオは元気いっぱい、拳を突き上げた。

「勢いです! 突撃パォ!!」

「知ってたよ」

真平の苦笑が部室に混じる。

美優は湯呑をそっと置きながら微笑んだ。

「皆さんがお茶を飲んで仲良くなれるように……秀吉さん?」

「それ美優っち本人やん」萌香が笑う。

勇馬は紙を凝視し、独り言のように言った。

「僕は……壊れた武具を直すので……鍛冶担当?」

琴美が勢いで斬る。

「武士じゃなくて修理班ーーっ!!」

笑いが絶えない中、診断結果が発表されていく。


一通り結果が出揃い、部室が落ち着いたころ。

真平がぽつりとつぶやいた。

「……でもさ。シャオって、どう考えても山県昌景だよな」

シャオが小首を傾げる。

「パォ?」

琴美が驚いた顔で続く。

「なんでそこ!? 赤備えの猛将でしょ?」

勇馬が解説モードに入り、メガネが光る。

「山県昌景は身長140cm前後とされていて――」

美優が指を折りながら優しく微笑んだ。

「いまのシャオちゃんより小さい……かわいいですねぇ……」

その一言で。

シャオの肩がぴくりと震えた。

「…………………パォ……」

完全にダメージである。

「シャオっち固まった!!」萌香が叫び、

沙羅が鋭い目で勇馬をにらむ。

「勇馬、情報の使いどころ悪すぎ」

琴美がしゃがみ込み、心配そうに覗き込む。

「シャオ、背のこと気にしてたの?」

シャオは小さな声でつぶやいた。

「わたし……もっと大きくなりたい……パォ……山県さんよりは……勝ちたい……」

真平がすぐさま突っ込む。

「だから勝負の方向性がおかしいんだって!」

そのとき、美優がそっと微笑んだ。

「小さくても強いのは、とっても魅力的ですよ?」

――その瞬間。

シャオの目に光が灯った。

「パォッ!!じゃあいいです!!」

部室中に、安心の笑いが広がる。

ズーハンが勢いよく立ち上がる。

「ナイス! オレの相棒は猛将シャオだ! 小さくても火力は最強!!」

部室

「おぉ~~!!」

シャオの瞳は完全復活していた。

「パォォ! 私、赤備えです!かわいくて強い!最強パンダ戦士ですぅ!!」

琴美が額を押さえる。

「最後のパンダやめなさい!!」

真平はもはや混乱していた。

「フォローなのか悪化なのか分からん……」


別の日。

また背のことでいじられ、シャオは机に突っ伏していた。

「……パォ……」

そんな彼女に、真平が静かに声をかける。

「おまえの姉ちゃん見ろよ。八頭身美人だろ?おまえも将来そうなるって」

シャオが顔を上げる。

「……パォ?」

――その瞬間。

部室は一度、静寂した。

美優が震えた声で口を開く。

「……八頭身でパォって……かわいすぎます~~!!」

堰を切ったように、笑いが爆発した。

「ギャハハハ!!」

「腹痛ぇ!!」

琴美

「モデル体型でパォは反則!!」

沙羅

「ランウェイでパォ言われたら耐えられない……」

ズーハン

「GG!!最強のモデルパンダ誕生!!」

勇馬

「昭和特撮の新ヒーロー……パォレッド……」

シャオは顔を真っ赤にし、机をバンバン叩く。

「パォォォ!!笑うなですぅぅ!!八頭身でもパォはパォですぅぅ!!」

萌香は涙を拭いながら叫ぶ。

「かわいすぎるんよ!!」

そのとき──

巫鈴が静かに本を閉じ、ひと言だけ落とした。

「……まぁ、ギャップは最強の武器だからね」

その瞬間、部室は二度目の爆発を迎えた。

真平が笑いながら肩をすくめる。

「ほらな。おまえ、将来とんでもないギャップ美人になるって」

琴美

「八頭身パォ、世界狙えるわよ!」

シャオ

「狙わないですぅ!!」

だが、その声はもうすっかり明るいパォだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ