十五夜フェス:バニーから貴族へ
夜の校庭は、秋風と虫の音に包まれていた。
部室の真ん中、日ノ本文化部が張り切って準備した“特製お月見会場”が完成している。
レジャーシート、すすき、団子の代わりにシュークリーム、そして……謎のド派手なライト。
「さぁ~今年もやってまいりましたぁ! 日ノ本文化部・十五夜フェスティバル!」
琴美がマイクを構えて叫ぶ。
月光を浴びたその姿は、なんと――真っ白なバニーガール衣装。
「……ちょっと待て」
真平が湯飲みを持ったまま固まる。
「なんで“お月見”でバニーガールなんだよ!?」
「“月の兎=月面作業員=作業着(=バニー)”って昭和の三段論法よ!」
「そんな強引な昭和理論あるかっ!」
隣には、まさかの全員参加。
沙羅は肩を出した黒バニーに腕組みしながら、ため息。
「……琴美、これ完全に“宴会芸”の域よね」
萌香はピンクのバニー姿でポーズ。
「でも映えるじゃん! ♯文化部十五夜祭 ♯月より私が輝く!」
巫鈴は淡い水色のバニーで耳をぴょこぴょこさせながら、冷ややかに。
「……理屈では説明不能。でも楽しそうだから不問にする」
美優は和風アレンジの着物バニー。
「うふふ……“旅館の月見膳”風アレンジ、どうかしら?」
シャオは金色のウサ耳に跳ねながら。
「パォォ! 台湾にも月餅あるです! 文化交流ですぅ!」
ズーハンは照明係としてライトを操作しながら大興奮。
「GG! 月光リミックス! バニー舞踏発動!!」
勇馬だけが真顔で湯飲みを置く。
「……文化部って、いつからアイドルユニットになったんですか?」
そのとき、琴美が号令をかけた。
「ではこれより、“十五夜うさぎダンス”を披露します!」
「聞いてないわよそんなの!!!」沙羅が叫ぶ。
流れ出す音楽はなぜか昭和のディスコメドレー。
琴美が「はいっ! ツキに代わって、レッツ・ムーンウォーク!」
萌香は「ノリでついてく!」
「……羞恥よりリズムが勝ってしまう……」と巫鈴
「うふふ、こういうのも悪くないですわね」
「パォォォ! 満月ジャンプですぅぅ!」
その瞬間、グラウンドの照明が一斉に点灯。
バニーガールたちが跳ねるたびに、観客(という名の通りすがりの他校生たち)が騒然となる。
真平がため息交じりに「やべぇ……外から見たら完全にカオスだ……!」
「……この光景、説明書を添えないと理解されません」と勇馬もあきれ気味。
数分後。
汗だくで息を切らした琴美が叫ぶ。
「ふぅ……これぞ“昭和と令和の融合”ね!」
沙羅が髪を直しながら毒づく。
「融合じゃなくて暴走でしょ」
巫鈴は月を見上げてぼそり。
「……でも、不思議と笑えてくるわね。バカバカしいのに、温かい」
萌香がシュークリームを頬張りながら笑う。
「こういうのが“文化部っぽい”んじゃん?」
美優はお茶を注ぎながら微笑む。
「ええ、笑ってお月見するのが一番の贅沢ですもの」
シャオ「パォォ! 次は中秋の名月・ライブイベントですぅ!」
「やめろォォ!!!」真平と沙羅と勇馬のツッコミが夜空に響く。
満月がまぶしく照らす校庭。
シュークリームの香りと笑い声。
そして、月明かりの下で耳を揺らす“六匹のバニーたち”。
巫鈴がふと空を見上げてつぶやいた。
「……きっと、月のウサギも笑ってるわね」
琴美はにっこり笑ってピース。
「日ノ本文化部、月面制覇完了っ!!」
翌日の放課後。
昨日の“バニー十五夜フェス”がSNSで話題になり、日ノ本文化部は懲りるどころか、さらに燃えていた。
「いい? 次は“元祖お月見”よ!」
琴美がドヤ顔で号令をかける。
「月見といえば平安貴族! 雅に、優雅に、そして……全力で!」
「……いや、最後の一言おかしいだろ」真平が早速ツッコミ。
「文化部の伝統は進化するのよ!」と琴美は胸を張る。
というわけで、宿直室は突貫の“平安装束製作スタジオ”に変貌していた。
着物を持ち込んだのは、美優。
「せっかくだから、ちゃんと時代考証をしてみましょう。ほら、袖の重ねをこうして……」
美優の手が動くたび、メンバーがみるみる変身していく。
琴美は十二単を模した艶やかな衣装にテンション爆上がり。
「うわぁ〜! これぞ“令和の清少納言”ね!」
「どちらかと言えば“はしゃぎすぎの中納言”よ」巫鈴が冷静に突っ込む。
シャオは金糸の入った朱色の小袖に身を包み、うっとり。
「パォォ……! これ着心地最高ですぅ! 夢みたいです!」
萌香は袖の長さに悪戦苦闘しながらスマホを掲げる。
「映える〜! ♯文化部雅楽団 ♯令和に蘇る平安」
ズーハンはなぜか烏帽子をかぶり、雅楽隊担当に名乗り出る。
「GG! 笙の音はまだか!!!」
「そんなの用意してないわよ!」琴美が即座に返す。
一方、男子陣も着替えを終えて登場。
勇馬は淡い緑の狩衣姿。
「……なんか落ち着きますね。呼吸が整う気がします」
巫鈴「たぶん“真面目な公家”役が一番似合うのよ」
沙羅は隣で静かに笑う。「まるで“学問の神”ね」
そして真平――
青紫の狩衣、烏帽子、そして扇。
どう見ても完全な藤原貴族である。
琴美がうっとりした声を上げた。
「出たわ……“雅の極み”真平……っ!!」
「やめろ、変な肩書きつけるな!」
そのとき琴美が悪ノリで巻物を掲げる。
「では貴族代表・真平殿に一首、お願い申し上げる!」
「……は?」
「“この恰好で古典朗詠を披露しろ”ってことです!」
沙羅がにやにやしながら「はい出番」と背中を押す。
真平は顔を引きつらせながらも扇を開き、ため息。
「……この格好で、“この世をば、我が世とぞ思ふ望月の、欠けたることも無しと思へば”……と読めと言うのか!」
文化部一同「読めぇぇぇぇぇ!!!」
「やけくそだぁぁぁぁ!!!」
夜風の中、真平の声が部室に響く、扇を開いて一拍、外から鈴虫の鳴き声。
そして拍手喝采。
琴美が絶賛「ブラボー! まさに月に仕える藤原の風格!」
スマホで撮影しながら萌香は「映えたぁぁ!!」
「パォォ! 感動したですぅ!」
「……完全に月より目立ってるわね」と巫鈴は兄の健闘を称え、沙羅が「藤原道長もびっくりよ」
その後、みんなで月見シュークリームを囲みながらほっと一息。
琴美がにやにやとお茶をすすり、満月を見上げた。
「いいわねぇ……こういう“和のロマン”。やっぱり文化部って最高だわ」
真平「次はもう普通の服でやらせてくれ……頼むから」
巫鈴「無理ね。琴美先輩の“次は”に平穏はない」
沙羅「むしろ次は“戦国お月見”とか言い出しそう」
琴美「それいい!!」
「やめろォォォ!!!」
月は静かに照らしていた。
笑いと雅の入り混じる校庭。
そして、和装の袖を揺らす風の中、誰かがつぶやく。
「平安も令和も、結局、月を見て笑ってることに変わりはないね」
「うんっ! つまり、笑顔がいちばん“雅”ってことよ!」




