退いてはならない時
「ここか…」
俺は今要塞の施設の一環、「歩兵訓練所」にやってきている。
調子に乗った新米歩兵をシメるために、渋々、だ。
さて、問題の歩兵はどこだ?
「ちょっといいですか?」
「あ、はい。」
そこにいた歩兵をつかまえて尋ねる。
「ゴロンゾっていう歩兵を知ってますか?」
「はい。有名人ですから。」
まぁそうだよな。
「今どこにいるかわかります?」
「さっき向こうの休憩所で暴れてましたよ。」
暴れてただ?おっかない。なんでそんな奴を俺がシメなきゃいけないんだろう。
「ところでゴロンゾのところに何しに行くんですか?」
もっともなことを尋ねてくる。
「あぁ、ちょっとそいつをシメに行くんですよ。」
「ばかですか?死にますよ?」
「…」
一般歩兵にこんな冷たい風に言われるとは…よほど恐ろしいんだろうな。
そんなやりとりがあり、俺は再びゴロンゾの元へと向かった。
「ナンヤオマエ、ブッ殺スゾワレコラ。」
「…」
説明しよう。今俺は命の危機に立たされている。
目の前にいるこの男が、自称最強の歩兵ゴロンゾだ。
二メートルを超す長身、がっしりとした肉体、広い肩幅、極限にまで鍛え上げられた肉体。さらにはたくましいケツ顎。
こんな男に俺はケンカを売りに来たのだ。…まったく、バカみたいだ。
しかしそれにしても…生意気すぎるな。
本当に反乱分子になりかねないぞ。
「ドナイシタンジャイ、ワシヲシメニキタントチャウンカ、ア?」
「あぁそうだよ。何かお前最近調子乗ってるそうじゃないか?」
「ンダトコルァァァ!!!」
周りの休憩中の歩兵が「マジかこいつ」といった目を向けてくる。
それでも男には退いちゃいけない時があるの…
「ブッ殺スゾコルァァァァァァ!!」
「すんませんでしたぁぁぁぁぁ!!」
俺はとっさに頭を下げて謝罪の言葉を述べた。
いや、やっぱり無理だ。これは死ぬ。
と、思ったのだが
やはり悔しいな。また大佐に叱られるのだろうか。
そんなことを考えている内に、俺の中で何かがはじけた。
「なんて言うかばぁぁぁか!!」
「グフォッ!?」
俺はゴロンゾに渾身の右ストレートをかました。
奴にとっては屁でもない一撃だろうが。
多分俺はこの後無残にギタギタにされるのだろう。だが、今回は引き下がることができなかった。
ゴロンゾはもう反乱分子になりかけている。放っておくわけにはいかない。
「テ、テメェェェェ・・・!」
その反乱分子は俺の目の前で激しい怒りにかられている。やるしかなさそうだ。
「死ィィィネェェェェェェ!!!」
ゴロンゾの拳が迫ってくる。とっさに避けることは出来なかった。
気絶を覚悟で防御の姿勢をとる。
バシッ!
「ナッ!?」
瞬間、ゴロンゾの拳が何者かによって受け止められた。
「おいおいマジで助けなきゃならないなんて思ってなかったぞ、クレマ。」
それは、もう一人の自称「要塞最強」の男であった。




