open in the story 004
私は残された封筒を机の上に並べた。七通、どれも同じ大きさ同じ紙質。
中身を一通ずつ読み返し、〔お世話になりました/助けていただきありがとうございました〕
それ以上の言葉はなく、日付・署名はない。
あまりにも簡素的だと感じた。
これまでに訪ねてきた「関係者」たちの言葉を思い出す。
"感謝しています"それだけ伝えたくて。という、セリフみたいなものは、同じだった。まるで決められた表現が、あるかのように。
引出しの奥にしまわれていたノートには、日常の記録とは言い難い、走り書きで、名前の代わりに番号が記されていた。
その番号の横には短いメモが・・・。
"継続中/今月対応済/次回確認"人を管理すための記録だろうか?
金額や期限は書かれていなかった。
態度・連絡・感情、といったあいまいな言葉だった。
その時事務所の電話が鳴った。
「○○と申します、以前こちらの方に・・・」
電話の相手は、最後まで言葉を続けなかった。
「関係者ですか?」私が訪ねると、
「そう、呼んでいただいて構いません」
彼女もまた援助を受けていた一人だった。
「手紙は書かれましたか?」
「はい、でも同じ言葉でいいと、言われたので・・・」
"誰に?"と聞くと、電話は切れてしまった。
同じ言葉・同じ感謝。それは自由に選ばれたものではなく、条件の一部だったのではないか?と私は感じた。
関係を続けるために、守るべき形式。男性が亡くなり、条件が失われた今、彼らたちは、名乗る理由も失った、とすると、全てが繋がる。
最後のページに、薄く鉛筆で書かれた文。条件が亡くなった後、彼らはどうなる?
誰も残らない、ということだろうか・・・。




