open in the story 005 最終話
建物の明け渡し期限が迫っていた。
私は最後の確認として男性の部屋に残されたものを箱に詰めていた。
家具は既に処分され生活感は消えていた。残っているものは紙類と小物だけである。
ノートの番号で管理されたページ、「継続中」と言う文字、問いかけの文。
条件がなくなった後の彼らたちは、連絡先が無効となり、尋ねてきた人達に、会うことはなかった。
箱の横にぽつんと、一枚の紙があるのに気づいた。他の書類とは違い、丁寧に折られてある。
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私は、条件がある間しかここにいられません。それでもよばれた時間はたしかにありました。
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と書かれてあった。
署名はなく、日時もないけど、この部屋に来た誰か、名乗れなかった人たちの一人だろう。
私はその紙を箱に入れるべきか迷った。正式な記録ではない、相続関係の書類でもないから残す理由はないが、処分する理由は実務上はある。
それを捨てた瞬間、この部屋で続いていた関係は、本当に終了するような気がした。
条件付きで続いた時間、条件が途切れた途端誰にも認識されなくなる存在。
立場上私は記録を整理する、感情は狭めないそれでも、手は止まっていた。
箱の外に小さな封筒を一つ用意しその紙を入れ、ノートの最後のページに封筒を挟み、入れた。
正式ではないからこそ、完全に消去することはしなかった。
条件のある関係は、存在していた。
呼ばれることはないかもしれない。
誰にも相続されなかった関係。
誰にも継続されなかった関係。がここにあったのだ、確かに・・・。
私は鍵を閉め、その事実だけを大切に持参したのだった。




