open in the story 002
その日から電話が増えた。
電話の相手は、共通して名乗らない。こちらが確認しようとすると、一瞬無言になり、"関係者です"その言葉が返ってくる。
私は管理人として、亡くなった男性の部屋に関する問い合わせに応じていただけなのだ。
最初に訪ねてきたのは、四十代くらいの女性。
「奥様ではないんですね」
私がそう確認すると、彼女は小さく笑った。
「はい、そういう、立場はもらっていません」
"もらっていない"という言い方が妙に耳にはハリついた。
彼女は男性から金銭的に援助を受けていたという。
生活費・住居・修繕費など。
「条件みたいなものはあったのでしょうか?」思わずたずねてしまった。
「続けることですね」
"何を"と聞くと、彼女はそれ以上は話さなかった。
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次に現れたのは若い男性。
「雇われていた訳じゃないですが、助けてもらいました」
"助ける"という言葉が、よく使われている。
彼もまた、立場を説明できず、契約書もなく、雇用記録もない。
「感謝しているので、それを伝えたくて・・・」
私は棚の上に並んだ封筒を思い出した。
あの言葉たちは、誰かに言わせたものなのか?、自然に同じになったのか・・・?
数日後、最後に訪ねてきた女性と連絡が取れなくなったのだ。なんか不思議な感じに思えていた。
しかし、その翌週、もう少し話がしたい、と言っていた若い男性からも音沙汰がなくなった。
私は名簿を確認したが、名前は載っていなかった。
記録にない人は、消えていくのか?
その部屋に遺された書類の山が目に留まった。それは続けられていた支払いの記録だ。
毎月決まった日に、決まった額。
途切れたのはこの男性が亡くなったその月だけだった。
誰のために、何のために・・・・。
それを説明できる人は・・・いない。




