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09二週間で、空飛ぶじょうろになります。初級滑空機=プライマリーグライダーの完成です。

挿絵(By みてみん)





第九章 二週間で、空飛ぶじょうろになります


大きな箱を、いつまでも来客用の寝室に置いておくわけにはいきません。


子爵家では、軒先の荷揚げ用クレーンを使いました。


けれど、伯爵家の別邸には、寝室の窓から巨大な箱を吊り下ろすためのクレーンはありません。


普通の家には、たいていありません。


そこで、箱を外へ出すのではなく、中身を一つずつ外へ出すことになりました。


伯爵領の家具職人、馬車職人、鍛冶職人、薄い鉄板を扱う職人、馬具職人が集まりました。


お姉様も作業着に着替えています。


領兵さんたちは、長い部材を運ぶため、朝から廊下に並んでいました。


伯爵様は、領兵を戦いではなく、妹の寝室から翼を運び出すために使うことになりました。


領地が平和であるなら、たいへん正しい使い方です。


どろちゃんは説明書を開きました。


最初の頁には、こう書かれていました。


А-1


(アー・アヂーン。)


Учебный планёр


(ウチェーブヌィー・プラニョール。)


初等練習用グライダー、A-1。


「アントノフのA-1です」


お姉様が箱の中をのぞきました。


「これが、私の飛ぶものなの?」


「組み立てればね」


箱の中には、機首から主翼の下までを作る、太く丈夫な中央構造が入っていました。


座席、着陸用の橇、主翼取付部、操縦装置をまとめて受ける部分です。


その後ろには、細長い木の骨組みがありました。


上下二本ずつの長い部材を、短い横材でつないだ、梯子のような形です。


これに薄い板を張れば、細長い箱形の後部胴体になります。


さらに、主翼の桁、たくさんのリブ、支柱、尾翼、滑車、操縦索、金具、布、塗料が、番号順に収められていました。


操縦席には風防がありません。


けれど、膝から足先までを覆う、丸みのある機首の覆いがありました。


お姉様は、それを持ち上げました。


「ティーカップみたい」


少し離れて見ていた家具職人が言いました。


「取っ手のない、じょうろにも見えますな」


まだ主翼も尾翼も付いていません。


それでも、前が丸く、後ろが細長く伸びる形は、たしかにじょうろに似ていました。


「ロシア語で、じょうろはЛейкаです」


どろちゃんは、ゆっくり発音しました。


「レーィカ」


「では、レーィカちゃんね」


お姉様は、まだ組み上がっていない中央構造へ手を置きました。


そのときは、返事はありませんでした。


レーィカちゃんは、まだ座席と木枠と金具に分かれていたからです。


◇ ◇ ◇


職人さんたちは、すぐに組み立て始めようとしました。


ところが、どろちゃんは止めました。


「その前に、全部測ります」


「組み立てないのですか」と家具職人が尋ねました。


「組み立てます。でも、板を張ったり布を張ったりすると、見えなくなる場所があります」


頭の中から、技師さんたちの声がしました。


――最初の一機を、完成させることだけ考えてはいけない。


――二機目を同じ形に作れるよう、先に型を取る。


――穴位置、左右差、取付角。見えなくなる前に記録。


作業が始まったので、声は短く、硬くなっています。


どろちゃんは、そのまま職人たちへ伝えました。


箱の板は、壊して捨てませんでした。


大きく平らな板は、主翼リブの形を写す型板になりました。


長い板は、桁とリブを真っすぐ並べるための組立台になりました。


丈夫な角材は、後部胴体を箱形に保つ治具になりました。


神様は出入口の寸法を気にしませんが、職人さんたちは木材を無駄にしません。


一号機の箱は、二号機を作るための道具へ姿を変えました。


家具職人は、主翼リブを一枚ずつ型板へ重ねました。


「左右とも、これと同じ形にするのですね」


「はい。ただし、右と左で金具の向きが違うところがあります」


「同じものを作る方が簡単ですが」


「飛ぶものは、簡単だからという理由で左右を同じにしてはいけない場所があります」


馬車職人は、長い主翼組立台へ墨線を引きました。


鍛冶職人は、主翼取付金具を薄い紙へ写し、穴の位置を鉄板の型へ移しました。


薄板職人は、鎧の小札を打ち出すときより、ずっと小さな金具を作ることになりました。


「これなら、二号機の金具も作れます」


「同じ厚さで、同じ穴位置にしてください」


「見た目が同じだけでは、だめなのですね」


「はい。見た目は、飛びません」


これは、たいへん大切な説明でした。


領兵さんたちは、長い桁を水平に持ち続けました。


剣や槍なら、少しくらい傾いても戦えます。


主翼桁は、そうはいきません。


「右を少し上げてください」


右側の領兵さんたちが上げました。


「上げすぎです。半分戻してください」


半分という量は、戦場より作業場の方が難しいことがあります。


お姉様は部品表を読み上げ、番号札を一つずつ確かめました。


軽いリブや滑車を運び、型板へ輪郭を写し、操縦席のベルト金具を磨きました。


見学ではありません。


自分が乗る機体です。


どの部品がどこへ付き、どの索がどの舵へ続くのか、手を動かしながら覚えていきました。


◇ ◇ ◇


三日目には、中央構造が組み上がりました。


機首から主翼取付部までは、短く太い木の骨組みです。


ここへ座席と橇が付き、操縦者の重さ、発航時の力、着陸時の衝撃、主翼から来る力が集まります。


その後ろへ、梯子形の骨組みをつなぎました。


外板を張る前は、たいへん華奢に見えます。


お姉様は、端を指でそっと押しました。


「これで尾翼を支えられるの?」


「板を張るまでは、まだ細い梯子です」


薄い木板を四方へ張っていくと、骨組みは細長い箱になりました。


一枚だけでは頼りなく見えた板が、上、下、左、右へつながると、ねじれにくい胴体になります。


「急に、しっかりしたわ」


「箱は強いからね」


家具を作る職人には、よく分かる話でした。


箪笥も、板を一枚だけ立てても倒れます。


けれど、四方をつないで箱にすれば、簡単にはゆがみません。


空を飛ぶじょうろも、同じでした。


次に操縦装置を取り付けました。


操縦桿は、前後へ倒れます。


そして左右へ動かすと、操縦席の下を通る一本のパイプが回転します。


その回転は、操縦席の後ろで小さなレバーへ伝わり、そこから先は操縦索が主翼の補助翼まで伸びます。


「棒が横へ曲がるのではないのね」とお姉様が言いました。


「回るの。ねじれて力をためるのではなく、軸のまま回ります」


「ずいぶん細いわ」


「速く飛ぶ機体ではないし、舵を動かす力も大きくありません。それに、木の翼や索の方が少ししなります」


二号機用には、まっすぐ木目の通った樫の丸棒も試しに作りました。


軸受へ当たるところには、薄い鉄の輪をはめます。


最初のレーィカちゃんには、箱に入っていたパイプを使いました。


二号機から何を使うかは、試してから決めます。


飛ぶ前に決められないことを、想像だけで決めない。


技師さんたちの記憶には、その習慣も入っていました。


足元には、立ち上がったП字形のペダルが二つ付きました。


「これは、足を置くところ?」


「足で、左右へ曲がる舵を動かします」


お姉様が右のペダルを押すと、右側の方向舵索が引かれました。


まだ尾翼は付いていませんので、索の端が床の上を少し動いただけです。


それでも、操縦席から機体のいちばん後ろまで、命令が届く道ができました。


座席には、腰だけを留める簡単な帯が入っていました。


どろちゃんは、頭の位置を確かめました。


座れば、頭頂は主翼よりかなり下に来ます。


軽く横へ倒れたなら、主翼や中央構造が先に地面へ触れそうです。


けれど、身体が座席から抜けてしまえば、その形にも意味がありません。


「肩からも留めましょう」とどろちゃんが言いました。


馬具職人が、丈夫で柔らかな革帯を作りました。


左右の腰、両肩、そして下へ抜けないための股帯。


五本を中央の金具へ集めます。


取付部は、薄い座席板ではなく、主翼取付部へつながる丈夫な骨組みへ固定しました。


お姉様は座席へ座り、帯の長さを合わせてもらいました。


「少し窮屈ね」


「空から外へ出るより、いいでしょう」


「それは、そうね」


伯爵様も、その点には反対しませんでした。


◇ ◇ ◇


四日目は雨でした。


木材も羽布も塗料も、湿った日には機嫌がよくありません。


別邸の周囲も霧に包まれ、丘の下の町は半分しか見えませんでした。


ですから、その日はお休みです。


領兵さんたちは本来の仕事へ戻り、職人さんたちも自分の工房へ帰りました。


どろちゃんとお姉様は、暖炉の前で図面を広げました。


「雨でも、図面は読めるのね」


「読めるけれど、今日はお休みです」


「では、どうして広げているの?」


「気になるから」


お休みと、何もしないことは、同じではない場合があります。


二人は主翼の図を見ながら、次にどの部品を取り付けるか話しました。


それからプライマリーの歌を歌いました。


まだレーィカちゃんには主翼がありません。


けれど、歌だけは先に覚えてもかまいません。


◇ ◇ ◇


晴れた翌日、どろちゃんは一度、子爵領へ帰りました。


タドポール君で一時間ほどです。


伯爵家では、妹が空から通ってくることに、少しずつ慣れ始めていました。


夕方になると白い翼が斜面を下って飛び立ち、翌朝には、また丘の上へ戻ってきます。


馬車なら、行った翌朝に同じ顔で戻ってくるだけでも大仕事です。


空では、近いのです。


次の朝、タドポール君の後席には、部品でも工具でもなく、丸い菓子箱が載っていました。


近くの大きな町の菓子店で買った、平たく締まったチョコレートケーキです。


表面は濃いチョコレートで覆われています。


羽も、くちばしも、ふわふわした頭もありません。


どろちゃんは革帯を締めながら、バイカル湖の近くで暮らしていたころに読んだ、日本の本を思い出しました。


ひよこの形をした、とてもかわいくて、とても崩れやすいお菓子を、形を壊さずに持ち帰るお話です。


その本では、無事に運ぶことを、ぴよりんチャレンジと呼んでいました。


「これは、ぴよりんではないから大丈夫」


『ぴよりんって、なあに?』


タドポール君が尋ねました。


「とてもかわいくて、とても運びにくいお菓子」


『今日のは?』


「かわいさより、頑丈さを選びました」


チョコレートケーキは、雲の下を一時間飛んでも、きちんと丸いままでした。


丘へ着くと、職人さんと領兵さんが作業を止めました。


後席から下ろされたのが翼でも金具でもなかったからです。


「今日は何を運んできたの?」とお姉様が尋ねました。


「大きな町のケーキです。みんなで食べます」


職人さんたちは、主翼より慎重に菓子箱を運びました。


休憩の時間、ケーキは人数分に切り分けられました。


濃いチョコレートと、少し酸味のある果物の層が入っています。


木屑と膠と塗料の匂いがする作業場の外で食べると、都会の菓子店が丘の上へ一時間だけ出張してきたようでした。


まだ座席と胴体だけのレーィカちゃんから、どろちゃんへ声がしました。


『わたしの部品より、ずいぶん丁寧に運んだのね』


どろちゃんは、思わず笑いました。


「レーィカちゃん?」


『ええ。その名前でいいわ』


声は、タドポール君とは違いました。


少し柔らかく、言葉を選ぶ女の子の声です。


お姉様には聞こえません。


「いま、何か言ったの?」とお姉様が尋ねました。


「レーィカちゃんが、ケーキの方を丁寧に運んだって」


お姉様は、まだ翼のない機体を見ました。


「あなたも食べる?」


『お気持ちだけいただくわ』


どろちゃんが伝えると、お姉様はケーキを一切れ、レーィカちゃんの座席の横へ置こうとしました。


――作業台へ食べ物を置かない。


頭の中の技師さんたちが、全員で止めました。


ケーキは、別の机へ移されました。


この注意だけは、機体が変わっても変わりません。


◇ ◇ ◇


二週目には、主翼の形が見えるようになりました。


桁へリブを並べ、組立台の墨線と直角を確かめます。


同じ形の薄いリブが何枚も並ぶと、大きな魚の骨のようでした。


お姉様は、型板とリブの間へ細い紙を入れ、浮いているところがないか確かめました。


家具職人は、左右の翼が同じねじれになるよう、端から端まで糸を張りました。


鍛冶職人は、支柱金具と翼端金具を取り付けました。


領兵さんたちは、羽布を張るときにも役立ちました。


ただし、力いっぱい引けばよいわけではありません。


「そこまでです」


止まる命令は、進む命令より大切です。


布は左右均等に張られ、縫われ、保護塗料を塗られました。


塗料が乾くまでは触れません。


領兵さんの一人が、指先で確かめようとしました。


――触らない。


どろちゃんが言うより早く、頭の中の技師さんが止めました。


「まだ触ってはいけません」


領兵さんは、戦場で矢を避けるより速く手を引っ込めました。


後部胴体にも外板が張られ、尾翼が取り付けられました。


操縦索は、滑車を通って、補助翼、昇降舵、方向舵へつながりました。


操縦桿を前へ倒せば、昇降舵が下がります。


後ろへ引けば、上がります。


左右へ動かせば、パイプが回り、補助翼が反対向きに動きます。


右のペダルを踏めば、方向舵が右へ向きました。


お姉様は操縦席へ座り、どろちゃんの指示どおり、一つずつ動かしました。


「操縦桿、前」


昇降舵が動きます。


「後ろ」


戻ります。


「右」


右の補助翼が上がり、左が下がりました。


「右のペダル」


方向舵が右へ向きました。


『少し急いでいるわ』とレーィカちゃんが言いました。


「お姉様、もう少しゆっくり」


「レーィカちゃんが言ったの?」


「うん」


お姉様は、今度はゆっくり操縦桿を倒しました。


『ええ。そのくらいが好きよ』


「今度は、いいって」


「自分で言ってくれればいいのに」


『聞こえるようになれば、お話しするわ』


お姉様には聞こえませんので、これは少し難しい注文でした。


レーィカちゃんは話せます。


けれど、自分で操縦桿やペダルを動かすわけではありません。


風を感じ、機体の状態をどろちゃんへ伝えることはできます。


飛ばすのは、操縦席に座る人です。


初等練習機として、その点はたいへん真面目でした。


◇ ◇ ◇


二週間のあいだには、もう一度雨が降りました。


その日も作業は休みました。


晴れた日に急ぎすぎて、雨の日まで取り戻そうとはしません。


接着剤と塗料には乾く時間があり、人間にも休む時間があります。


どろちゃんは、ときどきタドポール君で子爵領へ帰りました。


帰った翌日には、また伯爵領へ来ました。


お母様からの小さな焼き菓子を持ってくる日もあり、お父様の手紙を持ってくる日もありました。


そのたびに、別邸の横には、少しずつ機体らしくなるレーィカちゃんが待っていました。


「ただいま」


『おかえりなさい。今日は右の翼が付いたわ』


「見れば分かるよ」


『言いたかったの』


女の子の飛行機には、女の子の話し方があります。


タドポール君なら、「右の翼が付いたよ」と言うでしょう。


レーィカちゃんは、少しだけ自分の姿をうれしそうに話しました。


◇ ◇ ◇


十四日目の午後、左右の主翼を中央構造へ取り付けることになりました。


作業場の屋根の下では、翼幅いっぱいに広げられません。


レーィカちゃんは、部品に分けたまま丘の草地へ運ばれました。


別邸の横にある、タドポール君が着陸した斜面です。


風は弱く、空は晴れていました。


領兵さんたちが左右の主翼を持ち上げます。


作業中なので、技師さんたちの声は短く、硬くなりました。


――翼端を引かない。


――取付部へ指を入れない。


――左、二センチ上。


――停止。


――右を前へ五ミリ。


――主ピン挿入。


どろちゃんが、そのまま伝えました。


お姉様は取付金具の横にしゃがみ、穴が合ったことを確かめました。


鍛冶職人が主ピンを通します。


抜け止めを入れます。


支柱が取り付けられ、左右の翼が自分の重さを受けました。


「手を離してください」


領兵さんたちは、ゆっくり手を離しました。


長い主翼は、きちんと左右へ伸びたままです。


最後に、操縦索の張り、舵の中立、主翼の取付角、左右差を確かめました。


二号機用の検査ゲージも、初号機と同じ数値を示しました。


一号機を作りながら、二号機を同じ形にするための道具もそろったのです。


主翼リブ型板。


長い組立台。


後部胴体を真っすぐ保つ治具。


金具の穴位置を決める型。


操縦桿と舵の中立を測るゲージ。


伯爵領には、レーィカちゃん一機だけでなく、次の一機を作る方法も残りました。


お姉様は、完成した機体の前へ立ちました。


丸い操縦席。


その後ろへ伸びる細い箱形の胴体。


上には大きな主翼。


横から見れば、やはり、たいへん大きなじょうろです。


「ほんとうに、空飛ぶじょうろね」


『ええ。もう認めるわ』


レーィカちゃんの声は、少し誇らしそうでした。


どろちゃんは操縦席へ手を置きました。


「完成したね」


『ようやく、わたしの形になったわ』


お姉様が座席へ座り、五点式のベルトを締めました。


操縦桿を前後左右へ動かし、ペダルを踏みます。


舵は、すべて正しい向きへ動きました。


けれど、その日は飛びませんでした。


完成したばかりの機体を、夕方だからという理由で急いで飛ばす必要はありません。


明日の風を見て、地上での練習をして、ゴム索を扱う人の動きも決めなければなりません。


飛べる形になったことと、飛んでよいことは、同じではないのです。


レーィカちゃんは、丘の上で初めて夕日を受けました。


長い翼の影が、緩やかな草地へ伸びています。


マイン川は、その先で光っていました。


お姉様がいつか越えることになる川です。


けれど、まずは地面を少し離れ、きちんと戻るところから始めます。


空飛ぶじょうろが初めて飛ぶお話は――また次回です。


◇ ◇ ◇


第九章の小さな説明


レーィカちゃんは、オレグ・アントノフが設計した初等練習用グライダーUS-4/A-1をもとにしています。本章ではA-1の名称を使っています。


機首から主翼取付部までは、操縦者、座席、着陸橇、主翼、発航時の荷重を受けるため、短く丈夫な中央構造になっています。後部胴体は、梯子形の木製骨組みに薄い外板を張った細長い箱形構造です。外板を張ることで、軽いまま曲げやねじりに耐えられるようになります。


操縦桿は前後へ動くほか、左右操作で操縦席下のパイプを回転させます。操縦席を抜けた後は、レバーと操縦索を介して補助翼へ動きを伝えます。方向舵は、立ち上がったП字形のペダルで操作します。


五点式ベルトは、本作で安全性を高めるために加えた装備です。操縦者の頭が主翼より低い位置にあっても、横転時に身体が座席から抜ければ保護にはなりません。肩、腰、股を丈夫な中央構造へ固定しています。


二号機以降を伯爵領で複製できるよう、初号機の組立前に型板と治具を作りました。主翼リブの輪郭、桁とリブの位置、後部胴体の形、金具の穴位置、操縦系統の中立位置を治具で決めれば、職人ごとの小さな差を減らせます。


職人さんたちは木工、薄板金、金具、羽布、革帯を担当し、領兵さんたちは長い部材の運搬と保持を担当しました。お姉様も部品確認、型取り、操縦席まわりの組付け、操縦系統の確認へ参加しています。


レーィカちゃんはアントノフ製なので、どろちゃんとは会話できます。女の子の機体で、タドポール君とは違う柔らかな話し方をします。ただし、会話できることと自動操縦できることは別です。操縦桿やペダルを動かし、実際に飛ばすのは操縦者です。


組立期間は雨天の休みを含めて約二週間です。完成したところで第九章は終わり、地上練習、ゴム索発航、初飛行は次章で行います。

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