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63教授は揺れる客車にも乗ります   ライデン大学のマドリードからリスボン間の優等車両研究

第六十三章 教授は揺れる客車にも乗ります



 ライデン大学の机には、また大きな紙が増えていました。今度は翼の図ではなく、川や運河、堤防、町、街道を描き込んだ地図です。その上を、何本もの細い色線が走っています。


「これは、こちらですか」


 先生の一人が線を指すと、どろちゃんは地図の上を指で追いました。


「うん。アムステルダムからハールレム、ライデン、デン・ハーグ、デルフト、ロッテルダム。海側の大きな町をつなぐ線」


「ずいぶん真っ直ぐですね」


「あとで遅くなるから、なるべく曲げたくないの」


 どろちゃんはライデン大学の教授です。飛行機でやってきて思いつきを話すだけの客ではなく、教授会にも出れば研究計画にも名前が入り、試験に使う費用や、失敗したときの責任について話し合う場にも加わります。


 その日の講義室には大きな黒板が出されていました。どろちゃんは神様から届いた羽衣フルタッチを一本取り、アムステルダムからロッテルダムまでの町を大きな円と線で描いていきます。


 チョークは途中で欠けず、粉もむやみに舞いません。消したあとも黒板が白く曇りにくいので、考えながら線を引き、消し、また別の案を重ねる作業に向いていました。


「ここは町へ寄せすぎない方がいいね。旧市街へ無理に入れると、あとでずっと速度を落とすことになるから」


 学生の一人は線よりも、どろちゃんの手元を見ていました。


「その白い棒、ずいぶん描きやすそうですね」


「うん。黒板ならもうこれ一択」


 どろちゃんは笑って一度線を消すと、今度は運河と橋の位置を描き足しました。


 計画している本線の最小曲線半径は1200m、最急勾配は16‰です。ただし、それはどこでもその数字まで使うという意味ではありません。平らな場所ではもっと緩く取り、必要なところだけ上限へ近づけます。


「問題は川と運河ですね」


 測量家が橋の候補地を指しました。


「ここで5m上げるなら、片側だけでも300m以上必要です。縦曲線まで考えると、さらに長くなります」


「橋だけ高くして、その前後で急に上げるのは嫌だなあ。取り付きまで一緒に考えよう」


 ホラントはほとんど平らです。だから線路を上へ持ち上げる理由になるのは、山ではなく川や運河でした。橋の位置だけ決めれば済むわけではなく、その高さまで列車を無理なく上げ、渡り終わったあとにまた下ろす長い区間まで考える必要があります。


 地図の横にはユトレヒトの案も広げられていました。


「ここは大きく取ろう。駅だけじゃなくて、工場と留置線も欲しい」


 沿岸の古い町では、本線を中心部へ無理に曲げず、町の外側に東駅や南駅のような通過駅を置き、中心部とは電気軌道で結ぶ構想です。しかしユトレヒトだけは違いました。


「ここは中央駅でいいと思う。沿岸から来た列車がここで終わってもいいし、将来、東や北や南へ線路が延びたら、ちょうど真ん中になるから」


 沿岸の泥炭地よりも、重い工作機械を据えられる土地を探しやすいことも利点でした。車輪を削る大型旋盤、台車工場、電動機の整備設備まで集める案が出ると、どろちゃんは鉄道工場の候補地へ新しい線を引きました。


 もちろん、ライデン大学の先生たちは、その線をそのまま採用したわけではありません。測量し、計算し、別案を作り、悪ければどろちゃんの線でも消します。それでよいのでした。



          *



 鉄道の研究は線路だけでは終わりません。大学の試験線の脇には、短めの車体を何両もつないだ妙な客車が置かれていました。


 普通の二軸台車ではなく、車体と車体の間に一軸の走り装置を置く連接客車です。中央には人が通る貫通路と幌があるため、支持装置を真ん中へ大きく置くことはできません。ばねと支持装置は左右へ分けてあります。


「この形なら、下へ全部詰め込まずに、連接面の横でも高さを使えそう」


「左右の間隔も取れますから、ロールにも効きそうですね」


 工房の技師は、現在のばね座を軽く叩きました。


「まずは計算で出したこのばねで走らせます」


 どろちゃんは触ってみました。


「ちょっと硬そうだけど、乗れば分かるね」


「教授も乗られるのですか」


「教授だから乗るんでしょ」


 そのまま試作客車へ入りました。



          *



 第一号車は、低速では悪くありませんでした。10km/h、20km/h、30km/hと速度を上げても、車内はまだ静かです。


 ところが40km/hを越え、レールの継ぎ目へ入ると様子が変わりました。車輪が継ぎ目を越えるたびに、車体へ硬い衝撃が伝わります。50km/hでは上下の跳ねがはっきりし、どろちゃんのお尻が座席から少し浮きました。


「これは嫌だなあ」


「もう少しだけ測らせてください」


「測るなら乗るよ」


 60km/hまで上げると、今度は連接部の上下動が少し遅れて残りました。前の車体が上がったあとで、次の車体が引かれるように動き、揺れが一度で収まりません。


 技師たちは、ばねが硬いだけではなく減衰も不足していると判断し、そこで試験を止めました。


 記録用紙に「失敗」と一言書いて終わりにはしません。床面加速度、連接部の変位、車体端の上下量、軸箱の動き、速度、継ぎ目の位置まで数字にして残します。


「教授の感想も書きますが、どうしましょう」


「お尻が浮く、でいいよ」


 記録係は本当にそのまま書きました。



          *



 二号車ではばねを柔らかくしました。40km/hまでは第一号車よりずっと滑らかで、どろちゃんも座席で機嫌よくしています。


 しかし50km/h、60km/hと速度を上げて曲線へ入ると、今度は車体の傾きが大きくなりました。傾いて戻り、また傾く動きが長く残ります。


「上下はいいけど、今度はふわふわするね」


「ロールが大きいです。外側のばねだけでなく、減衰側も変えてみましょう」


「その方がよさそう」


 次の周回では、わざと少し軌道状態の悪い区間へ入れました。左右の揺れが続き、後ろに乗っていた学生から「これは酔います」という声が出たところで評価は決まりました。


 二号車も量産にはなりません。



          *



 三号車は、かなりよくなりました。上下の動きは柔らかく、ロールも落ち着いています。70km/h、80km/hと速度を上げても、中間車では大きな不満が出ませんでした。


 ところが、最後尾へ移ると乗り心地が違います。編成の中間にある一軸連接部には前後二つの車体の荷重がかかりますが、一番前と一番後ろだけは片側の車体しか載っていません。


「端も同じばねを入れたの?」


「はい。計算上は許容内でした」


「許容内と気持ちいいは別だね」


 試験後、編成端部だけは専用のばねとダンパーを使うことになりました。飛行機なら重量や重心が少し変わるだけでも大騒ぎですが、鉄道車両なら編成端部に別仕様の部品を使っても構いません。



          *



 四号車では、今度は車輪の案内が問題になりました。


 80km/hへ近づくにつれて横方向の動きが増えたため、どろちゃんはすぐに速度を落とします。誰も「もう少し行ってみよう」とは言いませんでした。試作車は壊すために作るのではなく、危ない兆候が出たところで止め、何が起きたのかを調べるためにあります。


 試験棟へ戻ると、どろちゃんは羽衣フルタッチで黒板へ現在の輪軸を描きました。左右の車輪が一本の長い車軸で結ばれた、普通の形です。


 その下へ、今度は左右の間を空け、それぞれ短い軸だけを持つ図を描きます。


「左右をつながないで、独立懸架、独立回転にしたらどうかな。曲線では内側と外側で回りたい速さが違うんだから、最初から別々に回せばいい」


 物理の先生がしばらく図を見ました。


「通常の輪軸蛇行動は、かなり抑えられそうです。ただ、自分でまっすぐへ戻ろうとする性質も弱くなりますね」


「そこは連接部で向きを見てあげる」


 どろちゃんは連接面と左右の短軸を描き、前後の車体から細い案内リンクを引きました。車輪だけに方向を決めさせず、連接部のヨー運動から車輪の向きを与える考え方です。


 四号車は、そのままでは失敗作でした。しかし、そこから左右独立の短軸車輪を持つ改造案が始まりました。


 改造車を走らせると、古典的な輪軸蛇行動は大きく減りました。その代わり、直線での案内が少し甘く、曲線へ入るところで向きの決まり方が鈍くなります。案内リンクの長さや取り付け位置、ばねの硬さを変え、また走らせました。



          *



「成功するまで、何両作るんでしょう」


 棚へ増えていく記録を見て、学生が尋ねました。


「知らない。でも、失敗した方の図面も捨てないでね」


「なぜです?」


「何をしたら悪くなるかも、大事だから」


 棚には、硬すぎた第一号、柔らかすぎた第二号、端部だけ跳ねた第三号、蛇行から独立懸架の案へ進んだ第四号の記録が並びました。どれも営業列車には使えませんが、どれも無駄ではありません。



          *



 次に調べたのは客車の電気設備でした。


 走行用の大きな電動機は機関車へ集めるので、客車で必要になるのは照明、換気、小さなポンプ、制御回路などです。その程度なら、車軸発電機と蓄電池の組み合わせでまかなえます。


「走っている間は車軸で発電して、止まっているときは蓄電池でいいかな」


 試作客車の一軸へ発電機を取り付けて走らせましたが、最初の方式では駆動ベルトが滑り、焦げたような匂いが出ました。雨で濡れればもっと条件が悪くなります。


 次は歯車で駆動すると、発電そのものは安定しました。しかし客室へ入ると低い機械音がずっと続きます。


「発電はできてるけど、寝台車でこれが鳴り続けるのは嫌だなあ」


 三つ目では発電機の支持方法と駆動方式を変え、走行中の音を少しずつ減らしていきました。



          *



 冬の暖房は、さらに大きな試験になりました。


 暖房まで電気にすると、車軸発電機と蓄電池には荷が重すぎます。そこで冬だけ低圧ボイラーを積んだ暖房車を一両入れ、そこから編成全体へ蒸気を送ることにしました。


 いきなり火を入れることはしません。最初はボイラーと配管へ水を満たし、ポンプで圧力を上げる水圧試験です。


 圧力を上げると、最初の継手から水がにじみました。締め直して再び上げると、今度は別の場所が濡れます。安全弁も最初は設定圧力より早く開き、ばねを調整すると次は遅すぎました。


 何度か直し、狙った圧力で安全弁が開き、配管から水が漏れなくなってから、ようやく火を使う試験へ進みました。



          *



 大学の試験線脇には、営業編成と同じくらいの長さの蒸気管と、客車一両分ずつを模擬する放熱器が並べられました。


 配管をいったん十分に冷やしてから、蒸気弁を少しだけ開きます。蒸気が流れ始めて間もなく、管の中から重い音が響きました。


「閉めて」


 すぐに弁を閉じます。


「水撃ですね」


「うん。冷えたところで蒸気が水になって、たまってる。ドレンが足りないね」


 低い位置のドレンを増やし、管そのものの勾配も見直しました。翌日、また配管を冷やして同じ試験をすると、今度は小さな音が一度しただけです。


「まだ少し残ってるね」


 さらに直します。失敗は、一度に消えるのではなく、一つずつ小さくなっていきました。



          *



 暖房の強さも、編成の位置ごとに測りました。ボイラーに近い車両と、中央、それから一番遠い車両では条件が違います。


 どろちゃんは、すべての客車をまったく同じ温度へ揃えることにはこだわりませんでした。


「暖かめの車と、普通の車と、少し涼しい車を作ればいいよ。寒がりの人と暑がりの人が同じ温度を好きとは限らないし」


 学生が笑いました。


「乗る人が車両を選ぶのですか」


「その方が簡単でしょ」


 ところが実際に試すと、最後尾だけなかなか暖まりませんでした。単純に圧力を上げればよいわけではなく、主管の太さ、放熱器、ドレンの取り方まで見直す必要があります。案を変えるたびに、配管を冷やし、また最初から試しました。



          *



 客車を何度も走らせている間にも、スペインから線路工事の報告が届いていました。


 乾いた土地では、空き地や畑の間を長い直線で進めます。しかし深い谷へ出れば、そのままでは渡れません。そこで、鉄の塔を何本も並べ、その上へ短い橋桁を順につないでいくトレッスル橋を使います。


 見た目は、高圧送電線の鉄塔を谷の上へ一列に並べ、その頂部を橋桁でつないだような形です。列車はそのかなり高いところを走るので、下を見たくない人には楽しい橋ではありません。


 建設費は英国側からも出ています。


「せっかく資金があるなら、線形を悪くしてまで橋を安くする必要はありませんね」


「うん。16‰の上限は守ろう。橋の取り付きが長くなるなら、長くしていいよ」


 線路より難しかったのは電力でした。水力発電所だけでなく、季節によって変わる水量を支えるダムと、長距離の送電線まで考える必要があります。


「蒸気タービンは、まだ無理ですね」


「だったらダムだね。保守できないほど高い電圧も嫌だから、まず25kVくらいで考えよう」


「交流のまま送りますか」


「そのまま機関車まで持っていけないか、調べてみよう」


 そこから、また新しい研究が始まりました。



          *



 イベリア向けの長距離列車では、何十両もの車両へ複雑な走行用電気装置を分散させず、機関車へまとめます。貨物も客車も引くためです。


 25kV級の交流架線からパンタグラフで受電し、主変圧器で電圧を下げ、その先で直流主電動機を使うために水銀整流器を置きます。


 最初に試験室へ持ち込まれた整流器は、大きなガラス容器でした。通電すると青白い光が見えます。


「きれい」


 どろちゃんが眺めている横で、技師はあまり嬉しそうではありません。


「車両へ積むものとしては、少し怖いですね。振動もあります」


「割れたらだめだね」


 試験台を揺らした結果、ガラス容器の試作品は機関車用には採用されませんでした。次は丈夫な金属容器へ入れる案になります。


「中が見えなくなりますね」


「見えなくていいよ。正式名称はちゃんと水銀整流器にして、私はたこさんって呼ぶから」


 こうして、たこさんは少しずつ無骨になっていきました。



          *



 一方、ストラスブール側の既存幹線でも大きな変更が決まりました。営業距離が伸びてきたため、本線の直流電圧を600Vから1500Vへ上げます。


 これは後から思いついて無理に変更するのではありません。架線、絶縁、リレー箱などは最初から1500Vへの昇圧を考えて作ってありました。


 そのため夜間の改造は、想定より小さな作業で済みました。翌日に使う編成を車庫へ入れ、主電動機の結線を組み替え、主抵抗器と保護設定を見直し、絶縁を測定します。低い電圧で一度動かしてから、夜明け前に試運転しました。


 大学から来ていた学生が運転台の電圧計を見て首をかしげます。


「計器は換えなくていいんですか」


「初期の車は、600V用と1500V用の二つの目盛を最初から入れてあるよ」


 翌朝、乗客はいつも通り列車へ乗りました。見た目は昨日までとほとんど変わりませんが、変電所の人たちには、同じ列車が以前よりずっと小さな電流で走っていることが分かります。



          *



 交流機関車の試作も、最初から順調だったわけではありません。


 変圧器が熱を持ち、整流器が不安定になり、主電動機へ流す電流が跳ねたところで保護装置が動き、列車は停止しました。


「止まった」


「正確には、保護装置が止めました」


「それならえらい。壊れる前に止まったんだから」


 原因を確認して再起動し、また試験します。今度は坂道と貨物列車の負荷を模擬して大きな電流を流し、温度、音、振動を測りました。


 止まらず走ることだけが成功ではありません。異常が出たとき、壊れる前に確実に止まることも同じくらい重要でした。



          *



 こうした研究には、当然お金がかかります。


 ばねを何組も作り、試作客車を何両も組み立て、使えなかった部品も出ます。試験線を直し、測定器を増やし、ボイラーを作り、蒸気管を延ばし、機関車用変圧器を巻き直します。大学の予算だけで全部を払うことはできません。


 そこで鉄道会社、英国側、エルレンフェルトなどから研究費が入りました。さらに大学で新しく考え、実用になるものについては特許を取り、実施料が大学へ戻る仕組みも作ります。


 連接部の支持方法、ばね配置、暖房主管の構成、ドレン処理、試験方法など、対象はいろいろあります。もちろん、昔からあるものや当たり前すぎるものまで何でも権利にするわけではありません。


「これで、お金が戻ってくるんですね」


「戻ってきたら、次の試験に使うよ」


「また壊すんですか」


「壊すつもりはないよ。失敗することはあるけど」


 どろちゃんは笑いました。



          *



 何度目かの試験の日、改良された連接客車が再び試験線へ出ました。


 20km/hから40km/h、60km/h、80km/hへと速度を上げます。レールの継ぎ目を越えると衝撃はありますが、もうどろちゃんのお尻は浮きません。


 曲線では車体がゆっくり傾き、戻ったあとに揺れが残りません。最後尾へ移っても、以前のような跳ね方はしなくなりました。


「どうですか、教授」


 どろちゃんは座席へ深く腰を下ろし、しばらく揺れを確かめてから答えました。


「これなら、長く乗れる」


 学生はその言葉を記録しました。今度は「お尻が浮く」ではありません。


 もっとも、これで完成ではありません。耐久試験も必要ですし、冬の蒸気暖房、雨の日、軌道が少し悪くなったとき、満員と空車、食堂車や寝台車をつないだ場合など、試す条件はいくらでもあります。


「うまくいったら、ストラスブールの営業線でも比較できるかな」


「現在の客車と同じ区間を走らせれば、保線状態まで同じ条件で比べられます」


「じゃあ、それも研究計画に入れよう」


 机の上へ、また一枚紙が増えました。


 ライデン大学では空を飛ぶものを研究していましたが、今では地面を走るものも研究しています。そして教授の一人は、成功した機体だけでなく、失敗した試作車にも自分で乗っていました。その方が、測定した数字が何を意味するのか、よく分かるからです。



====================

第63章の小さな説明

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【ホラント幹線の予定線研究】


 アムステルダム―ハールレム―ライデン―デン・ハーグ―デルフト―ロッテルダムなどを候補とし、最初から複線、最小曲線半径R=1200m、最急勾配16‰を上限に研究しています。平坦地では、もちろんそれより良い線形を使います。難しいのは川・運河を越える橋の前後です。



【ユトレヒト】


 沿岸都市では外周部の通過駅とトラム接続を基本にしますが、ユトレヒトだけは大きな中央駅・鉄道工場・留置線・検修設備をまとめる内陸結節点として研究しています。



【黒板とチョーク】


 どろちゃんは講義や設計説明で黒板を多用し、神様から届いた羽衣フルタッチを愛用しています。折れにくく、なめらかに描け、消しあとも残りにくいので、黒板の前で考えながら図を増やしていくのに非常に向いています。



【一軸連接客車】


 隣り合う車体の間に一軸の走り装置を置き、連接面左右のばね・支持装置で荷重を受けます。中央は貫通路と幌なので空けます。中間部と編成端部では荷重条件が違うため、端部は別のばね・ダンパーを使います。


 さらに剛結輪軸ではなく、左右を一本の車軸でつながない短いスタブアクスルによる独立回転・独立懸架方式を研究し、古典的な輪軸蛇行動を避けるかわりに、連接部の案内リンクで向きを与える考え方へ進んでいます。



【失敗作】


 硬すぎるばね、柔らかすぎるばね、端部だけ跳ねる車、蛇行動が出て独立懸架案へ進んだ車など、量産できない試作車も研究成果です。何をすると悪くなるかを記録することで、次の設計に使えます。



【サービス電源】


 客車の照明・換気・制御などは車軸発電機と鉛蓄電池を基本にします。停車中や低速時は蓄電池から給電します。



【冬季蒸気暖房】


 冬だけ低圧ボイラーを備えた暖房車を編成に入れ、蒸気主管で各客車を暖めます。客車ごとに「暖かめ・標準・涼しめ」の温度帯を作り、乗客が好みの車両を選べる運用を考えています。


 営業前には水圧試験、安全弁試験、水撃、ドレン、末端温度などをライデン大学で確認します。



【トレッスル橋】


 スペイン方面の深い谷では、トレッスル橋を考えています。高圧電線の鉄塔のような細い塔を谷の上に何本も一列に立て、その最上部を短い橋桁で順につないで、その上を列車が走る形式です。


 巨大な一発橋より規格部材を量産しやすく、乾燥した広い谷に向きます。高いところを延々と走るので、高所恐怖症の人にはかなり怖い構造です。



【ストラスブール線の昇圧】


 ストラスブール側の本線は、営業距離が長くなってきたため、直流600Vから直流1500Vへ昇圧します。架線・絶縁・リレーボックスなどは最初から1500V対応で作ってあり、車両側は主電動機の結線変更と保護設定の見直しで対応します。


 初期ロットの主要計器には600V用と1500V用の二重目盛があり、昇圧後もそのまま使えます。



【イベリアの電化】


 長距離・低密度のスペイン―ポルトガル方面は、25kV級交流を架線へ送り、交流電気機関車の主変圧器と水銀整流器で直流主電動機を駆動する方式を研究しています。水銀整流器は通称「たこさん」です。


 長距離列車は電車ではなく、機関車+連接客車を基本にします。



【研究費と特許】


 鉄道会社、英国側、エルレンフェルトなどから研究費が大学へ入り、大学で生まれた実用技術は特許・実施料につながります。その収入を次の試験設備、工作機械、測定器、人材育成へ戻すことで、研究が自律的に拡大します。


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