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19貴族令嬢は中間圏へ行きます。コロンビア号の事故があった高度まで上昇出来ました。

第十九章 貴族令嬢は中間圏へ行きます


 ロンドンへ行ってから、一年がたちました。


 工場は少し大きくなりました。

 薬を作る建物には、人と器具が増えました。

 大学から来る手紙も増えました。


 どろちゃんは十六歳になりました。


 背丈は、ほとんど変わりませんでした。


     ◇ ◇ ◇


 南の領地から、今年も荷車が来ました。


 どろちゃんは窓から見て、少し安心しました。


「去年より少ない」


 去年は、荷台いっぱいの袋が何台も続きました。

 今年は、それほど場所を取っていません。


 改善したのかもしれません。


 乾燥の仕方を変えた。

 倉庫を直した。

 去年の失敗から何か覚えた。


 どろちゃんは外へ出ました。


 袋の口を一つ開けてもらいます。


「……あれ?」


 殻がありません。


 入っているのは、殻を外したピーナッツです。

 そして、やっぱりカビが付いています。


「今年は殻を外しております」


 荷を持ってきた男が言いました。


「どうして?」


「殻は場所を取りますので」


「中身の量は?」


「昨年と、だいたい同じです」


 どろちゃんは袋を見ました。


「同じだけ出たの?」


「はい」


「今年も?」


「はい」


 安心した分が、全部なくなりました。


 去年と同じくらい、食べられないピーナッツが出ています。

 家畜にも回しません。

 カビの付いたものを、食べ物へ戻すことはしません。


「倉庫、まだ直してないのかな」


 返事はありませんでした。


 荷を運んできた人に聞いても仕方ありません。


「買います」


 値段も、去年とあまり変わりません。


 食料としては困りものです。

 エルレンフェルトでは、別の使い道があります。


     *


 袋は、そのまま燃料を作るところへ送られました。


 去年と違うのは、原料ではありません。


 作る側です。


 選別

 乾燥

 処理

 混合

 成形

 検査


 一年間、同じものを作り続けました。


 出来上がったアフラ君は、去年より揃っています。


 どろちゃんの前に、燃焼試験の記録が並べられました。


 線が何本も重なっています。


「きれいになった」


 ――去年より、だいぶな。


「燃える時間も?」


 ――揃った。


「推力も?」


 ――揃った。


「原料は今年もあれなのに」


 ――原料は毎回同じじゃない。違うものから、同じ製品に揃えるところまでが製造だ。


「工場っぽくなったね」


 ――最初から工場だ。


 六本分の記録が、机の端にまとめてあります。


 全部、使えます。


 どろちゃんは、その束をもう一度見ました。


「六本、載せよう」


     ◇ ◇ ◇


 小鳥ちゃんの発進台は、去年と同じ場所にあります。


 機体は同じです。


 全長、およそ七・五メートル。

 翼を開けば、およそ九メートル。

 いっぱいに後退させれば、およそ五・二メートル。


 機体とどろちゃん、与圧装置、脚などを合わせて、およそ九百キログラム。


 そこへ、アフラ君を六本。


 一本、およそ二百五十キログラム。


 発進時は、およそ二・四トンになりました。


「重い」


 ――発進時の重さなら、最初の二本を一緒に使う方がいい。


 点火回路は改造されています。


 以前は、どのロケットも一本ずつしか点火できませんでした。

 選択器と継電器が、二本同時に燃えることを許さなかったからです。


 今回は一番と二番だけ、同時点火できます。


 その後は、三番、四番、五番を一本ずつ。


 六番は予備です。


「予備なのに載せるの?」


 ――状態がよければ、六番まで使える。


「いけそうじゃなかったら?」


 ――その場合は五番までだ。


「記録は低くなる」


 ――記録より、帰還条件を崩さない方が大事だ。


「はい」


 どろちゃんも、その順番には異議がありません。


     *


 発進は、夜明け前になりました。


 空は晴れています。

 風も弱い。


 小鳥ちゃんの透明な覆いを閉じます。


 与圧

 電源

 操舵

 翼の作動

 脚

 記録計

 ロケットの点火回路


 一本ずつ確認します。


「一番、二番、同時点火回路」


 ――正常。


「三、四、五、六」


 ――正常。


『どこまで行くの?』


 小鳥ちゃんが聞きました。


「分からない」


『宇宙?』


「そこまでは行かないと思う」


 ――「思う」だけでは飛行計画にならないな。


「中間圏までは行く予定です」


 ――それでいい。


 発進台の前は暗いままです。


 遠くの東だけが、少し明るくなっていました。


「点火します」


 選択器を合わせます。


 赤いボタンを押しました。


 ――Поехали!(パイェーハリ! さあ行こう!)


「それ、ガガーリン」


 ――こういうときには、やっぱり出る。


 技師さんたちには、学校で習った言葉です。

 一九六一年、ボストーク一号が発進したときの一言。


 どろちゃんにも、意味は分かっています。


「行きましょう」


     *


 二本


 四十キロニュートン近い推力が、一度に機体を押しました。


 小鳥ちゃんが発進台を離れます。


 去年までの一本点火とは、最初から違いました。


「重いけど、押してる」


 ――速度は問題ない。


「見てます」


 高度が増えます。


 地面の灯りが小さくなりました。


 三十秒


 二本がほとんど同時に燃え尽きます。


 推力が消える前に、どろちゃんは三番へ切り替えました。


「三番」


 点火


 今度は一本です。


 機体はもう、発進時より四百キログラム以上軽くなっています。


 上昇は続きました。


 雲が下へ行きます。


 空の青が、少しずつ濃くなります。


 四番


 さらに三十秒


 高度計の数字が、見慣れないところへ入っていきます。


 翼はまだ使えます。


 けれど、地上に近いところと同じではありません。


 空気が薄くなるにつれて、同じ舵角でも反応が小さくなりました。


「五番」


 点火


 機体がまた押されます。


 燃料を使うたびに軽くなるので、一本のロケットでも効き方が変わります。


 五番が終わったころ、高度は三十キロメートル近くまで来ていました。


 エンジン音が消えます。


 十秒だけ待ちます。


 六番を使わなくても帰れます。


 使うなら、ここです。


「姿勢、いい」


 ――いい。


「温度」


 ――問題なし。


「圧力」


 ――問題なし。


「六番、点火していい?」


 少し間がありました。


 ――六番を使える条件には入っている。


「六番」


 赤いボタンを押しました。


     ◇ ◇ ◇


 最後のアフラ君が燃えます。


 もう空気はずいぶん薄くなっています。


 地上近くのように、大きな空気抵抗へ押し返されません。


 速度が増えました。


 高度、三十五キロメートル


 四十


 四十五


 六番が燃え尽きます。


 高度は、四十五キロメートルを少し越えました。

 速度は、秒速五百メートルを越えています。


 それでも、小鳥ちゃんは上がり続けました。


 もう押しているものはありません。


 慣性だけです。


 高度、五十キロメートル。


「中間圏」


 どろちゃんの体から、座席へかかっていた重さがほとんど消えました。


 ベルトだけが、体の位置を決めています。


 空は、青というより黒に近くなっていました。


 地平線の向こうが明るくなっています。


 地上ではまだ低い太陽が、この高さからは先に見えました。


 五十五キロメートル。


 上昇速度が、はっきり小さくなってきます。


 五十八。


 もう翼を動かしても、飛行機らしい反応はほとんどありません。


「ほんとに効かない」


 どろちゃんはエルロンを少し動かしました。


 空気に押された感じはありません。


 それでも、小鳥ちゃんの胴体が、ごくゆっくり反対側へ動きました。


「あ」


 六番が燃え終わったときに残った、ごく小さな回転も消えていません。

 地上なら空気がすぐに抑える程度の動きです。

 ここでは、その空気がほとんどありません。


 舵面そのものにも重さがあります。

 それを動かせば、その反作用も機体へ返ります。


 もう一度。


 今度は方向舵。


『くすぐったい』


「ちょっとだけね」


 ――空力じゃなくて、慣性の方が見えているな。


「うん」


 どろちゃんは昇降舵も動かしました。


 ほんの少し

 止める

 また動かす


 小鳥ちゃんの向きが、ゆっくり変わっていきます。


 さっきまで風防の右下にあった地球が、少しずつ中央へ寄ってきました。

 黒い空との境目が傾きます。


「景色が動く」


『わたしが動いてるの』


「そうだった」


 さらに、ほんの少し。


 風防の正面に、地球側が入ってきました。


 青い縁

 その下に白い雲

 もっと下には、もう細かな町など見えません


 しばらく、誰も何も言いませんでした。


 それから、技師さんの一人がロシア語で言いました。


 ――Я «Чайка», я «Чайка».(ヤー・チャイカ、ヤー・チャイカ。私は〈カモメ〉、私は〈カモメ〉)


 別の声が続きました。


 ――Вижу Землю. Вижу горизонт.(ヴィージュ・ゼームリュ。ヴィージュ・ガリゾーント。地球が見える。地平線が見える)


「テレシコワ」


 ――学校で習った。


「小鳥ちゃんはカモメじゃないけど」


『わたし、小鳥ちゃん』


 ――そこは知っている。


 どろちゃんは笑いました。


 まだ舵を少し動かします。


 動かすたびに、景色がほんの少し揺れました。

 飛行機を操縦しているというより、空気のほとんどないところで、機体と舵面が互いに押し合っているだけです。


 高度、六十キロメートル。


 上昇速度は、もう小さくなっています。


 どろちゃんは高度計を見ました。


「このへんだったね」


 ――何が。


「コロンビア」


 返事がすぐには来ませんでした。


 どろちゃんの頭の中では、二〇〇三年の事故は未来の出来事ではありません。


 すでに起きた事故です。


 スペースシャトル・コロンビア。


 再突入の途中

 高度およそ六十キロメートル

 マッハ十八ほどの速度を持ったまま、機体は壊れました


「私、いま、その高さにいる」


 ――高度だけでは同じ話にならない。


「分かってる」


 ――向こうは秒速で何キロも飛んでいた。こっちは軌道速度を持っていない。


「今回は、横へほとんど速度を付けてないし」


 ――それより、総速度が違う。桁が違う。


「はい」


 遠くに、短い光が一本走りました。


「あ」


 すぐ消えました。


 流れ星です。


 このあたりも、流星が光りながら大気の中で消耗していく高さです。


 ものすごい速度で入ってくる小さな天体は、前の空気を強く圧縮し、空気の粒子と激しく衝突します。

 流星体自身の物質も熱せられ、削られ、蒸発し、周囲の気体と一緒に光ります。


「こっち来ないでね」


 ――見えてからでは、もう通り過ぎているな。


「見える前には言えないもの」


 高度計の数字が、ゆっくり止まりました。


 六十・五。


 記録計の数字は、あとで補正します。


 だいたい六十一キロメートル。


 小鳥ちゃんは、そこで上昇をやめました。


     *


 何も起きません。


 そこが、少し不思議でした。


 火も出ません。

 機体も赤くなりません。

 何かの境界線が見えるわけでもありません。


 ただ、空気がほとんどありません。


 そして、上がらなくなりました。


『いちばん上?』


「今回のね」


 少しして、高度計が逆に動き始めました。


「降ります」


 ――最初は姿勢と速度の確認だけでいい。


「はい」


 小鳥ちゃんは落ち始めました。


 最初は静かです。


 舵を動かしても、まだ空気はほとんど答えません。


 どろちゃんは、上でやったのと同じように一度だけ昇降舵を動かしました。

 今度も最初は、慣性の反作用の方が先に見えます。


 地球の重力だけが、少しずつ速度を戻してきます。


 六十キロメートル。


「またコロンビアの高さ」


 ――やっぱり速度の方が大事だ。


「見てる」


 小鳥ちゃんの速度は、コロンビアとはまるで違います。


 秒速何キロメートルという世界ではありません。


 どろちゃんは、少しだけ肩の力を抜きました。


「同じ高さでも、全然違うね」


 ――高度は場所だ。危険を決めるのは、それだけじゃない。


「はい」


 五十五キロメートル


 まだ舵は頼りません。


 五十


 表面温度の数字が、少し上がりました。


「温度、上がった」


 ――空気が戻ってきた。


 動圧の表示も、ゼロに近いところから動き始めています。


 同じことを測っているわけではありません。


 けれど、空気が濃くなり、速度もあるところへ入ってきた結果として、どちらも変わり始めます。


 どろちゃんは操縦桿をほんの少し動かしました。


 今度は、さっきと違います。


 舵面を動かした瞬間の小さな反作用だけではありません。

 少し遅れて、空気が機体を押しました。


 機首が、ゆっくり反応します。


「今度は空気」


 ――戻ってきたな。まだ弱いけれど。


「分かってる」


 さらに降ります。


 翼を少しずつ前へ出します。


 一度に全部は動かしません。


 空気が濃くなる


 舵が効く


 揚力が戻る


 小鳥ちゃんが、また飛行機になっていきます。


     ◇ ◇ ◇


 地面が、いつもの地図へ戻ってきました。


 川

 森

 畑

 町


 高いところでは全部が模様でした。


 いまは、着陸する場所を選ばなければなりません。


「エルレンフェルト、見えた」


『帰る?』


「帰る」


 ――脚を出すには、まだ少し早い。


「分かってます」


 速度を落とします。


 翼をさらに前へ。


 滑空


 旋回


 進入


 最後に脚を出しました。


 小鳥ちゃんが地面へ戻ります。


 車輪が一度はねました。


「あ」


 もう一度接地。


 今度はそのまま走りました。


 停止


 どろちゃんは、しばらく座ったままでした。


『着いたよ』


「うん」


 覆いを開けます。


 地上の空気が入ってきました。


 濃い。


「空気、多い」


 ――そこから感想か。


     *


 記録計を工場へ持ち帰りました。


 気圧

 温度

 速度

 高度

 点火時刻

 燃焼時間


 六本とも、大きな異常はありません。


 去年より燃焼時間が揃っています。

 推力のばらつきも小さくなっています。


 最高高度は、補正しておよそ六十一キロメートル。


「中間圏まで行った」


 どろちゃんは、紙へ六一と書きました。


 その横へ、一〇〇と書きました。


 少し離れています。


「百キロは?」


 ――今のままでは簡単じゃない。


「ロケットをもっと大きくする?」


 ――機体から変わる。


「じゃあ」


 どろちゃんは鉛筆を止めました。


 しばらく、六一と一〇〇を見比べます。


「小鳥ちゃんが、地面から全部上がらなくてもいいよね」


 返事がありません。


「先に、飛行機で高いところまで運べば」


 ――検討はできる。


「大きい飛行機が要るね」


 ――今日は記録を整理したら、もう休んだ方がいい。


「まだ昼です」


 ――昼寝でもした方がよさそうだな。


 どろちゃんは、紙をたたみませんでした。


 六一の横に、一〇〇が残っています。



第十九章の小さな説明


【ロンドンから一年】


 前章は一七〇一年、本章は一七〇二年です。工場や薬品製造は一年間で経験を積み、細かな工程をすべて描く代わりに、製品の品質や日常の変化としてその進歩を示します。

 どろちゃんは十五歳から十六歳になりましたが、背丈はほとんど変わっていません。


【殻を外したカビ付きピーナッツ】


 南隣の領地では、乾燥・保管の改善が十分に進まず、今年も前年と同程度のカビ付きピーナッツが出ています。食用・飼料用には戻しません。

 今年からは輸送と保管の体積を減らすため、殻を外した状態でエルレンフェルトへ納品します。カビ被害が減ったわけではありません。


【アフラ君と六本のロケット】


 小鳥ちゃんのロケットユニットは一本約二百五十キログラム、そのうち推進剤が約二百二十キログラムです。一基あたりの推力は約二十キロニュートン、燃焼時間は約三十秒です。

 本章では六本を搭載し、一番と二番だけを同時点火できるよう点火回路を変更します。その後は三番、四番、五番を一本ずつ使用し、六番は機体状態が良い場合だけ使う予備兼記録延長用とします。六番を使わなくても安全に帰還できる飛行計画です。


【中間圏と流れ星】


 中間圏はおおむね高度五十キロメートルから八十数キロメートルの領域です。多くの流星が目立って発光・消耗するのもこのあたりです。

 流れ星は、単に「空気との摩擦」だけで光るのではありません。高速で飛び込む流星体の前方で大気が強く圧縮され、空気分子との衝突、流星体表面の加熱・蒸発・アブレーション、周囲の気体や蒸気の励起・電離などが重なって発光します。


【コロンビア号との比較】


 スペースシャトル・コロンビア号は二〇〇三年二月一日、再突入中に高度約六十キロメートル付近、マッハ十八前後の速度で空力分解しました。

 物語世界の暦は一七〇二年ですが、どろちゃんと技師さんたちは未来側の航空宇宙史を知っているため、この事故を既知の過去の事故として思い出します。

 今回の小鳥ちゃんは軌道速度を持たず、水平速度もほとんど与えない弾道上昇です。同じ六十キロメートル級の高度にいても、数キロメートル毎秒で再突入する宇宙船とは運動エネルギーも空力加熱も大きく異なります。安全側である理由の本質は、水平速度がないことそのものより、総速度がはるかに低いことです。


【ガガーリンとテレシコワ】


 発進時に技師さんが口にする「Поехали!(パイェーハリ! さあ行こう!)」は、一九六一年のボストーク一号発進時にユーリイ・ガガーリンが発したことで知られる言葉です。

 中間圏で出てくる「Я «Чайка», я «Чайка».(ヤー・チャイカ、ヤー・チャイカ。私は〈カモメ〉、私は〈カモメ〉)」は、一九六三年のボストーク六号でワレンチナ・テレシコワが使ったコールサイン「チャイカ(カモメ)」による交信です。「Вижу Землю. Вижу горизонт.(ヴィージュ・ゼームリュ。ヴィージュ・ガリゾーント。地球が見える。地平線が見える)」という言葉も、実際の交信記録をもとにしています。

 本作の技師さんたちにとって、ガガーリンやテレシコワは学校で学んだ宇宙開発史の人物です。そのため、どろちゃんの飛行を見ながら自然に当時の言葉が出てきます。


【最高高度の計算】


 本章では、最高高度を約61キロメートルとします。無抗力で鉛直方向だけを計算すると70キロメートル台まで上がりますが、今回は大気抵抗を入れました。

 計算は鉛直方向だけの1次元モデルです。標準大気による高度ごとの密度変化、重力の高度変化、ロケット燃焼による機体質量の減少を入れています。推力は1基約20キロニュートン、燃焼時間約30秒、推進剤約220キログラム。最初の2基を同時に燃焼し、その後3基を順番に使用、10秒の確認時間を置いて6基目を燃焼させます。

 翼を最大後退させた小鳥ちゃんの抗力係数は、9M723イスカンデルの軌道計算例で使われる値にならい、仮に0.25としました。ただし、これはイスカンデルの公称実測抗力係数という意味ではありません。小鳥ちゃんの等価基準面積は、機体正面形状がまだ固定されていないため、暫定的に0.50平方メートルとしています。

 この条件では6基目の燃焼終了が発進後約160秒、高度約45.5キロメートル、上昇速度約秒速538メートル。その後は弾道上昇し、発進後約216秒で約60.5キロメートルに達します。等価基準面積を0.4〜0.6平方メートルの範囲で変えると、最高高度はおよそ58〜63キロメートルです。したがって本文では細かな機体形状が決まるまで「約61キロメートル」を暫定値とします。

 100キロメートル級への挑戦は別の課題とし、小鳥ちゃんを高高度まで運んでから発進させる母機方式を、次の検討事項として残します。

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