149貴族令嬢はお尻の痛くない馬車を作ります。 なろう定番の馬車改良 本気で行きます。
第149章 貴族令嬢はお尻の痛くない馬車を作ります
チェブラーシカちゃんがエルレンフェルトへ戻ったのは、夕方でした。
フランソワさんと一緒に降ります。
いつもの給仕さんも帰ってきました。
イスタンブールには、オイゲン伯爵とマルガレータ男爵が残っています。
実務者会議は続きます。
どろちゃんが数日いなくても、現地の仕事は止まりません。
「お嬢様、夕食まで少しお休みになりますか」
「先に図面描く」
フランソワさんは予想していた顔をしました。
「やはりでございますか」
「だって、お尻が痛いの」
これには勝てません。
どろちゃんはそのまま、ドラフターのある部屋へ向かいました。
◇ ◇ ◇
大きな紙を載せます。
鉛筆。
定規。
消しゴム。
関数電卓。
最初に描いたのは馬車の外形ではありません。
横から見た下部フレームです。
車輪。
車軸。
牽引装置。
ブレーキ。
その上へ客室を描きます。
ただし、線をつなぎません。
「ここ、完全に分ける」
フランソワさんが横から見ます。
「車輪の部分と、客室でございますか」
「うん」
午前中から午後まで乗った馬車は、客室を革帯で吊っていました。
あれは間違いではありません。
車輪が石を踏む短い衝撃を、直接客室へ入れないという考え方は正しいです。
問題は、そのあとです。
客室が動く。
揺れる。
戻る。
また揺れる。
次の石を踏む。
前の揺れが残ったまま、新しい揺れが加わる。
「細かい振動を取るものと、大きな揺れを止めるものを分ける」
どろちゃんは紙へ4本の柱を描きました。
下部フレームから立ち上がる柱です。
客室の四隅より少し外側。
柱の上部から、今度は下へ線を引きます。
「上から吊るのでございますね」
「列車でやってるのと似てる」
エルレンフェルトやVOG圏の鉄道では、連接部分や車体間の動きを扱うため、ばねとダンパーを組み合わせた構造を大量に使っています。
部品は特別品ではありません。
規格品です。
どろちゃんが今日必要としているのは、まったく新しい機械ではありません。
使う場所を変えるだけです。
◇ ◇ ◇
客室を支えるのは4本のコイルばね。
柱の上部から、客室を吊ります。
列車で使っているものより、少しばね定数の小さい規格品を選びます。
馬車の客室は、鉄道車両ほど重くありません。
乗る人数も少ないです。
硬すぎれば、せっかく分けた意味がありません。
柔らかすぎれば、今度は客室が大きく動きます。
「ここは交換できるようにしよう」
ばね受けを描きます。
固定して溶接してしまいません。
規格品のばねを外して交換できる構造です。
「試して硬かったら一段柔らかいのにする。柔らかすぎたら戻す」
「調整できる方がよろしいのでございますね」
「最初からぴったりなんて無理だもん」
どろちゃんは実験を嫌いません。
計算はします。
でも、計算だけで路面の全部を決めたことにはしません。
◇ ◇ ◇
次はダンパーです。
客室の下。
下部フレームとのあいだへ4本。
真上から見ると、四角形の四隅から内側へ向かいます。
横から見ると斜めです。
4本を合わせると、四角錐の辺のような形になります。
「これなら上下だけじゃないね」
フランソワさんが紙を見ました。
「横へ傾いたときも動きますね」
「うん。前後も。回っても」
客室が上下すれば、4本が一緒に動きます。
ロールすれば、左右で伸び縮みが変わります。
ピッチなら前後で変わります。
ヨーすれば対角側のダンパーが違う動きをします。
どの方向でも、客室と下部フレームの相対運動が出れば、どこかのダンパーが働きます。
「揺れたら、熱にして捨てる」
ダンパーの仕事は、客室を支えることではありません。
それは上のばねです。
ダンパーは、動きを止めます。
この役割分担が大事です。
◇ ◇ ◇
「横へずれたらどうなります?」
フランソワさんが聞きました。
「それも考えてる」
どろちゃんは、客室床の中央から下へ線を引きました。
下部フレームの対角線が交わる中心。
そこへ、太いゴムの牽引材をつなぎます。
客室が真ん中にいれば、まっすぐ下へ引かれます。
前後左右へずれれば、ゴムが斜めになります。
斜めになった分、中心へ戻そうとする力が出ます。
「これはばねとは別でございますか」
「別。位置を真ん中へ戻す係」
しかも、ゴムは金属ばねほどきれいな線形ではありません。
少し動いたときは柔らかい。
大きくずれると、伸びるほど強く戻します。
馬車には、その方が都合がいいです。
床の中央へ小さなノブを描きました。
「これは?」
「ゴムの張りを変える」
ノブを回すと、ねじ機構を介して初期張力が変わります。
平らな道なら少し弱め。
荒れた道や坂なら少し強め。
客室がどれくらい自由に動くかを、乗る側で調整できます。
「お嬢様が触りますね」
「触るよ」
「やはり」
「でも、走りながらぐるぐる回さないよ」
「それなら安心でございます」
「なんで毎回安心するの」
◇ ◇ ◇
下部フレームは木ではありません。
溶接した鋼管です。
エルレンフェルトでは、もう珍しいものではありません。
水玉船工場で、船体周辺のフレームや治具を作っています。
鋼管。
板材。
溶接設備。
加工治具。
検査器具。
全部あります。
しかも、馬車1台のフレームは船よりずっと小さいです。
どろちゃんは図面へ材料寸法を書き込みました。
必要以上に太くしません。
柱も鋼管。
上部のばね受けも溶接構造。
見た目はあとで隠します。
「柱が外から見えたら、工場の台車みたいになるね」
「豪華な馬車には見えませんね」
「だから内装屋さんに隠してもらう」
外から見える柱には木製の化粧部材を被せます。
必要なら彫刻。
金属部分も塗装します。
ばねは上部の飾りの中へ。
ダンパーは客室下にあるので、外からは目立ちません。
機械として必要な形と、王侯が乗る見た目を分けます。
◇ ◇ ◇
ここで、どろちゃんは手を止めました。
「内装、先に頼もう」
「図面はまだ途中でございます」
「だから先に」
一番時間がかかるのは、鋼管を切って溶接することではありません。
木部。
内張り。
窓枠。
カーテン。
飾り。
座席の表皮。
人が見て触るところです。
工場へ図面を全部渡してから始めたら遅れます。
どろちゃんは内装担当を呼んでもらいました。
「4台作ります」
「4台でございますか」
「同じ基本寸法で。見た目は豪華にしてください。でも、中の座るところは新しく作らなくていいです」
「では、どのように」
「電車の椅子を使います」
内装屋さんが少し止まりました。
「電車、でございますか」
「中身だけ」
鉄道車両で使っている座席は、もう大量に作っています。
コイルばね。
シュロ。
厚めの布地。
長時間座っても疲れにくいように作ったクッションです。
それを馬車用にもう一度発明する必要はありません。
「表皮だけ、きれいなカバーにしてください。外せる方がいいです」
「刺繍も入れますか」
「お任せします。とっても偉そうに見える感じで」
フランソワさんが少し横を向きました。
「何か?」
「いえ。分かりやすいご注文でございます」
問題は、電車用のクッションをどこから持ってくるかです。
車両工場はフランスにあります。
「電信打って。完成品のクッション、4台分。予備も」
「今からでございますか」
「今から」
鉄道があります。
フランスの車両工場から、エルレンフェルトまで運べます。
新しく座席工場を一つ作る必要はありません。
◇ ◇ ◇
図面は夕食を挟んで続きました。
車軸。
ベアリング。
リンク。
ピン。
ブレーキ部品。
ダンパー。
ばね。
ゴム。
どれも、エルレンフェルトかVOG圏で規格品があります。
ここが大きいです。
神様の箱から出す部品ではありません。
誰かが一個ずつ手作りする特殊品でもありません。
番号で注文できます。
壊れたら交換できます。
同じ物を何個も作れます。
「これ、売れるね」
フランソワさんが言いました。
「売れるよ。でも工場は増やさない」
「今あるところで作るのでございますね」
「うん」
地球全体で見れば、まだ工作機械も工場も資本も少ないです。
同じ部品を作る工場を、フランス、イタリア、オスマン帝国、エルレンフェルトへそれぞれ一つずつ置く余裕はありません。
鉄道車両はフランス。
船関係の鋼管フレームは水玉船工場。
ばねはばねの担当工場。
ダンパーはダンパーの担当工場。
必要な場所へ鉄道や船で送ります。
各国へ図面を配って同じ設備を重複させるより、今はその方が速いです。
◇ ◇ ◇
翌朝。
水玉船工場では、もう鋼管が切られていました。
4台分です。
治具の上へ並べます。
寸法を合わせます。
仮止め。
測定。
問題がなければ本溶接。
1台ずつ全部終わらせるのではありません。
4台を同じ工程で進めます。
切るなら4台分。
穴を開けるなら4台分。
治具へ載せるなら順番に4台。
同じ寸法の部品をまとめて作る方が早いです。
「ここ、左右同じですね」
「同じにして。予備部品の種類を増やしたくない」
前後で同じにできるところも同じにします。
右専用。
左専用。
前専用。
後ろ専用。
そんな部品を増やすほど、補給が面倒になります。
どろちゃんは製作段階から、壊れたあとのことを考えています。
◇ ◇ ◇
ばねが届きました。
ダンパーも届きました。
リンク類。
ベアリング。
ボルト。
ナット。
ゴム牽引材。
規格品なので速いです。
フランスからは、電車用座席のクッションが鉄道で送られてきます。
内装屋さんは、それが来る前に木部を作っています。
座席の台。
側壁。
窓枠。
天井。
ばねを隠す上部の化粧。
柱を隠す部材。
機械側と内装側が同時に進みます。
どろちゃんは、ときどき両方を見に行きます。
「ここ、外せます?」
「外せます」
「点検のときにばねが見えないと困るので」
「では、この飾り板を留め具で外せるようにいたします」
「お願いします」
豪華にしても、整備できなくなったら意味がありません。
◇ ◇ ◇
2日目。
4台とも形になりました。
鋼管フレーム。
4本柱。
上から吊った客室。
下の四角錐ダンパー。
中央ゴム。
車輪。
牽引装置。
ブレーキ。
内装。
座席。
表皮カバー。
完成重量を量ります。
「1t、少し超えた」
どろちゃんは数字を見ました。
「重いでございますか」
「この装備ならこんなものかな」
もっと軽くすることはできます。
でも、軽量化のために柱やフレームを薄くしすぎる意味はありません。
馬2頭で引く前提です。
ベアリングもあります。
転がり抵抗は、古い木製軸受の馬車とは違います。
坂道では重量が効きます。
だからブレーキも大事です。
◇ ◇ ◇
完成したから終わりではありません。
「溶接から見ます」
どろちゃんは下へ潜りました。
フランソワさんも反対側から照明を当てます。
溶接部。
柱の根元。
ばね受け。
ダンパー取付部。
牽引装置の周辺。
ブレーキの支持部。
割れ。
欠け。
溶け込み不足が疑われる形。
過大な歪み。
左右寸法。
4台を比べます。
同じ図面で作っても、溶接すれば熱で動きます。
測らないと分かりません。
「2号車、ここもう一度測って」
「はい」
寸法が戻ってきます。
許容内です。
「大丈夫」
次は荷重を載せます。
人が座る重さを想定して、客室へ荷重を分けます。
4本のばねがどれだけ沈むか。
左右差。
前後差。
中央ゴムの張力。
ノブを回したときの変化。
客室を横から押します。
離します。
一度傾く。
戻る。
反対へ行こうとする動きを、ダンパーが食べます。
「もう一回」
今度は前後。
次は少しひねります。
ヨー。
4本のダンパーが別々に動きます。
「これならいいね」
最後に短い試走です。
◇ ◇ ◇
工場の外の道へ出しました。
まだ塗装前です。
外から見ると、豪華な内装と無塗装の機械部分が混ざっています。
少し変です。
でも試験には関係ありません。
馬を2頭つなぎます。
最初は空車。
ゆっくり。
次に少し速度を上げます。
舗装の継ぎ目。
小さな段差。
石。
下部フレームは動きます。
客室は、それよりゆっくり動きます。
そして戻ります。
何回も揺れません。
「乗る」
どろちゃんが言いました。
「わたくしも参ります」
フランソワさんも乗りました。
座ります。
電車用のクッションです。
中身は見えません。
外側はもう上質な布で覆われています。
「これ、知ってる椅子」
「電車でございますね」
「うん」
馬車が動きます。
段差。
どん。
車輪側から音は来ます。
でも、お尻へ来る衝撃は小さい。
客室が少し動きます。
ダンパーが止めます。
座席が最後の細かい振動を取ります。
「これなら大丈夫」
「何がでございますか」
「お尻」
設計要求を満たしました。
◇ ◇ ◇
機械としては、2日で完成しました。
検査も終わりました。
次は塗装です。
下部フレーム。
柱の見える部分。
金属部品。
外装。
4台を塗ります。
そして乾かします。
ここで、もう1日必要になりました。
「触らないでね」
「分かっております」
乾いていない塗装に触れば、3日目が4日目になります。
どろちゃんは、乾燥を待つ時間を別の仕事に使いました。
◇ ◇ ◇
ムリヤちゃん用のパレットを出します。
馬車4台をそのまま載せるためではありません。
固定用のアダプターを付けます。
下部フレームの決めた位置を、パレット側の固定点へつなぐ治具です。
4台とも同じ位置。
同じ金具。
同じ手順。
輸送時には、車輪も動かないようにします。
もう一つ大事なのが、客室です。
普段はばねで吊っています。
それを飛行機の中でも自由に動かしたままにはしません。
「ここ、輸送ロック」
客室と下部フレームを、飛行中だけ固定します。
「固定しないと、ダンパーがずっと働くから」
ムリヤちゃんの貨物室にも振動があります。
離陸。
上昇。
気流。
着陸。
客室がずっと動けば、ダンパーはずっと運動エネルギーを熱へ変え続けます。
長時間なら温度が上がります。
油の粘度が変わります。
シールにもよくありません。
馬車として走っていないときに、ダンパーを働かせる理由はありません。
「飛行機の中では、ただの荷物でいい」
輸送ロックを掛ければ、客室と台車はほぼ一体になります。
現地で解除すれば、またサスペンションが働きます。
◇ ◇ ◇
予備部品も用意します。
ばね。
ダンパー。
中央ゴム。
リンク。
ピン。
ベアリング。
ブレーキ部品。
座席クッション。
表皮カバー。
ボルト類。
4台あるから、一台壊れたら別の一台から外す。
それはやりません。
「共食い整備、禁止」
どろちゃんが言いました。
「食べるのでございますか」
「食べないよ。部品取り」
1号車を走らせるために2号車からダンパーを外す。
次に3号車の部品を2号車へ回す。
やがて、4台あるのに動くのは1台。
そういうことになります。
「最初から予備を持っていけばいいの」
予備部品を運ぶために、ハイラックス用の小さなトレーラーも作りました。
現地では、整備が必要な馬車のところまでトレーラーごと持っていけます。
部品箱を毎回積み替える必要もありません。
◇ ◇ ◇
塗装が乾きました。
4台へカバーを掛けます。
見た目を隠すためだけではありません。
輸送中の擦れ。
埃。
作業中の汚れ。
それを防ぎます。
1台ずつパレットへ載せます。
下部フレームをアダプターへ固定。
車輪を固定。
輸送ロック。
確認札。
4台とも同じです。
予備部品トレーラーも積みます。
穴がたくさんあいているハイラックスも積みます。
この車は、北京でもテネリフェでも働きました。
今度はイスタンブールです。
そして、もう一つ。
零式三座水上偵察機。
どろちゃん専用のE13A系水上機です。
専用の車輪付き台車へ載せます。
主翼は輸送状態へ。
燃料も航空輸送用に処置します。
現地ですぐ使えるよう、必要な燃料缶と整備品もセットです。
さらに水中用レール。
海岸から水面へ機体を出すための分割式レールです。
大型クレーンは持っていきません。
イスタンブール旧市街の道へ大きなクレーンを入れる方が大変です。
零式三座は、台車。
レール。
ハイラックス。
ウインチ。
この組み合わせで水へ出します。
◇ ◇ ◇
積み込みが終わりました。
操縦は、どろちゃんとフランソワさん。
FEさんが2人。
いつもの給仕さんが1人。
今回は、それだけです。
イスタンブールには、オイゲン伯爵とマルガレータ男爵が残っています。
康熙帝。
ルイ14世。
サヴォさん。
アフメト3世。
みんな、向こうです。
どろちゃんは貨物室をもう一度見ました。
カバーを掛けた馬車4台。
予備部品トレーラー。
ハイラックス。
零式三座。
台車。
水中レール。
「忘れ物ない?」
FEさんの一人が一覧を確認します。
「ありません」
「じゃあ行こう」
フランソワさんが右席へ座りました。
どろちゃんは左席。
ムリヤちゃんのエンジンが順番に動き始めます。
数日前。
どろちゃんはイスタンブールで、
「とってもお尻が痛いの」
と言っていました。
その結果、馬車4台と水上機まで積んだ巨大輸送機が、もう一度イスタンブールへ向かうことになりました。
【小さな説明】
【革帯吊りと鋼製ばね】
17世紀の上等な馬車には、客室を太い革帯で吊るす方式がすでに使われていました。
1660年ごろに成立したベルリン型馬車も、その代表例です。
革帯は車輪から来る衝撃を直接客室へ伝えにくくしますが、客室を長く吊るすほど前後左右へ揺れやすくなります。
鋼製ばねを車両へ使う試みも17世紀後半には始まっています。
ただし、1709年に近代的な馬車用ばねがどこでも普通に使われていたわけではありません。
後世の馬車製造書でも、革帯と初期の鋼ばねを組み合わせた馬車について、揺れや傾きが大きいという問題が記録されています。
また、当時の鋼材は現代の規格化されたばね鋼ほど均質ではありません。
舗装都市で乗り心地を良くする装置を、そのまま崖沿いの荒れた山道へ持っていけば安全になる、という単純な話でもありません。
【どろちゃんの馬車の振動分担】
本作の新型馬車では、一つのばねへ全部の仕事をさせていません。
下部の車輪・フレームは、路面の細かな凹凸を直接受けます。
客室は上部4本のコイルばねで吊り、短い衝撃を客室へそのまま伝えにくくします。
客室下部の4本のダンパーは四角錐状に配置し、上下動だけでなくロール、ピッチ、ヨーを減衰させます。
床中央から下部フレーム中心へ張ったゴムは、前後左右へずれた客室を中心へ戻します。
座席には電車用のコイルばね、シュロ、厚手布地を使ったクッションを流用し、最後の細かな振動を受け持たせています。
つまり、
路面から来る短い周期の振動。
客室全体の長い周期の揺れ。
身体へ残る細かな振動。
を別々の段階で扱っています。
【なぜ新しい工場を作らないのか】
本作世界では鉄道、船舶、化学工業、航空関係などを短期間に同時整備しています。
しかし、1709年の世界全体には近代工業を支える工作機械、発電設備、熟練工、測定器、資本がまだ十分にありません。
そのためVOG圏では、同じ種類の工場を国ごとに重複して作るより、生産品目を分担して大量生産し、鉄道や船で配る方式を取っています。
鉄道車両工場がフランスに集約されているのも、その一例です。
新型馬車もライセンス生産で各国へ工場を増やすのではなく、既存の鋼管加工、ばね、ダンパー、座席などの担当工場を使って量産します。
【輸送ロック】
ダンパーは、相対運動を熱へ変えて揺れを減らす装置です。
馬車をムリヤちゃんへ積んだ状態で客室を自由に動かしておくと、飛行中の細かな振動や加速度でダンパーが長時間働き続けます。
必要のない発熱は、油温上昇やシール類への負担になります。
そこで航空輸送中だけ、客室と下部フレームを固定する輸送ロックを使います。
現地でロックを外せば、通常のサスペンションへ戻ります。
【共食い整備をしない】
同じ車両が複数あると、故障車から部品を外して別の車両へ移す「共食い整備」ができます。
緊急時には有効ですが、常態化すると保有台数と実働台数がどんどん離れます。
本作では4台の馬車と同時に、ばね、ダンパー、ベアリング、リンク、座席などの予備品を最初から輸送します。
さらに予備品専用のハイラックス牽引トレーラーを用意し、現地整備を4台のどれかから部品を外すことに依存しないようにしています。
よくあるサスペンションをつけてとか。板バネをいれてとか実際は鉄は作れても鋼材は作れない、鋼材を作っても不均質でもろいところで折れる、とか現代知識でチートとは行きません。この時代にも一部サスペンション付はありますが。




