147貴族令嬢は、まだ石畳に揺られます。
第147章 貴族令嬢は、まだ石畳に揺られます
「お尻が痛い」
どろちゃんが言いました。
フランソワさんも、少しだけ座り直します。
「わたくしもでございます」
前の馬車が止まりました。
こちらも止まります。
何かあったのかと思ったら、馬を少し休ませるためでした。
どろちゃんは降りました。
脚を伸ばします。
腰も伸ばします。
ほかの馬車からも、人が降りてきました。
ルイ14世。
康熙帝。
サヴォさん。
みんな、立ち上がった直後の動きが少し変です。
身分に関係なく、同じ石畳を同じ馬車で通ってきました。
ルイ14世が何か言いました。
オスマン側の案内役には、そのままでは通じません。
通訳が間へ入ります。
「あと、どのくらいだ」
案内役が答えました。
通訳が戻します。
「およそ1時間でございます」
少し静かになりました。
「まだ1時間」
どろちゃんは、自分の馬車の座席を見ました。
もう一度、そこへ座ります。
◇ ◇ ◇
休憩が終わりました。
また石畳です。
さっきより、家が密になっています。
窓から手を伸ばせそうなほど近くに壁が来るところもあります。
道が開けると、人が一気に増えます。
露店。
荷車。
水を運ぶ人。
パンを積んだ人。
焼いた肉の匂い。
香辛料の匂い。
馬の匂い。
海から来る湿った風。
全部が混ざります。
さっき見た大きな輪のパンを、今度は頭の上の板にたくさん載せて運んでいる人がいました。
「またプレッツェルのお化け」
「お気に召したのでございますね」
「まだ食べてないけど」
売り声はフランソワさんには分かりません。
どろちゃんには分かります。
値段まで聞こえます。
「帰りに買おう」
「覚えておきます」
こういうことだけは、フランソワさんも止めませんでした。
◇ ◇ ◇
道が上りになりました。
馬の歩幅が小さくなります。
御者の声が前から聞こえました。
車体が左右に揺れながら上がっていきます。
頂上に近づくと、屋根の向こうへ別の丘が見えました。
その上にもモスクがあります。
尖塔が空へ出ています。
下りへ入ると、今度は御者が速度を抑えます。
前の馬車との距離が少し広がりました。
横道から荷車が一台出てきます。
止まります。
また動きます。
がたん。
ごとん。
「飛行機なら、もう帰れるくらい飛んでるよ」
「ウィーンまででございますか」
「そこまでは無理」
フランソワさんが少し笑いました。
そのあと、窓の向こうにまた大きな石の構造物が見えました。
市街の中にも、古い壁や門の名残があります。
全部が同じ時代に作られた町ではありません。
古いものの隣に新しい建物が立っています。
石造の大きな建物。
その横に木造の家。
狭い店先。
その向こうに巨大なモスク。
さらに坂を下ると、海が一瞬だけ大きく見えました。
「近そう」
「宮殿でございますか」
「海」
「そちらでございましたか」
宮殿も近づいています。
でも、道路は直線ではありません。
曲がります。
上ります。
下ります。
混みます。
また曲がります。
空から見た距離と、馬車で進む距離は別物でした。
◇ ◇ ◇
ようやく、トプカプ宮殿へ着きました。
馬車を降ります。
どろちゃんは、しばらく立ったままでした。
「お嬢様?」
「座りたくない」
フランソワさんも否定しません。
ほかの馬車から降りた人たちも似たようなものです。
康熙帝も少し歩きます。
ルイ14世も腰を伸ばします。
サヴォさんは、馬車を一度振り返りました。
帰りも、あれです。
誰も今は言いませんでした。
案内された部屋へ、まず荷物を置きます。
男性の賓客には、宮廷の男性役人と使用人が付きました。
女性の賓客と女性の随員には、女性の世話役が来ました。
どろちゃんのところには、年長の女性が一人と、若い女性が二人。
歓迎お姉さんたちです。
最初の挨拶は、オスマン側の言葉でした。
どろちゃんはそのまま返します。
フランソワさんは分かりません。
「お湯を用意してくださってるって」
「ありがとうございます、とお伝えくださいませ」
どろちゃんが伝えます。
女性客のところまで男性通訳を常につけるわけにもいきません。
必要なところでは、女性側にも言葉を取り次げる人が配置されることになりました。
今は、どろちゃんがいれば話は通じます。
手と顔を洗います。
服を整えます。
フランソワさんが、どろちゃんの髪も直しました。
「これで大丈夫?」
「はい、お嬢様」
国書と宝石の箱は、どろちゃんが持っています。
しばらくすると、会議の準備が整ったと知らせが来ました。
◇ ◇ ◇
今日の会談は、普通の外国使節の謁見とは少し違います。
康熙帝がいます。
ルイ14世がいます。
アフメト3世も国家元首です。
サヴォさんもいます。
どろちゃんも、次のエルレンフェルト国家元首として、お父様の国書を持ってきています。
そこで、地図や書類を置ける卓を囲む形になりました。
通訳も席につきます。
どろちゃんはオスマン側と直接話せます。
康熙帝やルイ14世の発言は、通訳を通して伝わります。
少し時間はかかります。
でも、言葉を飛ばして誤解するよりずっと安全です。
どろちゃんは、最初にお父様の国書を渡しました。
「エルレンフェルト国家元首、ラインハルト・フォン・エルレンフェルトから、陛下へお預かりしております」
通訳は、その言葉を訳しませんでした。
必要がないからです。
アフメト3世が、国書を受け取る前にどろちゃんを見ました。
「そなた、こちらの言葉を話すのか」
「はい」
「誰に習った」
「誰にも習っていません」
アフメト3世の視線が、通訳へ動きました。
通訳も小さく首を振ります。
着陸場所から、外国の少女がこちらの言葉を話したという報告は届いていました。
それでも、決まり文句をいくつか覚えてきたのと、会話がそのまま続くのでは話が違います。
「訛りもない」
「そうみたいです」
「どういうことだ」
「わたしにも、そこは説明できません」
どろちゃん自身にも、言葉がどうしてこうなるのかは分かりません。
相手が変われば、その人の言葉が分かります。
話せば、同じ言葉になります。
神様がどろちゃん本人へ最初から与えた、数少ないものの一つです。
アフメト3世はもう一度どろちゃんを見てから、国書を受け取りました。
封と印が確認されます。
内容が読まれました。
今度は、国書の内容でアフメト3世がどろちゃんを見ます。
「次の国家元首、とある」
「はい」
「そして、オーストリア国鉄の持株会社を、そなたが所有している」
「100%、わたしです」
少し間がありました。
「国家の鉄道ではないのか」
「名前は国鉄です。でも持株会社はわたしの会社です」
康熙帝とルイ14世は、だいたい事情を知っています。
オスマン側は初めて聞きます。
どろちゃんは、ウィーンで受け取った書類を卓へ置きました。
「ウィーンからイスタンブールまで、鉄道を延ばします」
「オーストリア側では、すでに決まっているのか」
「はい。わたしが決めました」
国境までは、それで動きます。
その先はオスマン帝国です。
「だから、陛下と直接お話ししに来ました」
どろちゃんが地図を広げます。
ここで決めるのは、大枠です。
線路をオスマン領へ入れること。
イスタンブールまでつなぐこと。
ヨーロッパ側の終点をシルケジ側に置くこと。
アジア側はハイダルパシャ側から始めること。
海峡を最初から鉄道橋で渡さず、人と荷物は船でつなぐこと。
駅の細かな構造。
線路の位置。
用地。
工事。
運行。
それは実務者が詰めます。
どろちゃんが持ってきた書類も、そのためです。
「その先はどうする」
アフメト3世が聞きました。
「まず、イスタンブールまでです」
どろちゃんは、アジア側の地図へ指を移しました。
「そのあと、必要なら延ばせます。エルサレムまでつながれば、商人にも巡礼にも便利だと思います」
康熙帝の言葉が通訳を通りました。
「遠い領地ほど、道があるかないかで違う」
アフメト3世は地図を見ました。
先まで一度に決める話ではありません。
まず、イスタンブールです。
◇ ◇ ◇
ルイ14世は、もう列車が走ったあとの話を始めました。
通訳が忙しくなります。
「パリからここまで、何日だ」
「3泊くらいにしたいです」
どろちゃんが答えます。
「寝台車で?」
「はい」
「ならば商人だけではないな」
「観光客も来ます」
そこはルイ14世が早いです。
イスタンブールへ人を送りたい。
こちらからパリへ来る人も増える。
安全に往復できるようにしたい。
そこで、商人と旅行者を相互に保護することも、大きな原則として確認されました。
国境で入国を確認すること。
病気を広げないよう検疫を行うこと。
この二つも原則だけ決めます。
どこで何時間止めるか。
どうやって診るか。
シャワーや洗面をどう置くか。
列車の給水や整備をどう合わせるか。
そこから先は、実務者会議です。
今回、そのためにマルセイユから来た人もいます。
オスマン側の言葉とヨーロッパ共通語の両方を扱える人。
さらに別の言葉も扱える人。
外交と商売の現場で使ってきたマルチリンガルです。
どろちゃん一人を、鉄道会議の通訳として捕まえておく必要はありません。
◇ ◇ ◇
どろちゃんは、そこで別の話をしました。
「もう一つ、これは陛下へ直接お伝えします」
海の話です。
「警告を受けたあとで、海賊行為や私掠を続けないでください」
「なぜだ」
「船が消えた事例があります」
部屋が静かになりました。
「沈んだ、という意味ではありません」
「どこへ行く」
「そこまではお話ししません。私たちにも全部は分かりません」
どろちゃんたちが持っているのは、神様から渡された完全な規則表ではありません。
起きたことを調べ、警告を読み、船や人がどうなったかを積み重ねて得た理解です。
「分かっている範囲で、やってはいけないことだけお伝えします」
「その神は、そなたたちの神か」
「それは、陛下とわたしたちで解釈が違っていいと思います」
どろちゃんは続けました。
「旧約聖書と関係のある現象はあります。バベルの塔に似たことも実際に起きました。でも、陛下がどう理解なさるかを、わたしが決めることではありません」
布教の話ではありません。
国家と船の安全の話です。
「港と船の人たちまで、警告は届くようにしてください」
アフメト3世は、近くの役人へ指示しました。
記録されます。
◇ ◇ ◇
そのあと、話は国の形へ移りました。
「ヨーロッパでは、もう戦わぬのか」
アフメト3世の言葉を、通訳がルイ14世へ伝えます。
ルイ14世が答えます。
また通訳が戻します。
「以前のようにはな」
少し前まで敵だった国同士が、いまは鉄道をつなぎ、商売をしています。
弱くなった相手を全部飲み込む代わりに、ハプスブルク皇帝も保護されています。
戦争を続ければ、税金も人も武器と兵糧へ消えます。
道も港も鉄道も増えません。
康熙帝も話しました。
巨大な国を長く治めてきた人の話です。
遠い地域を、すべて都と同じ方法で直接動かそうとすれば、人と金が要る。
地方へ任せられることは任せる。
それでも道と交易と安全保障でつながっていればよい。
どろちゃんも、ヨーロッパで実際に起きたことを説明しました。
「自分たちの政府を持ちたい地域が出たとき、最初から軍隊を送るより、どんな関係なら一緒にいられるかを話した方が安いです」
「帝国を分けろというのか」
「戦費で帝国を弱くしない方法のお話です」
昨日の敵と、今日いっしょに商売する。
相手の国を残したまま、安全に付き合う。
ヨーロッパでは、それをもう始めています。
アフメト3世には、目の前にその実例が何人も座っています。
康熙帝とアフメト3世の話は、少し長くなりました。
その横で、ルイ14世は別の方向へ進んでいました。
「午後に見られるところを聞きたい」
通訳がオスマン側へ伝えます。
「アヤソフィア」
「スルタン・アフメト・モスク」
「市場」
国家の将来を話している卓の端で、観光予定が増えていきます。
ルイ14世は、こういうところだけ妙に早い人です。
◇ ◇ ◇
大きな話は終わりました。
鉄道をつなぐ。
パリからイスタンブールまで直通列車を走らせる方向で進める。
旅行者と商人を相互に保護する。
国境では入国確認と感染症対策を行う。
海上の警告は現場まで伝える。
細かいことは、実務者会議です。
別室では、鉄道、港、外交、医療、商業の担当者が集まり始めています。
マルチリンガルの人たちも、そちらへ行きます。
えらい人たちは、昼食です。
◇ ◇ ◇
昼食も、ヴェルサイユとは違いました。
まず、コーヒーと甘いものが出ます。
小さな杯の濃いコーヒー。
砂糖や蜂蜜を使った菓子。
食卓へ移る前には、水差しと受け鉢が運ばれました。
手を洗います。
ペシュキルも渡されます。
長い西欧式のテーブルへ、一人ずつ皿を並べる形ではありません。
低い円形の膳を囲みます。
羊肉。
子羊。
鶏。
米を使った料理。
パン。
ヨーグルト。
チーズ。
オリーブ。
料理は、食べ進むのに合わせて替わっていきます。
どろちゃんは羊肉を一口食べました。
「おいしい」
女性の世話役も、女性客の近くにいます。
どろちゃんへ何か確認するときは、直接オスマン側の言葉で話します。
フランソワさんへ必要なことは、どろちゃんが短く伝えます。
昼食のあいだまで、ずっと通訳仕事をするつもりはありません。
必要な女性側の通訳も手配されることになりました。
甘味も出ました。
果物もあります。
ルイ14世は食べながら、まだ観光の話をしています。
康熙帝とアフメト3世は、さっきの話の続きをしています。
どろちゃんは、その間で食事をしました。
座り方を少し変えます。
馬車のせいです。
向かいでもサヴォさんが同じことをしました。
目が合います。
何も言いません。
同じです。
ルイ14世が、ふと思い出したように言いました。
「宮殿までの道は長かった」
通訳を通す必要のない相手同士なので、今度はそのまま通じます。
サヴォさんが笑いました。
「またその話か」
「余だけではなかろう」
康熙帝も頷きました。
どろちゃんも頷きます。
「鉄道ができたら、シルケジまではずっと早いです」
この言葉だけは、アフメト3世へ通訳されました。
返事が来ます。
「着いたその日に、鉄道の必要を体で説明されたわけか」
「わたしが説明したんじゃないです」
「石畳だな」
「はい」
今日いちばん身分に平等だったものです。
食事の最後に、シャーベットが出ました。
飲み終わるころ、香が焚かれます。
朝から飛行機に乗り、ウィーンへ寄り、イスタンブールの上を回り、長い馬車に揺られ、国家の話をしました。
ようやく、昼食会が終わりました。
【小さな説明】
【トプカプ宮殿】
トプカプ宮殿は、1453年のコンスタンティノープル攻略後、メフメト2世によって建設が始められたオスマン帝国の宮殿です。
主要部分は1460年代から1478年ごろまでに整えられ、その後も歴代のスルタンによって増築されました。
場所は歴史半島の東端、サライブルヌです。
北側には金角湾、東側にはボスポラス海峡、南側にはマルマラ海が見えます。
ヨーロッパの大宮殿のように巨大な一棟の建物があるのではなく、門、庭、回廊、小さな宮殿、役所、厨房、学校、宝物庫、ハレムなどがいくつもの中庭を囲んで広がる複合施設です。
大きく分けると、
外廷・奉仕部門のビールーン、
国家行政を扱うディーヴァーン、
宮廷内教育と君主近侍のエンデルーン、
君主とその家族の生活空間であるハレム、
という性格の違う区域があります。
1709年には、ここがまだオスマン帝国の政治と宮廷生活の中心です。
当時は「新宮殿」を意味するサライ・ジェディード・イ・アーミレという呼び名も使われていました。
現在一般的な「トプカプ宮殿」という名前が広く定着するのは後の時代です。
本作では読者が場所をすぐ特定できるよう、1709年の場面でも「トプカプ宮殿」と表記しています。
【シルケジとハイダルパシャ】
1709年には、シルケジ駅もハイダルパシャ駅もまだ存在しません。
本作では、後世に鉄道の玄関口となる二つの場所を約160年以上早く使い始めます。
シルケジは歴史半島の東側、金角湾とマルマラ海の境に近いヨーロッパ側です。
史実では鉄道が19世紀後半にここへ入り、現在知られる大きなシルケジ駅舎は1890年に開業しました。
ヨーロッパから来る列車の終点となり、のちにはオリエント急行でも有名になります。
ハイダルパシャはボスポラス海峡を挟んだアジア側、カドゥキョイとユスキュダルの間です。
史実では1872年に鉄道駅が置かれ、現在よく知られる大きな駅舎は1909年に完成しました。
つまり、この章の1709年からちょうど200年後です。
本作では、
ヨーロッパ側のシルケジで列車を降りる。
船でボスポラス海峡を渡る。
アジア側のハイダルパシャから別の列車へ乗る。
という方式を最初に採用します。
鉄道橋や海底トンネルを最初から造るより、既存の船舶交通を使う方が早く、安全に始められるためです。
また、本作でこれから造る二つの駅は、史実の壮麗な駅舎を早期再現するものではありません。
低く、広く、不燃構造を優先し、地震にも配慮します。
駅の旅客機能と鉄道会社の大きな事務部門も別棟に分けます。
シルケジとハイダルパシャは、海峡の両側に置く一組のターミナルとして計画されています。
【1709年のオスマン帝国】
1709年のオスマン帝国は、最盛期のまま拡大を続けている国ではありません。
しかし、衰えて小国になった時代でもありません。
わずか10年前の1699年、カルロヴィッツ条約によって長い戦争が終わりました。
オスマン帝国は、ハンガリーの大部分とトランシルヴァニアをハプスブルク側へ、モレアをヴェネツィアへ、ポドリアなどをポーランド側へ譲っています。
ロシアとの戦いでもアゾフを失いました。
この条約は、オスマン帝国がヨーロッパ列強との力関係の変化をはっきり意識する大きな転換点でした。
それでも1709年の領域は非常に広大です。
バルカンではボスニア、セルビアの大部分、ブルガリア、マケドニア、アルバニアなど。
アナトリア。
シリアとパレスチナ。
エジプト。
イラク。
さらにヒジャーズのメッカ、メディナに対する宗主権などを持っています。
したがって、ウィーン方面からオスマン領へ入った鉄道をイスタンブールへつなぎ、その先をアナトリア、シリア、パレスチナ方向へ伸ばす場合、国境を何度も越える必要がありません。
これが、どろちゃんが鉄道建設についてアフメト3世本人と直接話す大きな理由です。
1709年初頭のオスマン帝国は、ヨーロッパで続いているスペイン継承戦争や、北方でのスウェーデンとロシアの戦争への直接介入を避け、比較的慎重な外交を取っていました。
なお、一般に「チューリップ時代」と呼ばれる時期は1718年以降です。
1709年は、まだその前です。
【アフメト3世】
アフメト3世は1673年12月31日生まれです。
この章の1709年1月なら35歳になったばかりです。
父はメフメト4世。
兄はムスタファ2世です。
1703年、エディルネ事件と呼ばれる大きな政治混乱によってムスタファ2世が退位し、アフメト3世が即位しました。
即位そのものが反乱勢力の動きと強く結びついていたため、治世初期は軍や宮廷内部の勢力を整理し、自分の統治権を安定させることに力を使っています。
1709年には即位から約6年が経ち、最初の混乱をかなり整理した時期です。
史実のアフメト3世は、ヨーロッパ諸国の動向を観察し、治世前半には大きな対外戦争への参加を避けようとしました。
書道や詩にも関心があり、後年には図書館、噴水、建築、印刷文化などとも深く関わります。
そのため本作でも、
「巨大帝国の古い仕組みだけを守る人」
としてではなく、
外国の鉄道、航空、衛生、交易制度を目の前に置かれたとき、それが自国へ何をもたらすかを考えられる人物として登場させています。
この世界では、史実でこのあと起きる戦争や政治事件も、どろちゃんたちとの接触によって大きく変わる可能性があります。




