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109貴族令嬢は、生まれる前に星になった飛行機を迎えます。 アントノフAn-2ターボプロップモデル 紫雲 飛燕 零式3座水上偵察機 登場  

挿絵(By みてみん)





第109章 貴族令嬢は、生まれる前に星になった飛行機を迎えます


 天国のアントノフ工場では、仕事ではない仕事が少しずつ増えていました。


 技師さんたちは、どろちゃんの世界へ送る飛行機をいつも作っているわけではありません。自分たちが生きていたころには触れなかった飛行機を見つけると、構造を眺め、分解し、どうしてこんな設計にしたのだろうと話し始めます。


 その材料を探す場所が、天国の残骸置き場でした。


 撃墜された機体だけが並んでいる場所ではありません。工場の組立台に載ったまま爆撃された胴体、出荷前の倉庫ごと失われたエンジン、船で補給地へ運ばれる途中に海へ沈んだ新品の補用部品もあります。


 まだ一度も飛んでいないものも、たくさんありました。


 アントノフの技師さんの一人が見つけた細長い機体も、その一つでした。


「これ、飛んだことがないね」


 機首がありません。


 川崎航空機が作ったキ61-II改の機体でした。三式戦闘機二型になるはずだった機体で、本来なら川崎のハ140を載せる計画です。


 資料には、ハ140は液冷倒立V型12気筒、約1500hp級と書かれていました。


 ただし、技師さんたちは、その数字の横へすぐ注記を入れました。


 ――これは安定して量産された実用出力として扱わないこと。


 ハ140は、DB 601系を基礎とするハ40を高出力化したエンジンでしたが、史実では製造そのものが難しく、安定した品質で必要数を作れませんでした。キ61-II改の資料上の性能は、最高速度約610km/h、高度5000mまで約6分30秒、実用上昇限度約11000m。ところが機体が出来てもエンジンが来ません。


 374機分のキ61-II系機体が作られながら、ハ140を装備できたのは99機ほどでした。1945年1月には明石のエンジン工場もB-29の爆撃を受け、残った275機ほどの機体は、三菱ハ112-II空冷星型を載せる五式戦闘機キ100へ改造されます。


 技師さんたちが拾ったのは、五式戦闘機になる前に工場で壊れ、生まれる前に星になった側でした。


「せっかく液冷用の細い機首なんだから、空冷にしなくてもいいよね」


 別の技師さんがそう言って、今度はドイツ側の残骸置き場を見に行きました。


 そこで選んだのは、普通のDB 605Aではありませんでした。


 Daimler-Benzが高高度用として試していたDB 605L系です。DB 605の系統に2段過給機を組み合わせ、高高度での出力低下を抑えようとした実験型でした。史実では戦争末期の混乱もあって、普通の量産機用エンジンとして十分に育つところまでは行きませんでした。


 でも天国には、試験用に作られながら工場ごと星になったエンジンと補機がありました。


「1機だけ作るんだから、こっちを使おうか」


 技師さんたちは遠慮しませんでした。


 機体へ載る前に星になった日本製の機体へ、量産される前に星になったドイツ製の高高度エンジンを載せます。


 機銃も機関砲も弾薬もありません。爆弾架も防弾鋼板も防弾ガラスも必要ありません。誰かと戦う飛行機ではないので、その分だけ軽くできます。


 エンジン架、カウリング、冷却系統、オイル系統、吸排気は新しく作りました。燃料噴射装置やインジェクターはドイツ製を使います。


 燃料だけは昔へ戻しません。


 どろちゃんの世界では、最初から鉛系ガソリンを使わないことが絶対の決まりです。大気を汚す燃料を、わざわざ昔と同じように作ることはありません。レシプロエンジンも神様からいただく燃料で動くように調整します。


 地上運転を繰り返し、冷却水温、油温、油圧、過給機、振動を確認しました。


 飛べる状態になりました。


 すると技師さんたちは、当然のように飛ばしたくなりました。



          *



 別の場所では、もっと変わった水上機を囲んでいました。


 川西航空機のE15K1、二式高速水上偵察機「紫雲」です。


 1941年12月5日に初飛行し、試作機を含めても15機ほどしか作られなかった機体でした。


 中央に大きなフロートを持ち、翼端側の補助フロートを引き込もうとし、緊急時には中央フロートまで投棄して速度を上げようとしていました。前後2翅ずつの二重反転プロペラも使っています。


 資料上、後期型の三菱火星24型は約1850hp級、紫雲は中央フロートを付けた状態で高度5700mにおいて約469km/h、巡航約296km/h、航続約3370kmとされていました。


 技師さんたちは、ここにも注記を入れました。


 火星の高出力値も、設計値や公称値と、戦時下の量産品が現場で安定して出せた実力を同じものとして扱わない。


 紫雲は欲張った機体でした。引込式の補助フロートは事故を起こして固定式となり、中央フロートの投棄機構も期待したほど実用的ではありませんでした。複雑な二重反転機構も、作れば終わりではありません。


 でも、そこはアントノフのおじさんたちが喜ぶところでした。


 An-22に関わった技師さんたちにとって、二重反転そのものは珍しい原理ではありません。


「歯車の並べ方は難しくないよ。問題はこっちだね」


 見るのは偏芯、軸芯、共振、唸り、軸受、熱変形、潤滑です。


 内軸と外軸を長時間回したとき、どの回転数で振動が立つのか。歯面へどう油を送り、姿勢が変わってもどう回収するのか。ハウジングが温まったとき、軸芯がどれだけ動くのか。


「これなら、直すより作っちゃおう」


 二重反転減速機は、ハウジングから作り直しました。ギヤ、内外軸、軸受、潤滑系統、シール、前後のプロペラブレードまで、ソ連で二重反転を実用品として使ってきた知識で新しくします。


 エンジンは、F6Fヘルキャット用のPratt & Whitney R-2800-10 Double Waspを選びました。


 空冷複列18気筒、約2000hp級。


 F6Fは大量に作られましたから、補給用の新品エンジンも大量にありました。船に積まれて補給地へ向かう途中、そのまま海へ行ってしまったものもあります。天国の置き場には、機体へ一度も積まれなかったエンジンがいくつもありました。


 元の火星より重くなります。


 でも紫雲からは武装と爆装を降ろしますし、技師さんたちは重心位置も含めて最初から計算し直しました。


 フロートまわりには、昔の防水材を使いません。


 継ぎ目、点検蓋、リベットまわり、配線や配管の貫通部には最新の防水樹脂とシール材を使います。


 外から見れば紫雲。


 中身を見れば、アメリカ製エンジンと、ソ連式に作り直した二重反転機構。


 博物館の学芸員さんが見れば、たぶん座り込みます。


 技師さんたちは気にしませんでした。


 博物館を作っているのではなく、飛ばす飛行機を作っているからです。



          *



 愛知のE13A、零式三座水上偵察機は、もっと前から少しずつ直していました。


 こちらは紫雲とは性格が違います。


 3人が乗り、長距離を飛び、飛行場がないところでも水面から発着できる実用品です。愛知時計電機の航空機部門、のちの愛知航空機が設計し、約1400機以上が作られました。


 元のエンジンは三菱の金星43型。空冷複列14気筒で、資料上は約1060~1080hp級です。


 機体の資料値は、最高速度約376km/h、巡航約222km/h、航続約2090km。


 これも戦時中の資料値です。技師さんたちは、数字をそのまま「いつでも出た性能」とは考えません。


 新生した零式三座には、F4F-4ワイルドキャット用のPratt & Whitney R-1830-86 Twin Waspを使いました。


 空冷複列14気筒、離昇約1200hp級。


 R-2800も天国にはたくさんありましたが、零式三座へ積むには大きく重すぎます。機体を壊すほど馬力を増やしても仕方がありません。


「こっちはF4Fので十分だね」


 技師さんたちは、素直にそう決めました。


 プロペラもアメリカ製です。F4F系で使われたCurtiss Electric系の3翅定速プロペラを基礎に、機体へ合わせて取り付けました。


 武装と爆装は外します。


 そしてフロートは、紫雲と同じように最新の防水樹脂で仕上げました。


 日本で島と海岸を結ぶ必要から生まれた水上機の形を残しながら、壊れやすいところ、漏れやすいところ、今さら昔の材料へ戻る必要のないところだけを新しくします。


 これならライン川だけでなく、テムズ川、セーヌ川、スイスの湖でも使えます。


 速さを競うためではありません。


 水辺から水辺へ、3人と荷物を連れていくための飛行機になりました。



          *



 そして、工場の奥には、アントノフの技師さんたちがいちばんよく知っている形が3機並んでいました。


 An-2の水上型です。


 An-2はO.K.アントノフ設計局最初の量産機で、1947年8月31日に初飛行しました。水上型An-2Vは1951年7月に初飛行し、フロート型はAn-4の名称でも扱われています。


 元のASh-62IRは、空冷単列9気筒、約1000hp級。


 大きな複葉翼と低速性能を生かし、人と荷物を短い場所から運ぶ機体でした。水上型でも、その性格は変わりません。


 ただし、今回の3機にはレシプロエンジンを戻しません。


 現実のAn-2近代化で使われたTVS-2MS系の構成を、そのまま水上型へ持ってきました。


 エンジンはHoneywell TPE331-12UAN、離昇時1100shp。実際にSibNIAがAn-2近代化用として選んだ型です。


 プロペラはHartzellの5翅。


 アビオニクスも古いAn-2の計器配置へ戻さず、実在した近代化機と同じように現代型へ更新しています。エンジン計器、航法、無線、姿勢・高度・速度表示をまとめ、訓練でも読みやすい配置にしました。


 フロートと支持構造の重量がある水上型では、ターボプロップ化で機首側が軽くなっても、陸上型ほど重心調整に困りません。技師さんたちは機器配置と重量重心を取り直し、ただの重りを積まなくて済むようにまとめました。


 フロートには最新の防水樹脂。


 そして3機とも水玉模様でした。


「なんで水玉なの」


 工場でそれを見た技師さんの一人が聞いたとき、別の技師さんは当たり前のように答えました。


「水玉船と一緒に働くんでしょ」


 それで決まりました。



          *



 飛行機だけでは、置くところがありません。


 そこで技師さんたちは、今度は天国の格納庫置き場へ行きました。


 天国にはバンカー置き場もあります。爆撃で壊れた飛行機が来るのなら、壊れた格納庫や掩体、倉庫も来ています。


 その中から、水上機を入れて整備しやすい格納庫を選びました。


 壊れた構造材を直し、扉を整え、床と排水を作り直し、照明と電源も入れます。


「これもお願いしようか」


 機体だけでなく、格納庫まで神様にお願いすることになりました。



          *



 どろちゃんへは、実物を見る前に連絡が来ました。


 朝、頭の中へいつもの技師さんの声が入りました。妙に楽しそうでした。


「どろちゃん、前からこっちで遊んでた飛行機、飛べるようになったよ。神様にお願いして、そっちへ置いてもらうことにしたからね」


 どろちゃんは手を止めました。


「飛行機って、何機ですか」


 話を聞くと、水上機が5機、陸上機が1機ありました。


 紫雲が1機。


 零式三座水上偵察機が1機。


 水玉模様のターボプロップAn-2水上型が3機。


 そしてキ61-II改を基礎にDB 605L系の高高度実験エンジンを積んだ、三式戦闘機の姿をした実験機が1機。


「……ずいぶん作りましたね」


「うん。楽しかったよ。マニュアルもあるからね」


 技師さんたちが使うマニュアルは、すべてロシア語にそろえてありました。


 元の資料は日本語、ドイツ語、英語などばらばらです。神様が作った説明書ではありませんから、この世界の共通語へ自動的に置き換わっているわけでもありません。技師さんたちは自分たちで読めるようにロシア語へ訳し、そこへ改造内容を書き足していました。


 元のメーカー、製造時期、元のエンジン、資料上の重量、速度、航続、上昇性能。それに史実で何がうまくいかなかったのかまで書いてあります。


 その後ろには「新生後」という欄が追加されていました。


 三式戦は、武装も防弾も外し、DB 605L系へ換装したあとの重量と性能。


 紫雲は、R-2800と新しい二重反転減速機での最高速度、離水距離、減速機油温、振動。


 零式三座は、R-1830-86とアメリカ製プロペラに換えたあとの巡航、航続、離着水性能。


 An-2は、Honeywellターボプロップ、5翅プロペラ、現代アビオニクス、フロートを組み合わせた状態での性能。


 新生後の欄は、まだ空白でした。


「どろちゃんが飛ばして埋めてね。すぐ飛ばせるように調整してあるから」


「私が試験するんですね」


「うん。元の数字と比べたいでしょ」


 どろちゃんも、それには反対できませんでした。


 飛行機は、生まれる前に星になっています。


 昔の設計値を読むだけでは、この子たちが今どんな飛行機になったのかは分かりません。


 実際に飛ばして測るしかありません。


 技師さんは、そのあと少し声を変えました。


「フランソワさんは練習してもらってね。水上機をちゃんと扱えるようになったら、ベリエフも届けるよ」


「そこまであるんですか」


「あるよ」


 やっぱりありました。



          *



 水上機5機と格納庫が現れたのは、水玉船整備場の横でした。


 水玉船整備場は、町の中にはありません。


 エルレンフェルトの町からライン川を約1km下流へ行った場所に、水玉船を川から引き上げる大きなスロープを備えた工場があります。


 船体を直し、機械を整備し、金属を切り、削り、溶接します。


 音も出ます。


 火も使います。


 金属加工をする工場を町の真ん中へ置く理由はありませんから、最初から少し離れた場所に作られていました。


 その工場の横には広い空き地がありました。


 そこへ、天国で直された格納庫が一緒に現れていました。


 大きな扉の前には、水玉模様のAn-2が3機並んでいます。


 その隣に零式三座。


 少し離して紫雲。


 川へ向かえば、水玉船を上げ下ろしするスロープがあります。水上機もそこから水へ出せます。


 どろちゃんは水玉An-2を見てから、工場の前に係留されていた水玉船を見ました。


 よく似ています。


「本当に水玉にしたんですね」


「同じ会社みたいでいいでしょ」


 頭の中の技師さんは満足そうでした。


 3機のAn-2は、暖かい季節に水玉船と同じ交通の仲間として使います。


 ロンドンのテムズ川。


 パリのセーヌ川。


 エルレンフェルトの水玉船待合室前埠頭、ライン川。


 バーゼルのライン川直線部。


 チューリッヒのチューリッヒ湖。


 そしてトリノのポー川直線部。


 3機で回します。


 冬は休みです。


 鉄道があります。


 水面の凍結や着氷、冬の霧と無理に戦ってまで飛ばす理由はありません。



          *



 三式戦の姿をした1機だけは、水玉船整備場にはありませんでした。


 こちらは旧滑走路横のエプロンです。


 ミツバチちゃんの格納庫の隣へ置いてもらっていました。


 細い胴体。


 広い主脚間隔。


 機首の中にはドイツ製の高高度実験エンジン。


 武装はありません。


 防弾装備もありません。


 機体もエンジンも、使い古されてここへ来たものではありませんでした。


 どちらも、自分の本来の飛行機として一度も飛ぶことがないまま星になったものです。


 それをアントノフのおじさんたちが天国で拾い、一つの飛行機にしてしまいました。


 どろちゃんは操縦席の横に置かれたロシア語のマニュアルを開きました。


 最初の方には、キ61-II改の資料値があります。


 最高速度、約610km/h。


 高度5000mまで、約6分30秒。


 その横に大きく書かれていました。


 ――ハ140の約1500hpは目標・公称側の値として扱う。量産実用品が安定してこの出力を発揮したという意味ではない。


 そして次のページ。


 ――新生後性能 未測定。


 どろちゃんは少し笑いました。


「ここを埋めるのが私の仕事なんですね」


「お願いね」


 三式戦、紫雲、零式三座は、どれも元の動力系そのままではありません。技師さんたちが十分に調整していても、史実機と同じ操縦特性だとは決めつけられません。


「この3機は、私だけが飛ばしますね」


「うん。その方がいいよ。まず全部、どろちゃんが癖を見て」


 技師さんたちと頭の中で話せて、機体側の状態も直接確かめられるどろちゃんが、専用の試験操縦者になります。


 技師さんたちが、どうしても飛ばしたかった理由が分かりました。



          *



 飛行機を見終わったあと、どろちゃんはお父様のところへ行きました。


 飛行機が増えたというだけなら、報告だけで済みます。


 でも、水玉An-2は3機あります。


 定期運航するなら、どろちゃんとフランソワさんだけでは足りません。どろちゃんにはほかの仕事がありますし、フランソワさん一人を毎日飛ばし続けるわけにもいきません。


 水玉An-2の操縦者を増やす話とは別に、フランソワさんにはもう一つ理由があります。水上機の扱いを覚えれば、その先でどろちゃんと二人だけで使うベリエフへ進めます。


 お父様は運航予定を順番に見ました。ロシア語のマニュアルは表紙を見ただけでは内容を読めません。


「冬はどうする」


「休みます。鉄道がありますから」


「それならいい。問題は人だな」


 そこは、どろちゃんも同じことを考えていました。


 オイゲンさんにも来てもらいました。


 オイゲンさんの部下たちは、すでに飛行機での移動そのものには慣れています。機内で何をしてはいけないのかも分かっています。でも、乗客として飛ぶことと、自分で操縦することは別でした。


 今回来た飛行機の中では、水玉An-2がいちばん大きく見えます。


 でも練習に使うなら、これがいちばん素直でした。


 単発です。

 複葉です。

 低速で扱いやすく、どろちゃん教官が隣の席に座れます。


「飛行訓練を始めてもらいたいの」


 どろちゃんは、持ってきた水上An-2のマニュアルを机へ置きました。


 もちろん、そのままオイゲンさんへ渡しても読めません。技師さんたちがまとめたものはロシア語です。


「これは私が共通語に訳します。操縦する人用と、整備する人用に分けた方がいいですね」


 お父様がページをめくりましたが、そこに並んでいる文字は読めません。


「それなら、訓練を始める前に必要なところから訳してくれ」


「はい。An-2を先にします」


 オイゲンさんは、どろちゃんの説明を聞いてから答えました。


「護衛の勤務と両立させる必要がありますが、それなら交代でできます」


 お父様は少し考えました。


 普通なら、実機の飛行訓練は危険です。


 操縦を覚えていない人を本物の飛行機へ乗せ、失敗しながら覚えさせるのですから、事故の可能性は消せません。


 でも、この飛行機たちは少し違います。


 機体側が自律して飛べます。


 オイゲンさんや部下たちは、どろちゃんのように機体と心を通わせることはできません。頭の中で「右へ寄りすぎているよ」と教えてもらうこともできません。


 だから操縦そのものは、計器を見て、教官の説明を聞き、自分の手と足で覚えなくてはいけません。


 ただし、本当に危険な操作をしたときには機体側が介入できます。


 失速へ入れる必要もありません。


 着水姿勢を外して機体を壊す必要もありません。


 練習生が失敗したところまでは経験させても、その先で墜落させる必要はありませんでした。


 お父様はそこまで確認してから決めました。


「では、オイゲンの部下には、勤務を組み替えて1人1日2時間の飛行訓練を入れよう。まず水玉のAn-2だな」


 オイゲンさんはうなずきました。


 部下たちは、水玉An-2を飛ばせる人を増やすための訓練です。ベリエフへ進むためではありません。


 フランソワさんも同じAn-2で水上機の訓練を始めますが、こちらは目的が違います。フランソワさんが水上機を扱えるようになったら、技師さんたちはBe-12NKhを届けると言っています。


 そのベリエフは、どろちゃんとフランソワさんの専用機です。


 どろちゃんは、まず新しく生まれた機体の試験飛行です。


 その結果を、ロシア語のマニュアルにある空白へ書き込んでいきます。


 最高速度。


 巡航速度。


 上昇。


 離陸と離水。


 着陸と着水。


 燃料消費。


 紫雲なら、二重反転減速機の振動と油温もあります。


 昔の機体の数字と、新しく生まれた機体の数字を並べます。


 戦うための武装を外され、別の国のエンジンを与えられ、新しい材料で水を止めてもらった飛行機が、今度はどんなふうに飛ぶのか。


 それは、まだ誰も知りません。


 でも、今度は急ぐ必要がありません。


 敵もいません。


 納期のために不良品を出す工場もありません。


 空から爆弾が落ちてくることもありません。


 生まれる前に星になった飛行機たちは、ようやく、飛ぶためだけに飛べることになりました。


          *


第109章の小さな説明


【「小さな説明」は、本編を止めずに深く読むための場所です】


 本作の「小さな説明」は、数行だけの注釈とは限りません。


 本編では、人物がその場で見たり話したりする範囲を優先します。そのため、史実の機体がどこで作られ、どんなエンジンを積み、何がうまくいかなかったのか、今回どこを作り直したのか、といった技術的な話は、興味のある人が章末で詳しく読めるように分けています。


 本章では、とくに「史実の資料値」と「新生した機体の実測値」を分けます。


 昔の性能表に数字が書いてあっても、その数字が量産機でいつでも再現できたとは限りません。逆に、新しいエンジンの出力が大きくても、その比率だけ最高速度が上がるわけでもありません。


 重量、重心、プロペラ効率、冷却抵抗、フロート抵抗、過給機特性、機体表面、操縦面の調整などが全部変わるからです。


 そこで、新生後の性能は次章以降でどろちゃんが実際に飛ばして測ります。



【天国の残骸置き場――使い古した残骸から部品を剥ぐ話ではありません】


 本章で使っている機体やエンジンは、戦場で何百時間も使われたものから使えそうな部品を外して寄せ集めたものではありません。


 工場で組み立てている途中に爆撃を受けた機体。


 完成して出荷を待っていたところで工場や倉庫ごと失われたエンジン。


 補給用の新品として船へ積まれ、使用されないまま船ごと海へ沈んだエンジンやプロペラ。


 そうした「使われる前に星になった」ものを、天国の残骸置き場から集めています。


 天国のアントノフ工場では、それらを博物館資料として原形復元するのではなく、実際に安全に飛ばす機械として組み直します。


 したがって、メーカーも国籍も一致しません。


 機体の設計思想は残しますが、弱かった部分、壊れやすかった部分、現代材料を使った方が明らかに安全な部分は、ためらわず交換します。



【キ61-II改――五式戦になる前に星になった機体】


 元の機体メーカーは川崎航空機です。


 キ61-II改は、三式戦闘機「飛燕」の後期型で、本来は川崎ハ140を搭載する予定でした。


 よく引用される資料値には、


 全幅 12.00m

 全長 約9.16m

 自重 約2855kg

 全備重量 約3825kg

 最高速度 約610km/h(高度6000m)

 高度5000mまで 約6分30秒

 実用上昇限度 約11000m


 などがあります。


 ただし、この章では「610km/h」「ハ140 1500hp級」といった数字を、完成した量産機が安定して出した確定実力値とは扱いません。


 ハ140は高出力化を狙った液冷倒立V型12気筒エンジンでしたが、製造品質、冷却、補機、材料、量産性などに大きな問題を抱えました。資料にある高い性能値には計画値・公称値・試験値が混在し、どこまで実機で安定して再現できたのかを慎重に見る必要があります。


 機体だけは約374機分作られた一方、ハ140を装備できたものは約99機とされ、残った約275機の首なし機体が、三菱ハ112-II空冷エンジンを載せるキ100、五式戦闘機へ転用されました。


 1945年1月には、ハ140を生産していた川崎の明石工場もB-29の爆撃を受けています。


 本章の1機は、五式戦へ改造される前に工場側で失われた未使用機体、という設定です。



【三式戦改の新生エンジン――DB 605L系】


 元のDB 605系列メーカーはDaimler-Benz AGです。


 DB 605は、液冷倒立V型12気筒、直接燃料噴射を使うドイツ製航空エンジンです。


 本章では一般的なDB 605Aをそのまま載せず、高高度性能を狙って試作されたDB 605L系を選んでいます。


 DB 605L系は2段過給機を使う高高度向けの試作系統で、戦争末期に普通の量産エンジンとして完成・普及したものではありません。そのため本作でも「史実の量産型がこの性能だった」とは扱わず、天国に残った試作部品と資料をもとに、アントノフ技師さんたちが1機分をきちんと仕上げたものとします。


 機銃、機関砲、弾薬、爆弾、防弾鋼板、防弾ガラスは搭載しません。


 しかし、「それだけ軽くなったから何kgになる」とはまだ決めません。


 新しいエンジン架、冷却系、過給機まわり、配管、計器などの重量も増減するため、新生後自重は完成状態で実際に量ります。


 この機体は、どろちゃん専用です。



【紫雲――川西が作った高速水上偵察機】


 E15K1「紫雲」のメーカーは川西航空機です。


 初飛行は1941年12月5日。


 試作機を含め、生産は約15機にとどまりました。


 中央に大きなフロートを1本、翼下に補助フロートを2本持ちます。補助フロートを引き込み、緊急時には中央フロートを投棄して高速で逃げる、という非常に欲張った水上偵察機でした。


 初期には三菱火星14型、後には火星24型を使い、前後2翅ずつの二重反転プロペラを回しました。


 後期型についてよく引用される資料値は、


 全幅 14.00m

 全長 約11.59m

 自重 約3165kg

 通常重量 約4100kg

 最大重量 約4900kg

 最高速度 約469km/h(高度5700m、中央フロート装着)

 巡航速度 約296km/h

 航続距離 約3370km

 実用上昇限度 約9830m


 です。


 ただし火星24型の約1850hp級という値も、戦時量産品がどの個体でも安定して同じ出力を出した、という意味では扱いません。


 紫雲では、引込式の補助フロートが事故原因となって固定化され、中央フロート投棄機構も実用上の問題を抱えました。


 本作の技師さんたちが面白がったのは、二重反転そのものより、そこを実用品にする難しさです。


 偏芯。

 軸芯ずれ。

 ねじり振動。

 共振。

 歯車の唸り。

 軸受荷重。

 熱変形。

 潤滑。

 油の回収。


 An-22の二重反転プロペラを知る技師さんたちは、元の減速機を保存修理せず、ハウジング、ギヤ、内外軸、軸受、潤滑系、シール、プロペラブレードまで新設計しています。



【紫雲の新生エンジン――F6F用R-2800】


 新しいエンジンはPratt & Whitney R-2800 Double Waspです。


 R-2800は空冷複列18気筒、排気量約45.9Lの大型星型エンジンで、F6F Hellcat、F4U Corsair、P-47 Thunderboltなどに広く使われました。


 本章ではF6F用のR-2800-10系、約2000hp級を使います。


 R-2800は約1t級の重いエンジンなので、火星から交換すれば単純な軽量化にはなりません。武装と軍用装備を外しても、新しい減速機とプロペラを含めた完成重量、重心位置、フロートへの荷重を改めて測る必要があります。


 だからこそ、新生後性能を計算だけで決めず、どろちゃんが実機で測ります。


 この機体も、どろちゃん専用です。



【零式三座水上偵察機――戦闘機より「水辺から働く飛行機」】


 E13A、零式三座水上偵察機の設計元は愛知時計電機航空機部門、のちの愛知航空機です。


 3人乗りで、長時間の偵察、哨戒、連絡、人員輸送などに使える実用水上機でした。


 元のエンジンは三菱金星43型。


 空冷複列14気筒で、約1060hp級とされます。


 代表的な資料値は、


 全幅 14.50m

 全長 約11.3m

 自重 約2640kg級

 通常重量 約3640kg級

 最高速度 約376km/h

 巡航速度 約222km/h

 航続距離 約2090km


 です。


 零式三座については、R-2800を載せる案も考えましたが、機体に対して大きく重すぎます。


 そこでF4F-4 Wildcat用のPratt & Whitney R-1830-86 Twin Waspを選びました。


 R-1830-86は空冷複列14気筒、1200hp級です。


 R-1830系列はおよそ660~680kg級で、R-2800の約1t級よりはるかに扱いやすい大きさです。金星43型そのものと同重量ではありませんが、零式三座の機体を根本から作り替えるほど極端な交換を避けられます。


 プロペラもアメリカ製を使います。


 フロートの継ぎ目、点検蓋、リベット周辺、配線・配管貫通部には最新の防水樹脂とシール材を使います。


 この機体は、ライン川、テムズ川、セーヌ川、スイスの湖などを結ぶ連絡にも使えますが、エンジンスワップをした試験機であることに変わりはありません。


 操縦は、どろちゃん専用です。



【水玉An-2――いちばん大きいのに練習機】


 An-2はO.K. Antonov設計局最初の量産機で、初飛行は1947年8月31日です。


 水上型An-2Vは1951年に初飛行し、An-4の呼称で扱われた機体もあります。


 元のASh-62IRは空冷単列9気筒、約1000hp級の星型エンジンです。


 本章の3機は、これをレシプロのまま復元しません。


 SibNIAが実際のAn-2近代化用に採用したHoneywell TPE331-12UANを使います。


 TPE331-12UANは、Jetstream 32やMetro 23に使われたTPE331-12UHRから派生したAn-2向け仕様で、離昇出力1100shp。Honeywellは2013年、SibNIAのAn-2改修向けとしてこの型を発表しています。


 実機のターボプロップAn-2改造例と同じく、多翅プロペラと現代型アビオニクスを組み合わせます。


 この3機では、古い計器配置を忠実に保存することより、訓練生が速度、高度、姿勢、航法、エンジン状態を読み取りやすいことを優先しています。


 今回来た飛行機の中では、水玉An-2が外形上はいちばん大きい機体です。


 それでも練習機に選びます。


 単発なので、左右2基のエンジンを別々に扱う必要がありません。


 複葉で低速特性が穏やかです。


 操縦席は横並びなので、どろちゃん教官が訓練生のすぐ横に座れます。


 そして機体そのものが自律して安全限界を守れます。


 「大きい飛行機だから上級者用」ではなく、操縦を教える条件がそろっているため、最初の実機訓練に使います。



【飛行機と心が通じるのは、どろちゃんだけです】


 オイゲンさんや部下たちは、飛行機の声を頭の中で聞くことはできません。


 フランソワさんも同じです。


 訓練生は普通に計器を読み、どろちゃんの説明を聞き、操縦桿、ペダル、スロットルなどを自分で操作して覚えます。


 一方、機体側は自律運航できます。


 したがって、操作を間違えたところまでは訓練として経験できますが、そのまま失速や危険な着水姿勢へ進んで墜落する必要はありません。安全限界を越えそうになれば、機体側が介入できます。


 これは「機体が全部飛んでくれるので操縦を覚えなくてよい」という意味ではありません。


 安全に失敗できる実機訓練です。



【操縦者の区分】


 三式戦改

  どろちゃん専用。


 紫雲改

  どろちゃん専用。


 零式三座改

  どろちゃん専用。


 水玉An-2 3機

  どろちゃんが教官。

  フランソワさんが水上機訓練に使用。

  オイゲンさんの部下が、1人1日2時間ずつ飛行訓練。

  資格と経験が整えば、水玉An-2の定期運航要員になります。


 Be-12NKh

  フランソワさんが水上機を扱えるようになったあと到着予定。

  どろちゃんとフランソワさんの専用機。

  オイゲンさんの部下がBe-12へ進む計画ではありません。



【なぜ1日2時間なのか】


 オイゲンさんの部下には、護衛など本来の勤務があります。


 1日中訓練へ出してしまえば警備側の勤務表が崩れますし、初学者が長時間連続して実機訓練をしても、後半は疲労で学習効率が落ちます。


 そこで本章では、通常勤務と交代させながら、1人1日2時間を基本にします。


 毎日続ければ、1か月でかなりの実飛行時間になります。


 座学、機体点検、無線、航法などは飛行時間とは別に行います。



【マニュアルがロシア語で届く理由】


 元の資料は、日本語、ドイツ語、英語などで書かれています。


 天国のアントノフ技師さんたちは、それを自分たちの作業用にロシア語へ訳し、さらに改造箇所をロシア語で追記しました。


 このマニュアルは神様が作ったものではありません。


 したがって、エルレンフェルトへ持ってきても、この世界の共通語へ自動的に変わりません。


 どろちゃんはロシア語を読めるので、訓練と運航に必要な部分から共通語へ翻訳します。


 操縦者向けと整備者向けに分け、改造部分の注意事項を落とさないようにします。



【燃料について――鉛系ガソリンは最初から不可】


 この世界では、四エチル鉛などを使う鉛系ガソリンは、最初から使わない絶対ルールです。


 これは後から追加された規則ではありません。


 どろちゃんたちが、未来の大気汚染をこの時代へ持ち込まないための基本条件です。


 そのため、史実で高オクタン航空ガソリンを必要としたDB 605、R-2800、R-1830なども、当時の有鉛航空ガソリンを再現して使うことはありません。


 レシプロエンジンは神様燃料で動くように燃料供給、噴射、点火などを調整します。


 TPE331-12UANを積む水玉An-2などのタービン機は、ケロシン系の神様燃料を使います。


 エンジンは昔のものでも、燃料まで昔の公害を再現する必要はありません。



【水玉船整備場と格納庫】


 水玉船整備場は、エルレンフェルトの町からライン川を約1km下流へ行った場所にあります。


 水玉船を川から上げ下ろしするためのスロープがあり、船体、機関、金属部品を整備する工場です。


 切断、研削、溶接などの金属加工をするため、住宅のある町中には置いていません。


 水上機を置く格納庫も、現地で一から建設したものではありません。


 天国には、航空機だけでなく、爆撃などで壊れた格納庫やバンカーの置き場もあります。


 技師さんたちは、そこから使いやすい格納庫を選び、構造材、扉、床、排水、照明、電源を直したうえで、神様にお願いして水玉船整備場横の広い空き地へ出現させてもらいました。


 三式戦改だけは水上機ではないので、旧滑走路横のエプロン、ミツバチちゃん格納庫の隣へ置いています。



【水玉An-2の運航】


 3機の水玉An-2は、暖候期の定期連絡機として使う予定です。


 ロンドン テムズ川

   ↓

 パリ セーヌ川

   ↓

 エルレンフェルト 水玉船待合室前埠頭・ライン川

   ↓

 バーゼル ライン川直線部

   ↓

 チューリッヒ チューリッヒ湖

   ↓

 トリノ ポー川直線部


 3機体制です。


 冬季は休止します。


 鉄道があるので、水面の凍結、着氷、冬霧などへ無理に対応して通年運航する必要がありません。冬は3機を戻し、ターボプロップ、プロペラ、フロート、防水樹脂、支持構造をゆっくり点検します。



【史実値と新生後を比べるための基準】


 以下は、次章以降でどろちゃんが実測値を書き込むための基準です。


 ■ キ61-II改系

 元メーカー:川崎航空機

 元エンジン:川崎ハ140

 元エンジン出力:高出力型としての公称・計画値を資料ごとに区別

 史実資料最高速度:約610km/h(高度6000m)

 新生エンジン:Daimler-Benz DB 605L系高高度試作型

 武装・防弾:なし

 操縦者:どろちゃん専用

 新生後自重:未測定

 新生後最高速度:未測定

 新生後高度5000m上昇:未測定

 新生後高高度性能:未測定


 ■ E15K1 紫雲

 元メーカー:川西航空機

 元エンジン:三菱火星14型/24型

 史実資料最高速度:約469km/h

 史実資料巡航速度:約296km/h

 史実資料航続距離:約3370km

 新生エンジン:Pratt & Whitney R-2800-10系

 新生減速機:アントノフ技師団新設計の二重反転機構

 武装・爆装:なし

 操縦者:どろちゃん専用

 新生後自重:未測定

 新生後最高速度:未測定

 新生後離水距離:未測定

 新生後減速機振動・油温:未測定


 ■ E13A 零式三座水上偵察機

 元メーカー:愛知時計電機航空機部門/愛知航空機

 元エンジン:三菱金星43型

 史実資料最高速度:約376km/h

 史実資料巡航速度:約222km/h

 史実資料航続距離:約2090km

 新生エンジン:Pratt & Whitney R-1830-86

 新生プロペラ:アメリカ製定速プロペラ

 武装・爆装:なし

 操縦者:どろちゃん専用

 新生後自重:未測定

 新生後最高速度:未測定

 新生後巡航速度:未測定

 新生後航続距離:未測定

 新生後離着水性能:未測定


 ■ 水玉An-2水上型

 元設計:O.K. Antonov設計局

 元エンジン:ASh-62IR

 新生エンジン:Honeywell TPE331-12UAN

 離昇出力:1100shp

 プロペラ:多翅化

 アビオニクス:現代型へ更新

 機数:3機

 用途:訓練・暖候期定期連絡

 新生後自重:未測定

 新生後巡航速度:未測定

 新生後離水距離:未測定

 新生後実用航続距離:未測定



【性能表は、次章で完成します】


 この章では、あえて新生後の最高速度や航続距離を決めません。


 出力の数字だけを見て「何%馬力が増えたから何%速くなる」とすることはできないからです。


 とくに紫雲は、R-2800の重量増加と新しい二重反転系、フロート抵抗があります。


 零式三座も、R-1830への換装で重心、カウリング、冷却抵抗が変わります。


 三式戦改は、高高度用エンジンを載せた意味が低空最高速度より高高度側へ現れる可能性があります。


 水玉An-2は、最高速度より離水、低速、巡航燃費、扱いやすさの方が実用品として重要です。


 だから、全部どろちゃんが飛ばします。


 昔の資料値の横へ、新しく生まれた飛行機自身の数字を書き込むためです。



【主な史実確認資料】


 ・U.S. Naval History and Heritage Command / National Naval Aviation Museum

  F6F HellcatのR-2800-10/R-2800-10Wと機体性能。


 ・Smithsonian National Air and Space Museum

  Pratt & Whitney R-2800 Double Wasp、R-1830 Twin Waspの構造、排気量、出力、重量の保存資料。


 ・F4F-4 Pilot's Handbook, Engine R-1830-86

  F4F-4とR-1830-86の組み合わせ。


 ・Honeywell Aerospace / SibNIA, 2013

  An-2近代化用TPE331-12UAN、離昇1100shp、TS-1を含むジェット燃料対応。


 ・Japanese Aircraft of the Pacific War などの航空史資料

  E13A、E15K、キ61-II改の寸法・重量・性能値。


 日本機の戦時性能値には、資料による差、計画値、公称値、試験値の混在があります。本作では、その差があること自体を残し、「史実の数字」と「新生後にどろちゃんが実測した数字」を別に記録します。



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