99貴族令嬢は、ライデンで誕生日を迎えます。 電子レンジとアンモニア冷媒のクーラーができたので製品化
史実ではレーダーを使っていたらアンテナ近くの食品が温まるのを発見して、そこから電子レンジが作られるのだけど、マグネトロンが(真空管の一種)できて、先に昭和の電子レンジに行くのがこの世界です。電子制御無し、回る機械的タイマーとベル。
第99章 貴族令嬢は、ライデンで誕生日を迎えます
ライデン滞在は、思ったより長くなりました。
理由は、1つではありません。
鉄道。
トンネル。
海上コンテナ。
冷凍機。
マグネトロン。
それから、思いついてしまったものがいくつか。
帰ろうと思うたびに、
「先生、これだけ確認してください」
が増えます。
「お嬢様。明日のお戻りも、難しそうでございますね」
「……うん」
フランソワさんは、もう驚きませんでした。
◇ ◇ ◇
その日の午後、英国から帳簿の写しが届きました。
「エジンバラ?」
「はい。駅の売店でございます」
開業日にわたしがピロシキと紅茶を買った、あの小さな店です。
売っているものは、まだ多くありません。
ピロシキ。
ジャムを入れた紅茶。
それから普通の紅茶。
店を大きくしなかったのは正解だったようです。
列車の前後だけ急に人が来る。
注文が複雑でない。
温かいものを手早く渡せる。
帳簿の数字は、きれいに黒でした。
「1か月で、これだけ?」
「営業そのものでは、利益が出ております」
わたしの頭の中で前の世界のお金へ直してみます。
15万円くらい。
「ピロシキ屋さん、儲かってる」
「ただし」
「ただし?」
「店舗を購入した費用がございます。それから、1号店から店員さんをしばらく派遣した旅費、滞在費、人件費もございます」
「あ」
「累積では、まだ戻っておりません」
「……ピロシキ、もっと売らないと」
「順調ではございます」
月の営業利益が黒字でも、最初に出したお金まで戻ったわけではありません。
そこは鉄道と同じです。
儲かることと、元手を回収したことは違います。
ただし、もう1つ書いてありました。
「車内販売?」
「はい。試験で始めたものが、予想よりよく売れているそうでございます」
食堂車は、料理をきちんと出します。
その分、値段も高めです。
しかも席数は多くありません。
乗客の全員が、昼になるたび食堂車へ行きたいわけでもありません。
「席で食べたい人、いるよね」
「おりますね」
「じゃあ続けよう」
ピロシキは車内で揚げません。
油を熱した鍋を、走っている列車へ持ち込む気にはなれません。
駅側で調理。
列車へ積む。
厨房車で温める。
保温箱へ移す。
そこから車内販売のカートへ。
この順番です。
「それなら、サモサもいけるよ」
「サモサ、でございますか」
「インドから来てる人も乗ってるでしょう。カレーをカートで運ぶのは嫌だけど、サモサなら包んで渡せる」
「種類は増やされますか」
「増やしすぎない。ピロシキとサモサ。紅茶。そのくらいから」
売店でやったことを、列車の中でもやります。
少なく。
温かく。
早く渡す。
◇ ◇ ◇
問題は、どうやって温めるかでした。
「できたよ」
実験室の机の上に、四角い箱があります。
箱と言っても、小さくはありません。
扉があります。
扉には中を見られる窓。
横には時間を決めるつまみ。
中は、丸い皿ではなく、平らです。
「中は、ずいぶん平らなんですね」
「うん」
学生が中を覗きました。
「ここへ、そのままトレーを置くんですか」
「そう。その方が、たくさん入るから」
食品を載せた皿そのものを動かす仕組みは入れません。
厨房車で使うなら、角いトレーをそのまま庫内いっぱいに使いたいからです。
ですから底は少し厚くしました。
マグネトロンから来た高周波を導波管で分け、上からも下からも庫内へ入れます。
それだけでは場所によって温まり方が偏るので、金属の羽根を回して電界の分布を動かします。
「食べ物じゃなくて、電波の方をかき混ぜるんですか」
「そう」
「先生、これ本当に1号機ですか」
「うん」
扉を開ければ高圧側が切れるようにしてあります。
時間はゼンマイ式です。
つまみを回す。
接点が入る。
ゼンマイが戻る。
時間が来れば切れる。
最後に、
チン。
ベルが鳴りました。
学生がしばらく箱を見ました。
「完成度たかー」
「その方が使いやすいでしょう」
最初に入れたのは、ピロシキです。
次がサモサ。
同じ重さ。
同じ数。
場所を変える。
時間を変える。
上と下から入れる高周波の割合を変える。
羽根の形も変える。
中だけ熱くなったもの。
端だけぬるいもの。
皮が少し湿ったもの。
機械の形は分かっていても、食べ物の方は試さないと分かりません。
「6個、1分半」
「まだ端が低いです」
「じゃあ、次は羽根を変えよう」
大学の研究らしくなってきました。
マグネトロンを食べ物へ使うと決めたところで、もう1つ決めました。
高周波加熱に使う周波数帯です。
「ここは、用途を限ろう」
「通信には使わないんですか」
「使えないわけじゃない。でも、強い加熱装置が増えたら、きれいな帯域にはならない。大事な通信を置く場所にはしない方がいい」
将来、何に使われるかまでは言いません。
ただ、高周波加熱器が増える場所へ、絶対に切れてほしくない通信を置かない。
それだけは、先に決められます。
◇ ◇ ◇
冷凍機の方も、試験が進んでいました。
これは、今より少し前の話です。
宮殿へ最初の実用機を入れたのは、まだ残暑の残っていた季節でした。
冷媒はアンモニアです。
圧縮機で圧縮する。
凝縮器で熱を捨てる。
膨張させる。
蒸発器で熱を吸う。
まず使ったのは、もちろん冷やす方です。
最初の実用設備は、ベルサイユへ入りました。
サン・ルイの寝室。
それから、いつもの人の控え室。
「なぜトルシー侯の控え室まで?」
学生に聞かれました。
「仕事してる時間が長いから」
見せるための大広間ではありません。
寝るところ。
書類を読むところ。
長くいる場所です。
取り付けて数日すると、ベルサイユから手紙が来ました。
「なんて?」
「陛下からでございます」
フランソワさんが読みました。
「夜になっても寝室が暑くならない。よく眠れた、と」
「よかった」
「もう1枚ございます」
「いつもの人?」
「はい。控え室が涼しいので、書類を読むのが楽になったそうでございます」
「そっちもよかった」
購入したお客様から、ちゃんと感想が返ってきました。
前の世界なら、星を5つ並べるところでしょうか。
そこまでは言いません。
ところが、その話が英国へ伝わりました。
アン女王陛下にも。
「英国にも?」
「付けるよ」
女王陛下の寝室。
執務室。
こちらも、まだ暑さの残るうちに取り付けました。
しばらくすると、今度は英国から手紙です。
「女王陛下は?」
「寝室もよろしいそうですが、執務室の方を特にお気に召したようでございます」
「そっち?」
「午後になっても部屋が暑くならず、書類を長く読める、と」
「……王様って、みんな仕事する部屋の感想が具体的だね」
「お嬢様。お2人とも、お仕事をなさる方でございますから」
「そうだね」
フランスと英国。
2組とも、残暑の冷房試験は合格です。
そして今は冬です。
冷やす側だけ使う必要はありません。
「反対側、熱いよね」
「はい」
「じゃあ今度は、そっちを使おう」
凝縮器側の熱を室内へ回せば、冷凍機ではなくヒートポンプになります。
夏に涼しいと言った2つの宮殿で、今度は暖房の試験も始まりました。
さらにライデン大学では、わたしの研究室と、学生食堂4か所へ入れました。
寝室。
執務室。
研究室。
大勢が出入りする食堂。
条件が全部違います。
冷房能力。
暖房能力。
送風量。
結露。
湿度。
扉の開閉。
人の数。
食堂は昼になると急に熱負荷が増えます。
実験するには、とてもいい場所でした。
「涼しい」
「こっちの食堂の方が効いてる」
「人数が違うから、同じ設定では比べられないよ」
食べながら測定している人までいます。
アンモニアそのものは、人のいる部屋へ持ってきません。
機械室で1次側を回し、2次側の水やブラインを室内へ送ります。
学生食堂でアンモニア配管を踏む人はいません。
◇ ◇ ◇
問題が1つ出ました。
「先生。場所がありません」
「どこに?」
「大学にです」
ありました。
研究室。
工房。
試験設備。
車両。
コンテナ。
クレーン。
冷凍機。
高周波加熱器。
思いつくたびに物が増えます。
「冷凍機を量産する工場は、大学の外へ出しましょう」
「どこ?」
「大学側で候補を決めました」
地図を見ました。
アイントホーフェン。
「あそこ?」
「はい」
線路があります。
そして土地が安い。
この町は、ネーデルラントの中でも政治の向きがなかなか定まらず、そのたびに相手を変え、戦争になるたび町を壊されてきました。
建物が消えた場所。
再建されない場所。
市街地なのか空地なのか分からなくなった場所。
ぐだぐだです。
「裏切りの街角」
わたしが言うと、大学の先生が少し困った顔をしました。
「正式な呼び名にはしない方がよろしいかと」
「しないよ」
でも、覚えやすい。
土地は広い。
値段は低い。
線路が通る。
冷凍機は重いので、材料も完成品も鉄道で運べます。
「ここにしよう」
大学の敷地を工場で埋めるより、ずっといい。
こうしてアイントホーフェンに、冷凍機とヒートポンプを作る工場用地が決まりました。
◇ ◇ ◇
鉄道が増えると、電気も増えます。
発電所。
送電線。
変電設備。
線路へ電気を送るために作った設備の近くへ、町の電気も伸びます。
「だったら電球も作ろう」
それもアイントホーフェンになりました。
「またですか」
「線路あるし」
「土地もございます」
「安いし」
今度はガラスを使います。
口金は、最初からねじ込み式にしました。
「取り付け部分は、1種類にしよう」
「会社ごとに違うものを作らせないんですか」
「嫌だよ。電球を替えるたび器具まで替えるの」
寸法も決めます。
後で、似たものが何種類も出来て互換性がない、という遠回りはしません。
電球の中も、真空のままにはしませんでした。
1度空気を抜きます。
酸素と水分を減らします。
そのあと、窒素を入れます。
「真空電球ではないんですね」
「最初からガス入り」
製造に真空設備は使います。
完成した球の中身まで真空にしておく必要はありません。
そして、白熱電球を作り始めると、次に気になります。
「熱にしないで光らせたい」
「またですか」
「また」
今度は蛍光物質です。
低圧の水銀放電で出る紫外線を、管の内側の物質へ当てて可視光へ変える。
ただし、光れば何でもいいわけではありません。
青すぎる。
赤が足りない。
紙は読みやすいけれど料理がまずそうに見える。
そういうものが出ます。
「食堂で試しましょうか」
「冷暖房だけじゃなくて照明も?」
「4つあるから比較できるでしょう」
学生食堂が、また実験場になりました。
◇ ◇ ◇
半導体は、ライデンではなくエルレンフェルトへ持っていくことにしました。
会議棟の横です。
「そこに研究所を?」
「うん」
理由は簡単です。
わたしが何かを思い出したとき、すぐ試したい。
ライデンへ行って先生を探し、工房を空けてもらい、材料を取り寄せるところから始めると時間がかかります。
会議棟の横なら、
「そういえば」
と思ったときに歩いて行けます。
研究者だけではありません。
工場の技術者も置きました。
「動きました」
だけでは、商品になりません。
「100個同じものが作れる?」
「温度が変わっても大丈夫?」
「材料の純度は工場で保てる?」
「検査はどうする?」
そういうことを、その場で聞ける人が必要です。
材料はゲルマニウムとシリコン。
最終的に何を作りたいかは、わたしには分かります。
でも、途中を全部飛ばすつもりはありません。
点接触。
接合。
拡散。
メサ。
表面処理。
酸化膜。
古いからいらない、と全部飛ばすと、なぜ次の方法が必要になったのかまで抜けてしまいます。
研究では作る。
測る。
壊す。
漏れる理由も見る。
ただし、その途中の素子を何年も商品として売って、世界全体を待たせる必要はありません。
製品には、その時点で最もまともなものを使います。
最初の商品だけは、簡単なものにしました。
ゲルマニウムの点接触型検波ダイオードです。
小さなゲルマニウム。
細い金属針。
リード線。
ガラス管へ封入。
「ラジオ用?」
「うん」
鉱石へ針を当てて、聞こえる場所を毎回探すより楽です。
「これは工場へ渡せそうです」
「じゃあ作ろう」
研究所の最初の製品は、ずいぶん小さなガラス管になりました。
◇ ◇ ◇
そんなことをしているので、ライデンへ長居します。
そして、長居した結果、別のものまで安定してきました。
20か国語放送です。
バベル現象の直後は、わたしがいないと困る言語がたくさんありました。
でも、時間が経ちました。
地域語を勉強した人。
まだ少したどたどしいけれど、ニュース原稿なら読める人。
その地域からライデンへ移ってきて、普通に話せる人。
少しずつ増えました。
ニュースは原則、生放送です。
各地から電信で来た情報。
政府や港からの連絡。
鉄道。
食料。
天気。
商取引。
それを整理して、順番に読みます。
「次は?」
「あと2分でございます」
「原稿は?」
「こちらです」
前よりずっと普通の放送局になりました。
わたしが全部読まなくてもいい日があります。
地域から来た女性が読む放送。
ライデンで地域語を覚えた女性が、ゆっくり読む放送。
聞いている人の中には、内容だけでなく、その人の声を楽しみにしている人までいるそうです。
「女子アナさんのファン、できたんだ」
「じょしあな?」
「なんでもない」
この言葉は、まだ説明しなくていいです。
少しくらい発音が違っても、毎日同じ人がニュースを読んでくれる。
昨日より上手になっている。
それを聞く人もいます。
わたしがいなくても、全部止まる放送ではなくなってきました。
◇ ◇ ◇
そして、お誕生日になりました。
わたしとフランソワさんは、同じ日が誕生日です。
今年はライデンにいます。
王宮ではありません。
エルレンフェルトの屋敷でもありません。
大学です。
食堂の1つに、学生と先生、工房の人、放送局の人が集まりました。
冷暖房の試験をしている食堂です。
「今日は測定器を見なくていいですよ」
「誰に言ってるの?」
「先生です」
「……はい」
温度計の方を見ようとしたら止められました。
フランソワさんが笑っています。
「お嬢様。本日は研究ではございません」
「フランソワさんも今日でしょう」
「はい」
「じゃあ、そっちも座って」
「わたくしは」
「同じ誕生日」
学生たちも知っています。
「フランソワさんもです」
「ほら」
逃げられませんでした。
料理は、普段の学食より少し増えています。
パン。
肉料理。
魚。
根菜。
チーズ。
果物。
そして、なぜかピロシキがあります。
「これ、英国の売店の宣伝?」
「研究成果だそうです」
「どの研究?」
「車内販売の方です」
サモサもありました。
「増えてる」
「こちらもよく売れたそうです」
海峡トンネルへ、ほんの少し近づきました。
放送局の机は、食堂の端に置かれています。
今日はニュースだけではありません。
誕生日の様子を生中継します。
会場の声をそのまま流す。
必要なところで、地域語担当の放送員が短い翻訳を挟む。
全部を同時に話したら聞き取れません。
ですから、
「ただいま、学生から花が渡されました」
少し待つ。
別の言語。
「フランソワさんも同じ誕生日です」
また会場の音。
笑い声。
食器の音。
拍手。
それを残します。
普段ニュースを聞いている人なら、声を聞いただけで担当者が分かる人もいるそうです。
女性放送員が原稿を読み始めると、食堂の端にいた学生が小さな声で言いました。
「あ、この人」
「知ってるの?」
「毎日聞いてます」
「ニュースを?」
「……声も」
隣の学生が笑いました。
本人には聞こえていないと思います。
たぶん。
放送は続きます。
まだ少したどたどしい地域語。
きれいに話せる地域語。
その間へ共通語。
誰か1人が20か国語を全部話し続ける放送ではありません。
何人もの人が、自分の出来るところを受け持っています。
しばらくして、わたしの前へ小さな包みが置かれました。
「先生、研究所からです」
「なに?」
開けました。
小さなガラス管です。
中に、もっと小さなものが入っています。
「検波ダイオード?」
「最初の規格合格品です」
「誕生日に?」
「先生が作れと言ったので」
「そうだけど」
フランソワさんが覗き込みました。
「ずいぶん小さな贈り物でございますね」
「でも、ラジオが楽になるよ」
「それなら、よい贈り物でございます」
食堂の端で、放送員がそのことを別の言葉へ直しています。
少し詰まりました。
隣の人が小声で教えます。
言い直します。
ちゃんと伝わりました。
最初のころなら、わたしがいないと出来なかったことです。
今は、わたしの誕生日を、みんながそれぞれの言葉で外へ伝えています。
「お嬢様」
「なに?」
「お誕生日、おめでとうございます」
「フランソワさんも、おめでとう」
また拍手が聞こえました。
その少しあと、放送員が地域語で同じことを伝えます。
たぶん遠くでは、その声を待っていた人も聞いています。
ニュースの日と同じように。
でも今日は、少しだけ違う声で。
【小さな説明】
■ 車内販売と電子レンジ
エジンバラ駅のピロシキ・紅茶売店は月次営業では黒字になりましたが、店舗購入費や1号店からの店員派遣費を含む累積投資はまだ回収途中です。
食堂車は高級で席数も少ないため、鉄道ではピロシキ、サモサ、紅茶などの車内販売を始めました。列車内で油を使って揚げることはせず、駅側で調理した食品を厨房車で再加熱し、保温して販売します。
再加熱装置はマグネトロンを利用した業務用電子レンジです。回転皿は使わず、上下から導波管で給電し、モードスターラーで庫内の電界分布を動かします。ゼンマイ式タイマー、終了ベル、扉インターロックも最初から備えます。
高周波加熱を実用化したため、その周波数帯は強い高周波を使う工業・科学・加熱などの用途へ限定して管理し、将来の重要通信を置く帯域とは分けます。
■ アンモニア冷凍機・ヒートポンプ
アンモニアを冷媒とする蒸気圧縮式冷凍機を作り、凝縮側の熱も利用して冷暖房に使います。
宮殿への最初の実用設置は、1704年の残暑が残る時期です。ベルサイユではルイ14世の寝室とトルシー侯の控え室、英国ではアン女王の寝室と執務室へ設置し、まず冷房として実用評価を受けます。現在の章内時点は冬なので、その後は凝縮側の熱を利用した暖房試験へ移っています。ライデン大学では、どろちゃんの研究室と4つの学生食堂へ設置し、異なる熱負荷条件で実証試験を行います。
アンモニアは人口の多い室内側へ直接配管せず、機械室側に置き、水やブラインなどの2次系統で熱を運びます。
■ アイントホーフェン
ライデン大学の敷地が研究・試作設備で狭くなったため、大学側は冷凍機量産工場をアイントホーフェンへ置くことを決めました。
作中のアイントホーフェンは、政治的混乱と戦災を繰り返して再建されない土地が多く、用地費が安い一方、鉄道が通っています。そのため、大型機械の工場用地として利用しやすい場所です。
その後、鉄道電化から一般の電力利用が広がったため、同地には電球工場も作ります。
■ 白熱電球と蛍光灯
白熱電球は最初から標準化したねじ込み口金を採用し、完成品を真空球として販売する段階は経ず、窒素封入式から始めます。製造工程では排気設備を使用します。
さらに低圧水銀放電と蛍光体を利用する蛍光灯を目標に、蛍光物質の発光効率、色、耐久性、塗布方法などを大学で研究します。
■ エルレンフェルト半導体研究所
どろちゃんが思い出した技術をすぐ検証できるよう、エルレンフェルトの会議棟横に半導体研究所を設けます。研究者だけでなく工場技術者も配置し、試作品を量産可能な製品へ落とし込めるか同時に確認します。
材料はゲルマニウムとシリコンです。研究では点接触型、各種接合、メサ型、拡散・表面処理など、技術理解に必要な中間段階も実際に作って評価します。ただし、古い方式を長期間製品化して社会全体の進歩を遅らせることはしません。
最初の簡単な製品は、ラジオ検波用のゲルマニウム点接触型ガラス封入ダイオードです。
■ 20か国語放送
バベル現象後の多言語ニュースは原則として生放送です。
ライデン大学で冷凍機などの研究が続き、どろちゃんの滞在が長くなった間に、地域語を学んだ放送員や、対象地域から移ってきた話者が増えました。まだつたない担当者もいますが、ニュース原稿を読める人が増えたため、どろちゃん1人へ依存する度合いは下がっています。
地域語担当の女性放送員には、ニュース内容だけでなく声や話し方を楽しみにする聴取者も現れています。本章末の誕生日は、会場音声へ各地域語の短い翻訳を挟みながら生中継されます。




