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勇者を殺してください。  作者: コウタロス
アルビオン編
8/30

第8話「ポイントの使い方」

「まず、このシャンデリアのチェーンを見てみてください」


シーカは天井とシャンデリアの接続部であったチェーンを指差す。

シーカの指示通り覗き込むマオとカフラ。


「これがなんなんだ?」


「普通にチェーンが千切れた感じだけど……

経年劣化とかではないの?」


シーカは持っていた大きな虫眼鏡をマオに手渡す。


「それで見てみるのだ!」


マオはチェーンを虫眼鏡で観察する。

チェーンは破損部を除いてはピカピカに磨かれており傷ひとつない。


「特に変なところはなさそうだけど……

全体的にチェーンは綺麗だし……」


「そこがポイントなのだよ!

ここは"アルビオン"の中でトップクラスの高級店。

清掃もメンテナンスも抜け目なくしているでしょう。

経年劣化での落下の場合、破損部以外に亀裂が入っていてもおかしくない……」


シーカは左右に歩き、推理内容を説明する。

カフラは真剣に推理を聞き、疑問点を純粋に質問する。


「だとしてもよ、そんな傷ひとつないチェーンをステージ上でピアノを弾いていた人が、どうやって破損させられるんだ?」


シーカはカフラの質問を得意げに頷きながら聞く。

その表情からは楽しさが滲み出ていた。


「さすが、カフラくん!いい質問だ!

そこで、リテル・スラフさん。

あなたの役職"音波士(おんぱし)"の登場です!」


リテルは顔を引き攣らせる。

それを見たシーカは、ニヤリと笑いメガネをあげる。


共振(きょうしん)……てご存知ですよね?リテルさん」


「し、知らないわ!」


「ダウト!!」


シーカの言葉でシーカに取り付けられた足枷の鉄球のサイズが大きくなる。

リテルに虚偽の発言があったのだ。

シーカは追い詰めるように説明を続ける。


「共振とは、物体が持つ"固有振動数"と外部からの振動数が一致した時に、振動の振り幅が非常に大きくなる物理現象。

リテル・スラフさん、あなたはピアノの音波をコントロールし、チェーンの固有振動数に合わせた。

そして、共振によりチェーンは破損。

その証拠に……」


シーカはチェーンの破損した表面を指でなぞる。


「……この金属片の粉。

経年劣化の場合、断面にこの粉が発生することはない。

これは共振により、チェーンが内側から破壊された証拠……」


リテルは俯き、黙り込んだ。

さらに、追い込むようにシーカは続ける。


「殺された男性はおそらくある程度のポイント所有者。

この犯行の手口から見るに、リテル・スラフさん、あなたの加入しているギルドは"グルー"。

違いますか?」


ギルドの名前を聞いて目をまん丸にして驚くカフラ。


「"グルー"!?

"グルー"ってあの……」


マオは、カフラのあまりの驚き様に問う。


「なぁ、カフラ

その、"グルー"てなんなんだ?」


「"グルー"てのは、世界中のポイント保有者を狩って莫大なポイントを集めている暗殺者ギルドの名前だ……

ある一定以上のポイントを獲得すると

なんでも願いが叶うていう噂があるんだが、

それを本気で信じてる連中だ」


「まじか!

じゃあ、あの女性も暗殺者……」


「くっくっくっ……あっはっはっは!!」


不気味に笑いながら顔を上げるリテル。


「よく分かったわね……

そうよ!私はギルド"グルー"の1人、リテル・スラフよ。

殺しがバレるなんて初めてだわ……名探偵さん」


「ふふん!私に暴けない事件はないのだ!」


「まぁ……バレたところであなたたちも殺せば済む話だけどね!!」


リテルは重い足枷を引きずりながらピアノまで走り出す。

その距離は約2m。

リテルの突然の行動に思考が追いつかず

目で追うことしかできないマオとカフラ。

意図を察したのかシーカは取り乱し慌てる。


「やばい!やばい!

"共振"で我々を殺す気だ!」


シーカの一言でリテルの意図を察するマオ。


「まじか!早く止めないと!」


マオは慌てて、リテルを阻止しようと走り出す。

その距離約5m。

いまだに状況が掴めないカフラ。


「お、おい!マオどういうことだよ!!」


「あの女!俺たち全員を共振で殺すつもりだ!!

俺たちもあのチェーンみたいに内側から粉々に……」


マオが説明をする頃にはリテルはピアノの前までたどり着いていた。


やべぇ!

どうする!ピアノを弾かれれば俺たちは死ぬ。

耳を塞ぐか?

いや、耳を塞いだところで音波だ!

関係ないだろ!


リテルがピアノの鍵盤に触れようとしたその時、突然ピアノが地面に消えていく。

それはまるで自身の影に飲み込まれているようであった。

ピアノの前には地面に手を置くジョンソンの姿。

ピアノは完全に姿を消し、影となったピアノがジョンソンの手に吸い込まれる。

思いもよらない出来事に脳を整理するマオ。


ピアノが消えた……

いや、消えたというよりあの男に吸収された……?


計画が狂ったのか混乱するリテル。


「な、ない!ピアノが!!どこに行ったのよ!」


「抵抗はやめて大人しく捕まりなさい!」


肝心のピアノが消えたことで膝から崩れ落ちるリテル。

安全を確保したのか走ってジョンソンの隣に立ち、自信満々に犯人の前に立つシーカ。


「でかしたぞ!ジョンソンくん!」 


怒涛の逮捕劇に店内から拍手が湧き起こる。

マオとカフラもつられて拍手する。

シーカは手を挙げ気持ちよく拍手を浴びる。


「ありがとう!ありがとうなのだ!!」


続けてジョンソンが口を開く。


「事件はこの名探偵"シーカ"先生によって無事解決されました!!

皆さん!ご協力ありがとうございました!」


ジョンソンは帽子を外し紳士に礼をした。


———


「いやぁー!すごかったなぁ!

名探偵"シーカ"だっけ?

そして、あのジョンソンっていう男の人も!

いやぁ、世界にはすげぇ人がいっぱいいるんだな!」


無事事件が解決し店の外に出るマオとカフラ。


「おーい!君たち!」


後ろからシーカの声が聞こえた。

振り返るマオとカフラ。

シーカの隣には相変わらずジョンソンがいた。


「君たちこの辺の人ではないね?

どこから来たんだい?」


シーカの質問に先に答えるカフラ。


「俺は伝説の鉱物を探しに"アナトリア"から」


「ほう、"アナトリア"か……

鍛冶屋で有名な場所だな?

背中の剣と、その前腕を見るにズバリ、

カフラくんは鍛治職人かな?」


「まぁ、正解だ!まだ見習いだけど……

親父はスゲェー鍛治職人なんだぜ!」


「親父さんの名前はウスタス・デミルかな?」


突然ジョンソンがカフラに問いかける。

合っていたのかカフラは目を見開く。


「そ、そう!

ウチの親父はウスタス・デミル……

でも、なんであんたが親父の名前を?」


「昔に会ったことがあってね」


「親父の知り合いだったのか!

やっぱり親父はスゲェーな!!」


カフラは無邪気な笑みをこぼす。


「そして、あなたは?」


シーカは続けてマオに質問する。


「名前はマオ・ノクス。

ちょっと色々あって勇者を探しにカイの村から」


「カイの村……なるほど……」


ジョンソンは顎に手を置き、先ほどとは違い険しい顔つきでマオを見る。

マオの曖昧な解答に続けて質問するシーカ。


「なぜ、勇者なんかを探しに……?」


「そ、それは……」


「まあ、いいじゃないですか……先生……

それより!事務所に戻って明日の作戦会議をしましょう!」


ジョンソンは何かを察したのかシーカの質問を遠ざけた。


「そうだ!あなた達も協力してもらえませんか?

明日の作戦に……いいですよね?先生」


「確かに人数が増えることに越したことはないな。」


「作戦ってなんですか?」


「ジョンソンくん、例の"あれ"を」


シーカは手をジョンソンに差し出す。

ジョンソンはカバンから1枚のカードをシーカに渡す。

そのカードには文字が刻まれていた。

マオはカードに書かれた文字を読み上げる。


「"明日の夜。

すべての灯りが油断へと変わるその刻、

我は忍び寄る。

薔薇の名を冠するその石、"ローズジェムを。

怪盗シャドウ"

これって、予告状……?」


「そうだ!

ここ"アルビオン"を騒がせ続ける"影"、怪盗シャドウ。

彼を捕まえることこそが、私の名探偵としての使命なのだ……

カフラくんの鋭い質問、マオの咄嗟の判断力……

先ほどの事件でそれを感じた。

どうか私に協力してくれないか?」


シーカは、決意の眼差しをマオとカフラに向ける。


「ふん、なんか面白そうじゃねぇーか!

なぁ、マオ。協力しようぜ!

その怪盗シャドウてやつを見てみたいしな!」


「そうだね、ローズジェムっていうのも気になるしね!」


「ありがとう!マオ!カフラくん!

そうと決まれば早速作戦会議だ!!」


マオとカフラは明日の作戦会議のために、シーカの探偵事務所まで足を運んだ。


———

【あとがき】


本作を手に取っていただき、本当にありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけたら、⭐︎やフォロー、感想をいただけるととても励みになります。

これからも物語を大切に紡いでいきます。

応援よろしくお願いいたします。

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