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勇者を殺してください。  作者: コウタロス
アルビオン編
7/30

第7話「探偵と怪盗」

「きゃぁぁぁぁぁ!!」


女性の悲鳴が店内を駆け巡る。

先ほどの贅沢な空間はたちまち、重苦しい事件現場へと様変わりした。


シャンデリアの下敷きになった男性は、

ピクリとも動かない。

流れ出る血は次第に面積を増やしていく。

マオの足まで流れ着いた頃に、現場は動き始めた。


「血が……シャンデリアが落下した……?」


マオは巨大なシャンデリアが吊ってあった天井を見上げる。


「おい、マオ!!

大丈夫だったか?」


「う、うん……

俺はなんともないけど……」


カフラはマオの肩に手を置き、地面に落下したシャンデリアに目をやる。


「シャンデリアが落ちたみたいだが……

こんなことってあるのか……?

とりあえず下の人助けねぇーと!」


カフラは持ち上げようとシャンデリアに近づく。


「みなさん!!そこから一歩も動かないでください!!あと、シャンデリアにも触らないで!!」


店内全体に男の声が響き渡る。

マオとカフラは声の方向に目をやる。


シルクハットにテーラードスーツ、

下にはスーリーピースのベストを着用し、

ネクタイをしっかりと閉めた金髪の青年。

その横には、丸眼鏡にディアストーカー帽、茶色のチェック柄のインバネスコートを見にまとった少女が仁王立ちで立っていた。

少女の身長は、青年の腰ほどの小柄で

頭には犬の耳のようなものがはみ出している。


な、なんだ?あの耳……

獣人族……てやつか……?


青年が続けて忠告する。


「これは、事故ではなく事件です!!

みなさんは容疑者の1人です!

誰1人ここから出ないでください!」


その言葉を聞き、店内全員の動きが止まる。


すると、店内の男性が声を荒げ、マオとカフラに人差し指を向けた。


「なんで俺たちが容疑者なんだよ!!

こ、こいつらがやったんだろ!

こんな格好の奴らがこの店に来るのはおかしいと思ってたんだ!」


なんなんだ、このおっさん!

確かに、高級店にふさわしくない格好だがそんな言い方はないだろ……?


男の無茶苦茶な言い分にカフラは顔を歪め、反論する。


「俺たちはただ、普通に飯を食っていただけだ!!

見た目だけで判断するなよ!」


カフラ……

変なやつだけど正義感は強い……

それに比べて俺は反論もできないなんて……


すると、仁王立ちしていた獣人族であろう娘が口を開く。


「まぁまぁ、落ち着いて……

この"名探偵"シーカ・ホームズがズバリっ!

犯人を当ててやろう!!」


シーカは、パイプタバコを手に取り、吸引部を咥える。

すると、パイプの先端からポワポワとシャボン玉が作られ宙を舞う。

どうやら、パイプタバコではなく"パイプタバコ型のバブルスティック"であった。

シーカは隣の青年に指示を出す。


「ジョンソンくん!!"あれ"を!」


「はい、どうぞ!」


ジョンソンは肩からかけていたバックから大きな虫眼鏡を取り出す。

シーカは虫眼鏡を手に取り、落下したシャンデリアに近づく。

虫眼鏡を覗き込み、シャンデリアが天井と接続されていた箇所を観察する。


「ふむふむ、ふむふむふむ」


次に、巨大シャンデリアの下敷きになった男性を観察する。

シーカはシャンデリアを一周し、虫眼鏡から目を離す。


「犯人が分かったぞ!!」


「さすがです!先生!!」


自信満々に腕を組むシーカ。

それを甘やかすように褒め称えるジョンソン。


「ズバリ犯人はあなただっ!!

リテル・スラフさん!」


シーカは腕を上から振り下ろし、犯人に勢いよく指差した。

その指が捉えていたのはピアノを演奏していた女性であった。


「わ、私!?ありえないわ!!

私はただピアノの演奏をしていただけ!

みんなも見ていたわよね?

て、ていうか、なんで私の名前を……」


演奏していた女性は嘲笑をこぼし反論する。


「そうだぜ?"名探偵"さん。

あの人はずっとステージでピアノを弾いてたんだぞ?なぁ、マオ?」


「う、うん。

シャンデリアは、俺たちのすぐ真後ろにあったから、誰かが落とそうとしたら物音で気づくと思うけど……」


思いもよらない犯人にマオとカフラは、自身が感じたことをありのまま伝える。

その発言を聞き、ジョンソンは待っていましたと言わんばかりに笑みをこぼす。


「まぁまぁ、先生の推理を聞いてみましょう?

ここからが面白いのですから……!」


シーカは、ニヤリと笑いメガネをクイっとあげ静かに唱える。


「【ディテクティブスキルcase.5(ケース・ファイブ): |暴かれし嘘は逃げ場を失う《ダウト・イット》】……」


続けて、シーカは何かを見透かしたように質問する。


「リテル・スラルさん、あなたの役職はなんですか?」


「わ、私の役職は"演奏家"よ!

ただの"演奏家"!!

今日も仕事できたんだもの!

私は次の仕事もあって忙しいの!

こんな茶番に付き合ってられないわ!!」


リテルは、少し焦り気味に言葉を並べる。

それに確信を感じたのか、リテルに鋭く指を向ける。

まるで、標的に銃口を突きつけるかのように。


「ダウト!!」


そう、シーカが唱えるとリテルの左足に光が集まる。


「な、なにこれ!!重っ……!!」


リテルが左足を動かすたびに、鉄が擦れる甲高い音が鳴り響く。

足首には鉄のリングが巻きついており、そこからチェーンが伸びている。

その先端にはつられて動く黒い球体。


あれは、足枷……?

あの、探偵のスキルか……?


マオはどこからともなく現れた足枷に理解が追いつかない。


「さすがですね……

嘘と不完全な真実……

実に巧妙な割合でしたが私は騙せませんよ!」


シーカはゆっくり左右を往復し歩く。

足枷にストレスを感じたのか女性は声を荒げ訴える。


「嘘……?わ、私は嘘なんかついてないわ!!

それより、この足枷どうにかしてよ!

重たくてイライラするの!」


「私のスキル、"|暴かれし嘘は逃げ場を失う《ダウト・イット》"は相手の嘘を暴いた時にのみ発動できる。

嘘がバレた相手は足枷を背負う……

つまり、あなたの発言に虚偽があったのです!」


「な、何が嘘だっていうのよ!!

私は本当に仕事で——」


「仕事で来たのは本当。

しかし、役職"演奏家"は嘘ですよね。

シャンデリアの破損具合から推測するにあなたの役職は"音波士(おんぱし)

音の周波数を自在に操れるスキルといったところですかね?」


シーカの推理を聞いたカフラは純粋な問いを投げかける。


「その、音の周波数?てやつを操作できても

どうやってあんなでかいシャンデリアを落とせるんだ?」


「なかなか鋭いな君は!!

名前はなんという?」


「俺はカフラ!カフラ・デミルだ!

よろしくな!」


「ふふん!カフラだな!

お前なかなかセンスがあるぞ!私の助手にしてやってもいい」


「ジョシュ……?ちょっとわかんねぇーけど!

面白そうだなジョシュ!!」


カフラとシーカの掛け合いに愛想をつかせたのか、リテルがイライラ混じりの声色で話を進める。


「ちょっと勝手に盛り上がらないでよね!

確かに私の役職は"音波士"……

それは認めるわ!

だけどそれで、私がどうやって巨大なシャンデリアを落とせるって言うのさ!!」


シーカはメガネを上げ、ニヤける。


「ふふん!

そろそろ教えてあげますか。

この事件のカラクリを……」


———

【あとがき】


本作を手に取っていただき、本当にありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけたら、⭐︎やフォロー、感想をいただけるととても励みになります。

これからも物語を大切に紡いでいきます。

応援よろしくお願いいたします。

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