第6話「カフラマン伝説の始まり」
まず、転生してから今まで俺が得た情報と
父ちゃんが最後に教えてくれた、
この世界のことについてを整理しよう。
①この世界は、俺が転生前にプレイしていたゲーム「デーモンズクエスト」の世界である。
②勇者ロクスによって魔王は討伐され、魔族の脅威はすでに無くなっている。
③魔王討伐後、勇者ルクスは"どんな願いも叶う"とされる魔法石を使用し、
世界から貨幣という概念そのものが消滅した。
その代わりに勇者ルクスは「ポイント制度」となるものを導入した。
5.貨幣を失ったことで流通は崩壊し、国家は機能を失い、世界は無秩序な状態へと陥った。
ざっとこんなものか……
俺がプレイしていた時には、金貨や銀貨の貨幣制度があったが、この世界にはもう無いらしい。
"ポイント制度"……聞いたことがないな……
一体どんな制度なんだ?
マオは麻紐を解き、丸まった紙を広げた。
そこには、この世界の輪郭や地名が書いていた。
アクアはソイルのマントと同時にこの地図をマオに渡していた。
えーと、父ちゃん、
どこの街に行けって言ってたっけ?
たしか……アル……アルビ…………
マオは地図に指をなぞる。
アルビ……
あっ!"アルビオン"だ!!
今がここだから……
マオは現在地と目的地"アルビオン"までの道のりを確認する。
転生前、RPGばかりしていたマオは地図を読むのが得意である。
むしろ、それだけが廃人のようにRPGをプレイした男が得た恩恵である。
父ちゃんが言うには"アルビオン"と言う街に、ウィリアムという人がいるらしい。
どうやら、そのウィリアムは情報屋でその人なら勇者の居場所が分かるかもしれないとのこと。
「おーい!なぁ、おーい!!」
マオの右耳から元気な少年のような声が聞こえる。
声の方向に目をやると、そこには手を振りながらマオに迫る男の姿。
髪は短髪でツンツンとしたターコイズブルー。
服装は白いノーカラーのシャツに、
金の細かい刺繍が施された赤のベスト。
腰にはターコイズブルーの布を何重も巻いている。
なんだあの人……
見た感じ、悪そうな人には見えないけど
マオは少し警戒しながらも、小さく手をあげ応える。
初めて出会う、村の外の人。
変な緊張が身体中を震わせる。
「ど、どうかされましたー?」
小走りで迫ってきた男は、
とうとう何不自由なく会話できる距離まで到着した。
背中には剣らしきモノを背負っている。
「この辺に伝説の鉱物があるかもと思って来てみたんだけど知らない?」
「伝説の鉱物?聞いた事ない……です……」
なんだこの若造……
初対面でタメ語かよ……
「なんだ……
この辺に地図にも載ってない村があるって聞いたんだけどな……
まぁ、いいや。
それよりあんた、こんなところで何してるんだ?」
勇者を探してる…………
なんて言えないよな。
「ちょっと、"アルビオン"ていう街を探しいて……」
「"アルビオン"!!俺知ってるぜ!
案内してやるよ!」
「い、いいんですか?
伝説の鉱物は……?
探していたんじゃないんですか?」
「いいんだよ!!
俺もちょうど腹が減って、飯が食べられるところを探していたんだ!
それと、困っている人には必ず手を差し伸べる……
親父からの教えだ!」
「あ、ありがとうございます!」
「いいってことよ!
それより早く行って飯食おうぜ!!」
「ちょ、ちょっと俺も一緒に食べるのぉ!?」
男はマオの腕を掴まみ、走り出す。
力は強く、よく見ると腕の筋肉はたくましい。
マオは、この謎の男に警戒をしながらも、共にアルビオンを目指した。
———
「はぁ……はぁ……はぁ……こ、ここが?」
マオは膝に手をつき波打つ背中を鎮めるように呼吸をする。
「そう、ここがお前の探していた"アルビオン"だ!」
数キロ先まで伸びている石畳。
無数のレンガ作りの建物。
この街を象徴するかのように堂々と建っている時計台。
空気は少し湿っており、若干の海水の匂いも感じる。
「す、すげぇー……ここが、"アルビオン"」
まるで海外に来たみたいだ……
まぁ、そもそも異世界なんだけど
「ふふん!
そんじゃあ飯屋を探そうか!!」
「は、はい!」
なんだ、忘れてなかったのかよ……
まぁ、この世界のことも聞きたいからちょうどいいか
マオと男は食事を求めて歩き出す。
「なぁ、あんた!
この辺でうまい店しらない?」
「腹いっぱい食えるところある?」
「この街で一番の店ある?」
男は目に映る全ての人に話しかける。
その対象は人だけに収まらず、道端の動物にまで及んだ。
な、なんなんだこの人……
マジの変人じゃねぇーか……
数分聞き込んだ末、レストランに辿り着いたマオと男。
受付のスタッフに案内され席に着く。
「ふぅー!着いた着いた!
ここがこの街で1番うまい店らしいぞ!!」
「そ、そうっぽいですね……」
天井には巨大なシャンデリア。
重厚な壁に施されたレリーフ。
そして、視線の先にはステージがあり、ピアノが置いてある。
周りの人間はマオと男を見つめると顔を顰める。
それもそのはず、見窄らしい2人がこの店の雰囲気を壊しているからだ。
そんなことを気にする素振りもない男が口を開く。
「あ、そうだ!自己紹介がまだだったな!!
俺の名前はカフラ!
カフラ・デミルだ!よろしくな!」
「よ、よろしくお願いします!
僕の名前はマオ・ノクスです!
よろしくお願いします!
それより、こんな高級レストラン来ちゃって大丈夫ですか?
僕そんなお金……いや、ここではポイント……?
持ってないですよ!」
「マオ、お前ポイント持ってないのか?
どうやって今まで暮らしてきたんだ?」
「ウチの家は農家なので、自分たちで育てた食材を食べて暮らしてました。
服とかは母が縫ったものを……」
「それはすごいな!!
確かにこの"ポイント制度"の時代には、
その暮らしが1番理想かもしれないな!」
「"ポイント制度"ってどんな制度なんですか?」
「なんだ?マオ、知らないのか?
"ポイント制度"ってのは、勇者によって作られた制度なんだ。
制度ができた時に、金貨や銀貨は消滅して、世界中のステータスや能力を基準に上から強いやつ20人にポイントが付与されたんだ」
「20人だけ……?
他の人にポイントは与えられなかったんですか?」
「あぁ、その選ばれた20人以外はポイントはもらえず、金貨や銀貨も消滅した……」
「て、てことは、0ポイントの人達はお金がない状態ってことですか……?」
「まぁ、前の貨幣制度で例えるとそうだな!」
「どうすればポイントは手に入るんですか……?」
「ポイントの入手方法は主に2つだ!
1つは所有者がポイントの譲渡権を持っている。
だから、直接ポイントを譲渡してもらう」
「そんなの無理じゃないですか?」
「そうだろ?
2つ目はポイント所有者を殺害すること。
ポイントは殺害した本人に強制的に入る。」
「そんなのもっと無理じゃないですか!!」
「そうなんだよ!
だから実質的にこの選ばれた上位20人が世界を支配しているんだ」
「それじゃあ、みんなはどうやって生活していんですか……?」
「選ばれた上位20人は、それぞれギルドを作っているんだ。
そのギルド内でポイントをやりくりしているから、ギルドに入りポイントをもらう。
労働でポイントを付与するギルド、
任務クリアでポイントを付与するギルド、
ポイントの運用方法はギルドによってかなり変わるらしいぞ!」
「なるほど、今はギルドが国のような役割を担っているのか……
じゃあ、この街もギルドが運営しているってことですか?」
「あぁ、ここは確か"ゴールデンゴースト"ていうギルドが運営していた気がするぞ!」
「そうなんですね……」
ゴールデンゴースト……
どこかで聞いたことある響きだ……
「なぁ、それよりさ!
"それ"、やめてくれよ」
カフラは持っていたフォークをマオに向ける。
「"それ"ってどれですか?」
「"それ"だよ、"それ"!敬語!!」
なんだ敬語の事か……
「だってカフラさん、
見た感じ僕より年齢上ですよね……?」
「歳なんて関係ないだろ!
俺はマオより早く生まれただけ!
それだけで相手を敬う理由になるか?」
確かに……
その人の過去も実績も何も分かっていないのに、敬うのはおかしいよな……
「一緒に飯を食ってるんだ!
もう、対等な友達だろっ?」
「確かに……
友達で…………友達だな!カフラ!」
カフラはタメ口になったマオに満足気になり、配膳された食事を大きな口で食べる。
変なやつだけど悪いやつではなさそうだな……
店内に入ってから約20分ほど経過した。
突如、店内に拍手が湧き上がる。
みんなの目線はステージに集まっていた。
ステージ上で一礼する女性。
どうやら、ピアノの演奏が行われるようだ。
心が浄化されるような音色。
店内の雰囲気も相まって、自身が贅沢だと勘違いしてしまう。
思わず世界観に浸りたい気持ちをなんとか抑える。
演奏はクライマックスを迎え、テンポも次第に速くなる。
和音が厚くなり、空気が音色で震える。
ステージ上の女性が両手を挙げた。
どうやら最後の締めの和音らしい。
———ガシャァァァァン!!!
ピアノの音色にしてはやけに豪快な音がした。
突然の不協和音に身体はすくみ上がる。
「び、びっくりしたぁ!なんなんだ……?」
「お、おい……マオ……!後ろ……」
カフラは目を見開き、
驚愕の表情でマオの後ろを指差す。
音の正体である後ろの席を振り返ると、天井にあったはずの巨大なシャンデリアがテーブルを押し潰していた。
地面には真っ赤な血が広がる。
———
【あとがき】
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