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勇者を殺してください。  作者: コウタロス
使命の儀編
5/30

第5話「異名コレクター」

勇者ルクスとスイルが消えた瞬間、

マオを踏み潰していたドラゴンは光に包まれる。

徐々に光を失いドラゴンの姿も消えた。


風に揺れる草木の音。

動物の鳴き声。

今はどんな音でも、残酷に思う。

スイルが攫われたのだ。


「はぁ……はぁ……と、父ちゃん!!」


ドラゴンの踏み潰しから解放されたマオは動けないソイルに駆け寄る。


「おぉ……マオ……ッぐ……

お前……ほんとに強くなったな!!」


ソイルは左腕をゆっくりと動かし、マオの頭を撫でる。

マオの視界はぼやける。


「よしっ……!スイルを……助けに……行くか!!」


ソイルは刺された右脇腹を抑え、なんとか立ち上がる。

倒れていた地面には血の溜まり場ができていた。

マオはソイルの腰に手を回し、立ち上がりの補助をする。

ソイルに触れた途端、マオは異変に気がついた。


「父ちゃん!!

ちょっと刺されたところ見して!!」


「ん?……あぁ、大丈夫だ!……それより……」


「いいからっ!!もう、勝手に見るね!」


マオはソイルの服をめくり傷口を確認する。

傷口を中心に皮膚が黒く固まっていた。

"石化"である。

その石化は腹部全体に広がっていた。


「父ちゃん!

ごめん……俺……俺……スイルみたいに回復魔法使えないんだ……!!ごめん……俺……どうしたら……」


とうとう、マオの目から涙が溢れる。

想像したくない最悪の未来が頭をよぎる。


「……ッぐ……

マオ……ありがとうな……

スイルの"ヒール"でも治せなかったんだ……

"伝説の魔法使い"でもな……

俺の石化はもう手遅れみたいだ……」


「父ちゃん!!

母ちゃんを呼んでくるよ!!

だから……だから、まだ死なないでくれ!!」


「待て……!マオ……

お前に……教えないといけないことがある……

耳を貸してくれ……」


マオはソイルの口元に耳を近づけた。


「この……世界は——……



———ははっ、もう身体の感覚がねぇや……

最後に……これをお前にやる……

いつでも俺はお前の味方だ……マオ……。

スイルを頼んだ……!」


マオの顔の前に、手を伸ばすソイル。

その手の中は、光り輝いていた。


「と、父ちゃん……!父ちゃん!

父ちゃぁぁん!!」


とうとうソイルは、つま先から頭まで石と化した。

泣き崩れるマオ。

しかし、手の中のソイルが託した光は消えていなかった。

光に触れるとその光は次第にマオを包み込む。


暖かい……

まるで父ちゃんの温もりだ……


すると、脳内に覚えのない記憶がダイジェストで再生される。


な、なんだこの記憶。

魔王との戦闘。

勇者ルクスに殺される魔法使い。

そして、泣き崩れる俺……。

父ちゃんの記憶か……?


マオを包み込んでいた光は、次第に心臓に収束する。


父ちゃん……

この力……

これは父ちゃんの力……。


ソイルに頭を撫でられる感覚を感じる。

マオは決意を固めるように拳を握りしめた。


とりあえず、母ちゃんに報告しないと……

母ちゃん……悲しむよな……


マオは石化したソイルをせめて家に帰そうと持ち上げる。

石化のせいか、いつも以上に重たく感じる。

引き摺ってでも一緒に家に帰ろうと、マオはソイルを担ぐ。


数メートル進むと目の前に石板が浮かび上がった。

石板は光り輝き、ステータスを刻み出す。


――――――――――

Lv. #N/A


名前:マオ・ノクス

種族:!@#?


HP:#N/A

MP:#N/A


筋力(STR):#N/A

耐久(VIT):#N/A

敏捷(AGI):#N/A

器用(DEX):#N/A

知力(INT):#N/A

運(LUK):#N/A


スキル:異名コレクター

異名:|Last Bastionラスト・バスティオン


使命:勇者殺し

――――――――――


マオは石板に映る自信のステータスを眺める。


なんだよ……

また、エラーかよ…………

……!?……

|Last Bastionラスト・バスティオン……

"異名"が……

父ちゃんの……父ちゃんの"異名"だ……

最後に俺に託してくれたんだ……


ソイルの最後の言葉を思い出す。


——『いつでも俺はお前の味方だ……』


ありがとう、父ちゃん……

スイルは、絶対取り返す。

父ちゃんの仇も絶対取るから……


マオは石板に記された使命を見つめる。


——"使命:勇者殺し"


これが俺の使命だ…………



———


「母ちゃん……た、ただいま……」


「マオ!おかえ……

ど、どうしたの……マオ……?」


アクアの目から涙が一筋流れる。

何かを悟ったようにマオに問う。


「スイルは……?

その傷は……なに……?」


「母ちゃん……

ごめん……俺……なにもできなかった……

父ちゃんもスイルも守れなかった……」


マオは石化したソイルを担ぎ家に入る。

アクアの目は、大量の涙で溢れていた。


使命の儀で勇者ルクスが現れたこと。

スイルは攫われ、ソイルは勇者ルクスによって石化されたこと。

全てを話した。


「マオ……!!

あなただけでも無事で良かった……」


「でも、スイルが……!

父ちゃんが……!!

俺が帰ってきたって……

俺はみんなと違って血が繋がってな……」


悔しさと絶望感からマオは涙を堪えきれなかった。

アクアはマオの言葉を遮り抱きしめる。


「本当に良かった……!

家族に血の繋がりや定義なんていらないわ……

マオが母ちゃんと呼んでくれる……

それが、私があなたの母である証なの。

それでいいの……」


「母ちゃん……」


マオの視界はぼやけ、涙が充填される。

しかし、涙は流さまいと堪える。

マオには家族を守るため強くならないといけない。

もう、アクアには涙を見せない……

今できる精一杯の表現だった。


「母ちゃん……

俺、スイルを助けに行く!

そんで、父ちゃんの仇も取る。」


「マオ…………私も行くわ!!

家でじっとなんかしていられないわ!」


「ダメだ!

母ちゃんは(うち)にいてくれ!」


マオはアクアの肩に左手を添え、右手の親指をたかだかと空へ向ける。


「絶対に生きて帰るから……

絶対に大丈夫!!」


これが今できる精一杯の"約束"である。

アクアはマオの顔を見て、笑みをこぼす。


「ふふっ……

まるで、ソイルみたい……」


マオはアクアを説得した後、家の中で支度をする。

スイルを助け、ソイルの無念を晴らす長い旅の準備である。


「よしっ!これくらいでいいよな!」


「マオ!"これ"を持っていきなさい!」


アクアの手にはボロボロに汚れたカーキ色の布、その上に丸められ麻紐で縛られた紙があった。


「なに?この布?」


マオは紙と布を受け取り、布を広げてみる。

ところどころ蜂の巣のように開いた穴、一部分が焦げたように黒ずんでいる。


「これはね、私がソイルために縫って作ってあげた"マント"なの……」


「へぇー!そうなんだ!

でも、なんでこんなにボロボロなの?」


「勇者との冒険でボロボロになっちゃったみたい。

初めはソイルの膝くらいの長さだったのに

帰ってきた時には、腰くらいまで短くなっていたの!

あの人ったら、どんな魔物と戦う時も肌身離さず付けていたらしいの……」


アクアは石化したソイルの頬を撫でる。

その表情は笑みを浮かべ幸せが溢れていた。


「すごく大変な冒険だったんだね……」


マオはマントを見つめる。

ソイルへの尊敬と冒険への不安が同時に迫る。


俺は父ちゃんみたいになれるのかな……


マオはマントを大きく広げ自身の背面に回す。

首元で留め具を閉める。

その瞬間、心地よい温かさに包まれた気がした。

それはまるで、アクアに抱きしめられた時に感じる温かさであった。


「ふふっ!

ちょうどいい長さだね!

これはお母さんからのお守りだよ!」


「母ちゃん……!

ありがとう!!絶対にスイルを連れて帰ってくるからね!!」


「うん!待ってる!

お父さんと一緒にね!」


マオは勢いよく家の扉を開ける。

ここから一歩踏み出すと険しく長い冒険が始まる。


大丈夫……!

俺なら大丈夫だ!

なんて言ったって俺は1人じゃないから!


マオは心臓に手を当て、マントを大きくなびかせた。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい!!」


———

【あとがき】


本作を手に取っていただき、本当にありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけたら、⭐︎やフォロー、感想をいただけるととても励みになります。

これからも物語を大切に紡いでいきます。

応援よろしくお願いします。

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