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第49話「勇者暗殺兵器」

「ここは……」


 マオの視界には、見覚えのない真っ白い天井。

 背面にはふかふかなベッドの感触。

 一旦情報を整理するために、記憶を遡るマオ。

 

 さっきまで、ドラゴンを討伐して『カレッジストーン』を手に入れて……


 そして、肝心な記憶を思い出す。


 ——スイル⁉︎勇者は⁉︎


 マオは、身体に「起きろ。」と指令をかけるが反応なし。

 脳からの指令がプツリと切れる感覚。

 首から下の身体が眠っているように動かない。


コンコン……


「マオさん、入りますねぇ……」


 扉のノック音と聞き慣れた声。

 この後輩感漂う敬語は、間違いなくスカバの声であった。


「失礼しまぁす……」


 扉を開けてスカバの姿が見える。

 その手にはおぼん。

 水と果物が乗っていることから、マオの看病をしにきたのだろう。

 つまり、ここは『安全な場所』で間違い無い。


「マオさん、お水置いておきますね」


「ああ……ありがとう……」


「いいんですよ、マオさんが無事目覚めるのを……って、喋ったァァァァァ!!」


 身体の感覚が無いため、耳を塞ぐこともできないマオは、もろに全ヘルツを鼓膜が捉え「キーン」と言う音がこびりつく。

 

ドタドタ……


 部屋の外から聞こえる足音。

 音が近づくや否や、部屋の扉が勢いよく開く。


「おい!どうしたんだ?そんなでっけぇー声出して!!」


「じ、事件なのだ⁉︎」


「マ、マオさんが、目覚めたんです!!」


 駆けつけたのは、カフラとシーカ。

 『ヴァヴェルの丘』の洞窟からここまでに何があったのかは分からないが、2人とも服や身体が綺麗に整えられている。

 何事もなかったと考えるのがいいのか、頭が混乱する。

 

「おお!目覚めたか!マオ!!なかなか起きねぇーから、てっきり死んだかと思ったぜ!!」


「カフラくん、不謹慎なことを言うじゃ無いのだ」

 

 カフラとシーカのいつも通りのやり取り。

 2人の安否が分かっただけでも少し気持ちが落ち着く。


「2人とも無事で良かったよ……

ここは、どこなの?」


「ここは、『ワルシャワ』だぜ!」


「厳密に言うと、『ワルシャワ』にある『イーグルシールド』の拠点なのだ」


 『イーグルシールド』の拠点?

 『ワルシャワ』にそんな感じの所があったか頭を回す。

 結果、一つだけ思い当たる建造物が出てきた。

 スカバと初めてあった場所——


「つまり、あのでっかい城の中ってこと?」

 

「あぁ!そうだぜ!スウォンがここを貸してくれたんだ!!」


 つまり、スウォンも無事。

 勇者と戦闘後、気絶したマオを連れて『ワルシャワ』まで帰ってきたのかと想像する。

 

 しかし、ここで一つ疑問が浮上する。


 『最強』と称されている勇者がそう易々と帰してくれるのか。

 正直、カフラやシーカではとても対抗できるとは思えない。

 ましてや、カフラはMP切れだったのだ。

 どうやって、無事に『ワルシャワ』まで帰ってきたのか。


「それよりさ、マオ。

お前、勇者とどんな関係なんだ?」


「そうなのだ、あの時のマオは怖かったのだ」


「それは……」


 マオは勇者との関係を話すべきか迷っていた。

 なぜなら、この復讐の旅にカフラやシーカを巻き込んでも良いのか。

 そう、考えていたからだ。


「もしかして、勇者の隣にいた少女が関係しているのだ?」


 さすが名探偵としか言いようがないほどに、核心へと迫るシーカ。

 マオは隠し切れない図星の表情を露呈してしまう。


「図星なのだ……」


 名探偵に隠し事は、通用しないことを悟りマオは自身と勇者との関係を正直に話すことにした。

 

「個人的な復讐に巻き込みたくなくて言わなかったんだけど……

実は——」


 マオは父が魔王を倒した勇者パーティーの1人であったこと。

 使命の儀の時に、勇者の手によって父を石化され殺されたこと。

 そして、妹スイルが攫われたことを赤裸々に話した。

 

「そうだったのだ……マオも父を……」


 自身と同じ境遇で同情しているのか、シーカの目が少し潤っている。

 シーカの父ロルドも勇者ルクスの手によって殺された。

 この事は、ノルディの異名『All Taker(オール・テイカー)』を受け継いだ時に流れ込んできた記憶からマオだけが知った真実だ。


 この事を、シーカに話すべきなのかまだ結論が出ない。

 勇者への復讐心によってシーカを失うのが怖いからだ。


「マオの親父があの魔王を倒した勇者パーティの1人『ソイル・エルド』なんてビックリしたぜ!

なんで、早く言ってくれなかったんだよ!!」


「隠しててごめんね……」


「だから、勇者と一緒にいた、マオの妹もめちゃくちゃ強かったのか⁉︎」


「スイルがめちゃくちゃ強い……?

も、もしかしてカフラ、スイルと戦ったの⁉︎」


「いや、俺はただ見てただけだ!

あのミーシャってやつが戦ってたんだが、すごい戦いだったぜ……」


「そ、それどういう事……?」


「勇者に殴り飛ばされてマオが気絶したあとの話なんだが——」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


——マオが気絶した直後。


「おい!マオ!大丈夫か⁉︎」


「おそらく、無敵時間が終わってしまったのだ……」


 勇者に殴り飛ばされたマオが目の前で気絶している。

 なぜ、マオとミーシャが勇者に襲いかかったのかも分からない。


 初めて生で見る勇者だが、あの笑い方や話かたは思っていたよりも気分が悪い印象だ。

 とても、魔王から世界を救った救世主には見えない。


「なんで、マオとミーシャは勇者に攻撃しよるんや?

勇者って魔王から世界を救った救世主なんや無いんか?」


「俺もなんでかは分からないが……

マオがあんなに怒るのには、訳があると思うんだ!!」


「そうなんか?

まぁ、初めて勇者見たけどごっつい悪そうな顔しとるし、ほんまは悪いやつなんかも知れへんな‼︎」


 突然、怒りを表しにしたマオの理由は分からないが、とりあえず勇者が悪そうなのは分かる。

 

「はっはっは!!全然成長してねぇーな!!

マオ・ノクス!!その程度じゃ俺のレベリングになんねぇーよ!!」


 マオに対して嘲笑う勇者。

 この2人、過去に何かあったのは間違いないだろう。

 それと、勇者の口から出た『レベリング』という謎の言葉は一体なんなのかカフラには見当もつかなかった。


 耳を逆撫でするような奇妙な笑い声を発する勇者。

 その後ろになにやら動く影。

 生まれつき動体視力のいいカフラにはその影の正体が分かった。


 ——影の正体はミーシャ。

 なにやら、勇者の背後で腕をかざしている。

 

 カフラには分からなかった。

 なぜ、ミーシャの腕がまるで大砲のような円筒型に変形しているのかを。

 そして、なぜミーシャが勇者を殺そうとしているのかを……

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