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第48話「再会」

 スカバは滑空するようにゆっくりと地面に着地する。

 

「なんなのだ?その鉱石?みたいなのは」


 スカバが持っている鉱石のようなものは、黄色く光り輝いていた。

 宝箱に入っていたとのことで、レアなもので間違いないだろう。


「なんかの鉱石かな……?」


「お、おい……それって……」


 カフラが珍しく目をまん丸にして驚いている。

 鍛冶屋の息子ということで鉱石には詳しいのか、確実にレア鉱石で間違いなさそうだ。


「カフラ、この鉱石知ってるの?」


「知ってるも何も……ちょ、ちょっと見ていいか‼︎」


 カフラはスカバの持つ鉱石へと歩み寄る。

 MP切れで動けなかったのが嘘のような身のこなし。


 ものすごくレアな鉱石なのか……?

 まぁ、あのドラゴンを倒したんだ、レアなアイテム一つくらいないと流石にキレるぞ。


「あったぜ……親父……」


「なんや?カフラ、もったいぶらんとええ加減教えてや」


「これは……『カレッジストーン』だ。間違いねぇ!!」


「『カレッジストーン』って、もしかして……」


「あぁ、『カフラマン伝説』に出てくる鉱石。

俺が探していた伝説の鉱石だ!!」


「あの噂本当だったんですね⁉︎」


「こ、これ、もらってもいいか⁉︎」


 カフラの視線はスウォンへと向かっている。

 ここ、ヴァヴェルの丘は『イーグルシールド』が運営しているため、洞窟内のアイテムも基本的には『イーグルシールド』のモノになる。

 カフラは意外にも律儀に権利者へ、交渉している。


「まぁ、一応ウチら『イーグルシールド』の土地やけどええよ、持っていき。

ドラゴン討伐に、えらい助けてもらったからな。」


「やったぜ!!ありがとな!!」


 カフラはまるで、子供のような笑顔を浮かべ『カレッジストーン』を眺めている。

 

「ドラゴンも討伐したことやし、さっさと『ワルシャワ』へ帰るで!」


「そうですね!帰りましょう!」


「ミーシャ?立てる?」


「あぁ、ありがとう」


 クールダウン中のミーシャにマオは肩を貸す。

 ミーシャの身体は、人肌の温もりはなく冷徹な物体の冷たさを纏っている。

 やっぱり、人間ではないんだよな。


「マオ!無敵時間は大丈夫なのか?」


「本当だ!そう言えば忘れてた!えぇーと、あと——」


「はっはっは!!ドラゴンの反応が無くなったと思ったらなんなんだよこれはよぉ!!」


 突如、鼓膜を逆撫でする笑い声。

 それは、一方通行の洞窟の出入り口から聞こえる。


「誰だ?アイツ?」


「お前は……」


「おいマオ、どうしたのだ……?」


 権威を見せびらかすように光り輝く金ピカの甲冑に片目を隠すように伸びる髪。

 その髪色はゲスさとは真逆の純白。

 マオには分かる、いや忘れてはいけない人物がそこには立っていた。


 ——勇者ルクスだ。


 そして、その横に立っているのはマオと同じ歳くらい少女。


「スイル……」


 そう、マオの妹であるスイルだ。

 母、アクア譲りの綺麗な青髪に父、ソイルと同じ茶色い目。

 間違いない、いや、兄であるマオが間違えるはずない。


「スイル?誰だそれ?」


「おい、マオ?知っているのだ?」


「マオさん……?」


 マオの心臓はドクドクと脈打つように、身体中を揺らしている。

 初めて勇者と対峙した時に感じた、とてつもない身体能力の向上、自身の身体なのかを疑う異様な感覚。


「おい!マオ!!」


 カフラの声が遠く後方から聞こえる。

 それもそのはず、マオの身体は勇者へと向かっている。


 無敵時間は残り1分。

 その時間が経過するとたちまち瀕死状態へと陥る。


 しかし、そんなのはどうでもいい。

 目の前に父の仇である勇者ルクスと取り返すべき妹がいるのだから。


「ミーシャも!なんや、あんたら急に!!」


 スウォンの声から聞こえるミーシャの名前。

 マオはふと、横を見るとミーシャの姿。

 その目は、感情がなくただ淡々と獲物を狙うハンターのような眼差し。

 普段の優しく柔らかい視線がまるで嘘のよう。


「おいおい!ソイルのとこのガキじゃねぇーか!久しぶりだなぁ!!」


「スイルを返せぇぇ!!」


 マオは渾身の一撃をお見舞いするため、拳を大きく引く。

 瞬き一つで、接近するルクス。

 父ちゃんの仇を握りしめた拳からは、血がぼたぼたと垂れている。

 

 人生の中でトップスピードのマオだが、変わらず隣にはミーシャ。

 隣のミーシャは何やら無機質な剣を携えている。


「はっはっは‼︎なんだよ2人してぇ‼︎俺ってば、モテモテかよぉ‼︎‼︎」


 勇者ルクスの不敵な顔がもう、目の前に迫る。

 最大威力のパンチにドンピシャな射程距離。

 思いっきり溜めた拳を、ルクスの顔面へと発射する。


「【|我が身は堅城、万の刃も届かず《アブソリュート・バスティオン》】——」


ガンッ‼︎‼︎


「くっそ!!」


「はっはっは‼︎効かねぇーよ‼︎」


 目の前に広がる、緑色のバリア。

 そのバリアは、勇者を覆うように生成されている。


 このバリアどこかで……。

 

「おいおい!ガラ空きだぜぇ‼︎

盾にして矛と成すパラドックス・ストライク】!!」


 勇者ルクスのスキル詠唱と共に、身体を覆っていた緑のバリアが手に収束する。


「その、スキルは——」


バコン‼︎‼︎


 マオの顔面を捉える勇者の拳。

 バリアに覆われた拳は、鉄なんて強度ではなかった。

 幸い無敵時間のマオにはダメージはないが、運動エネルギーまでは無効化されず身体は勢いよく吹き飛ぶ。

 遠くなる勇者の姿。

 勇者ルクスの手を覆う、似合わない緑色のバリアからマオは理解する。


 ——勇者ルクスはソイルのスキルを使用している。

 

 何故なのかは分からないが、あのバリアは父ソイルのモノで間違いない。

 そんなことを考えているうちに、背面に衝撃を感じる。

 つまり、洞窟の壁まで身体が飛ばされたのだ。


「おい!マオ‼︎大丈夫か!?」


 駆け寄るカフラ。

 マオの吹き飛び様に心配そうな目を浮かべているカフラだが、心配無用。

 何故ならば、


「大丈夫!無敵状態だ……か——」


 突如、視界が真っ暗になる。

 身体に力が入らない。

 もはや、手と足の感覚も無くなっていく。

 マオは自身の身体がゆえに理解する。

 

 ——無敵時間が切れた。


 つまり、マオの身体は瀕死状態へと陥る。


 やっと、スイルに逢えたのに——


 その考えが最後、マオの意識はプツリと切れた。

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