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第47話「夢は現実に」

「僕……やります……」


 ようやく決心したスカバ。

 男の決意を帯びた真っ直ぐな目線とは、反対に大量の爆弾を絡めた糸を握りしめる手は震えている。

 蒼炎に燃え盛るドラゴンの口へ、爆弾を運ぶのだ、身体が震え上がるのも無理はない。


「スカバ……お前ならいける……行ってこい!」

 

 カフラの鼓舞。

 MPが底をつき、ふらつく手でスカバ背中を叩く。

 撫でたに近い威力であったがその手には、確かな希望を託しているようであった。


「カフラさん……はい!行きます!」


 カフラの鼓舞が決定打になったのか、スカバはキリッとドラゴンの方向を見る。

 完全に腹を括ったようだ。


「——誰だっていつかは飛べるんだ自由の空を。

翼なんていらない、だって空はみんなのものだから」

 

「ふぅー……」


 スウォンのライブが鼓膜を揺らす。

 それを、捉えるとスカバは深呼吸をして走り出す。

 目指すはドラゴンの口。


「グルゥウアアアア‼︎‼︎」


 両目を潰され、のたうち回るドラゴンだが口の高さは今だ手の届かない位置にある。

 まるで聳え立つ山だ。

 山の頂上を目指すのにジャンプという選択肢は思い浮かばないだろう。

 もう、空を飛ぶしか無事に登頂する案が思い浮かばない。


 スウォンのバフによって、急激にドラゴンとの距離が埋まるスカバ。

 どうやって、大量の爆弾を口に入れ込むのか……。


 もしかして、登るつもりなのか?

 あの燃え盛る蒼炎の身体をか……?

 まるで無理だし、そもそも爆弾に火がついているんだ。

 登り切る前に、爆発するのがオチだろう。


「——連れて行くよ、自由な空へ。

私たちは飛べるんだよ!どこまでも‼︎」


 スウォンの歌はクライマックスを迎える。


「いける……いける、いける‼︎

【操糸師スキルThread.1(スレッド・ワン):

|縫いし糸、空すら渡る翼となる《ドリーム・リアライズ》】……」


 スカバがスキルを詠唱する。

 それに反応するように、スカバの足元が光り輝く。

 足元から放たれる光源は革で仕立てた靴だ。

 

「ま、まじか……」


 マオは、目の前で起こる奇跡に目を疑う。

 スカバの足と地面の間に、隙間が生まれる。

 たった今スカバは、


「浮いている……いや、飛んでいる‼︎」


 みるみる、スカバはドラゴンを見下ろす高さまで登る。

 まるで、透明な階段を登っているように。

 

「飛んでるよ!僕、今飛んでます‼︎」


 「まるで夢のよう。」と言わんばかりに自身の身体を見渡すスカバ。

 とうとうドラゴンの頭上まで到着する。

 爆弾から伸びる導火線の火はもう間も無く爆発させようと近づいている。

 しかし、一つ問題が発生する。


「こ、これどうやって口に入れるんですか……‼︎」

 

 そう、ドラゴンはのたうち回り、一向に口を開こうとしない。

 いざ開いたとしても、それは、灼熱のブレスかマグマボールが発射される時であろう。


「おい!早くしねぇーと爆発するぞ‼︎」


 カフラの忠告。

 もういつ爆発してもおかしく無いほどに導火線の火は迫っている。

 

 マオの無敵時間は残り2分。

 仕方ない、もう一か八か行くしか無い。

  

 マオはスウォンの側を離れドラゴン目掛け走り出す。

 目指す場所はもちろん口。


 ……もう、自力でこじ開けるしか無い。


 ドラゴンの口へ到着するや否や、身体をつっかえ棒みたく使い、ドラゴンの口を強引に開く。

 かなり弱っているのか、ドラゴンの口はすんなりと開いた。


「スカバ!今だ!早く爆弾を——」


 その時だった、ドラゴンが容易く口を開いてくれた意図を理解する。

 そう、口からマグマボールが放たれたのだ。

 これは、一か八かで突撃したマオにとっては、最悪の結果であった。


「——自由な空……ちょ、ちょっ!?」


 マグマボールは運命のイタズラか護衛のマオがいなくなった、スウォンへと直行する。


 やばい、スウォンが……!

 くそっ!やらかした‼︎


「スウォン‼︎逃げて‼︎」


 ドラゴンの狙ってない流れ弾として直行したマグマボールはスウォンの目の前で弾け飛ぶ。

 無謀にも手でガード姿勢を取っているスウォンだが、どうやら無事。

 

 誰かが助けたのか……?

 ミーシャ……はクールダウン中。

 カフラもMP切れで動けていない。

 それじゃあ誰が……


「熱い、熱いのだ‼︎」


 弾けたマグマボールの隙間から、はみ出るもふもふの耳。

 マグマボールに隠れるほど小さな身体。

 スウォンを守ったのはまさかの、シーカだった。

 

「シーカ⁉︎」


 シーカの身体はなんともない。

 一体どうやってあのマグマボールを防いだのか。

 マグマボールが地面にボトンッと落下する。

 地面は溶け出し、なにやら円状に燃えだす。

 露わになった物体はそう、シーカが背負っていたスカバ仕立ての革の盾だ。

 スカバお手製の革の盾がスウォンそして、シーカの命を守ったのだ。


「こっちは大丈夫なのだ‼︎スカバ行くのだぁー‼︎」


「いけぇー‼︎スカバ‼︎」


「みなさん……ありがとうございます‼︎

えぇーい‼︎」


 スカバは糸で絡めた大量の爆弾を大きく開いたドラゴンの口へと投げ込む。

 マオがこじ開けているのもそうだが、マグマボールを発射したことにより爆弾はすんなりと口を通る。


「離れてぇ‼︎‼︎」


 スカバに退避の指示を出しマオは、ドラゴンの口を全身を使い閉じる。


ボンッ……ボン、ボン!


 1発の爆発音をはじめに次々と爆発音が鳴り響く。

 

ボン‼︎ボォォォン‼︎

 

 なんとか耐えていたドラゴンの身体も、次第に膨らみ始め、とうとう爆散する。

 血やら内臓やら、ドラゴンたらしめるブツが洞窟内に飛び散る。

 それと同時に爆風に押され、身体は洞窟の壁へと押し付けられる。

 

ボンッ……

 

 最後の爆発音の後、洞窟内は静まり返る。

 爆弾により砂煙が舞い視界が見えない。

 ドラゴンの身体を覆っていた蒼炎の光すら見えない。

 つまり、討伐完了……ってこと?


「みんなぁぁー!!おぉーい!!」


 砂煙は徐々に収まり、視界がクリアになって行く。

 マオは辺りを見渡し仲間の無事を確認する。

 まず発見したのは、モフモフな物体。

 間違いない、シーカだ。


「無事なのだぁ……」


 その近くには、ドラゴンの戦闘により濁った白いワンピース。


「ウチも無事やでぇ……」


 コテコテの関西弁で仰向けになりながらも手はグッジョブと安否を知らせてくれている。

 スウォンも無事。


「僕たちも無事だよ」


「へへ、なんとかな……」


 どこも汚れた気配のないイケメンに、支えられ立っている疲れ切った相棒。

 カフラとミーシャも無事のようだ。

 マオの次に爆心地へ近かった、スカバの姿が見えない。


「み、皆さぁぁん!!ここでぇぇす!!」


 スカバの声、上の方から聞こえる。

 声の方向に目をやると、塀のように突き出ている洞窟の壁に立っている。

 その手にはなにやら、黄色く光る物体。


「これ‼︎宝箱に入ってましたぁ‼︎」

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