第46話「あなただけのファイトソング」
「なぁ!どないすんねん!」
「とりあえず今は、ミーシャとカフラを守らないとっ!!」
「そんなん言うたかて、ドラゴンも倒さなあかんやろ!?」
ここから離れれば、動けないミーシャとスキルが使えないカフラに流れ弾が直撃するかもしれない。
でも、ずっとこのままだと、マオの無敵時間もタイムオーバー。
「おぉーい!戻ったのだぁー!」
突如、聞こえるシーカの声。
ドラゴンを倒す策とやらを、持って来てくれたようだ。
声の方に振り返ると、スカバお手製の盾を背負うなんの変哲もないシーカ。
そして、その後ろには、なにやら大量の球体を、糸に絡めてスキルで浮かしながら運ぶスカバ。
一体何を持って帰って来たのか。
「すみません!お待たせいたしました……って、なんですか!?あのドラゴン!!」
「第3形態ってやつ……?」
「青く燃えてますよ!?しかもめっちゃ暑いし!」
「そうなんよ!
ブレスなんか無茶苦茶熱いでホンマ!」
「よく持ち堪えてくれたのだ!!
これがあればドラゴンなんか木っ端微塵なのだ」
これとシーカが指差すのはスカバが持つ大量の球体。
木っ端微塵……?
とんでもない兵器を持って来たのか?
「何をこんなに集めて来たの……?」
「あの感圧板の謎解きの部屋に埋まっていた爆弾を掘り起こして来たんです!!」
「ふふん!ズバリッ!爆弾でドカンとドラゴン討伐なのだ!!」
仁王立ちで堂々と、作戦名を発表するシーカ。
スカバの持つ球体をよく見ると、一つ一つに導火線らしき紐が伸びている。
「でも、あのドラゴンの肌はめちゃくちゃ硬いんだよ?」
「肌はな……、口から身体の中に入れてしまえば中からドカンなのだ!!」
シーカの割にはかなりアバウトな作戦だ。
続けて、作戦の詳細を語り始めるシーカ。
「マオの無敵時間の間に、カフラくんのスキルで足場を作って……って、カフラくん……どうしたのだ?」
「あぁ……ちょっとMP使いすぎちまった……」
「そ、そうなのか!だったらプランBなのだ!
マオの無敵時間の間に、ミーシャのスキルで接近して……って、ミーシャもどうしたのだ!?」
「ごっつい暑いやつを防いでくれて、オーバーヒートってやつや!」
「そ、そうなのか……どうしたものか……」
シーカはパイプを咥え、シャボン玉をポワポワと吹かす。
おそらく、第3形態までは想定外だったのだろう。
あの大量の爆弾を無事にドラゴンまで持っていける機動力が足りない。
「スカバが行けばいいんじゃねぇーか……?」
「ぼ、僕ですか!?無理ですよ!あんなドラゴンに!!」
「両翼騎士団ってやつになるんだろ……?」
「そうですけど……」
「大丈夫だ!お前ならやれるぜ?スカバ」
「でも……」
ジュゥゥゥゥ……
何か燃えるような音が聞こえる。
焦げ臭い匂いが立ち込める。
近くで何か燃えているのか……?
服?マント?
マオは自身の服やマントを見るが、燃えてはいない。
他のみんなの服を確認するが、誰も燃えてはいないようだ。
ドラゴンにより、この部屋自体の温度は灼熱と化している。
燃えてもおかしくはないが……。
そこでふと、スカバに目をやる。
「や、やばいよ!!スカバ!
爆弾!爆弾が燃えてる!!」
「え……うわぁぁぁぉ!!どうすればいいんですか!?これ!!」
どうやら、焦げ臭い原因は爆弾についている導火線の点火であった。
みるみると導火線を伝う火。
ここで、この数の爆弾が爆発したとなると、マオたちの死は確定。
つまり、もうドラゴンの口へ爆弾を突っ込む以外手はない。
「ここで爆発してもたら全員死んでまうで!
スカバ、あんたしかおらんのや!あんたやったらできる!」
「スウォン様……」
「大丈夫や!ウチも着いとる!」
スウォンの手には、ひまわり型のマイク。
どうやら、再度スキルを使うようだ。
「でも、あのドラゴンの口に入れるんですよね……どうやってあんな高いところまで……」
巨大なドラゴン。
顔を拝むだけでも見上げる首が痛い。
「両翼騎士団になるんやろ?
ほんなら、飛んでいったらええねん!!」
「飛んでいく!?僕に翼はないですよ!!」
ジュゥゥゥゥ……
導火線を燃やす火の音。
残り半分で爆弾が爆発する。
「スカバ!自分を信じろ!!
翼なんていらない、お前にはそれがあるじゃねぇか」
カフラが指差すそれとは、スカバの靴であった。
なんの変哲もない革の靴。
おそらく、スカバ自身で作ったものだろう。
「もう、時間ないで!!
【アイドルスキルAct.1:
|風のまにまに歌い舞えば、戦場は光を灯す《サンライズ・ステージ》】!」
スウォンのスキル詠唱と共に、どこからともなく鳴り響くミュージック。
カフラが作り上げたステージまで走り、マイクを口元まで上げる。
「スカバ!!あんたのためのライブや!
ほんなら、いくでぇ!!
——まだ迷っているの?自分の存在〜」
スカバのための貸切ライブが開催される。
全バフをスカバに集中させているのか、マオの身体に変化はない。
「スカバ……!」
マオはスカバの肩に手を置く。
身体は熱く熱を帯びている。
スウォンのスキルによるバフからか、スカバの身体には血管が浮き出ており、少しパンプアップをしている。
「マオさん……。
僕……やります!」
スカバの顔つきが変わる。
「もう、やるしかない。」そんな、決意の眼差しを感じる。
爆弾を絡めている糸をギュッと握り締め、ドラゴン目掛けて走り出す。
両目を潰され地面をのたうち回るドラゴン。
硬質な肌には爆弾は効かないだろう。
ましてや、蒼炎の炎に包まれているんだ。
爆弾が焼けこげ暴発するだろう。
そうなれば、スカバの命はない。
爆弾から伸びる導火線には火がついてしまっている。
チャンスは一度だけ。
もうやるしかない……。




