第45話「相棒」
「熱っ!!」
とうとう放射されたブレス攻撃。
第二形態の時とは違って今回のブレスは青く熱い。
数十メートル離れた、マオでさえとてつもない熱波を感じる。
こんなのどうやって防げば……。
走っているミーシャの先には、スウォンとカフラ。
なにやら、カフラが「こっちにこい!」と手招きしている。
カフラに何か、この蒼炎のブレスを防ぐ策があるのか……?
ドラゴンによって洞窟の壁へ身体が埋まり込んでしまったマオ。
必死に、身体を動かし脱出を試みる。
くっそ!抜けない!!
ミーシャがカフラとスウォンに合流するのが見える。
そのすぐ後ろを津波の如く、襲うブレス。
たとえここを抜け出せたとしても、間に合わない。
「どうするんだ?カフラ……」と言わんばかりに目線を送るマオ。
不意にこちらを見るカフラと目が合う。
その表情からは少しの狼狽も感じない、ただ真っ直ぐな眼差しであった。
「【錬成術Formula.5:
|姿は変われど、理は変わらず《メタモルフォーゼ》】!!!!」
カフラは豪快にスキル詠唱をすると、地面に力強く両手をつく。
背後には、スウォンを庇うように前に立つミーシャ。
カフラのスキルによって地面から、辛うじて防ぐことのできるほどの小規模の壁が生成される。
蒼炎のブレスを正面から受けるには、かなり心許ない。
ブレスは容赦なく壁を焼き尽くす。
焼きタダレ落ちる壁。
しかし、焼き落ちたそばから補強するように壁が生成される。
「おい!!!マオォォ!!!
俺のありったけだ!!頼んだぜ!!」
カフラから俺宛のメッセージ。
その声色、真っ直ぐな眼差しからマオは理解する。
カフラは全MPを使い、ドラゴンのブレスを防ぐつもりだ。
つまり、マオがすべき行動はブレスそのものの阻止。
しかし、壁に埋まり身動きが取れないマオ。
早く脱出しないとカフラがもたない。
「くそっ!抜けろぉォォ!」
今できる最大限の力を全身に込める。
少しずつ、壁にヒビが入っていく。
あと少しっ……!
カフラの生成した壁が少しづつ小さくなるのが分かる。
それでも、容赦なくブレスを放射し続けるドラゴン。
このままだと間違いなく、カフラのMPが尽き3人もろとも灰となるだろう。
——そんなのは嫌だ!
やっとできた友達なんだ!
埋まっていた身体に少しの余白が生まれる。
その余白を最大限使い、壁を突き出す。
よし!抜けた!
マオは、壁にめり込んだ身体の脱出に成功するや否や、壁を蹴り飛ばしドラゴンに接近する。
拳を強く握り、腕を大きく引く。
スウォンのバフがない今、マオの拳は少し頼りない強度。
しかし、今はこれしかない。
ドラゴンの横顔がパンチの射程範囲内に入る。
大きく引いていた拳を放つ。
狙い場所はもうここしかないだろう。
そう、ドラゴンの眼だ。
「グルゥウアアアア!!!」
拳がドラゴンの瞳にクリーンヒット。
少し気が引けるが、今はこれしかないのだ。
のたうち回るドラゴン。
ブレスは止み、カフラの壁はかなり小さくなったが人1人分の形は保っており、3人は無事。
「大丈夫?カフラ!!」
地面に手をつき、力無い笑みをこぼすカフラに駆け寄るマオ。
どうやら、かなりMPを消耗したようだ。
「あぁ……!大丈夫だ!
ナイスだぜ、相棒……!」
——相棒……。
初めてマオの鼓膜を揺らす音。
身体中にジワッと広がる熱。
耳や頬がポワッと赤く火照る。
「そっちこそ……」
続けて相棒と言いたかったが、まだマオには早すぎたようだ。
「おおきにな!あんたら!
ほんでどうする?多分話し合いもでけへんやろ?あいつ」
「話し合いをしようとしてるのは、あんただけやで?」と言うツッコミは思いついたが、今はそれどころではない。
「もう、倒すしかなさそうだね……」
「すまん、俺はちょっとMPが足んねえ……」
あの蒼炎のブレスを正面から防ぎ切ったんだ。
MPが切れるのも無理はない。
「カフラはちょっと休んでて!
あとは、俺t——」
「——グルゥウアアアア!!!」
「おい!なんかこっちにきよるで!!」
ドラゴンの咆哮。
そして、ブレスやらマグマボールやら尻尾攻撃やら出来うる技を乱雑に放つドラゴン。
それもそのはず、ミーシャとマオによってドラゴンは両目が見えないのだ。
生存本能は数打ちゃ当たる状態に切り替わったのだろう。
その、流れ弾がマオたちを襲ってきていた。
「【ランサースキルspear.3:
|この槍、風となりすべてを拒む《エアリアル・ガード》】」
反応できたのはミーシャ。
スウォンが警告した時にはもう、マオたちの前に立っていた。
スキルで槍を高速で回転させ風を起こし防いでくれたのだが、それをするとミーシャは、
「ちょっと、ごめんね……」
そう、オーバーヒートしてしまう。
おそらく、ドラゴンはあと1発パンチをお見舞いできれば討伐できるのだが、マオの単体のパンチではドラゴンの硬質な鱗に阻まれ、倒しきれない。
スウォンのバフが必須だ。
しかし、スウォンのスキルはステージ上にいなければ発動しない制限付き。
四方八方に攻撃を繰り出しているドラゴンの攻撃が、いつ直撃するかも分からない。
MP切れのカフラ、クールダウン中のミーシャでは、スウォンを守ることも不可能だろう。
この状況、どうやって倒せばいいんだ……?




