第44話「白熱するバトルのその先へ」
マオはドラゴン目掛けて走り出す。
隣にはミーシャ。
援護をしてくれることだったので、なんとも心強い。
マオは、このドラゴンとの戦闘で分かったことがある。
それは、ノルディから受け継いだ異名
"All Taker"は対ドラゴンの場合、全く意味をなさないことである。
おそらく、対人特化の異名なのだろう。
今発動している異名"|Last Bastion"からマオのスキルはフルオートで発動するようだ。
つまり、今のマオは10分間一切のダメージを受け付けないがスウォンのバフが無いと、まともにダメージを与えられないゾンビだ。
スウォンがやられたとなると途端に泥試合と化す。
「——誰かに決められた人生なんて必要ない。
私を縛るものなんて全て壊してやる」
鼓膜にスッと入り込んだスウォンの歌声は身体中を駆け巡る。
マオの筋肉繊維の一本一本がまるで踊るように軽やかに動く。
スウォンのカリスマ性から成せる技なのか。
「グルゥウアアアア!!」
洞窟内を響かす歌姫の音色。
ドラゴンは、どうしてもそっちに目を向けてしまう。
「おーい!こっちだドラゴン!!」
ドラゴンの前を走り回るマオ。
しかし、マオのカリスマ性では見向きもされない。
——くっそ!このままだと、スウォンにヘイトが集まってしまう。
「ミーシャ!!
俺をドラゴンの前まで飛ばせる?」
「分かった、任せて。じゃあ、いくよ。
【槍使いスキルSpear.3:
|この槍、風となりすべてを拒む《エアリアル・ガード》】」
ミーシャは槍を手に持つとブンブンと回転させる。
次第に残像が見えるほど回転速度が上がり、徐々に螺旋状の風が吹き荒れる。
「ありがとう!ミーシャ!!」
マオはミーシャの生み出した風に身を任せると、背中を押されるように飛び出す。
あまりの速さに、瞬き一つでドラゴンの顔が目の前に。
「こっちだ!ドラゴン!!」
マオは大きく拳を引き、慣性を乗せた一撃をドラゴンの眉間へ叩き込む。
「グルゥウアアアア!!」
スウォンに気を取られていたドラゴンにとっては不意打ちの一撃。
首は大きく跳ね上がり、地面に倒れ込む。
かなりの手応えを感じたのか、マオから笑みが溢れる。
「どうだ!!あの時はよくも踏み潰してくれたな!!その仕返しだ!!」
マオは初めてドラゴンと対峙した時を思い出す。
あの時はただ、踏み潰されまいと踏ん張り、手も足も出せなかった自分が、今はここまで善戦している。
これは俺の力じゃない。
——これが仲間ってやつか……。
マオは地面に着地すると、協力してくれたミーシャにグーを向ける。
「それはなんだい?」
「グータッチだよ!ナイス連携だったから!」
「こ、こうかな?」
ゆっくりとグーを差し出すミーシャに、力強く拳をぶつけるマオ。
カンッ!!
甲高い金属音。
ミーシャの拳はとても人間とは思えない強度をしている。
オーバーヒートやクールダウンといい、ミーシャは人間族ではないことは分かる。
——シーカみたいに人間族以外の種族なのか?
デーモンズクエストにメカ人間みたいな種族あったっけ……?
「おぉーい!あんたら!!!」
スウォンが何やらマオたちの方向に指を差している。
その顔は必死で何かを伝えようとしている。
ドラゴンに一撃をお見舞いしたことに対すること……ではなさそうだ。
「後ろ!!後ろ見てみいーー!!」
後ろを振り返るマオ。
そこには、さっきぶっ飛ばしたはずのドラゴンの姿。
スウォンのバフとミーシャのスキルによる、慣性。
そして、ありったけの力を振り絞った一撃でも倒せない。
「どんだけしぶといんだよ……」
そして、最悪な出来事がもう一つ。
第二形態で灼熱の炎に包まれたドラゴン。
しかし、今目の前にいるドラゴンの身体は蒼炎の炎に包まれている。
——つまり、第3形態……
いや、HP的に最終形態だろう。
灼熱よりも高温である蒼炎のドラゴン。
ただ、存在するだけで肌が焼けこげそうだ。
「グルゥウアアアアアアア!!!!!!」
咆哮一つで洞窟中の温度がグッと上昇する。
サウナなんて生温いものではない。
「ちょっと、私と相性悪いかもね……」
汗ひとつでていないミーシャだが、身体を囲むように陽炎が揺れている。
オーバーヒートとやらで行動不能になるのだけは避けたい。
「前戦は俺が引き受けr——」
ドゴンッ!!!
突如、右半身に走る衝撃。
視界の景色は高速で走り、気がつけば洞窟の壁に身体を強打する。
異名の効果で幸いダメージはないが、シラフの時に喰らっていたら即死だろう。
一瞬、捉えることができたのは青く燃えるドラゴンの尻尾。
おそらく、今のは尻尾を使った攻撃。
反応できないほど、格段に攻撃のスピードが上がっている。
ドラゴンは、大きく首を引いている。
これは、何度も見てきたブレス攻撃の予備動作。
しかし、攻撃の矛先はマオではなく、ステージで舞い踊る歌姫、スウォンに向いている。
——スウォンがやばい!!
マオは無敵の身体を使い、スウォンの盾になろうと身体を動かすがさっきの衝撃で身体が完全に洞窟の壁に埋まっている。
つまり、間に合わない。
「スウォン!!カフラ!!逃げてぇぇ!!」
逃げ場などないことは分かっているが、今は0.1%でも生存する行動を選んでしまう。
何かを察したのかスウォンの方へ駆け出しているミーシャ。
再度、スキルでブレス攻撃を防ぐつもりだろう。
しかし、最終形態になったドラゴンの攻撃は今までよりも比べ物にならないほど強力になっている。
それは、先ほどの尻尾の攻撃で思い知った。
正面から迎え撃つなんてのは自殺行為だ。
「ミーシャ!ダメ——」
ブゥォォォオオオオオオ!!!
とうとう放射されたブレス攻撃。
スウォンを無事守ることができるか……。




