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第43話「ドラゴン討伐は計画的に」

 ——痛みがない。

 プツリと電源が切れるように痛みを捉える神経が消えた。


 全身にマグマの塊を浴びたんだ。

 なのになんで、なんともないんだ?

 

「マオさん、その姿は……」


 スカバは目をまんまるにしてマオを見つめている。

 マグマに包まれて溶けていく人間を見て「その姿」なんて……こっちは溶けてるんだよ?

 感覚もなくて、もう身体がないんだぞ……って、


「俺、生きてる」


 マオは視認できる身体の部位から生存確認を図る。

 手、無事。

 下半身、無事。

 胴体はもちろん無事。

 見えてるってことは頭部も無事だよな。


 額にある硬い物体と白く燃えるように纏っているオーラ以外はいつもと変わらない身体。

 

「マオォォ!!大丈夫かぁぁぁ!!」


 遠くから聞こえる、カフラの声。


「大丈夫ぅーー!!」


 グッジョブのジェスチャーと共に、生存を伝える。

 

 額の硬いものはおそらくツノ。

 このツノが出たのは人生で一度だけ、アルビオンで炎の巨人と対峙した時。

 

「マオさん……白く燃えて……」


 スカバ曰く身体は白く燃えているらしいが、痛くも痒くもなんともない。

 むしろ、心地よい安心感さえ感じる。

 まるで、父ちゃんの優しさに包まれているよう。

 

 これらのことから、マオは確信した。

 たった今、異名"|Last Bastionラスト・バスティオン"が発動した。


「お前、その姿ってアルビオンの時の……」


 シーカとスウォンを担いだカフラが合流する。

 

「それ大丈夫なんか?マオくん!

身体めっちゃ燃えてんで!?」


「うん、なんともない!

HPが減ると一時的に無敵モードになれるんだ!」


「なんや、あんた!?

無敵モードって!最強やんか!」


「でも、その無敵モードは確か、発動してから10分間しかないのだ」


 シーカの言う通り、異名"|Last Bastionラスト・バスティオン"の無敵モードは10分間のみ。

 それが経過すると、途端に瀕死モードに陥る。

 つまり、


「10分以内にあのドラゴンをどうにかせんといけへんってことか!?」


「まぁ、そうなる……」


「グルゥウアアアア!!!」


 マオ達の作戦会議に待ちくたびれたのか、ドラゴンは咆哮で構ってくれと叫んでいる。

 

 ドラゴンの身体は灼熱に覆われており、おそらく第二形態といったところだろう。

 詳細な形態変化の条件は分からないが強烈なパンチをお見舞いしてから変化したので、よくあるHP何%以下が条件だろう。

 そうなれば、あと、1、2発強烈なのをぶちかませば、倒せるのだろうがドラゴンもバカではない。

 戦闘本能とやらで、簡単にはやられてくれないだろう。


「私に作戦があるのだ!

時間がないから説明は省くが、5分ほどあのドラゴンを足止めしてくれないか?」


 シーカは、なにやらドラゴンを倒せる策があるようだ。

 あの、名探偵だ。

 かなり勝機のある作戦なのだろう。


「分かった!任せて!」


「おう!先に倒すかもしれないけどな!!」


「ありがとうなのだ!!

スカバくん!私についてきてくれないか?」


「ぼ、僕ですか!?」


「この作戦を成功させるには君が必要なのだ……」


 スカバは、少しの躊躇いを見せたが決意を固めたのか少しぎこちなく首を大きく縦に振る。


「ありがとうなのだ。

では、いくぞ!スカバくん!!」


「は、はい!!」


 シーカは、ドラゴンに踵を返し走り出す。


 ここに来るまでに何か見つけたのか……?


 いや、作戦はシーカに任せてとりあえずこいつ(ドラゴン)の足止めだ。


「お、おい!ええんか?

あと10分しかないんやろ?」


「大丈夫!!シーカなら大丈夫!」


「なんて言ったって、名探偵ってやつだからな!」


「どえらい信頼やな……」


 正直、作戦の内容はピンと来ていないが、シーカが考えついたと言うことに意味がある。


 シーカの作戦なら大丈夫。

 それしか今は縋ることができないのだ。


「グルゥウアアアア!!」


 耳を劈く、ドラゴンの咆哮。

 少し、作戦会議が長かったのか咆哮から苛立ちを感じる。


 再び首を大きく引き、口元が赤く発光する。

 間違いない、マグマボールの予備動作だろう。


 マオ達のミッションは"足止め"だ。

 守備に気を配っていればミッション達成は、なんら難しいことはない。


「また、マグマボールくるよ!!」


「よっしゃ!任せろ!!

【錬成術Formula.5フォーミュラ・ファイブ:

|姿は変われど、理は変わらず《メタモルフォーゼ》】」


 カフラは地面に両手を着けると、地面が隆起し壁が何重にも生成される。

 さすがに、何重にも連なった壁はマグマボール一回では溶かしきれないだろう。

 

「とりあえず、シーカたちが戻ってくるまであいつ(ドラゴン)のヘイトは俺が集める!」


「あんた今、無敵やもんな!頼んだで!

ほんならウチはスキルでマオの強化や!」


「ありがとう!助かるよ!

カフラは万が一のために、流れ弾に備えてスウォンとミーシャを守ってくれ!」


「おっけい!!任せろ!」


プシューー!!

 

 唐突に聞こえる、空気が抜けるような機械音。

 音の方向に視線を向けると、そこにはミーシャの姿があり、ゆっくりと立ち上がる。


「話は聞いてたよ。

ドラゴンの足止め、私も手伝うよ」


「あんた、大丈夫なんか?」


「まだ、60%ほどしか完了してないけど足止めくらいなら大丈夫」


 「いや、スマホか!」というツッコミはあまりにもウケないし、スマホすら知らないだろうと判断したのでなんとか堪える。


「それじゃあ、ミーシャは俺の援護をよろしくね!」


「うん、任せて」


「そんじゃあ、名探偵が帰ってくるまで"いのちだいじ"に行くぜ!!」


 連続で聞こえる爆発音。

 おそらく、何重にも連なった壁を破壊するためにドラゴンがむやみやたらにマグマボールを連発しているのだろう。

 徐々に近づく爆発音。


「そうだね!それじゃあ、作戦開始っ!!」


 最後の壁が破壊されると同時に駆け出すマオ。

 隣にはミーシャも並走している。

 後方ではスウォンのステージを作り出すカフラ。

 心なしか少し豪華なステージになっている。

 

 これが、今できる最善の布陣だ。

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