第41話「オーバーヒートとクールダウン」
「【ランサースキルspear.3:
|この槍、風となりすべてを拒む《エアリアル・ガード》】」
「あんた……!」
高速で移動し、スカバを庇うスウォンの前へ到着したミーシャ。
どうやら、炎を一身に受け止めるようだ。
スキルを詠唱すると、持っていた槍をブンブンと高速で回転させる。
「ミーシャさんっ!!」
スカバの歓喜の声。
それもそのはず、ミーシャは高速に槍を回転させ、風を作り出しドラゴンの灼熱ブレスを防いだのだ。
突如、膝をつくミーシャ。
「どないしたん?大丈夫か!?あんた!
……って、熱っ!」
ミーシャの身体に触れようとしたスウォンの手は反射的に離れる。
どうやら、身体は高熱を帯びているようだ。
「だ、大丈夫!?」
マオ達が合流する。
膝をつくミーシャ。
身体からは湯気が立ち込める。
離れていても肌を焼く熱さのブレス。
いくら、スキルで防いだとしても無事では済まない。
そして、不可解なことにミーシャは汗ひとつかいていない。
「ミーシャの身体がめっちゃ熱いねん!
これ大火傷やで!誰か、冷やすもん持ってへんの!?」
「だ、大丈夫……
ちょっとオーバーヒートしただけ……」
オーバーヒート……?
ここに来て、急にカッコいい横文字を使い出すイケメン。
カッコ悪いところを見られたくないのか?
プシューウ……
突如、ミーシャから聞こえる噴射音。
とても、人間では成し得ない音だ。
「少し、クールダウンの時間をもらうね……」
そう言い放つと、まるでシャットダウンしたように首がダランッと垂れ下がる。
もしかして、ミーシャって……
「ロボット……?」
「そうとは決まってないが、とりあえず人間ではなさそうなのだ……」
「グルゥウアアアア!!」
ドラゴンの咆哮。
どうやら、ミーシャの謎を解明する時間はなさそうだ。
「とりあえず、あのドラゴンを倒そう!」
「そうだな!おい、スカバ!
ミーシャのこと頼んだぞ!」
「え、ちょっと、どういうことですか!?」
カフラは地面に手を着くと、地面は隆起し反り立つ壁が形成される。
「頼んだ」と言うのは、クールダウンのミーシャを守れと言うことだろう。
壁を生成したのは、カフラなりの気遣いだ。
「よっしゃ!ドラゴン討伐再開だぜ!」
そう言い放ち、走り出すカフラ。
最大戦力のミーシャが一時離脱したため、戦闘要員はマオとカフラの2人。
そして、司令塔のシーカ。
これで、ドラゴン討伐できるよな……?
……大丈夫!
炎の巨人だって倒したんだ!
「……よし!行こう!」
再び足に喝を入れカフラに続くように走り出すマオ。
「ウチも参加すんで!」
後ろから聞こえるコテコテの関西弁。
振り返ると、そこにはマオに続くように走るスウォンの姿。
どうやら、"イーグルシールド"のギルド長も戦闘に参加してくれるようだ。
ノルディのように、超強いギルド長なら嬉しいのだが。
そもそも、戦えるのか?
「おお、頼んだぜ?なんとかのギルド長!」
「"イーグルシールド"や!!ほんまに適当やな。
あんたカフラやっけ?
地形変えられるスキル持ってるんやろ?
それやったら、あそこにステージ作ってくれん?」
「ステージ……?なにすんだよ?」
「グルゥウアアアア!!」
ドラゴンの咆哮。
視線を向けると、身体を大きく捻り尻尾を振り回している。
やばい、またあの尻尾攻撃だ。
再度、壁のように巨大な尻尾が迫る。
「【アイドルスキルAct.1:
|風のまにまに歌い舞えば、戦場は光を灯す《サンライズ・ステージ》】」
スウォンはスキルを詠唱する。
すると目の前にひまわりが出現する。
その、ひまわりを手に取るとカフラにステージ建設を指示した箇所まで走り出す。
なにか、ドラゴンを倒せる策があるのかもしれない。
「カフラ!ステージを作ってあげてくれ!!」
「尻尾がきてんだぞ?あれは、どうするんだよ!?」
「俺が、あの尻尾を止めてみる!」
「やれるんだな?
そんじゃあ、任せたぞ!!」
カフラはスウォンの後に続き走り出す。
「尻尾を止めてみる」とは言ったものの、自信はない。
……ていうか、絶対無理だろ。
勇者と対峙した時の身体の感覚があれば、
止められるかもしれない。
ていうか、あれはなんだったんだ?
スキル?父ちゃんのおかげか?
今はスウォンの策に賭けるしかない。
超不安だが……。
迫り来るドラゴンの巨大な尻尾。
距離が縮まるほどに震える足。
……あぁ、死ぬ。
絶対死ぬ。
思い出せあの時の感覚!
勇者に殴りかかった時の感覚を!!
絶対俺の力だ!
絶対に!
マオは覚悟を決め拳を握りしめる。
ギュッ!!!
指が手にめり込む感触。
拳を握るという概念を超えるような、自身の身体ではない感覚。
なんだこのパワー……。
まるで、あの時のような身体の感覚。
「——不自由なこの世界、自由を求めて生きる私には窮屈なの」
横から聞こえる、音色。
いや、歌声なのか。
歌の方向に目をやると、ステージの上でひまわりを持ち、右往左往に舞っているスウォンの姿。
コテコテの関西弁からは想像できない綺麗な音色。
マオの鼓膜を揺らすたびに、身体は高揚する。
その姿は、まさにアイドル。
「——もっと見たくない?空に輝く星々を。」
このパワー……
スウォンのスキルか?
やばい、なんでもできるかも。
ドラゴンが振り回す巨大な壁は、もう目の前。
俺ならやれる!やれる!
いける!!
「止まれぇぇぇぇぇ!!!」
マオから放たれた強烈な一撃。
ドラゴンの硬質な肌はまるでゼリーのように拳の形にひしゃげる。
「すっげぇーーぞ!!マオ!」
バカデカい歓喜の声。
声の正体はもちろんカフラ。
驚くのも無理はない。
マオの小さな拳は、壁のようなドラゴンの尻尾を止めるどころか吹き飛ばしたのだから……




