第39話「自由まであと一歩」
「だ、大丈夫かい?」
「ほ、ほんまおおきにな!」
ミーシャは立ち上がり、スウォンに手を差し伸べる。
「す、すごいスピードでしたけど……
ミーシャさんって、一体何者なんですか!?」
そう問いかけたのは、スカバ。
ちょうどマオも同じ質問をしようとしていた。
明らかに、常人とは思えない反応とスピード。
そのスピードは、"ゴールデンゴースト"のギルド長ノルディに負けず劣らず。
もしかすると、とてつもなく強いのかも。
敵だとしたらやばいのでは……。
「な、なんでだろうね?
身体が勝手に動いて……」
ミーシャは視線を逸らすように返答する。
照れ隠しではなく、なにかを隠しているようであった。
……怪しい。
「おい!宝箱だぜ!!
ほら!こっちが正解じゃねぇーか!」
月の扉の奥から聞こえるカフラの声。
興奮気味の声色から、無事に正解の扉であったのだろう。
扉を挟んでもここまで一言一句、声が聞こえてくる。
カフラのやつ、どんな声量してるんだよ。
「ほんまやな、この勝負はあんたの勝ちでええよ!」
いやいや、「この勝負は」って死にかけたんだぞ?
やはり、ギルド長ってのはどこか頭がおかしい。
「それよりさ、シーカ。
なんで、正解の扉が分かったの?」
「あぁ、それはな、"この方"が教えてくれた」
シーカが指し示すのは、この部屋で死に絶えたであろう骸骨。
「この方って」、もう死んでるよ。
「このガイコツから何か分かったってこと?」
「あぁ、このガイコツの死因はおそらく焼死。
その証拠に、ところどころ黒ずみ、骸骨の下顎が灰になっている。」
マオはシーカの虫眼鏡を借りて覗き込む。
確かに、白い灰がガイコツの下に集まっている。
下顎が無いのも燃えて灰になったからなのか……。
「この部屋で、焼死の可能性があるのは太陽の扉。
ズバリッ!太陽の扉が不正解の可能性が高いということが分かったのだ!」
「すごい!さすが名探偵!!」
「ふふん!だろう?
まぁ、あくまで可能性であったのだがな……」
シーカは再度パイプを咥えシャボン玉を吹かす。
シーカは照れ隠しでシャボン玉を吹かす。
褒められて嬉しかったのだろう。
かわいい……。
「おい!鍵があったぞ!!宝箱の中に!」
カフラは大声を出しながら扉を開ける。
扉を隔たないと興奮したカフラの声はさらにうるさい。
どうやら、扉の防音機能はしっかり果たしていたようだ。
「鍵か……」
みんなの視線は正面に集まる。
視線の先は鍵のマークの扉。
まぁ、あとはここしか無いよな。
「カフラくん、その鍵をあの扉に使ってみるのだ!」
「おっけい!任せろっ!」
カフラは鍵のマークがついた扉に歩み寄る。
すると、鍵は光り輝きカフラの手元から離れ宙に浮く。
……眩しっ!
一瞬、視界いっぱいが光に包まれる。
光が消え瞼を開けると鍵のマークの扉が開いている。
「謎解きクリアってことだよな?」
「そうみたいやな!ほんなら行くで!」
「よっしゃ!」
「ちょ、ちょっと!
スウォン様!カフラさん!」
自由人2人は堂々と鍵の扉の先へ足を踏み入れる。
さっきの命懸けの喧嘩が嘘のように。
鍵の扉を抜け、洞窟の奥へと進む。
長い一本道。
そろそろ、伝説の鉱石とやらが出てもいい頃合いだが?
まぁ、さすがにこんなに謎解きがあったんだ。
レアなアイテム、一つくらいは頂かないと割に合わない。
いや、二つくらいは欲しいな。
カフラとスウォンを先頭に一本道を歩くこと約5分。
ある、大きな空間へ到着した。
RPGだとボスがいるような部屋。
「おい!なんだよ!あれ——」
「——おい、カフラくん静かに……!」
「あれは……」
カフラの口を押さえるシーカ。
カフラの驚き用も無理はない、なんて言っても目の前には——
「——ドラゴン……」
そう、巨大な翼を携えたドラゴン。
見上げると首が痛くなるほどに巨大な身体。
今はどうやら眠りについているようだ。
「おい、マオ……どうしたんだ?」
珍しくカフラが心配する。
それもそのはず、マオの口はあんぐり、目は心霊現象でも見たように大きく見開いている。
おい、どういう事だ?
ドラゴンって聞いてはいたけど……
なんで、こいつがここにいるんだよ!
マオの脳裏に蘇る記憶。
それは、ソイルが勇者に殺された日。
勇者ルクスによって召喚されたドラゴン。
燃えるように赤い肌。
巨木のような足。
間違いない、あの時のドラゴンだ。
心臓の鼓動は止まらない。
足はガクガクと震える。
これは……、トラウマってやつか……?
「……おい!マオ!大丈夫なのか?」
「あ、あぁ、大丈夫……」
「なんや?ビビってんか?
ウチは、このドラゴンとギルド長としてちょっと話をつけなあかんのや!」
「ちょっと!スウォン様!!」
スウォンはドラゴンに歩み寄る。
あくまでも交渉するようだ。
「おい!ドラゴン!
ここは"イーグルシールド"の土地なんや?
住み着くんはええけどやな、ちゃんと契約して……
て、おーい、聞いてるんか?」
「ちょっとスウォン様!
起こしたらまずいですって!」
「なんでやねん!
起こさんと話し合いがでけへんやろ?」
「ちょ、ちょっと!」
スウォンはドラゴンの肩をよじ登り耳の前に立つ。
「おーい!聞いとんのかぁー?」
「やばいよぉ……」
ドラゴンの目がゆっくりと開く。
スウォンが肩から降り、言葉通りドラゴンの目の前に立つ。
この娘、肝が座っていると言うより、恐怖という概念を持ち合わせていないのかもしれない。
「やっと起きたわ!
もういっぺん言うけどやな、ここは——」
「グギヤァァァァァァオ!!!!」
ドラゴンの咆哮。
マオの身体はすくみ上がり、心臓は破裂しそうなほどに脈打つ。
これは、やばいのでは……
「なんや?威嚇か?
そんなんでウチをビビらそうなんてそうは行かへんで!
ウチの交渉術は父譲りや!
そんなんで、あんたの有利に話は進めさせへんで?」
「ちょ、ちょっとスウォン様!
やばいですよ!!」
ドラゴンは首を大きく引き、なにやら口元が発光している。
マオには分かる。
これは、やばい!
このモーションは絶対……
「ブレスだ!!
みんな、ドラゴンから離れて!!」
ブウォォォォオオオオ!!
離れていても肌を焼くような灼熱の炎。
直撃すれば火傷では済まない。
骨も残らないだろう。
1番ドラゴンに近いのはスウォン。
果たして、スウォンは無事なのか……




